カウンセラーへの道:訓練の実際

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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422110806

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  • ・カウンセリングとは、どのような人に、どのような目的で、どのように行われるのだろうか。一般には、悩みのある人、神経症の人に対してなされる。神経症とは、心の原因によって生じる(心因性)心身の機能障害と定義される。一番広い意味で、悩みや神経症を述べると、「分かっちゃいるけど止められない行動」と「分かっちゃいるけどできない行動」である。すなわち、「食べたいのに食べれない。眠りたいのに眠れない。学校へ行きたいのに行けない。話したいのに話せない。人と交わりたいのに、交われない。勉強したいのに出来ない。がんばりたいのにがんばれない。生きたいのに生きれない。しかし、身体は別に悪くない」などの、気持ちに陥ったり、実際にできなかったりすることである。
    どうして身体(器質)に異常がないのに機能に障害が出るのだろうか。この「どうして」に対する答えが、それを考えた人の人間論になり、そこから治療論が生まれ、具体的な治療方法が生まれる。

    例えば、煙草を吸う人に「どうして身体に害のあるものを吸うのですか」と聞いても、「気分が落ち着くから…」のような表面的な答えしか返ってこない。さらに、「気分を落ち着けるために、健康を害しても良いのですか」と突っ込めば、質問された方は、答えようがないだけに、それこそ気分を害し、一服吸いたくなってしまう。煙草を吸う人は、「分かっちゃいるけど止められない」のである。だから、常識的枠組みを変えられない人は、カウンセラーにはなれない。

    「どうして行きたいのに行けないの。学校で何かあったの。どうして学校へ行く前になるとお腹が痛くなるの。ほかの皆は行っているのに、どうしてあなただけ一人行けないの」と、「どうして」を直接相手に聞く人は、カウンセラーにはなれない。なぜなら、クライエントに真の理由が分かったら、真の理由が心に納まったら、登校拒否を起こさないで済むからである。「どうして」をその人と共に考えるのがカウンセラーである。クライエントが自分の心の中に真の「どうして」を見つけ出し、それをのりこえるのを助けるのがカウンセラーである。

    常識では捉えきれないものを、捉えようとすると、カウンセラーの心の中で何かが変化しなければならない。人の心が分かるためには、自分の中に生じる「分からないもの」の中に、実は、自分自身の存在の一部が隠れていることに気付かねばならない。自分にあるものは、形は変わっているかもしれないが、他人のなかにもあることを知る必要がある。これがある種の共感性である。

  • ロジャーズから直接教えを受けたという大先生。事例の逐語記録がなかなかシュール(笑)

  • 【出版社による内容紹介】
    カウンセリングとは何か。カウンセラーとしての資質を伸ばすにはどんな訓練が必要なのか。感受性訓練の方法、ロールプレイの具体例など、実際訓練をコンパクトに紹介。

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著者プロフィール

京都大学名誉教授

「2020年 『[新装版]カウンセリング辞典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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