なぜ家族は殺し合ったのか (PLAY BOOKS INTELLIGENCE 120)

著者 :
  • 青春出版社
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本棚登録 : 83
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784413041201

作品紹介・あらすじ

これ以上残虐な事件を著者は知らない。「支配と服従」の密室で、少女は何を目撃したのか。

感想・レビュー・書評

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  • この事件の凶悪さ、犯人の狡猾さはネットで読んで知っていたが、家族の遺体解体のシーンなど想像を超える凄惨さ。
    松永は、本当に些細な他人の弱みに付け込んで、あっという間に自分の支配下に置く。
    少女の父親はなんとなく、もっと松永と親しい仲で被害者になったのかと思っていたら、意外にも、きっかけはただ不動産屋で松永の部屋を世話したというただそれだけの関係という恐ろしい事実。
    殺害が立証されたのは6人だが、松永の結婚詐欺に引っかかった挙句、不審死を遂げた女性もいるし、まだまだ他にも詐欺や恐喝の被害者はもちろん、殺された人間がいるのではないかと思ってしまう。

    柳川で布団の販売をしていた時に雇われていた男性の話も印象的であった。
    元々学生時代の同級生から強引に布団を買わされ、それをクーリングオフしたところ、同級生と松永が現れた。どうしてそんなことをしたんだと責める同級生に、それを宥める松永。なんだかんだで車に乗せられ、事務所に監禁され結局今度は自分が松永の会社の従業員にされ布団を売らされていたということだ。

    この男にどんな形であろうとも関わったら最後のような気がする。そして、恐ろしいのは、この事件はたまたま公になっただけであって、他にもこういった狂った“「支配と服従」の密室”が密かに、それも大量に存在するのではないかということ。

    こういう監禁事件に限らず、悲惨なニュースが公になると、かならず「なぜ逃げなかったのか」「なぜ警察を呼ばなかったのか」などと被害者を責める人が必ずいるが、そういう人に是非この作品を手に取ってほしい。
    人間なんていうのは極簡単なトリックで落ちるところまで落とし込まれてしまう。そのことを肝に銘じてほしい。

  • グロが苦手な人には、「消された一家」よりこちらがおすすめ。
    向こうが女性容疑者の心情寄りで、臨場感にあふれているのに比べ、こちらのほうは裁判中心で、客観的です。
    作者は、事件の最初から、「閉じ込められていたわけではないのに監禁といえるのか」という疑問に対し、「心理的に支配されたら、閉じ込められていなくても逃げない」と答えており、その事実を知ったうえで考察しています。

    女性容疑者が黙秘を破るきっかけになったのが、男性容疑者への反発でなく、むしろ服従だったのが興味深かったです。
    「このまま黙秘していたら、ふたりとも死刑になる。話せば、私は死刑だが男性は助かる」という…。
    男性から「俺が死刑になるから話すな」と言われたのが意外だったというのですから、いかに男性の洗脳が巧みだったかということですね。本気で、やったのは自分で、男性は悪くない、と信じていたんでしょう。


    しかしこの事件、支配されるようになった過程はわかったし、人はこうすればこうなるというのもわかったけど、やっぱり、本当に人はこんなに弱いものなのか、と信じきれません。
    できるなら、犯人が異常で、被害者も普通より弱い人で、まともな人ならありえない、という結論で終わらせたいくらいですが……そこにとびついたら思考停止なんだろうと思う。
    ああいう人間につけいらせないためにも、考え続けたいものです。

  • 何回読んでも凄まじい、、、こんなことが実際にあり得るのか。。。と思わずにはいられない。

    それぞれがそれぞれに割とわかりうる範囲の常識の持ち主で、緒方被告に関しては家族丸ごと飲み込まれてる中で、そうまでして引きつける何かがあるんだろうなぁ、、、

    この著者が、オウム真理教に近いものがある。って言ってるけど、たしかにそういう謎のカリスマ性を持って生まれて、それに気がついて生きていくとこういう使い方ができてしまうんだな、、、、

    と。

    すごいよ。ホントにすごい。

    凄惨な事件ではあるんだけども、この人の心を握ったら離さないチカラって。ものすごいと思う、、、、

    プラスに転じたら何かに使えそうな気がするのはわたしだけでしょうか。
    何度読んでも実際にあったとは考えられない事件です、、、

  • 星のつけ方が非常に難しい。

    読めば読むほど主犯の行動の理解に苦しむ。事実は小説より奇なり、とはいうが人が想像できる範囲をはるかに超えている。
    グロいの苦手な方にはおすすめできない。

    数カ月前に、地上波のドキュメンタリーで犯人の息子さんを取材した番組があったが、受け答えがしっかりできていた。それこそ他の誰にも分からないような苦労はしてきているはず。周囲でサポートしてくれた人達はもちろんだけど、やはり本人が苦しみながらそれに押しつぶされないように生きてきているのだろう。それをあの父親は分かっているのだろうか。

  • 4-413-04120-8 221p 2005・6・15 1刷

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4413041208
    ── 佐木 隆三《なぜ家族は殺し合ったのか 20050601 青春出版社》
     

  • 以前読んだ『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件』の
    公判記録バージョン。
    公判記録だけを書き綴った本なので一見物足りなく感じる
    かもしれないけど、事件の詳細は『消された一家』の方で
    読んでわかっていたので十分でした。
    あたしの知る限り、一番と言っていいほど残忍で極悪な事件。
    もっとこの事件関連の本が読みたいです。

  • 北九州の監禁殺人事件を追ったもの。家族同士が最終的に殺しあう様子を、まるで本当に見てきたかのように丁寧に描かれていて、途中で吐きそうになった。でも実話なんですよね。

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著者プロフィール

1937年4月15日朝鮮咸鏡北道穏城郡訓戒面豊舞洞167番地で生まれる。
1941年12月末朝鮮から関釜連絡船で広島県高田郡小田村へ帰国。
1950年6月広島県高田郡小田村中学校から八幡市立花尾中学校へ編入。
1956年4月福岡県立八幡中央高校を卒業して八幡製鉄所入社。
1963年5月「ジャンケンポン協定」で第3回日本文学賞を受賞。
1976年2月「復讐するは我にあり」で第74回直木賞を受賞。
1991年6月「身分帳」で第2回伊藤整文学賞を受賞。
2006年11月北九州市立文学館の初代館長に就任。

「2011年 『昭和二十年八さいの日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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