プロパガンダ:広告・政治宣伝のからくりを見抜く

  • 誠信書房
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感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784414302851

作品紹介・あらすじ

現代に生きる私たちは、大衆操作の企てや集団規模の説得の標的となっている。それらの圧倒的なパワーは、私たちの日々の買い物や選挙での投票や価値観に影響を与えようとしている。本書は、プロパガンダの歴史と社会心理にもとづきながら、私たちがそれらからいかに身を守るかを教えてくれる。

感想・レビュー・書評

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  •  プロパガンダとは「大衆説得の技法」のことである(9頁)。本書は,その名が示すとおり「ひとが説得されやすいのはどのような状況なのか」を社会心理学の知見に基づいて考察しているものだ。著者はふたりとも心理学者である。本書を読むと,相手の感情を刺激したり短絡的な思考を促したりするといったメッセージの伝え方次第で,メッセージの内容とは関係なく,送り手は受け手の信念や意見を変えられるのだということがよく理解できる。

     本書の目的は,本書で紹介された説得技法を用いてひとを説得するための「技術」を向上させること(営業成績を高めたり,社内で対立するひとの意見を封じ込めたりすること)ではない。そうではなくて,多くのプロパガンダが存在していて現実に頻繁に用いられているという事実を知り,プロパガンダが説得に有効である理由を理解することで,あからさまな説得から自分を守れるようになることである。多くの情報にあふれ,様々な説得術が不断に用いられている現代社会において,本書には一読の価値がある。

     本書の各節では具体的なプロパガンダの事例が紹介されている。例えば,ある商品を販売する状況を想像してみよう。この場合には,その商品の長所のみを強調するべきなのか,それとも長所と短所を説明した後に長所が短所を上回ることを説明するべきなのだろうか。このような事例紹介に次いで,説得がうまくいくための方法と,なぜ説得がうまくいくのかの理由が解説される。個人的には,解説の中で先行研究における実験結果が紹介されているのが有益だった。

     著者のひとりであるプラトカニス教授の研究テーマが多岐にわたるためか(経済詐欺犯罪,テロリスト独裁者によるプロパガンダ,マーケティングと消費者行動,そしてサブリミナル知覚),本書では非常に豊富な事例が取り上げられている。そのため,本書を読み進める中で自分の身近なケースに置き換えて納得できることが多かった。この点でも本書はおすすめできる。

  •  原著が出版されたのは1992年だが、紹介されている技術や心理効果は現在でも十分通用し、また世界中で利用されている。もちろん全ての手法が対象によって有効になることも無効になることもありうる、とも解説している。
     広告術・宣伝術はカラクリさえ理解すれば誰でも使える技術だ。本書を読んだ結果、世の中をシニカルに眺めるようになっただけではもったいない。上司・同僚・部下や友人知人などの人間関係、商品やサービスの売り込み、就職活動の自己PR、つまり自分自身の売り込みなどにこれらの技術を利用しないでどうする。
     名も無き「無知な大衆」のままではなく、名も実もある「個人」として、プロパガンダに利用されずにプロパガンダを利用する。それこそ、広告、宣伝、PR、つまりはプロパガンダに溢れた現代社会を生き抜くコツの一つではないだろうか。

  • かなりの名著。

    20年ぐらい前に書かれたとは思えない。
    今でも通用する技術がかなり載っている。


    プロパガンダとは

    このプロパガンダという語が使われるようになったのは比較的最近のことで、グレゴリウス15世が1622年に仏教聖省を創設したときである。
    当時、ローマカトリック教会は、武力で忠誠を再構築しようとする勝ち目のない聖戦を戦っていた。
    教皇グレゴリウスは、こうしたやり方が無駄骨を折ることに過ぎないと言うことに気づき、人々の教会の教義を「自発的」に受け入れるようにする手段としてこれを創設したのである。
    したがって、プロパガンダと言う言葉は、プロテスタントの国々では否定的な意味合いを持っているが、カトリック地域では(教育は伝導と同じように)肯定的な意味を持っている。
     プロパガンダという語がよく使われるようになったのは20世紀の初頭で、第一次世界大戦中および後の全体主義体制の中で使われた説得技法を表す言葉として用いられた。
    最初、プロパガンダは、主として嘘や騙しによって偏った考えや意見を流布させることと定義されていた。
    しかし、学者がこの問題を詳細に言及するようになると、プロパガンダは「悪魔」や全体主義的国家の所有物であるばかりでないこと、賢いだまし以上のものを持つことが多いことが認識されるようになってきた。
    そして、プロパガンダと言う言葉は、シンボルや個人の心理を操作することによる大衆(暗示)や大衆説得を意味するようになった。
    プロパガンダは特定の観点を受けてに伝達することであり、その最終的な目的は、受け手がその立場があたかも自分自身のものであるかのように「自発的に」受け入れるようにすることである。

