「日米合同委員会」の研究:謎の権力構造の正体に迫る (「戦後再発見」双書5)

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  • 創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422300559

作品紹介・あらすじ

日本の超エリート官僚と在日米軍の軍人たちが毎月2度行う秘密の会議「日米合同委員会」。そこで合意された取り決めは日本の法律・憲法よりも、強い効力をもっている。しかし、軍事、外交、司法のさまざまな側面で、日本の主権を侵害し続けるその協議の内容は厚い秘密のベールに包まれ、ほとんど公表されることがない。米外交官から見ても「きわめて異常」と評されるその驚くべき実態に、第一人者の大宅賞作家、吉田敏浩がせまる!

感想・レビュー・書評

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  • 史実と証拠に基づいており分かりやすい。

    以下めも
    --------------------------
    ニューサンノー米軍センター

    日米合同委員会、13名が本会議

    日本側代表は外務省北米局長

    アメリカ側代表は全て軍人。 日本側は全て文民。

    裁判権放棄密約

    横田空域、密約による
    航空管制には法的根拠はない

    局長が日本代表になるからそら利権は生まれるわな

  • 日本における米軍の法的な地位を定めた「日米地位協定」という協定が存在する。対日講和条約や日米安保条約とあいまって、米軍が占領時代に有した特権(基地使用など)を引き続き保障している。日米地位協定の第25条に基づいて権利の内容などを競技する機関が日米合同委員会である。

    日米合同委員会での①協議は密室で行なわれる。著者によると②協議は米軍の軍事目的を優先し、しかも③日本の主権を侵すような協議結果がそのまま法律として制定されてしまう。著者の主張を裏付けるのが複数の秘密資料によって存在や内容が明らかになった日米合同委員会での密約である。①から③がはらむ問題点を、具体的な密約の内容に触れながら本書は論じている。

    本書は②の原因を合同委員会のメンバー構成に見る。日本側の構成員が官僚であるのに対して米国側は一人をのぞいて全員が軍人である。これは通常の国際競技ではまず見ない組み合わせで、かつては米国大使も「きわめてえ異状なもの」と発言したことがあるくらいだ(27ページ)。米国側からの要求は自然と軍事的観点から出され、米軍の権利を認めさせる内容が重点を占めることになる。

    協議とは言いながら、米軍人による強硬な主張を日本側の官僚たちがほぼ受け入れるのが実状だという(4ページ)。当然、協議の結果は日本に不利な内容であり、全貌を国民の目に晒さないために密室協議は好都合な仕組みである。協議の過程や結果が外部に見えず、議事録や合意文書は原則として非公開である。都合の悪い箇所を除いた「概要」のみがウェブサイトに掲載される。文書そのものに対して開示請求をしても判を押したように「不開示決定」がくだされる。

    実際、重要事件でない限り米軍関係者を起訴しない(裁判権放棄密約)、米軍関係者に対する民事裁判で米国に不利な情報を裁判に提出しなくてよい(民事裁判権密約)などという密約の全貌を国民が知れば官僚や政府に対する大きな非難が巻き起こるのは避けられないだろう。

    時に主権を侵害するような不利な協議結果をなぜ日本側は唯々諾々と受け入れるのか。歴史的に見て、日米合同委員会の初期の協議に「米軍の命令が絶対だった占領体制の影響」があったと著者は分析する(201ページ)。例えば対日講和条約の発効前後に行なわれた米軍機の特権を認めた「航空特例法」に関する協議において、「日本側がアメリカ側の要求に異論を唱えるのは難しかったにちがい」ないと著者は論じる。

    日米合同委員会での協議結果ありきの法案がそのまま法律として制定されてしまうの理由の一つは、国会審議の場でも合同委員会での議事録や合意文書が非公開とされているためだ。そうして作られた法律には明確に憲法違反であるものもある(憲法体系とは別の安保法体系が存在する)。

    こうした問題点を踏まえたうえで著者の提言は3つある。①日米合同意委員会の全面的な情報公開と国会によるコントロールの確立。②米軍優位の密約や合意事項の廃棄。③日米合同委員会そのものの改廃。

    そもそも協議機関に過ぎない合同委員会での「合意」が「日米両政府を拘束する」というのは理に適った話ではない。国会での審議が形だけの追認でしかないとおなればなおさらだろう。また米軍による航空管制のように、航空法による規定がなく、合同委員会の合意だけが根拠となっている特権の存在も不条理である(122ページ)。本書にある以下の記述にはまったく同感である。「対日講和条約の発効で日本は主権を、地位を回復したことになっていますが、はたしてアメリカによる「日本占領管理」は終わったといえるのか。日米合同委員会について調べれば調べるほど、そうした疑問は深まるばかりです。」(218ページ)本書を色んな人に読んでもらい、多くの人にこの問題を考えてもらいたいと思う。

