心理療法入門―理論統合による基礎と実践

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著者 : 古宮昇
  • 創元社 (2001年3月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422112602

心理療法入門―理論統合による基礎と実践の感想・レビュー・書評

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  • ☆4(付箋27枚/P406→割合6.65%)
    この方が主に準拠している心理療法の解説と、実践のためのワークなどがありとても参考になりました。
    特に最初の項で、そもそも秘密厳守はどの程度守るべきかとか、知人友人をクライエントに取るかどうかどのように判断するか、といったそもそもの話しをきちんと押さえている。

    また心理療法中に性的興奮を覚えたり魅力を感じたりすることは調査でも判明している(米国心理学会調べ)よくあることで、そこから性的関係に発展することは治療的にまず悪影響が及び、倫理的にも行うべきでないのだが、きちんと教育される、教えられることが少なく、中々備えができていない、というのはとても大切な論点だと思います。


    ***以下抜き書き**
    ・心理療法では、個人がもつ日適応的な感情・思考・行動パターンを変える援助をします。来談者が日適応的なパターンを身につけたのは、それが以前の環境においては適応的だったからでしょう。現在では日適応的になってしまったそのパターンも、以前の環境においては、心の痛みを隠し、傷つくことを避け、他人を動かし、親など他人から認めてもらい、受け容れてもらい、非難されないためにその人が取ることのできた最善の策略だったのです。

    ・「私が心理療法を始めたころ、自分の古い心の傷がパックリと開けられ、心の底に隠されていた感情が上がってきた。うつ病の人たちに対処するのが私にはとくに難しかった。それは、私自身が自分の打つ感情から逃避していたためだった。そんな私が来談者にしたことといえば、彼らを元気づけることだけ。私には、はたして来談者がよくなっているのか悪くなっているのか、知るすべもなかった。即座に結果が出ることを望んでいた私には、自分が有能な治療者になれるとは思えなかった。当時の私が気づかなかったのは、来談者には自分で答えを見つけだすために苦しみぬくことが必要である事実だった。来談者が早くよくなるのを見たいのは、私のほうだった。自分が誰かの役に立っていることを確認したかったからである。」―コウリー

    ・倫理には明らかな正答がないことが多いと言いました。秘密保持の原則もそのひとつで、私には「正答」をここで指し示すことはできません。ただ、倫理的ジレンマに陥ったときに心理療法家が必ずすべきことがあります。それは経験と能力のある同僚やスーパーバイザーに相談することです。そして相談過程(相談相手の氏名、日時、相談内容、アドバイスの内容、相談の結果)文書記録に残しておきましょう。

    ・米国心理学会会員を対象にした調査によると、回答者の8割以上が心理療法セッション中に恐怖、怒り、性的感情のどれかひとつ以上を経験したことがあると認めました。
    …回答者の87%は来談者に対し性的魅力を感じたことがあり、58%はセッションの最中に性的興奮を覚えた経験があることを認めました。また、心理臨床に従事する米国のソーシャル・ワーカーを対象とした同様の調査によると、男性の約9割、女性の約7割が来談者に対して性的魅力を感じたことがあり、そのうち約半数は来談者に魅力を感じた事実に対して罪悪感、不安、またはとまどいを覚えたと回答しています。

    ・すでに知っている人を来談者として取るか取らないかを決めるものさしとして、私はつぎの要因を考慮します。
    ㋐ 心理療法を求める人が、知り合いである私に自分の内面を話すことにどの程度心理抵抗があるか。
    ㋑ 来談者にきらわれたり、来談者を怒らせたりすることを私が恐れるかどうか。治療者が「こんなことを言うと友情にヒビが入る」などと心配していては心理療法はできない。
    ㋒ 来談者と私とに共通の知人がいる場合、来談者が私の臨床能力のあるなしを知人たちに話すことが十分にありうる。そのころによって仲間内での自分の評判が左右される可能性を私が恐れるかどうか。
    ㋓ 来談者と私との間に金銭的・社会的利害関係、または上下関係がないこと。たとえば、仕事の取引相手を来談者に撮ると、心理療法がうまくいくかどうかが仕事上の利害に響いてくる。

    ・私たちは、自分のもつ信念に合致する事実だけを記銘し、それに合わない事実は無視したりゆがめたりする傾向を大なり小なりもっていますが、来談者は「こう感じたりこう考えるのが自分のあるべき姿だ」という自己概念に合致するように、みずからの経験を取捨選択したり、歪曲したりしてきました。それが、安全な関係のなかで、自分のさまざまな経験を、自分にとって感じるままにオープンにそして正直に吟味しはじめます。