    そういうことらしい。


    長々と書いたが、この本の内容は
    なぜ、どのようなときに人は説得されてしまうのか?ということだと思う。

    結構厚い本なので時間がかかると思うが、章ごとに興味のある所だけでも読んでみても充分楽しめると思う。

  • プロバガンダとは 大衆暗示、大衆説得のこと

    大衆説得ノウハウとして、無思慮化、合理化の罠の仕掛け、言葉の曖昧化、レッテルや名前つけ、質問による方向づけ、おとり、事実もどき、伝達者の信ぴょう性、ヒューリスティック、反復、対立する立場の反駁、恐怖アピール、連携体づくり、罪悪感による説得、小さなコミットメント、希少性心理

    営業マン時代は 知らぬうちに 使っていた

  • 宣伝、広告のからくりを解説し、その罠に陥らないように警告する内容です。
    中でも、「カルト教団の教祖になる方法」は、マルチ商法対策にも応用できそうです。

    1.この本を一言で表すと
    ・大衆扇動や策略を見破れるようになってほしい

    2.よかった点を3〜5つ
    ・29 サブリミナルの魔術
     →科学的根拠がないことは知らなかったし、意外

    ・35 カルトの教祖になる方法
     →「洗脳」の具体的な方法が理解できた

    ・9 おとりの力
     →家探しの時に、この方法を受けたので、不動産業界ではよくあると思います
     →科学的根拠がないことは知らなかったし、意外

    ・12 チャンピオンが口にするものを食べる
     →出版デビュー時に、マゾンキャンペーンと称して、ランキングを上げるために本の販促を短期決戦的に行うのがこれかと思います。

    ・37 ペイソの子孫たち
     →大衆の無知化、無知の悪循環に警鐘を鳴らしている


    2.参考にならなかった所(つっこみ所)
    ・影響力の武器と重複する部分があった
    ・ネット社会特有の宣伝説得の手法があると思うが、それらのことについて書かれていない(出版年からして仕方ないが。。。)

    3.実践してみようとおもうこと
    ・子供を説得させる
    ・会社で、他部門にお願いするときに、意見の食い違いの程度を見極める

    4.みんなで議論したいこと
    ・身近に起こった出来事や経験で、この本に書かれている手法が使われていた例を教えてください

    5.全体の感想・その他
    ・宣伝、説得について、それらの具体的知識を得ることが、逆の立場である情報の送り手になる時にも重要、という主張には納得感がある。

  • 読了日 2022/08/14

    『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』(Dain)で紹介されていた本。図書館で借りて読了。
    訳本の出版が1998年なので、もう25年ほど前になるが、内容は今でも通ずるところがあり大変参考になる。
    強いて言うなら、この時代よりずっと「発信者」のあり方が多様になっているので、マスメディアの欺瞞に民衆が食って掛かることができる一方で、玉石の石がクソほどにも流通する世の中になっているために、より気を付けて情報に当たる必要がある時代である、という感じか。

  • 世の中、表出しているものはほとんどが嘘だということが分かってしまう本・・・わりとやる気がなくなった・・・

  • 図書館で借りた。
    プロパガンダと聞いて、政治的だったり、洗脳的だったり、おどろおどろしい印象を受けて本をめくったが、読んでみると「広告・マーケティング」に関する教科書的な内容だった。逆に言えば、教科書的な手法で気付かぬうちに洗脳されてしまっているのかもしれない、と感じた。

  • 一回読んだだけでは部分的になるほど〜と感じる事はたくさんありましたが、全体を理解するというのが難しかったです。

    なるほど〜と思ったことに関しては、とても良い内容でした。日々のニュースの内容がすごく偏っているので、「マスメディアが取り上げる問題と視聴者が考える問題がある程度一致する」というように、マスメディアに操られているなというのはよく分かりました。
    さらに、ボクシングの試合の後は殺人が増えるなんていうのも、マスメディアによって影響を受けてるんだなと感じました。

    全体的はちょっと難しかったです。


  • フット・イン・ザ・ドア・テクニック
    →小さなコミットメントを行うと、同じ方向へのコミットメントを続ける可能性が高まる。小さな恩恵は、さらなる大きな恩恵を与えることに同意させる。

    ドア・イン・ザ・フェイス
    →質問者になる大きな要望を断って、次に小さいことへの要望を行うと、最初に断った罪悪感から、受け入れを許可する傾向にある。
    自分へのいいイメージを維持したい考えが働く。

    まさに、東京オリンピック実施もG7で主張までして、
    心情的にも小さいコミットから、やらざる終えない状況になってきている状況かと考えられるな。(ベトナム戦でも悪化する事は分かっていながら、軍を維持する為にも後に引けない状況だったと書籍に書かれている)

    そこで、著者は、
    尊重に値しないコミットメントを決して尊重しない事が、常に最も尊重すべき行動であると書かれている。


    希少性は心に好意を生み出す。
    ヒューステリックが生じ、少ないからきっと貴重価値があると錯覚してしまう。供給者はこれを自由に調整出来るから、プロパガンダとして、無限の可能性がある。
    ※コンピューターの専門家は発表されたにも関わらず、販売されない製品のことを、ベイパーウェア(Vaporware)と呼ぶ。

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