皮膚は「心」を持っていた! (青春新書インテリジェンス)

著者 :
  • 青春出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784413045193

作品紹介・あらすじ

イライラ、不安、リラックス…不機嫌、上機嫌の理由は「皮膚」にある!? 「第二の脳」ともいわれる皮膚は、無意識のうちに快や不快といった感情にも影響を与えている。脳に触れることはできないが、皮膚を通して、心に働きかけることはできる。仕事も人間関係もうまくいく「皮膚感覚」の活かし方。

感想・レビュー・書評

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  • 山口創(1967年~)氏は、早大人間科学部卒、早大大学院人間科学研究科博士課程修了、聖徳大学人文学部専任講師等を経て、桜美林大学リベラルアーツ群教授。臨床発達心理士。専門は健康心理学、身体心理学。
    本書は、「心は皮膚にある」という持論を基に、皮膚の身体的なメカニズムと、子育てや医療・介護を中心とした人間関係の場における「触れる」ことの大切さを説明したものである。
    目次は以下の通り。
    第1章:皮膚は「第二の脳」だった!!~肌に触れることは、心に触れること~皮膚という「露出した脳」/皮膚はもっとも原始的な感覚器/皮膚は“音”を聞いている/光や色も感知している皮膚/赤色のユニフォームで勝率が上がる!?/皮膚は記憶を宿している 等
    第2章:感情は「皮膚」でつくられる~イライラ、不安の理由は「肌」にある~体が温まると、心も温かくなる/やわらかいものに触れると、心もやわらかくなる/世界中の子どもが持っている「ライナスの毛布」/赤ちゃんが求めているのは「食べ物」よりも「肌感覚」/年を重ねても触覚は衰えない 等
    第3章:皮膚で「心を整える」方法があった!~この「触れ方」でポジティブに変わる~皮膚が心地よさを感知するメカニズム/「心地いい触れ方」の5つのポイント/セルフマッサージで心を整える/「触れる」ことで関係性がつくられる 等
    第4章:「触れる力」が心を育てる~脳内物質「オキシトシン」の効果~親子の愛情が深まり、子どもの情緒が安定する/1~2歳の子どもの脳はだっこで育つ/ADHDの子どもも変わるタッチケア/スキンシップが多い子どもは学力が高い 等
    第5章:「皮膚感覚」を活かす人づきあいのヒント~「心」に触れるコミュニケーション~触れていなくても、そばにいるだけで心が強くなる/添い寝するだけで自立神経が同調する/病気の人には「付き添う」だけでもプラスの効果が/触れるだけで、相手に感情が伝わる 等

    テーマ及び「スキンシップが大事である」という主張は極めてシンプルで、これから子育てに向かう(或いは子育て中の)親世代にはメッセージが届きやすい内容である一方、様々な実験の結果についての言及はあるとはいえ、全体として主観的な説明が多く、学問的な興味を満たすには少々物足りなさを感じるものだった。
    (2022年3月了)

  • 手の治癒力と多少被りますが、ところどころに新しい記述もあります

  •  山口さんの『手の治癒力』と『人は皮膚から癒される』の前段階の書き物、とでもいうべきか。

     かるく1時間で読めて、『触れる』ことによるケアについて前向きに勉強してみようかな、という気になれる点では、ケアを紹介したい相手に渡すとに良いかもしれない。内容は『手の治癒力』と被るところが多いと感じた。

  • 2019年1月22日購入。
    2019年11月30日読了。

  • 皮膚も色や音を感じている。
    皮膚ならではの感覚は心に影響している。
    慈愛の心で(了承を得てから)相手に触れると、相手のみならず自分にもオキシトシンが分泌され、結局は自愛につながるらしい。

    2018/05/14読了

  • ===qte===
    新書/文庫紹介

    『皮膚は「心」を持っていた!』
     山口 創 著
     青春出版社(青春新書)
     2017/08 192p 930円(税別)

     1.皮膚は「第二の脳」だった!?
     2.感情は「皮膚」でつくられる
     3.皮膚で「心を整える」方法があった!
     4.「触れる力」が心を育てる
     5.「皮膚感覚」を活かす人づきあいのヒント

    【要旨】人間と同等かそれ以上のさまざまな能力を備えた汎用型AIの登場に
    備えて、あるいは人間同士の直接の「ふれあい」が希薄になっている現代に
    おいて、われわれの「皮膚感覚」を今一度見直してみるのは重要ではなかろ
    うか。人間の皮膚は「第二の脳」とも呼ばれる高レベルの情報処理能力と、
    外界や他者との境界、また感覚や感情につながるセンサーの役割を果たして
    いる。本書では、「人間の心は皮膚にある」として、身体との関係で「心」
    を捉える「身体心理学」の視点で「皮膚」の働きを総合的に解説。さらに、
    身体だけでなく心をも癒すマッサージ(自己マッサージを含む)などでの「触
    れ方」、直接的、間接的に「触れ合う」ことの社会的意義などについて詳し
    く論じている。著者は桜美林大学リベラルアーツ学群教授で、健康心理学・
    身体心理学を専攻、臨床発達心理士の資格を持つ。
      ------------------------------------------------------------