    ・「治療中に何を言うかはたいせつではあるが、治療関係のなかでの治療者のあり方のほうがずっと重要だ」

    ・「花子さんはなぜあんなに落ちこんでいるの?」
    「彼女、最近恋人にフラれたのよ。」
    「なるほど。」

    「一郎さんはなぜ機嫌が悪いんだ?」
    「会社をクビになったんだ。」
    「そうか、それでか。」

    上記のような会話は私たちの日常でよく交わされます。上の会話をしている人たちは、私たちの感情はできごとによって決められる、という前提に立って話しています。つまり、恋人にフラれる、というできごとが花子さんを落ちこませ、クビになった事実が一郎さんを怒らせたのです。しかし、論理行動療法の立場からは、この前提はとんでもない誤りです。できごとが私たちの感情を起こすことはありえません。私たちの感情を決めるのは、できごとについての私たちの信念、考え、解釈だと考えます。

    ・「僕が優しいよい子になれば、恐いお母ちゃんも優しいお母ちゃんに変わるはず」と考えるのも、他人を変えられるはず、という非現実的新年の例です。私たちが、「他人を変えられるはず」だとか、「まじないや占いによって未来が変えられる」と信じるのは、犯罪被害者を責めるのと同様、「自分はものごとをコントロールでき、安全なのだ」と信じたいからです。たとえば、二郎君にとって「僕が何をしてもお母さんは僕に暴力をふるうので、僕は無力だ」という事実に直面するのは、いまは耐えられないことかもしれません。そんな二郎君の援助者が何よりもまずしなければならないのは、心理療法ではなく、二郎君の安全を確保することです。

    ・私たちが自分にはきびしく当たるのは、「自分は他人よりほんとうは優れているのだ(優れているべきだ)」という優越幻想を守りたいからです。私は、ソフトボールの試合で、チームメイトがエラーをしても笑っているのに、自分がエラーでもしようものなら「なんであんなボールが取れないんだ!あれぐらい捕らないとだめだ、へたくそ!」と自分を責めてしまいます。それは、チームメイトはソフトボールの経験はあまりないからへたでもよいが、体育会系の経験のある私はほかの人たちより上手なはずだ、と思いたいからです。このように、他人にうまくいかないことがあると「だれにでもあることだよ」と優しい言葉をかける人が、自分の失敗には「私はなんてバカなの!」と厳しく当たるのは、「他人は失敗して当たり前だけど、自分はすべてうまくできるはず」という優越幻想があるからです。そして優越幻想にしがみつくのは、その底に自己不全感や劣等感があるからです。

    ・来談者が非適応的思考を身につけたのは、それが非機能的家庭環境に適応するための、子ども期における最善の手段だったからです。彼らは非機能的家庭環境のなかで身体的・心理的安全を確保し、愛情を得て、自己の価値を高めるためにさまざまな策略を身につけてきました。そしてかつては適応的だった策略にしがみつくせいで、現在ではかえって苦しみをつくりだしているのです。

    ・クライシス・カウンセラー(緊急事態に対処するカウンセラー)として働いていたときに、電話をかけてこられたある女性がいました。私は彼女の訴えをしばらく傾聴していましたが、彼女は突然「あんたのようなひどい人間はめったにいない。あんたは世のなかの大きな害だ!」と電話口で怒りだしました。彼女のそんな反応は、私に対する現実的な反応ではなく、過去のだれかに対する反応を私に置きかえたものでしょう。また逆に、感情的反応があってしかるべき場面で反応がないのも、たいてい転移反応です。私はあるとき、治療セッションの約束をすっぽかしたことがありました。しかし私にすっぽかされた来談者は、イライラも怒りも、がっかりしたようすもまったく見せず、ものわかりのよい、協調的な来談者を演じていました。それは転移反応です。

