インターネット・コミュニティと日常世界

著者 :
制作 : 池田 謙一 
  • 誠信書房
3.62
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本棚登録 : 43
感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784414301649

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  • いわゆる複数による編著書なのだが、表題のテーマ「インターネット・コミュニティと日常世界」の元、各論が有機的につながっており、かつ、統計学による裏付けによって、非常に説得力があり、読み応えのある良書に仕上がっている。

    以下、趣旨、抜き書き。
    *1章
    ・情報縁による「コミュニティ」の創出
    ・インターネットは、社会全体での情報共有を低下させる可能性をはらんでいる。
    ・「身体化」のより高いモバイルメディアを使うことが、その予期せざる結果として、ひとびとの社会的交流の範囲を同質的で身近なひとびとに限ってしまうという可能性がある。

    *2章
    ・インターネットは単なる社会的知識のリソースであるだけでなく、行動の機会そのものであり、自ら発信し現実世界と関わる機会をも提供する。→デジタル・デバイドの深刻度は高い。
    ・メールの利用率は、テクノロジー親和性に比例する。

    *3章
    ・宮田らは、携帯メールのやり取りをする相手は2~5人の比較的少ない人数の友達との間で非常に高い頻度で交わされるのが典型的であり、PCメールよりも物理的・地理的にローカルな範囲で行われる傾向があることを報告している(2005)。→携帯メールは「強い紐帯」の間で行われる。
    ・携帯とPCのメール利用が社会参加に及ぼす効果に有意な違いアリ。

    *4章
    ・短いメッセージはしばしば多くの話されない前提が共有されなければ通じない。「出会い系」は、期待や想像でその前提を埋めているだけである。
    ・イングルハートは、脱物質主義的な価値観を持つことが社会参加や政治参加と正の相関関係にあることを指摘している。

    *5章
    ・インターネットは選択性・検索性のきわめて高いメディア。

    *6章
    ・メディア研究においては、イノベーションによって新たなメディア(コミュニケーション手段)が広まる際には、人びとの間でそれが普及するということ自体が、それにプラスの面が非常にあることを意味している。そのため、研究のアプローチとしては、メディアのマイナスの面に注目することが多くなりがちではある。→テレビ、テレビゲームしかり。

    *8章
    ・たとえば社会観系資本をもたず他者との社会的つながりを失った孤独な状態は、喫煙に匹敵するほど死亡率への影響が大きいことなどがパットナム(2000)によってデータから論じられている。また、社会参加や政治参加のレベルの高いコミュニティは行政の効率やアウトプットが高くなることも広く知られている(Putnam 1993)。
    ・一般的信頼感を高める必要性。
    ・池田(1997)の指摘…インターネット・メディアの特徴の一つに高いカスタマイズ性がある。→ここからオンラインにおける一般的互酬性と一般的信頼感は、インターネットの集合的利用によって醸成される。
    ・ときに異質な他者との遭遇を含むオンラインコミュニティ内での集合的なコミュニケーションを経験することで、オンライン上の一般的信頼感と一般的互酬性が高められるのである。
    ・一般的信頼感の高い人とは単なる「お人好し」ではなく、他者の信頼性を判断する材料に敏感なひとびとであるからだ(山岸 1998)。

    *10章
    ・インターネットユーザーは、非ユーザーより、対立する情報への接触も含めて広い幅の意見に接していることが明らかであった。
    ・デービス(2002)は、2000年のアメリカ大統領選挙でのインターネット利用を検討し、ネットを既存のマスメディアの延長や上からのビジネスモデル的な利用(キャンペーンサイトや政治広告的な利用)には、概して人びとをうまく引きつけられないことを指摘している。一方、下からの動員の仕組みには社会を変える大きな潜在力があると主張する。

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著者プロフィール

大阪大学大学院基礎工学研究科教授

「2001年 『新しい光の科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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