    ●人間の発生過程で皮膚と脳はもとは同じものだった

     ストレスは心で感じているだけではない。皮膚でも感じている。朝のラッ
    シュアワーのような、不特定多数の人との接触や温度、湿度の変化もそのひ
    とつだ。例えば硬くて冷たい椅子と、心地よく体にフィットする椅子。どち
    らに座ったときにストレスを感じるだろうか。答えは明らかだ。

     皮膚は、意識下で感情に影響を与えている。私たちが「触覚」として意識
    しているのは、実は氷山の一角であり、無意識下ではとてつもなく膨大な情
    報量が脳に流れ込んでいるのである。無意識下で不快感が増長すれば、自ず
    と感情に影響を与えるのは当然のことなのだ。さらにいえば、不快感などの
    感情は、心よりも先に「皮膚が感じて」いる。

     腸は「第二の脳」といわれるが、皮膚も「第二の脳」といわれたり、腸に
    次いで「第三の脳」といわれたり、「露出した脳」といわれることもある。
    それは、皮膚と脳の発生の過程を見れば明らかだ。人間の受精卵は細胞分裂
    を繰り返して人間らしい形になっていくが、このとき、細胞は外側から外胚
    葉、中胚葉、内胚葉という3つの層に分かれている時期がある。それが次第
    に分化して、例えば内胚葉からは内臓、中胚葉からは骨や筋肉などに分かれ
    ていくのだが、実は外胚葉からは、皮膚と脳に分かれていくのである。

     つまり皮膚と脳は、もともとは同じものだったというわけである。だから
    こそ、脳に勝るとも劣らない情報処理能力を備えているのだ。しかも皮膚は、
    脳と比べて、その突出した面積の広さから、多くの感覚を感知して、大量の
    情報を処理している器官なのである。

     また、皮膚の刺激は脳に直結している。触覚や温度感覚、痛覚などの皮膚
    からの刺激は、脊髄に入ったあとに比較的単純な経路で脳に到達し、認識や
    感情の中枢を刺激する。


    ●「1秒に5cmほどの速度」で触れられると癒される

     こんな実験がある。イギリスの神経心理学者グレグ・エシックらは、ベル
    ベット、綿、メッシュを機械に装着し、対象者の顔と前腕をそれぞれ3つの
    異なる速度(1秒に50cm、1秒に5cm、1秒に0.5cm)でなでた。すると、ベ
    ルベット、綿、メッシュの順に「気持ちいい」と感じることがわかった。や
    わらかい生地が気持ちいいのだ。

     そのほかにわかったことは2つある。どの生地で触れても、腕よりも顔に
    触れたほうが気持ちよかった。そして、腕、顔どちらも1秒に5cmほどの速
    度で触れたときがもっとも気持ちよく、それより速くても遅くても、気持ち
    よさは低下してしまうということだ。

     「1秒に5cmほどの速度」というと、実は私たちは自然におこなっている。
    例えば泣いている赤ちゃんの背中をさすってなだめているとき、優しくマッ
    サージをするときなど、意識しなくてもこの速さでなでていることが多い。

     そして、この研究に続くものとして、1秒に5cmの速さで触れるときにもっ
    とも反応する神経線維が発見された。それが、「C触覚線維」である。先の
    実験で、腕よりも顔に触れたときのほうが気持ちよさが増したのは、顔のほ
    うにC触覚線維が多いからなのである。

     C触覚線維は、スキンシップのように肌をゆっくりとなでるような刺激に
    反応し、愛情や嫌悪感といった感情を喚起させる働きがある。C触覚線維は、
    高次な知的機能を司る前頭葉や、感情や情動を起こす辺縁系と神経線維の連
    絡がおこなわれており、多くの大切な影響を与えている。皮膚から脳へ触覚
    を伝える経路は神経である。皮膚にある神経線維のうち、C触覚繊維はゆっ
    くり動く刺激にのみ反応する。


    ●自分の境界が広がり他者と一体化する「自己膨張理論」とは

     触れることは人の苦痛を癒し、ストレスを緩和してくれるものだ。ところ
    が、触れなくてもストレスが軽減することがある。それを示したユニークな
    実験がある。アメリカの心理学者サイモン・シュナルがおこなった坂の実験
    である。

     実験参加者たちを坂のふもとに連れて行き、その坂の角度を推測してもらっ
    た。このとき参加者たちを「友人が側にいる」群と、「1人で」推測する群
    に分けて調べた。すると、友人と一緒に推測した人は、1人で推測した人に
    比べて、坂の傾斜を「ゆるい」と判断したのである。しかも、その傾斜をゆ
    るいと推測する度合いは、友人との親密度が高いほどに大きかったのだ。親
    しい人がそばにいることで、同じ坂でも傾斜をゆるく感じるというわけである。