    ・内容は正しい解釈であっても、そのタイミングが早過ぎれば無意識的な防衛を招きます。転移反応を起こさざるをえないのは、その底に幼児的欲求が不充足である心の痛みがあるからであり、その痛みを経験する心の準備性が備わっていないときに痛みが喚起されそうになると、防衛がより強化されます。それでは解釈が治療の害になります。早過ぎた解釈に対する来談者の反応のなかで、害が最も少ないのは、解釈が誤りであると来談者が否定する場合でしょう(「いえ、父親を求めているわけじゃありません」)。しかしそうではなく、来談者の話が表層的になり、治療が進展しなくなる場合もあります(「ボーイフレンドがああした、こうした」という話や「恋愛とは何か」という哲学的な話など)。また来談者によっては、何の感情的体験も感情的理解もともなわないまま、解釈を理屈の上では受け容れ、賛成するかもしれません(知性化。例としては「私は父親の愛情を受けずに育ったから、父親のような男性を求めているに違いありません」と、感情的深まりのない洞察めいた理屈を語る場合)。

    ・読者の方々が小学生の太郎君に掛け算を教えていると仮定しましょう。あなたはこう教えました。「2×3とは、2が3つあるということ。だから答えは、2を3つ足して6になる。わかった?」
    この場面で太郎くんが、「先生の言うことを理解しているよ」とあなたに伝えるために、つぎの4段階の返答の仕方があります。

    ①単返答 相手の話を聴いていることを示唆するもっとも簡単な返答です。「うん」、「はい」、「わかりました」、「そうですね」、うなずく、など。
    ②くりかえし 相手の言ったことをおうむ返しに返します。「2×3とは、2が3つあるということだから、2を3つ足して6になるんだね。」
    ③言いかえ 相手が言った同じ意味の内容を、聞き手が自分自身の言葉を使って言いかえます。「つまり、2×3とは2+2+2のことで、だから6になるんだね。」
    ④先取り返答 相手が言ったことよりもさらに一歩進んだ返答をします。「だったら、2×4なら2が4つあることになるから、答えは8だよね。」

    ・ロールプレイ。3人1組になります。ひとりが傾聴者役に、そして残ったひとりが「悪い傾聴者」役になります。
    まず、来談者と悪い傾聴者とが向かいあわせに座ります。来談者は、自分自身を何かの動物か植物にたとえて話します。「私は犬です。私の飼い主はあまり散歩に連れて行ってくれないので困っているんです…」、「私は桜の木です。たくさんの人が私を見にきてくれるのでうれしいです。きのうも家族連れが私のもとで輪になって座り、…」などと自由に話してゆきます。来談者が自分自身を何かにたとえて話すことによってロール・プレイがやや間接的になるので、自分の内面を語ることへの抵抗が減り、自己開示がしやすくなります。また傾聴者役の人にとっても、来談者が動物や植物であれば、彼らの経験が簡単に理解できるかのような安易な気持ちにならないので、傾聴的・共感的態度が身につきます。

    ・「トイレはどこですか?」と尋ねられて、教える代わりに「トレイに行きたいお気持ちなんですね」と心理療法家が答えた、という笑い話があります。

    ・来談者があなたに怒ったときにまずたいせつなのは、来談者の怒りがどの程度まで現実的な怒りで、どこまでが転移なのかを推測することです。以下に述べる技法も、転移による歪曲がはげしい技法も、転移による歪曲がはげしい来談者には、効果を発揮しにくいでしょう。その場合には、とにかく怒りを十分に言語化させ、それに共感的に耳を傾けつづけることです。
    怒る来談者に対処する5つのステップはつぎのとおりです。(例えば『5つのステップ』なんてかっこいいこと言ってるけどこんなまやかしみたいなことが通用するもんですか!こんなの私はしんじないわ。と言われたとしたら)
    (1)相手の言うことに真実を見つける
    相手が言うことにわずかな真実を見つけ、それを言語化して返します。(たしかに、この技法が必ず効果を上げると断言はとてもできません。私たちが何を言おうが、究極的には、他人がどう反応するかはその人自身が決めることですから、私たちにはどうにもできないことはあります)
    (2)自分の思うことを伝える
    治療者の気持ちや考えをストレートに言語化します。(ただこの5ステップは、いままで多くの人々が取っていた対応よりは効果的な場合がある、と私は思います)
    (3)尊重を伝える
    相手を尊重している事実を言語化してストレートに伝えます。(あなたは、怒った人間に対応することの難しさを経験されているのでしょう。あなたの人間関係をよくする役に立てばよいと思い、この技法をお伝えしています)
    (4)共感を伝える
    相手の言うことに、言いかえの技法を使って反応し、理解を伝えます。また、相手が感じているであろう感情を言葉にして返します。(でも、ここに書いたことがどこかインチキくさく、こんなことだけで怒った人に対応できるとは、とても思えないのですね)
    (5)質問
    相手の気持ちや考えを、優しく尋ねます。(この技法の弱みは、どこにあるとお感じですか?)

