見てすぐわかる犯罪地図 なぜ「あの場所」は犯罪を引き寄せるのか (青春新書インテリジェンス)
- 青春出版社 (2015年6月2日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784413044578
作品紹介・あらすじ
「人」はウソをつく。しかし「景色」はウソをつかない! 声をかけられて、道を聞かれて…子どもや女性が犯罪に巻き込まれるきっかけは、だまされることがほとんどだ。「危ない人」を見抜くことは難しい。でも「危ない場所」を見抜くことはできる。「景色解読力」で危険な場所を見抜き、身を守るための最新防犯科学を、図とイラストを使ってわかりやすく解説する。
感想・レビュー・書評
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最近子供をターゲットにした悲惨な事件が相次いで起こっています。日常生活内で犯罪に巻き込まれる事件は後を絶たず、犯人はたいてい子供や女性という弱い対象に襲い掛かります。
そうしたリスクを少しでも減らすには、犯罪が起こりやすい場所をあらかじめ知っていることが大切。著者は犯罪学専門の社会学者。
子供に防犯ブザーを持たせることは、襲われた後の対策で、防犯(予防)ではないとします。確かに、そもそもの犯罪に巻き込まれるのを防ぐことが何より。
襲われた後の対策は「クライシス管理」で、事前の予防は「リスク管理」と区別して呼ばれるとのことです。
子供たちは、道徳教育では「人は見かけで判断するな」と教えられているのに、安全教育では「人は見かけで信用するな」と教えられていると、氏は指摘します。
そのちぐはぐな教育は子供を混乱させ、間違った選択をしてしまう可能性が大きいとのこと。
「不審者に注意」といっても、人は見かけではなかなか判断できないもの。
それよりも、犯罪の起こりやすい場所を覚えておく方が確実だとして、本書では「景色解読力」について語られます。
犯人は犯罪を起こしやすい場所を選ぶもので、「だれでもよかった」と人に無作為に襲い掛かったとしても、「どこでもよかった」わけではないそうです。
犯罪者が侵入するかどうかの判断基準は、見つかった時に言い訳ができるかどうか。
学校を侵入しにくい場所にするためには、門を閉めておくことが必要。
近隣との交流が減った今は、コミュニティでの情報交換が不足し、犯罪者が入り込みやすい環境になっているため、地域の犯罪を防止するには、やはり近所同士のネットワークが一番だとのことです。
身を守るために、防犯意識を持って、危険そうな場所へのアンテナは、いつでも張っておきたいものです。 -
理論よりなのか、実地よりなのか、どっちつかずな部分もあったけれど、逆に言うとどちらの方にも面白いと思う。全体を通して良かった。
特に事件現場の写真を見ることはないので、ああなるほどと納得することが多かった。
浅く広い印象なので、深堀って読み進めたい。 -
犯罪が起こる原因を、人ではなく場所で考えているそういう話です。日本では人の対策が多くて、場所の対策が全然ないそうです。確かに犯罪を犯すような人でも、チャンスがなければ犯罪を犯しません。まぁどちらか片一方と言うことではなく、両方ともうまく対策できればいいなと思いました。最後のほうは日本社会の問題点について述べていますが、結論はなかったらしく突然終わります。
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<b>「犯罪機会論」の有効性をひたすら述べた書</b>
確かに合理的で効果も高いと思われる「犯罪機会論」ベースの防犯施策。
欧米でも主流なのは頷ける。
しかし、序盤でこの主題を述べてしまうと本書はひたすら脱線してしまう。
犯罪機会論による地域マップ製作で、子供たちの成績が上がったり、非行がなくなると言い切っているのは苦笑してしまう。
本年夏に痛ましい事件が起きる前の「寝屋川」にてマップ製作の効果があったと事例をあげており、ニヤニヤしてしまう。
被害者たちにマップ作りをさせていれば夜間徘徊などしていなかったのか?
終盤、日本人の防犯意識が未成熟な背景をムラ社会構造に求めている。
非常に同意なのだが、本書でこれだけページを取って改めて説明するところでもないだろう。
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犯罪は「犯罪を犯す人」と「犯罪をしやすい機会」が組み合わさった時発生する。不審者情報が日々警察からメールで知らされる現代、しかし実際は犯罪者は見た目では判断つかない。そこで機会に着目しアブない「景色」に敏感になることを子供に教えることが有効であるとするのが犯罪機会論。すなわち「入りやすい」「見えにくい」場所が危険であると。これはなるほど知っておくべきと腹落ち。そしてその景色を知識として教えるだけでなく子供達自ら調べ、まとめ、人に教える事で生きた知恵として定着させる方法論。深夜帰宅後に家庭内会議になるくらい親必読の書。
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犯罪は、人より場所。
入りやすく、見えにくい場所を気を付ける。
そうなれば、いろいろと気を付けやすい。
どうしても、「不審者」という言葉が独り歩きしたことで、日本は、あまり役に立たない方法が市民に行き渡ってしまった。
しかし、多くの場合、人は、チャンスがあることによって犯罪を犯し、つもりがあっても、チャンスがなければ犯罪を犯さない。ならば、そうした場所を避け、また、作らないことによって犯罪そのもののリスクをかなり下げることができる。
そう著者は提唱する。
また、日本人の諸外国との考え方の違いについて、「うち」「外」の考え方や、ついぞ、城壁都市を形成せず、争いを好まないことなど、歴史的な考察も興味深かった。 -
2016年読了
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防犯という「これから起こり得る犯罪の予測」という危機管理を考えた場合、なぜその犯人は犯罪を犯したのか、その原因を個人の心性からさぐる「犯罪原因論」ばかりを追い求めてみてもなかなか答えに結びつかない。なぜならその観点から考察する犯行に及ぶか思いとどまるかは、どこまでも犯人の個人の事情だからだ。一方で、なぜ「思ったこと」を「具体的な行動に移すにいたったのか」という「犯罪機会論」は有効である。犯人は基本的に犯罪を成功させたいと願うわけだから、犯行がうまくいきそうであれば犯行に及ぶし、失敗しそうなら思いとどまるからで、そこには一般的な法則が存在するからだ。本書は、犯罪には「怪しまれずに近づき速やかに逃げ出せる=出入りが容易」でかつ「ひとから見えにくい、知られにくい」という「起きやすい場所」があり、それを研究する「犯罪機会論」の初歩をわかりやすく図解や写真で紹介し、それこそが防犯にかかせないことを説く。日本の防犯事情が、犯罪原因論に固執し過ぎ、これから犯罪を犯すであろう「不審者」なる存在に基づいた防犯であることに警鐘をうながす。「不審者」とは何者なのか?不審者とふつうの人は区別できるのか?実際に犯行を行う人は、「いかにも不審者」という人物なのか、それとも「ごくふつうの人」と思われていたような人物なのか?と。