     その秘密は、「ペリパーソナルスペース」の働きにある。ペリパーソナル
    スペースとは、ある領域内にある人やものを、自分の体の境界である皮膚が
    膨張して、まるで自分の体の一部であるかのように脳が感じてしまう空間の
    ことだ。手を伸ばせば触れられる範囲(45~50cm程度)とされている。

     例えばナイフとフォークを持ってステーキを切っているとき、脳はまるで
    ナイフとフォークが自分の体の一部であるかのようにとらえている。つまり、
    ペリパーソナルスペースの領域にあるものに対して、脳は自分自身の一部で
    あるととらえているのだ。

     この現象は人に対しても同様で、親しい人が近い距離にいると、自分の境
    界が広がったように感じてしまうことがある。自分の境界とはつまり、皮膚
    のことである。通常は、自分の皮膚の表面こそが、他者との境界であるはず
    だ。それが、親しい人が近くにいると、まるで自分の境界が広がり、相手の
    体も自分の体の一部のように感じて、エネルギーが増すような感覚が生まれ
    てくる。

     これを「自己膨張理論」という。つまり、自分が膨張しているような感覚
    なのだ。だから、親しい人が近くにいれば、困難も乗り越えられそうだとい
    う勇気が湧いてくる。

     満員電車は、他人との距離が極端に近くなり、誰もが不快になる。これを
    「クラウディング」という。クラウディングとは、人が高密度でいる状況で
    生じる、ネガティブな感情や不快感のことだ。

     満員電車では目をつぶっている人も多い。もし、満員電車の一人ひとりを、
    自分のペリパーソナルスペースにいる生身の人間としてとらえてしまったら、
    脳が疲弊してしまう。それを避けるがために、「目を閉じて」情報をシャッ
    トアウトしているわけである。だから、都会に住む人ほどまわりの人間を環
    境の一部であるように見てしまう傾向がある。

     一方、人が集まった状態では、クラウディングとは逆の現象が起きること
    がある。そのいい例が、パブリックビューイングだ。オリンピックやサッカー
    のワールドカップの試合など、わざわざパブリックビューイングに足を運ぶ
    人がたくさんいる理由は、一体感を味わいたいからである。そのほうが感動
    も倍増し、喜びも増えるからである。これこそまさに、自己膨張理論である。

     互いの境界の感覚が排他的なものではなく、一体化する膜のように感じる
    からこそ、このようなことが起こる。そしてそれが起こるためには、幼少期
    にしっかりだっこをされたり、友達と肌を触れ合わせるような遊びをたくさん
    したりすることが必要だ。触れられる経験が少なければ少ないほど、他人へ
    の境界の感覚ばかりが強く、自分の領域を侵されることに抵抗を感じてしま
    うだろう。

     本来、「触れる」という行為は、相手のことを思っておこなうものである。
    そしてそれは同時に自分自身を癒し、心に慈愛の灯をともす行為となるので
    ある。これは直接触れなくても同じである。
     誰かに触れられ、大切に扱われることで、自分の必要価値を見出し、今度
    は人のために生きようとする好循環が生まれる。相手を思う「慈愛の心」を
    持つことは、結果的に「自愛の心」につながり、不安や抑うつが減り、自分
    の心を整えることにつながるのである。

    コメント: 本文にあるように皮膚はきわめて有能なセンサーと情報処理能
    力を持っている。その能力を活用し、SNS大手のフェイスブックは、ウェアラ
    ブルのデバイスを用いて皮膚から直接脳に情報を送り込む研究を進めている
    そうだ。フェイスブックは企業のミッションとして2017年から「世界のつな
    がりをより密にする」を掲げているが、皮膚を媒介したコミュニケーション
    では言語が必要なくなるため、この研究の成果によりミッションの実現がよ
    り近づくことになる。こうして多様なツールが開発され、つながりが広がり、
    深まることで人類の集団的知性がますます磨かれていく。ストレスを癒すパー
    ソナルな働きから人類文明の進歩まで、皮膚は実に幅の広い可能性を秘めて
    いるということだろう。

    ===unqte===

  • この方の皮膚の話は非常に面白い。

    どの本も書かれている内容は変わらない部分も多いけど読むたびに発見があります。

    前著の「子育てに効くマインドフルネス 親が変わり、子どもも変わる」がちょっと期待外れだったけどこれはグッドです。

    とてもおすすめです。

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著者プロフィール

山口 創(やまぐち・はじめ)
1967年、静岡県生まれ。早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了。専攻は健康心理学・身体心理学。桜美林大学教授。臨床発達心理士。タッチングの効果やオキシトシンについて研究している。著書に『手の治癒力』『皮膚はいつもあなたを守ってる』(以上、草思社)、『皮膚感覚の不思議』(講談社ブルーバックス)、『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)、『最良の身体を取り戻す』(さくら舎)など多数。

「2022年 『文庫 人は皮膚から癒される』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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