- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784414311129
感想・レビュー・書評
-
本書は、「心理学叢書」というシリーズの一環として誠信書房という出版社から出版されているもの。数人の学者によって執筆されたものを、楠見孝という京都大学大学院の教授が編集をされた本である。日本心理学会が監修をしており、基本的には、表題となっている「なつかしさ」について心理学的に説明をした学術書だ。たまたま、私自身の子供時代から今に至るまでの回想的な文章を書く機会があり、その時に、昔のことを懐かしく思い出したのだが、そもそも、「懐かしさって何だろう?」と疑問に思ったのが、本書を読むきっかけとなった。「なつかしさ」とか「ノスタルジア」とかと呼ばれるものの研究は、まだ歴史的には新しい分野であるとのことであるが、こういったことを学術的に研究されている方々がおられるということに、まずは、新鮮な驚きを感じた。
レトロな街並みを再現した催しや、あるいは、それを観光地的に仕立てたりした場所が話題を呼んだりすることがある。また、「Always 三丁目の夕日」という昭和30年代の東京を描いた映画が少し前にヒットした。また、随分以前にヒットした曲を使ったコマーシャルをよくみかける。これらは、「なつかしさ」をマーケティングに応用している例である。
心理学的な多くの実験によって、「なつかしさ」が持つ機能的な特徴がいくつか明らかになりつつある。例えば、現実のつらい気分を忘れたり、過去のつらい記憶をポジティブに変化させ、幸せな気分を高めたりする効果があるとされている。これらの効果は、「なつかしさ」を惹起させる対象への好感を呼び起こすと言われている。すなわち、なつかしさを惹き起こすものを使った広告は、その商品に対する好感度を増す可能性があるので、このようなマーケティングが行われているのである。
上記した通りの回想的な文章を書いているときに、私自身としては、何故かポジティブな気持ちになっているように感じていたのであるが、それは、実験的にもおかしな話ではないというか、むしろ、自然なことだということが分かり、この「なつかしさ」あるいは「ノスタルジア」に、更に興味が湧いたところである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2022,14 図書館
懐古厨な自分について深掘りするために。
予想以上に実験結果を基にした論拠が多く読みづらい部分も多かったが、その一方エビデンスに基づいた様々なノスタルジアの側面を知ることができた。
詳細はiPhoneメモに記した
過去を懐かしむことと未来を想起することが神経的にもリンクしていることが1番の気づきだった -
複数の研究者が共同で書かれているので、細かな定義が異なるけど面白かった。
過去をなつかしむことで、今の孤独を癒して未来への行動の判断材料とするという点は目から鱗だった。
あと、過去をなつかしむトリガーが否定的感情が最も多いというのも面白い。やたら思い出話をする人は今寂しいんだなと温かい目で見れるようになりそう。