プロカウンセラーの共感の技術

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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422115801

作品紹介・あらすじ

相手の気持ちに寄り添った温かい人間関係を築くためには、相手への深い共感が欠かせない。人の話を聴くプロのカウンセラーは、どのようにして相手への共感を自分の中に生み出すのだろうか? 本書は、共感とは何かをわかりやすく説くだけではなく、愚痴の聴き方からネガティヴな感情との関わり方、対立する相手への共感、言葉を使わない共感の伝え方など、プロカウンラーならではの技の数々を紹介する。ベストセラー『聞く技術』に続く、豊かな人間関係を築くための一冊。

感想・レビュー・書評

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  • うつ病からの寛解を勝ち取った今、願っていることがある。
    この経験を人のため、社会のために活かしたいということだ。それには、病気に対するきちんとした知識を身につけたい、と思っている。

    リワークプログラムに通っている時にある心理士のスタッフから言われた。
    「皆さん方は、下手な医者や心理士より、メンタルヘルスについての専門家です。病気の辛さと回復する感覚を、実感として持っているから」

    題名にある「技術」という表現は、誤解を招くかもしれない。しかし、きちんとした「技術」なく対話の現場に出れば、大火傷をしてしまう。

    共感とは、優しい癒しのイメージで捉えらがち。しかし、それは勇気の挑戦であり、一種の賭けでもあると著者は語る。

    疲れるし、エネルギーも使う。
    だからこそ、報われた時の喜びも大きいのだと。

    「苦しみは分け合えば半分になり、喜びは分け合えば倍になる」

    心は工なる画師の如し。
    対話によって、共感によって、自身を見つめ、心を通わせる。

    多くの現場を踏んできた著者のわかりやすい具体例の数々。
    知恵は現場にあり、だ。

  • 共感というテーマに絞られており、細かな技法が沢山提供されるのがよかった。
    たとえば反射のやり方にもさまざまなパターンがあるというのはとても示唆的で、そのような細かな掘り下げはカウンセリング的な対話術全般を扱う類書には見られないものだった。
    また、自分の精神と向き合う際のやり方についての言及も散見された。こちらは、思い悩んでいる依頼者へのアドバイスとして直裁的に役にたつだろう。
    読了してよかった。

  • 平易な優しい言葉で書かれていて、文章の感じがとても好きでした。
    共感しすぎてしまう時についての章が、今の自分にとって、とても参考になりました。
    高齢だったり、困難な状況で支援につながる方の書類を毎日見たり、聞いたりしていると、私も人ごとではないので、その人になった気がして、その一番苦しい箇所で共感して、ぐっと固着してしまう、そういう毎日があったのですが、文を読んでいて、少し視点が広がり、呼吸が深く安心する感じがしました。
    また、認知行動療法を自分でやる時の、見方の広がりの参考にもなりました。
    折にふれて、読み返したいです。

  • 自分と向き合うことに手を貸してくれる本。
    実際に著者と言葉を交わしているわけではないのだが、彼の眼差しや温かさが伝わってくる気がする。よくもここまで書いてくださったと思う。
    恐らく、タイトルにある「技術」とは、広い見識や深い思索といった目に見えない「人間性」が伴ってこそ、完結するのだろう。一生「完成」を目指し、向上し続けるとも言えるが。

  • 個人の境界をしっかり認識することで共感は高まる。
    とは奥深いと思った。

  • 共感、とても深く
    大切なものでした。
    学び直すためにいつか
    再読します。

  • プロのカウンセラーが日々の仕事の中で得た知見を分かりやすく開陳してくれた貴重な本である。
    カウンセリングで大事なのは、傾聴と変化である。結果と言い換えてもいい変化を意識しすぎると、傾聴による信頼関係が弱くなり結局変化しないという結果になりがちである。そういう豊富な事例からTIPSとしてまとめたのが本書である。
    また、相手に共感しすぎていると見えることも、ある狭い範囲に固定して共感しているに過ぎない場合が多い、という知見はハッとさせられた。共依存もそうだが、視野狭窄になってしまうと変化しにくくなる。しっかりと共感をした上で、立ち位置を変えてより広い範囲を見ることで別の解決方法も見えてくる。これがカウンセリングの本質なのだろう。
    人間関係苦手だとする人、なぜか人間関係が上手くいかないと思っている人は読んでみるのも良いかもしれない。

