核の戦後史:Q&Aで学ぶ原爆・原発・被ばくの真実 (「戦後再発見」双書4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422300542

作品紹介・あらすじ

体内に取り込まれた放射性物質による被曝(内部被曝)の影響はなぜこれまで軽視されてきたのか? その謎を解くには原爆と原発をめぐる「核の戦後史」に目を向けなければならない。世界に先駆けて行われた原爆開発・マンハッタン計画とは何だったのか、なぜ広島・長崎へ原爆が投下されたのか、核実験の放射能汚染による人的被害はどのように隠蔽されたのか、そしてなぜ今、日本は脱原発に踏み切れないのか。Q&A形式で原爆と原発の必須知識を提供するシリーズ第4弾。

感想・レビュー・書評

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  • 原爆と原発の本はそれなりに読んできて、少々食傷気味のところがあり、最初本書もなかなか手が出なかったが、読んでみてとてもいい本だと思った。オバマ大統領が広島に献花するという今日、多くの人に読んでほしい本である。本書では、原爆神話が徹底的に批判されているのである。つまり、原爆によって戦争を早く終結させた。原爆によって犠牲者を少なくしたというプロパガンダが、事実に基づかない神話であることを明らかにしたのである。原爆は戦争犯罪であり、軍の施設を襲撃した真珠湾攻撃とは比較にならない。原爆投下は戦後を見据えたアメリカによる人体実験であった。だから、被爆者たちをモルモットとしてあつかっても、それを治療しようとはしなかった。それに、これは今にもつながるが、アメリカは原爆で被害に遭うのは投下時であり、残留放射能の影響はないと考えたのである。本書の著者木村さんは2010年にアメリカの研究者とともに『広島・長崎への原爆投下再考』という本を書いている。ぼくはそれをたまたま京都のブックオフで買い感動を受けたが、本書を読むまで同一人物だと思い出せなかった。高橋博子さんは、アメリカの英語の資料をたんねんに追って、現在につながる残留放射能の影響を追究している。全体は「Q&A」方式で、とても読みやすい。学生とのゼミでも使いたい本だ。

  • 2部構成の本。

    第1部は原爆投下と戦後史の謎というテーマ。

    アメリカ陸軍長官だったヘンリー・スティムソンは、原爆投下の目的や動機について、二つの説を唱えた。

    ①早期降伏説(日本を早期降伏させるためには原爆投下を行うしかなかった)

    ②人命救済説(原爆投下を行わなければ本土上陸によって米兵に100万人以上の死傷者が出た。原爆投下により米兵と日本人の命は救われた)

    ①については、アメリカが原爆投下のため日本の降伏をできるだけ遅延しようとしていたことから否定できる。

    ②についても、本土上陸の場合の米兵死傷者数の予想はそれよりはるかに少なかった点から否定できる。

    また日本が降伏するにいたった要因は、原爆投下よりもソ連参戦の衝撃にあった。

    第2部は核体制と戦後日本というテーマ。

  • 【つぶやきブックレビュー】8.9長崎「原爆の日」・・・

  • いまだにアメリカ人の半数以上が、原爆投下は正しいと考えている。

    第二次世界大戦は正義の戦争か?

    日米原子力協定、アメリカの同意なしには原発を止めることができない、第12条4項.

  • 被爆国である日本は、あれから70年を過ぎましたが、けして忘れてはいけない出来事だと思います。特に私の母が当時、呉市に住んでいて、彼女は原爆が落ちる瞬間の閃光を見たと言います。子供のころから聞かされていたので、原爆の話題は以前から興味がありました。

    この本は「核の戦後史」というタイトルで、原爆・原発・被ばくの真実について書かれています。やはりというか、原爆投下による放射能の被害は上手に握りつぶされているようですね。この本を読んでわかったのは、すでに「毒ガス」が国際法で規制されている中で、原爆の被害(危険性)を認めてしまうように、原爆が自由に使えなくなる、という事情があることもわかりました。

    また、原爆投下候補地として、京都が上がっていたのは何かの本で読んだことがありましたが、京都が一番の候補だったこと、それを軍部の上層部が京都を訪問していてその美しさを知っていて、候補から外れたのは不幸中の幸いだと思いました。そのために、長崎が入れ替わりで入って、5番目の候補地だったのに、実際に落とされたという話もありましたが。

    今後もこの話題については注目していきたいと思いました。以下は気になったポイントです。

    ・原爆投下はあくまでも無差別爆撃の延長線上にあると捉えるべき(p27)

    ・日本軍による重慶爆撃(1938年12月開始43年8月、200回以上)はアジアで最初の無差別爆撃であり、ゲルニカ爆撃よりもはるかに規模が大きく、長期で犠牲者も多かった(p30)

