地域通貨入門: 持続可能な社会を目指して

著者 :
  • アルテ
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434062612

作品紹介・あらすじ

現在の経済制度の弊害を剔出しそれを補完する新たな通貨システムを構想する。地域通貨の斬新な理論や実践例にあふれた意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • 本来資本主義は人を完全に救うことのできないシステムではない。そこからあぶれてしまった部分を補う試みは様々なところで行われている。地域通貨はそういった試みだ。資本主義ではなく信用経済とか、論理ではなく感情とかいう議論が令和になってから増えているが、これは対立軸ではなく補完されるべきもの。それらを世界中の多様な事例から考えることのできる良本。

    https://note.com/t06901ky/n/nbacc9addcb5a

  • 地域通貨に関する話と金利についての問題は、必ずセットで語られる。指摘すべき問題点は確かに的を射ている。しかしその解決策が減価するお金・地域通貨ですよとなると、同じ通貨の話でも語るべき階層が異なるように思えてならない。
    減価通貨のように無理矢理通貨の回転率を上げたところで、結局それは通貨保蔵が嫌われた結果にすぎない。確かに雇用は生むだろう。しかしそれが有益な投資に向かう保証はなく、ただの無駄遣いに使われる恐れだって十分ある。それにみんなが保蔵を嫌えば、資本の蓄積は起こり得ず、資本主義の根底原理が崩れることになるだろう。だからダブルスタンダードだとなるのだろうが、それなら最初に提起した金利負担の問題解決につながらない。
    減価するお金を導入するより、今の円を金利負担なく貸し付ける仕組みを広げるほうが効果的だろうし、地域通貨導入と金利問題・経済活性は分けて考えるべきである。地域にある資源でもって、そこに住む人々を効率よく支えるための仕組みとして、地域通貨を位置付けるべきではなかろうか。

  • とうとう政府紙幣という概念が出てきました、無利子の国債だそうです、とうとう財政破綻がせまってきて利子を払う国債を発行するのが難しくなってきたのでしょうか。

    国が破綻した場合には、その国の通貨は使うことは事実上できなくなります、外国ではその場合には地域通貨を使用して、人々は生活していたようです。地域通貨というのは、つい最近までは、失敗した例ばかりが取り上げられていて、イメージがあまりよくなかったという印象を受けていましたが、国の破綻が起こりそうな雰囲気になってきた今、それらのメリットはどこにあったのかを勉強しておくのは良いと思い、この本を読んでみました。

    本当は今のままの通貨を使い続けたいのですが、10年後が不安でもあり、少しだけ楽しみでもあります。

    以下は気になったポイントです。

    ・初めは航海ごとに資金を集めては儲けを清算していたが、そのうちに永続的な事業体にしたほうが効率であると気づいて、株式会社となった、出資者は定期的に配当金という形で儲けの一部を手にするようになった(p12)

    ・今の金融制度では、お金の管理という観点からは、政府も一般市民も違いが少ない、特に外国から投資をたくさん受け入れている場合(p18)

    ・金利システムとは、ガン細胞の成長曲線と同じで、がん細胞が宿主を食い尽くす(p26)

    ・地下鉄、高速道路などの公共財を建設する場合、金利の存在が大きな障害となる(p29)

    ・減価する貨幣を導入した場合、利率がマイナスでもお金を貸す人が現れる可能性がある、100万円が1年後に88万円となる場合、95万円で貸すほうが有利(p37)

    ・日本円というルールに問題があるのであれば、日本円と同時並行に自分たちの「交換手段」を使っても良い、これが地域通貨を使う理由(p44)

    ・大恐慌の時代から1950年代にかけて、ドイツ・フランス・アメリカなどで、減価する貨幣をとりいれた地域通貨が発行され、成功した(p64)

    ・古代エジプト文明において、庶民が少ない労働時間でぜいたくな生活を楽しめたのは、諸外国との取引で使用する通貨以外に、国内取引において、小麦を担保にした減価する貨幣が使われていたからである(p70)

    ・政府が自分の手で(担保がないまま)直接お金を発行し始めると、お金が余ってインフレが起きて大混乱となる、軍票を発行して軍事物質の調達に支払って、戦後に紙切れとなったのと同様(p105)

    ・アルゼンチンの地域通貨(交換クラブ)が失敗したのは、企業間取引向けの仕組みが整備されていなかったことによる(p117)

    ・イタリアのLIBRAシステムでは、1週間で1%、1年間で約半分というペースで、ポイントをNPOへ支援することになる(p130)

    ・ドイツのREGIOでは、1ヶ月で1%減価する仕組みが採用されている(p139)

    ・世界貿易の10~15%に及ぶ1兆ドルの商品・サービスがお金を使うことなく、現物交換で取引されている(p168)

    ・1つの国全体で苦しくなった場合には通貨を切り下げられるが、国内の一地方が苦しくなった場合(西ドイツが東ドイツを合併)には、膨大な予算をかけて、その地域の立て直しが必要となる(p177)

    ・19~20世紀にかけて欧米、日本が植民地の拡大に熱心になったのは、販売先・仕入先を確保するのに植民地化が手っ取り早かったから(p180)

  • 分類=地域通貨・エコマネー。05年8月。(参考)Miguelの雑学広場→http://www3.plala.or.jp/mig/index-jp.html

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著者プロフィール

1976年福岡県生まれ。1999年より地域通貨(補完通貨)に関する研究や推進活動に携
わっており、その関連から社会的連帯経済についても2003年以降関わり続ける。スペイ
ン・バレンシア大学留学中、同大学社会的経済修士課程修了。著書『地域通貨入門─
持続可能な社会を目指して』(アルテ、2011[改訂版])、『シルビオ・ゲゼル入門─減価
する貨幣とは何か』(アルテ、2009)など。

「2016年 『社会的連帯経済入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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