    ・イメージ法。
    来談者は、通常なら症状が始まる場面に自分がいると想像します。つぎに、その場面にいながら症状をもっていない自分を想像します。治療者はそこで「何が心に起こってきますか?」もしくは「あなたの内側に反対する気持ちがあることを感じますか?」と尋ねます。
    臨床例をあげて説明しましょう。来談者は、「自分自身のことが好きになれない」という主訴で私のもとを訪れた、オペラ歌手をめざす20代の男性でした。彼は、自分自身に対してとても批判的で、とくにコンサートのあとは、自分の歌の出来がいかに悪かったかが気になり、暗く沈んだいやな気持になります。

    来談者 「コンサートのあとには、その成功を喜び、見にきてくれた人たちからの称賛の言葉をすなおに受け取れるようになりたいです」
    私 「静かに目を閉じてください。そして、いままさにコンサートが終了した直後にあなたがいる、と想像してください<通常なら症状が始まる場面>。
    できるだけいきいきと、いまのあなたの気持ちを感じてください。大きな会場、高い天井、ステージライトの熱、席から立って帰っていく人々、あなたはコンサートが成功したことがとてもうれしく、それを純粋に喜んでいます<症状がない状態>。
    あなたの周囲に何が起きていて、あなたが何をしているか、私に話してください。」
    来談者 (目を閉じたまま)「えっと…、ぼくは舞台からおりて、控え室へ戻ります。その途中、僕の先生が来て、みんな『よかったよ』って…。大きなコンサートのあとは、だいたいみんなそうやって喜んでくれるんです。僕も『うまくやれた』という満足感でいっぱいで、うれしくて…」
    私 「あなたのいまの気持ちによく注意を払ってください。内面の感情や考えをよく感じてください。何に気づかれますか?反対する気持ちはありますか?」
    来談者 「えっと…、<突然ハッとしたように>、もしだれかに、僕の歌手としての弱点を指摘されたらどうしよう!」
    私 「つまり、喜んでいるときにだれかに批判されるのはたまらない、ということですか?」
    来談者 「そうなると、とても無防備な感じ…なんだか恐ろしいです。」
    私 「つまりあなたは、『だれよりも先に自分自身を批判しておいて、他人から思いもかけなかった批判をされないよう、みずからを守っておくほうがよい』と言われているのですか?」
    来談者 「あっそうか!もしだれかに批判されたら『それは言われなくてもわかってる』と言い返せるから…ええ、そのとおりです。」<感情をともなった実感的洞察>

    この来談者とは、2週間後に次のセッションをもちましたが、自分自身につらく当たることは上記のセッション以来ぴたりとやんでしまったそうです。

    ・私たちは心に傷を受けると、それ以上は傷つかないために最善と思われる決断をします。たとえば、泣くことを叱られた子どもは、「もう決して泣くもんか。悲しみだって感じるもんか」と、それ以降は泣くことや悲しみを感じることを避けようとするかもしれません。また、願望や欲求が満たされずつらい思いをした子どもは、「もう何も欲しがったりしない」と心に決めるかもしれません。彼らにとっては、そうすることがその時点での最善の方法だったのです。

    ・エンプティー・チェア技法を提案するときには、私は「僕はこれをしたらいいかもしれない、と思います」と自分の考えをはっきりつ当てることにしています。エンプティー・チェア技法は、一見するととてもバカげているので、「これをしてみましょうか?」では押しが弱く、断られることが多いと思うからです。だからといって、「これをすると効果があります」などと効果を保証したりはしません。

    ・腹式で深呼吸するコツは、息を吐くときに腹の空気をしっかり吐き出すことです。そうすれば大きく深い呼気が自然に得られます。腹式呼吸ができない来談者は、両ひじが側頭部につくよう両腕をまっすぐ上げ、ひじを曲げて右手で左ひじあたりを、左手で右ひじあたりをつかみます。ここからさらに、両ひじを耳に押しるけるようにして、両肩と胸とに緊張状態を作ります。この状態で息を吸うと、自然に息はお腹に入ります。また、あおむけに寝転んで息をしても腹式呼吸ができます。