  • プロのカウンセラーの共感の技術】
    教師や子どもと関わったり人と関わったりするすべての人に必須の本です。
    私が、誰かと話をしていて「残念だな」というか「悔しい」と思うのが、
    しゃべっている時に話を遮られたり、
    「それ違う」と否定されることです。
    あるいは、
    自分の課題に入ってこられて、「つまりそれってこういうことだよね。こうするべきなんじゃない」と頼んでもいないのに解決されようとすること。
    全て「善意」なのかもしれませんが、
    それをされるとカチンとくる。
    絶望的な気分になる。
    それは、自分の話を聞かれていないというか、受け止められていないんだな、というふうに感じて哀しいわけです。
    抜けない釘が心に刺さったみたいないやーな感じが続き、
    イライラが治らず、
    心の中で相手を裁いてしまっている心の狭い自分に対しても自己嫌悪が続き、、、となる。
    「どうせわかってくれない」。
    ここまで書いて、
    「うわーーー!これやっちゃってる!自分やわ!」
    と思い当たっている方もいるかと思いますが、
    そこはどうか自分をお責めにならないでください。
    これって、練習と技術でかなりうまくいくものなのです。
    結局、問題のヘッドピンはどこか、人が一番求めているのは何かというと、
    「共感してもらえること」なのです。
    「受容してもらうこと」なのです。
    「ジャッジせず、価値判断を交えずに受け止めてもらいたい。」
    答えを出してもらえるとか、問題を解決してもらうことは、その後なんですね。
    というよりも、「心から受け止められた」と感じることから自動的に変化、変容は始まっていきます。
    そのための技術の一つとして、
    「ミラーリング」というものを紹介させていただきたいと思います。
    例えば、ある人が「もう限界」と言ってきた時に、どう返すか。
    「頑張れよ」と励ましたり、
    「どうして?」と聞いたり、
    「いやいやそんなことないよ。大丈夫」と言ったり、
    「そんなこと言っちゃダメだよ」と責める人もあるかもしれません。
    それらの反応とは異なり、
    「もう限界なんだね」とそのまま反射で返す、ということです。
    もちろん単なるおうむ返しではなく、
    聴き手は、余分な方向づけをせず、話し手が表現したことを足場にしてさらにそこから表現を発展させるように促しているのです。

    ひょっとすると現代人の多くの孤独や悩み苦しみの淵源にはこの
    「共感」の欠如が横たわっているのではないでしょうか。
    「どうせ誰も自分のことなんかわかってくれない」が満ち溢れている。
    伝えてばっかりで、コントロールしようとしがちで、
    存在をそのまま受容できない。じっくり受け止められない。
    そこから人と人とのほつれが始まり、断絶に至る。
    もし、私たちが少しでも、この「共感」と「受容」という態度を身につけるだけで、あらゆることが変化していくのではないでしょうか。

  • 関わって感じ表現する
    相手に巻き込まれて感じ表現する
    関わりと観察のバランス
    共感とは自分と相手との協会があいまいになる
    いつか死ぬことわかってるひと共感たかい
    苦しみはわけ会えば半分、喜びはわけ会えば倍になる
    共に喜ぶこと共に楽しむこと、ともにわらうこと
    青年にとって、恐さを共感してくれた上で、その恐さをどう乗り越えていくかを一緒に考えてくれる人が必要なのです。共感は、その作業のための必須の礎石となるものではありますが、その作業に代わるものではありません。

  • 他人に共感する技術について書かれたものですが、自分への共感も大事なんだなと気付かされます。他人に対しても自分に対しても、共感は、同じ空間にいることを全身で感じるものということも、大事だということ。とするとコロナ禍という同じ空間にはいない中で、今後はどんなふうな共感ができるのかな、とも思いました。

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著者プロフィール

京都大学学生総合支援センターセンター長・教授
[主著・論文]『統合的アプローチによる心理援助』金剛出版/『12 人のカウンセラーが語る12 の物語』(共編著)ミネルヴァ書房/『技芸( アート) としてのカウンセリング入門』創元社/『プロカウンセラーの共感の技術』創元社/『キャリアコンサルタントのためのカウンセリング入門』北大路書房/『心理カウンセラーと考えるハラスメントの予防と相談 』北大路書房 ほか多数

「2018年 『SNSカウンセリング入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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