連句日和

  • 自由国民社
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784426119874

感想・レビュー・書評

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  • ■読んだきっかけ
    『ほしとんで』五巻で出会った「連句」の虜になり、読みやすい連句の本なにか絶対あるだろうと思っていたら、大型書店にやっぱりあった。和田誠、矢吹申彦(グラフィックデザイナー)、俵万智、笹公人(歌人)による連句作品+振り返り解説座談会の本。
    ■連句とは
    誰かの詠んだ五七五(長句)から連想して七七(短句)を付け、さらに次の人がまた五七五を付け…と繰り返して一巻きの歌を作る「座の文芸」。ひとりでやる場合「独吟」、ふたりだと「両吟」と言うらしい。
    ■連句のここが好き
    色々と細かいルールや美学はあるようだが、私がたまらなく惹かれるポイントは、前の句と連想でつながりつつもどんどん場面を転じてゆき流転・変容こそ良しとするところ。「歌仙」という形式で巻く場合三十六句で終わるのだが、その最後の短句のことを「挙句」と呼び、これが「あげくの果て」の語源なのだそうだ。楽しく歌仙を巻き終えた連衆(連句の参加者たち)が、一句目=「発句」から始まって思いがけずこんな遠くまでやってきたなあと“挙句の果て”からはるかな道のりを振り返る…。そんな場面を想像すると、これってずいぶん充実感や高揚感にあふれた言葉だったんだなあとしみじみする。
    思えば人生というものも、若い頃には絶対アリエナイと思っていたことを年取ったらしていたり、こんなに好きな人にもう出会えるわけがないと泣いていたらあっさり次の恋が始まったり、流転変転だらけじゃないですか。まあそんなふうに私が暢気にしていられるのは、目標を見据えて計画的に動くタイプの人が世の中を動かしてくれているからかもしれないし、始めから終わりまで綿密に構成された隙のない芸術作品も見事ですばらしいけど、「気付けば遠くに来たもんだ~あっはっは(でも一歩一歩は確実に繋がってた)」っていう軽やかさが、とにかく好みです。
    ■『連句日和』感想
    ・俵万智の魅力を改めて認識。これまで、歌人なんて俵万智しか知らないからという理由で彼女の本は何冊か読んだことがあったが、完全な短歌じゃないとはいえこうして他の人の句に紛れた俵万智の句を見ると、口語表現の爽やかさが鮮烈だった。あまりに身近な言葉だからすごく簡単そうに見える、その凄みよ。
    ・教養が問われる。連句だけ読んでいても前後の句のつながりがわからないことがある。座談会パートで「これは古典落語になんとかという演目があってそれはこういう親子が出てくる話なので」と解説してくれているとよくわかるが、「だれそれの有名な短歌のオマージュですね」とか「だれそれ(映画監督)つながりですね」とかで済まされて付いていけないと、ただならぬ置いてけぼり感を覚える。憧れるか、インテリの排他的な遊びね…と思うか、評価が割れそう。たぶんこの本の先輩格として紹介されている丸谷才一他の歌仙の本(『とくとく歌仙』『すばる歌仙』『歌仙の愉しみ』)はもっともっとハイレベルだと思われる。
    ・しかし、連句は座の文芸、集った連衆がその場を楽しむのが本義と考えれば、彼らの間での目配せが成立すればそれで良いのだろう。また、時事ネタを敢えて入れて当世風にするというのも、「今この時」を共有している者同士の楽しみ方だ。多分、本来が内輪ネタ万歳ライブ感満載な世界なのだと思う。一方で、『連句日和』座談会では「僕どうしても個人的にこの言葉からこれを連想しちゃったんですよね~」「しちゃったなら仕方ないね~(笑)」という和やかな一場面もあり、座の空気によってスタイルは無限大のようだ。

  • #感想歌 歌仙知る季題配置図俵万智笹公人と俳人二人

著者プロフィール

一九三六年大阪生まれ。多摩美術大学図案科(現・グラフィックデザイン学科)卒業。
五九年デザイン会社ライトパブリシティ入社。六八年に独立し、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしてだけでなく、映画監督、エッセイ、作詞・作曲など幅広い分野で活躍した。
六五年創刊の雑誌「話の特集」アート・ディレクターを務める。
講談社出版文化賞、講談社エッセイ賞、菊池寛賞、毎日デザイン賞など受賞多数。
七七年より「週刊文春」の表紙(絵とデザイン)を担当する。二〇一九年死去。

「2022年 『夢の砦 二人でつくった雑誌「話の特集」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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