- Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
- / ISBN・EAN: 9784413043724
作品紹介・あらすじ
知の巨人が書き残した印象的な情景と思索の日々。下町の日常の中で、ささやかながら印象的な情景を綴った全編自筆の珠玉のエッセイ十六編と掌編小説三話。
感想・レビュー・書評
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東京下町風情の庶民感覚の匂いがして趣があります。ぐぐっと深み読みすれば、やはり思想家として論争などもした人として当然というか、血の気の多いとまでは感じさせませんが、エネルギーの大きさ、ひいていえば、血気盛んさを大いに結構ととる性質の人だったのかなあという気がする。まあ、ここいらへんは、過敏に感じとると、という意味でです。過剰な読解・詮索かもしれない。歳を重ねるうちに、だんだん無反省になっていく人は多い。それはひとえに、反省する人間は侮られ勝ちなのがわかってくるからです。反省して自分をよりよくするか、反省せずに人と張り合うか。社会的な人間としての後者を取る人は多い。でもそれって、ある意味大げさに言えば、人間的破たんへ向かったチキンレースなんですよ。吉本隆明さんは70歳を超えた時点でも反省していたりします。社会的自分も大事だけど、でも僅差かも知れなくとも人間的自分を大事にした人なんだと思いました。反省することが恥ずかしくなく、馬鹿にされもしない社会は素敵です。理想ですが。
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老いるということは、日ごとに肉体が劣化して終末に近づくことであるが、吉本先生は、心身症も身体の障害から発すると考えてもおなじかもしれない。拡大すると老齢者の病気は運動性の不全が原因と考えても内蔵の不全と考えてもおなじではないか、と大好きな自転車操行不全に対して思うのだ。
先生があの上野の下町あたりをひょうひょうと歩く姿が目に浮かぶ。知人はフランスパンをかかえて歩く先生を目撃したそうだ。
晩年はリハビリでウオーキングを必死にやっていたと聞く。年老いても街はいつでも楽しめる、そんな大きな生き方が本当に心地よい案内だ。