    ところで本書の第2章をまるまる充てた「横田空域」の問題点に関して、著者は『横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁」(角川新書)で詳しく論じている。日本では一定の空域に米軍が航空管制を敷いているのだが、同じ敗戦国でありながらドイツとイタリアは米軍の航空管制を認めていないという。主権国家としてはドイツとイタリアのあり方が当然なのだが、それが日本では実現していない。その違いについての論考が興味深かった。こちらも合わせて読んでみるとよいだろう。

  • なかなか一般国民には見えない日米の各種密約を丁寧に実証している。ただ、丁寧な分だけ文章が読みにくくなっているのは残念。その点でマイナス1。

  • 実質、敗戦国ですからね。
    ここまである程度の主権を取り戻した先人たちの努力にも触れて欲しかったかな。
    日本の国土全体が米軍基地という運用は、敵国である、社会主義国家が西太平洋に接している限り続くでしょうね。

  • 巨大なブラックボックス。

  • 日米合同委員会の研究 吉田敏浩 創元社

    日本の独立国は建前であり
国民を騙すための嘘と秘密で塗り固められた
実質未だにアメリカ軍による日本の官僚を傀儡とする
占領状態であることを暴いた本である

    この本は研究者による専門書に近いものであるが
国民の暮しにとって最も根幹となる憲法と法律を差し置き
    国民を支配する社会の秩序に関わる問題であるから
だれしもが理解して置かなければならない問題なのだ

    又この問題を公表したものとしてはこの本と
矢部宏治さんの《日本はなぜ基地と原発を止められないのか》
    で知る以外にない

    日米合同委員会による官僚支配の存在と
    日米安全保障条約による国民を搾取する存在の
隠蔽されてきた中身を暴き出したものである

  • 米国駐留軍が、日本国内で規模や権限を広げようとするのは覇権国なら必然の欲求でしょう。問題は当事国の対応です。日本は、基地権や司法権を委ねてしまっても、密約化することで体面を保ち保身に走ります。また、密約化することで、国民や国会の関与を避け、一部官僚が米軍におもねることでいびつな権力を掌握しています。公の場で是正していくことさえできない状態のまま、国家の主権が蚕食されています。売国奴的行為に反吐が出ます。

  • 寸毫再発見双書のシリーズ最新刊、
    日米地位協定、に続く日米合同委員会、とは何か?
    なぜ日本の空は、今でも米軍に支配されているのか?横田空域、岩国空域、目に見えない空の壁、米軍の航空管制と日米合同委員会の合意
    占領の延長線上の米軍による航空管制、
    アメリカによる日本占領管理は終わったと言えるのか、

  • 全般に、クドイ。

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著者プロフィール

よしだ・としひろ
1957年、大分県臼杵市生まれ。
ジャーナリスト。
ビルマ(ミャンマー)北部のカチン人など少数民族の自治権を求める闘い
と生活、文化を長期取材した記録『森の回廊』(NHK出版)で大宅壮一
ノンフィクション賞受賞。近年は、戦争の出来る国に変わる恐れのある
日本の現状や、日米安保・密約などをテーマに取材。
著書に、
『森の回廊  ビルマ辺境民族解放区の1300日』
(日本放送出版協会、1995年:NHKライブラリー 上・下 、2001年)、
『宇宙樹の森  北ビルマの自然と人間その生と死』
(現代書館、1997年)、
『北ビルマ、いのちの根をたずねて』
(めこん、2000年)、
『生命の森の人びと  アジア・北ビルマの山里にて
  理論社ライブラリー 異文化に出会う本』
(理論社、2001年)、
『夫婦が死と向きあうとき』
(文藝春秋、2002年:文春文庫、2005年)
『生と死をめぐる旅へ』
(現代書館、2003年)、
『民間人も「戦地」へ  テロ対策特別措置法の現実
 岩波ブックレット』
(岩波書店、2003年)、
『ルポ戦争協力拒否 岩波新書』
(岩波書店、2005年)、
『反空爆の思想  NHKブックス』
(日本放送出版協会、2006年)、
『密約  日米地位協定と米兵犯罪』
(毎日新聞社、2010年)、
『人を"資源"と呼んでいいのか 「人的資源」の発想の危うさ』
(現代書館、2010年)、
『密約の闇をあばく 日米地位協定と米兵犯罪
  国連・憲法問題研究会報告 第49集』
(国連・憲法問題研究会、2011年)、
『赤紙と徴兵 105歳最後の兵事係の証言から』
(彩流社、2011年)、
『沖縄 日本で最も戦場に近い場所』
(毎日新聞社、2012年)、
『ダイドー・ブガ 北ビルマ・カチン州の天地人原景』
(彩流社、2012年)、
『検証・法治国家崩壊  砂川裁判と日米密約交渉
 「戦後再発見」双書3』
(新原昭治、末浪靖司との共著、創元社、2014年)、
『「日米合同委員会」の研究  謎の権力構造の正体に迫る
 「戦後再発見」双書5』
(創元社、2016年)、
『横田空域  日米合同委員会でつくられた空の壁  角川新書』
(KADOKAWA、2019年)、
『日米戦争同盟  従米構造の真実と「日米合同委員会」』
(河出書房新社、2019年)他がある。

「2020年 『日米安保と砂川判決の黒い霧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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