    ・喪についての誤った考え。
    ①喪失の悲しみに向うよりそれから逃れるほうがよい。
    私の父親が死んだとき、葬式の席で「しっかりしなさいよ。ねっ、わかった?気を落とさないで元気をふりしぼって。がんばって」と参列者のひとりに励まされたことがありました。その方は善意で励ましてくれたのですが、励まされた人は、「悲しむのはよくない」というメッセージと受け取りかねません。Wordenによれば、ヘレン・ケラーはつぎの言葉を残しました。「向こう側に行く唯一の方法はドアを通りぬけることです」。この言葉は、喪の仕事の性質をの実に言い表しています。喪失の悲しみを乗り越えるには、悲しみぬくことが必要です。その悲しみを避ければ避けるほど、喪失の事実を受け容れるのが困難になり、喪の仕事が進みません。
    ②涙を見せるものは弱いしるしだ。
    ③喪の仕事の目的は悲しみをなくすことである。
    来談者が喪の仕事を恐れる理由のひとつは、喪の仕事を完了したら「愛する人のことを忘れてしまう」とか、「愛する人のことを惜しむ気持ちがなくなる」といった考えにある場合がしばしばあります。それは誤解です。藻の仕事の目的は喪失を忘れることではなく、喪失の事実を受け容れることです。喪の仕事が完了しても、失った人のことを想うときには悲しみや懐かしさを感じるでしょう。しかし、その悲しさのために人生全体が暗くなったり、行動や態度が、悲しみに引きずられ悲しみに左右されることはもはやなくなります。

    ・来談者はつぎの事項を知っている必要があり、それらを理解していなければ、治療者が言語化して伝えます。
    「話す内容については、来談者にとってたいせつなことや、その場で思いつくことを自由に話せばよい。」
    「感情を行動化せず言語化する(これは心理療法には必須です)。」
    「治療者に対して抱いた感情や考えを話すことはとても重要である(転移を治療的に扱うため)。」
    「治療者は、安全で信頼に基づいた治療関係を構築したいと願っている。」
    「秘密保持の原則とその限界」

    ・藤山直樹氏はスーパーバイザーとしてつぎのように述べられました。「大事なことは、質問しないことであり、質問する代わりに解釈することです。一番重要な臨床素材は、わからないという感覚をクライエントが治療者のなかに押しこんでくることです。この臨床事実に対して質問するということは、その臨床事実を取り扱わないで、わからないという事実に振り回されての行動化なのです。セラピーとは、だから、臨床事実自体を解釈して触れることです。解釈は、クライエントをホッとさせるものなんです。」
    このように、治療者が質問を連発するかわりに、「わからない」という気持ちを来談者が治療者のなかに引き起こさせていることの意味を共感的に解釈するためには、治療者が内容だけに拘泥せず、過程を見渡していることが必要です。「セラピストは、わからないことを質問する代わりに、クライエントがホッとする解釈をすべきである」とは含蓄の深い言葉だと思います。

    ・治療セッション中には、来談者は自分自身のことを話すのに夢中で、治療者について尋ねたり(ところで先生も関東の出身ですか?)、知的で抽象的な質問(ユング派の心理治療はアドラーとどう違うのですか?)などしようとも思わないのが普通です。ですから、来談者がそういった質問をするのは話すことに没入していないサインです。つらいできごとや気持ちなどを、思いつくまま自由に話し感じることを恐れているのです。

    ・自殺の意思については、「自殺を考えていますか?」とストレートに尋ねることがたいせつです。「自殺なんか話題にすると、かえって自殺の意図をあおるのではないか」と心配する人がいますが、人間は、だれかが自殺の話をしたからといって自殺を実行したりはしません。それどころか、自殺というトピックでさえためらわずもちだす治療者によって、「ここはほんとうに何でも話していい場所なのだ」と来談者が感じ、気が少し楽になることもあります。
    …「自殺したい」と訴える来談者は、もちろん本気で自殺を考えていますし、実際に自殺を図る可能性がありますが、その一方で「ほんとうは生きたい」と訴えてもいるのです。彼らは、「ほんとうは生きたいし、自殺はしたくないけど、死ぬしかこの苦しみを止める方法が見つからない」と訴えているのです。

    ・「洞察を理想化し、行動面での変化を軽視する治療者による治療は、よりたいへんだし長引くだろう」

  • 第1部 心理療法の基礎(理論統合アプローチ
    心理療法の効果
    心理療法家になること
    心理療法における倫理)
    第2部 理論(来談者中心療法
    論理行動療法
    問題解決志向短期療法
    家族システム論
    精神力動論)
    第3部 技法と実践(心理療法技法
    治療過程を促進する諸技法
    喪と喪失の心理療法
    心理療法の実践
    幸子さんの事例)

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