シュガーな俺

著者 :
  • 世界文化社
3.18
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本棚登録 : 102
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784418065325

作品紹介・あらすじ

異常な喉の渇き、原因不明の激ヤセ、全身の倦怠感。著者自身が糖尿病治療のため、入院した経験にもとづいて執筆した世界初の糖尿病小説。

感想・レビュー・書評

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  • こういう体験を小説にして届けてくれることは、嬉しい。

  • 自分は1型糖尿病です。
    1型が出てくると聞いたので、読んでみた。

    これは、面白い!
    主人公は2型糖尿病から1型糖尿病になってしまう
    緩徐進行1型糖尿病で、自分とは発症の仕方が違うんだけど、
    きっとシュガーな人なら誰もが共感してしまうシーンが盛り沢山。
    周りの人たちの反応、自分自身の感情の揺れ…
    リアルに発症時の事が思い出される。
    最近のだらけた生活を見直さなきゃと…。
    今回は図書館で借りて読んだけど、
    また読み返したいと思うから、自分でも買っておこうと思う。
    タイトルも良いなぁ…て思ったけど、
    最後の1行は秀逸。常に忘れたくない言葉。

    そそ。
    本の中では、食前30分前にインスリンを打っているけど、
    現在は超速効型のインスリンがあり、
    大体は食前に打てば良いので、今はもっと楽。

    んー、シュガーじゃない人がこの本を読んだ時、
    面白いと感じるのか分からないけど、是非、読んでもらいたい。

  •  不思議な作風で知られる作家・平山瑞穂が2006年に発表した小説。

     マーケティングリサーチ会社に勤務しながら小説家を目指している33歳の片瀬は、自身の身体の異常に気づく。倦怠感、喉の渇き、体重の減少。まだ若いからと自分でも目を背けていたのだけど、この病的な状態から推測される病名は、糖尿病。
     病院で正式に診察を受けた日から片瀬の糖尿病との闘い…いや「つきあい」が始まった。妻である奈津との二人三脚の日々。糖尿病への理解を深め、糖尿病との生活にも慣れたかた思われた頃、さらなる試練が片瀬を襲う。

     帯には「世界初の糖尿病小説!?」のキャッチフレーズ。2003年に著者自身が糖尿病を宣告された際の経験をもとに書かれた自伝要素の強い小説(オートフィクション)。恐らく書かれていることのほとんどは実際にあった出来事や本当に感じた気持なのだろうなあと思う。
     電子書籍@niftyにてネット連載され、その頃から糖尿病体験を持つ読者(「シュガーフレンド」というらしい)から大きな反響を得ていたようだ。

     僕はこの小説を読んだ時、全然ジャンルもカテゴリも違うんだけど、2008年に公開された矢口史靖監督の映画『ハッピーフライト』を思い出した。何故か。
     様々な批評やレビューで指摘されている通り、『ハッピーフライト』の映画としての醍醐味はその細やかなディテールの描写にある。というか、実はそれがメインである。一応ストーリーもあり手に汗握るクライマックスもあるのだが、監督が描きたかったのは恐らくこれらではなく、飛行機が空港を飛び立ち着陸するまでにどのような事が現場で起きているのか、というディテールそのものだ。これら細部の描写を丹念に積み重ねていくことで映画を成立させているのだ。
     そして本書『シュガーな俺』にも似た印象を受けた。糖尿病とは何なのか。糖尿病患者はどのような生活をしているのか。これらの描写で本書の大半は占められている。そして驚くべきことに、これが実に面白い。
     『ハッピーフライト』の矢口監督は、取材の過程で筋金入りの飛行機オタクになってしまたらしく、飛行機や空港の一般人には見えない裏側でどのような事が起きているのかに真剣な興味を持ち、本気のリサーチで驚異的なリアリティとディテールをフィルムに映し出した。
     そして平山瑞穂は恐らく、自身が糖尿病を宣告されて以降この病気のことをそれはもう詳しく調べたのだと思う。そしてこの病気の様々な側面を知ることで、作家としてどうしようもない「面白み」を見つけたのではないか。ありていに言えば、いい「ネタ」を発見したのだろう。食事制限、インスリン、周囲の偏見…。自身の生活体験を小説にフィードバックさせていく過程は、きっとしんどかったと思うが、それでもこの病気の詳細を小説化していく作業は興味深いものだったのだろう。

