われらの子ども:米国における機会格差の拡大

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422360010

作品紹介・あらすじ

子どもたちにはもう、平等な成功のチャンスはない!米国の社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)の衰退を論じ、≪朝日新聞 ゼロ年代の50冊2000~2009≫にも選ばれた『孤独なボウリング』の著者が再び世に問う、アメリカン・ドリームの危機。世代・人種・社会階層の異なる市民へのインタビューと、緻密な統計分析を通して、成功の機会格差の固定化を実証し、未来の世代への警鐘を鳴らす全米ベストセラー。==推薦者の言葉==(五十音順)■古市憲寿氏(社会学者)トランプがアメリカを壊したのではない。アメリカはとっくに壊れていた。本書は、膨大なインタビューをもとに分裂国家アメリカの「絶望」と「希望」を鮮やかに描き出す。■ブレイディみかこ氏(英国在住保育士/ライター)チャールズ・ディケンズは小説家として、ロバート・パットナムは社会学者として、貧困と格差の固定が社会的危機の根元にあることを警告している。■湯浅誠氏(社会運動家/法政大学教授)人生のすべてを覆い尽くしてしまう機会格差の加速化する拡大を止めるには?――潤いを失った社会が偽の<救世主(ヒーロー)>に焼き尽くされる前に、私たちはこの感覚を取り戻さなければならない。■渡辺靖氏(慶應義塾大学教授)「私の子ども」から「われらの子ども」への意識転換は可能か。社会関係資本論の第一人者が描く処方箋は日本の未来にとっても極めて有用である。※別枠、米国書評抄訳では、フランシス・フクヤマも絶賛。

感想・レビュー・書評

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  • 『孤独なボウリング』でご近所付き合いやPTA、スポーツ等のインフォーマルな関係性の重要性を見事なまでに定量的な分析と共に示し、社会関係資本という概念を創出したロバート・D・パットナムが次に取り上げたテーマは格差、特に子どもの機会格差である。

    建国以来の”アメリカン・ドリーム”を未だに信奉する人々が多いにも関わらず、明らかにアメリカにおける子どもの機会格差は拡大している。それは両親の貧困が子どもの貧困を再生産するメカニズムになっているということである。その様子を本書では定性と定量の両面から示しており、特に定性面での叙述に本書の特徴が表れている。というのも、本書ではいわゆる社会学のフィールドインタビューの手法を用いて、アメリカの多様性を代表していると思しき幾つかの都市において、世帯年収・人種・両親の離婚歴等が異なる複数の子供とその両親へのインタビューにより、世帯年収の差が子どもの機会格差を生み出している点が、胸に詰まる個々のストーリーと共に示される。そのうえで、そのストーリーを検証するために多変量解析等の手法により、定量面から、その格差が明確に実在している、ということを示す構成となっている。

    こうした機会格差を明らかにした上で、本書は機会格差を是正するために、”私の子ども”から”われらの子ども”へ社会を転換させるために、社会関係資本を再興させる幾つかの具体的な処方箋が示される。そのためには当然、相応の投資が必要となるが、先行研究によれば、こうした投資により子どもの機会格差が是正されれば、経済成長の押し上げ効果と、犯罪対策等のコストの削減効果の相応により、十分なリターンが得られるとされる。ROIだけが全ての指標でないにせよ、子どもの機会格差をなくすための取組は十分に社会的意義が大きく、重要性が高いものだといえる。

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00557268

  • 東洋経済202151掲載

  • 「孤独なボーリング」の著者による米国の教育格差についての警鐘の書。冗長なところもある気がするが、問題を良く捉えた分析であり、実例集である。政治参加への意識の差が教育格差から生じることによって、拾われるべき声が政治で拾われず、それがマグマのようにたまりポピュリズムを形成する、と言う話は説得的であった。とてもまじめで良い訳だと感じた。

  • 東2法経図・6F開架:361.8A/P98w//K

  • 高学歴家族と、低学歴家族のインタビューから、現代のアメリカの状況が見えてる。アメリカンドリームはもはや夢のまた夢だということ。
    親の学歴と、家族の周りをささえるサポートの有無が、子供の大学進学に大きく影響を与えることが、実証的に示されている。
    日本でも程度の差はあれ、同じような状況があると思われる。低所得層への経済面、ソフト面での手厚いサポートが必要だ。

  • パットナムは「哲学する民主主義」において、ソーシャルキャピタルの重要性を論じ、「孤独なボーリング」においてソーシャルキャピタルの衰退への懸念と再生への期待を論じていた。
    本書においては、ソーシャルキャピタルの濃淡がもたらす社会階層の格差の拡大を論じている。
    分析の手法は、前著と同じく、個々のストーリーから社会全体の変化を描写し、一般化するという方法であり、それぞれ、家族、学校、コミュニティについて分析されている。
    そして、上層階級と下層階級の家族、学校、コミュニティの機能の差が社会的、経済的格差を招いているとしている。
    特にコミュニティにおいては、かつてあった、メンター機能が失われた、下層から上層への移動、即ちアメリカンドリームが失われたことが記述されている。
    日本流に言えば近所のおじさんやおばさん、金銭的に支援してくれる旦那衆がいなくなったこと、つまり社会全体で、我らの子供の射程が狭くなったことを憂いている。

    こうしたソーシャルキャピタルの衰退をパットナムは通奏低音と描写している。
    真にアメリカ的なものは個人の不平等ではなく、地域の不平等なのであるというロバート・サンプソンの言葉を引用している。

    そして最終章においてはパットナムは、課外活動の無償化など、下層階級の子弟を社会に取り組むための提案をし、ソーシャルキャピタルの平準化による格差の解消を求めている。

    現在日本においては学校の部活動が問題視されているが、経済力の差に関係なく参加出来る部活動は、こうした面では有効であると思われた。

  • 361.8||Pu

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