タヌキ学入門: かちかち山から3.11まで 身近な野生動物の意外な素顔
- 誠文堂新光社 (2016年1月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784416115473
感想・レビュー・書評
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我が家の猫がタヌキに似ている···という、わりとしょうもない理由で読み始めたのですが、おもしろかったです。
タヌキの糞の組成からタヌキが植物の種を運ぶ役割を考察したり、東日本大震災の被災地に戻ってきたタヌキに回復の兆しを見たり、と生態に関する話題も興味深かったですが、人間がタヌキに対して抱いているイメージについて書かれているのもおもしろかったです。
タヌキというと、おっとりとしたイメージもある反面、「タヌキおやじ」なんて言葉もありますが、なぜそんなイメージが生まれたのかをタヌキの見た目や行動から考察しています。
ちょっと無理矢理かも···と思う部分も少しだけあるけれど、生物学者がタヌキ像を掘り下げていくのは新鮮でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
父からもらった
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以下はメモ。
「高速道路の野生動物の交通事故死亡ではタヌキが一番多く、40%にもなるという」
「タヌキの事故死亡数は高速道路だけで年間1万頭になり、一般道を含めれば11万頭から34万頭にもなると推計されている(佐伯、2008)」
「東京都町田市と隣接する神奈川県相模原市では毎年300頭もの動物が犠牲になり、そのうち47%がタヌキ、39%がハクビシン」 -
2018.4.12読了。
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タヌキって身近なのに、以外と知らない。
タヌキとキツネの輪郭変えずに模様変えると横顔だけだと、タヌキがキツネに見えてくる、などイラストも楽しい。短足で秋になると丸々と太り、腹が地面につきそうに。糞の分析でタヌキの1年の生活がしのばれる。身近にあるもの割と好き嫌いなしに食べて、タヌキが特殊化せずに、都市化にも柔軟にたくましく生きている姿が頼もしかった。
改めて、愛すべきタヌキ。タヌキがのこのこ歩きまわれる日本でありたいと願う。 -
本一面タヌキタヌキとタヌキがゲシュタルト崩壊。タヌキが普通に生きていけるような里山が残っていったらいいのになあ。
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誠文堂新光社のこのシリーズは文章の量と図版の量のバランスがとても良く、読みやすい。
タヌキはキツネと並んで、日本人にとって特別な動物であり、三鷹辺りの住宅街でも生息しているらしいから、野生哺乳類の中では一番身近な動物かもしれない。(鼠はもっと都心でも生息しているけど、あれは野生とは言わないよね。)
この本で一番感銘を受けたのは、震災の後タヌキが戻ってきて植生が豊かになったというところ。そして愚かな人間がせっかくタヌキたちが作り出したものを引っこ抜いて防潮堤を作ってしまうところ。
こういう人間の愚かさにはいつもガッカリさせられる。自然界で生きるものたちはこんなことは決してしない。
タヌキが暮らせるような自然があるところが、人間も心地よく暮らせる気がする。
いい本だけど、ちょっと欲張りすぎて調査不足になってしまったところも。
狼のお腹に石を詰めて井戸に投げるのは、「赤ずきん」ではなく、「オオカミと七匹の子やぎ」だし、タヌキとアナグマの味については千松信也の本に詳しいが、肛門腺の処理を誤るとどんな肉も臭くて食えないということは、狩猟系の本には必ず書いてあることで、タヌキの肉が不味い理由にはならない。
まあ、著者は生態を研究する学者だから仕方ないけど、専門でないことを書くなら、ちゃんと調べてからにして欲しい。 -
著者は、タヌキをはじめとした日本人になじみの動物たちの生態の研究者。
昔話に取り上げられるタヌキをキツネの比較や、設楽焼のタヌキ、タヌキ寝入りやタヌキ親父などの言い回しなど、親しみやすい取り上げをしているが、地道なフィールドワークによる食生活の調査なども面白い。
311のタヌキへの影響などにもおよび、写真も多く広範囲で興味深い。