    ・重慶爆撃は空戦規則(ハーグ条約)に違反しているが、アメリカ・イギリス連合国はこれを戦争犯罪として起訴しなかった、これを裁くと、東京大空襲はもちろん、原爆投下も国際法違反となるので(p33)

    ・当時は枢軸国も連合国も、程度の差はあれ、軍事力によって領土拡張を目指していた帝国主義国であった(p35)

    ・日本はソ連に和平交渉を持ちかけていたが、同時に、スウェーデン、中国、スイス、ポルトガルの大使館を通じて和平交渉を活動していたが、その情報はアメリカに筒抜けであった(p43)

    ・昭和20年4月27日の第一回目標選定委員会では、17都市が候補として挙がった。広島、長崎、東京湾、川崎、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、呉、下関、山口、八幡、小倉、熊本、福岡、佐世保、5月10-11日の第二回では、京都・広島(AA)、横浜・小倉(A)、新潟(B)の5つに絞られた、効果確認のために5都市は通常爆撃の目標から外される(p91、92)

    ・兵器工場(小倉陸軍造兵廠)を擁した小倉よりも、人口100万の工業都市で日本の古都である京都が有利とされたのは、心理的な観点から(p92)

    ・5都市のうち、横浜が、占領政策に利用する可能性があるので候補から外された、京都もスティムソン(原爆使用をきめる委員会の委員長)の強硬な反対(将来、ロシア人になびく可能性ありという意見をトルーマン大統領が賛同)にあって除外となった(p94)

    ・ウラン型原爆は構造が簡単で爆発させやすいので実権すら行われなかった、濃縮ウランの製造が困難で量産が難しい、プルトニウム型爆弾は、構造が複雑で起爆装置が狙い通りに作動するかの実験が必要であった、しかし量産は簡単という特徴があった(p97)

    ・1945年4月6日、ソ連は日本に中立条約を延長しない旨を通告した、日本はソ連と戦うドイツと同盟、かつソ連の同盟である米英と戦っているからという理由。最初の期限が切れるのは4月26日(p112)

    ・アメリカはソ連のポツダム宣言参加について、日本とソ連は交戦状態にないとの理由で参加を認めなかった(p113)

    ・天皇が降伏決断をした最大の理由は、本土決戦の準備が進んでいなくて、三種の神器も守れない、というのが最大の理由(p130)

    ・原爆被害者の、残留放射能の存在を認めて、内部被ばくの影響を認めてしまうと、核兵器は化学兵器や毒ガス兵器と同じ「汚い兵器」になってしまうので、日本政府は内部被ばくを認めない理由(p184)

    ・米国の調査では、放射線の影響を検討するにあたって、非被爆者は考慮せずに、異なった距離の被爆者間の比較をすることにした(p225)

    2016年5月7日作成

  • アメリカでも若い世代になると原爆投下に反対となる。
    長崎に投下されるときは本当は小倉だったが、曇っていた。でもこの曇りは人為的な原因かも。2014年7月26日毎日新聞によると、八幡市の八幡製鉄所の従業員が、敵機襲来に備えてコールタールを燃やして煙幕を張ったと証言した。広島が新型爆弾で攻撃された情報をとらえ、次は小倉だと思った人たちが煙幕を張って襲来を防ごうとした。
    原爆投下はあくまでも、無差別爆撃の延長線上で考えるべき。
    1943年5月には、原爆投下目標として日本が選ばれていた。トラック島の海軍基地。ドイツは対象外だった。なんといってもドイツに落とすと原爆で反撃されるかもしれないから。
    ニュルンベルク裁判の首席検事テルフォード・テイラーも、長崎を正当化するのは難しいことを認めていた。
    三発目のプルトニウム爆弾は8月19日に東京に落とす予定だった。
    ポツダム宣言は通常の仕方とは違って短波放送で伝わった。しかもチャーチルや蒋介石のサインはトルーマンが代理で署名している。つまり全部トルーマンのサイン。
    ウィキリークスによると、天野局長はIAEA局長になる前に代表部の大使に対し、人事からイランの核兵器開発疑惑に至るまでアメリカ側に立つと述べた。

  • 16/03/17。

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著者プロフィール

1954年北九州市小倉生まれ。鹿児島大学教員、平和学専攻。東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会共同代表、日本平和学会理事。単著『危機の時代の平和学』(法律文化社)、共編著『21世紀のグローバル・ファシズム』『志布志事件は終わらない』『中国・北朝鮮脅威論を超えて』(以上、耕文社)、共著『「昭和・平成」戦後政治の謀略史』(詩想社)ほか。

「2019年 『大学による盗骨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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