     だから、糖尿病というものが何なのか知るのにどんな専門書よりもこの小説は最適である。なにより物語なのだから読みやすい。主人公と同じ目線にたって、一歩ずつ糖尿病への理解を深めていける。
     糖尿病は病気というよりは体質で、一度罹ったら治ることはない。糖尿病には1型と2型があり、それらは別の病気と言っていいほど違うものである。そんな知識をこの小説で仕入れることができる。なぜインスリンを注射しなくてはならないのか。ちゃんと注射しなければどうなるのか。そんな我々の素朴な疑問にも片瀬は答えてくれる。

     作中で片瀬がしきりに語るとおり、糖尿病は決して中高年のみが罹る病気ではない。若かろうが30代だろうが罹ってしまうのである。僕自身、いつの間にか30代。しかもお酒も大好きだ。他人事ではまったくない。
     病院で入院する日々。食事制限しながら会社に通勤する日々。いろんな人と出会い様々な出来事が待ち受ける。ラスト、片瀬を待ち受ける運命は。月並みだが、明日は我が身である。疑いがある人も含めて全国に2,210万人いるという糖尿病患者(厚生労働省HPより)。特別な病気ではない。

     だから、まあ何事だってそうなのだけど、重要なのは正しい知識を身につけることと、理解を深めること。そうすれば自身が罹った場合だけでなく、周囲に糖尿病の人がいた場合も接し方の役に立つだろう。
     そして知識と理解を身につければ、たとえ罹ったとしても絶望せずに、ありのままを受け入れて前向きに生きていける。作者が発しているメッセージは、つまりそれなんじゃないか、と思う。実体験を持つ作者の言葉だから心に響くのだ。

  • 表紙で選んで負けた。糖尿病日記って感じ…?求めているものと全然違ったから面白いとかいうレベルじゃなかった。

  • 『世界初の糖尿病小説』らしい。糖尿、こわいこわい。
    ほんとに病気になってみないと健康のありがたさに気づかない人間は愚かな生き物です。
    食べることだけが生きがいなので、普段の食生活は気をつけないとね。

  • 糖尿病って怖いよね。。。と思わせての
    以外に明るい(開き直った)終わりに少し安堵感。

    糖尿病家系の私には人事じゃないのよね。

  • 著者の実体験をベースにした糖尿病闘病&成長記。前向きなエンディングで◎。それにしても糖尿病とはなんと恐ろしい病気なんでしょう。俺も気をつけなくっちゃ。

  • 名前から著者は女性だと思っていた。糖尿病について書かれているが著者自身の経験に基づいて執筆されたらしい。なかなか面白かった。最後の一文、「そう、僕の人生は、十分に甘い。」が読んで納得できた。他の作品も読んでみたい。2010/1

  • 糖尿怖い
    我が事務所のトップも糖尿持ち
    食事制限が辛いよね
    甘いものと酒・・

  • 糖尿病こええ
    そういうオートフィクション

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著者プロフィール

平山瑞穂(ひらやま・みずほ)
小説家。1968年、東京都生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年に『ラス・マンチャス通信』(角川文庫)が第16回日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー。著作には、『忘れないと誓ったぼくがいた』(新潮文庫)、『あの日の僕らにさよなら』(新潮文庫)、『シュガーな俺』(世界文化社)、『プロトコル』(実業之日本社文庫)、『マザー』(小学館文庫)、『四月、不浄の塔の下で二人は』(中央公論新社)、『午前四時の殺意』(幻冬舎文庫)、『ドクダミと桜』(新潮文庫)、『さもなくば黙れ』(論創社)など多数。評論に『愛ゆえの反ハルキスト宣言』(皓星社)、エッセイに『エンタメ小説家の失敗学』(光文社新書)など。

「2023年 『近くて遠いままの国 極私的日韓関係史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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