「嫌中」時代の中国論―異質な隣人といかに向きあうか (柏艪舎ネプチューンノンフィクションシリーズ)

著者 :
  • 柏艪舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434181214

作品紹介・あらすじ

本当の「中国」を今こそ知るべき
政治・経済をめぐって日中情勢が激変するさなか、日本人の中国に対する見方は悪化の一途をたどっている。しかし「真の中国」の姿はどれだけ知られているだろうか?
過激とも思える日本人の中国批判は果たして当を得たものなのか? 逆に、ヒステリックとも思える中国人の反日感情はこれからどこへ向かうのか?
「嫌中」時代の今だからこそ知っておくべき「中国の真の姿」がここにある。

感想・レビュー・書評

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  • 中国の政治体制を理解するのにすごい勉強になったから、中国に対していい悪い関係なく関心を持ってるひとは必読だと思う。

    中国をこう見るというよりも、日本ひいては世界を複眼的な視点でみることが大切だということ。


    http://www.hakurosya.com/books/news.php?news_id=43

    やっぱりあたしもこれからもずっとこの国のことが気になってしまうだろう。


    最近私はやたら中国の90後または80後の女のこと知り合う機会があるのだけど、そのこたちと話すとこの本とはまた違った中国が見えてくる。

    この本で勉強になったこともやっぱり中国の一部でしかないんだなと。

    だからやっぱり中国から目が離せないのだ。

  • 著者は読売新聞記者として、留学時代を含めのべ11年もの中国滞在歴をもつ中国通である。藤野さんは、親中でも反中でもない「知中」派だというが、その本質はとても中国のことを愛している人だ。こういう人を反中という人は、中国におべっかだけをいうことに慣れている人たちだろう。もちろん、日本のことを愛することがイコール日本政府を愛することにつながらないように、中国を愛するということは、そこに住む人々とりわけ、良心的に日本と中国の関係を考えている人たちを愛しているのである。本書で藤野さんが述べることはどれも正論である。たとえば、尖閣問題で棚上げといいながら、大量の漁船団がおしかけたり、公海法を勝手に制定して二枚舌を使っているのは中国だとか、日本が過去の歴史を鑑にしないと非難しながら、自らは文化大革命にしろチベット問題にしろ、自分にとって不都合な事実を隠し続ける態度はなにゆえかと問いかける。(この2014年の5月にベトナムの人々が、愛国主義を掲げデモを行い、焼き討ちをした姿を見て、自分たちがやったことを思い起こしただろうか)また、日本が戦後平和憲法のもとで世界の平和に貢献し、ODAを通し中国の改革開放政策に多額の援助をしてきたのに、それを国民に知らせようとはしない。実際、中国の大衆と話をしていると、日本ではまだ天皇が権力を握っているかとか、軍国主義が復活したのかとかトンチンカンな質問に出くわす。日本の真の姿を知らせるのが怖いのだろうか。あるとき、中国人記者が、いま日本が中国と競っているのはパワーが均衡しているからで、中国の力が日本の数倍になったとき、そんなことは問題でなくなるだろうと言ったそうである。藤野さんはそのときコメントする時間がなかったが、もし機会があればこう言っただろうという。「将来、仮に日本が中国を真の大国として心から尊敬する日が来るとすれば、それは中国の経済的、軍事的パワーにたいしではなく、責任ある大国としての自覚、民主・人権の尊重、平和主義、国際協調主義などに対してです」(p92)と。まったく同感である

  • 私は一人の中国人も具体的に知らないから、新聞やテレビで反日運動や周辺諸国への威圧的な態度を知ると、「中国」という国や「中国共産党」に不快感を覚えます。でも、その対象となる国や党は私にとって抽象的次元でしかないのです。私の身近に中国人の友人や知人がいたなら、またその人たちが素敵な人達であれば、マスコミの報道にこんなにも感情が揺さぶられることはないのかも知れません。民間レベルで日中の人たちがありのままの姿を曝け出して交流を続ければ、現況を打開できるかも知れません。政府や政治家を当てにできませんから。

  • (尖閣諸島の帰属に関する問題について、周恩来や鄧小平との「棚上げ合意」より)「問題に触れない」というのが「棚上げ」の核心ですから、その意味するところは、中国として日本の主権と実効支配を認めるものではないにせよ、すぐ解決できる妙案もないため、とりあえず尖閣問題に波風を立てずに、当面それを静かに放っておく、ということです。ところが、中国側の実際行動を見ると、むしろ問題を顕在化させる方向へと意図的にシフトしてきました。
    P69
    国交正常化時の中国政府からのメッセージと、現在の実際の行動に大きな隔たりがあることに気づく。それを、言動不一致と非難の対象とするだけではなく、現実的な外交を進める「したたかさ」と捉える必要があるのではないか?


    「~2030年には中国のGDPは日本の四倍になり、米国も超えて世界一の経済大国になっている。そのころには中国に対する日本人のライバル心は少し減り、心から中国の大国化を認めるだろう。~」
    日本人は、~中国が日本を追い抜いて大国化したという現実をみたくないのだ。中国と対抗していけると、なお思い込んでいる。しかし、中国はもっともっと大国化していく。米国さえも追い抜く。それにつれて日本人の中国への対抗心はしだいに薄らいでいくだろう。中国にはとうていかなわないと認識するからだ。中国人の方も余裕を持って弱体化した日本を眺められるようになるので、反日感情も和らぐだろう。
    P88(中国共産党系メディアの男性記者の発言@2012年日中シンポジウム)

    反発しあう日中両国の国民感情に対して、中国側からはこういった見方もできることに驚いた。
    賛成できるかどうかは置いといて、ひとつの主張・行動における相手の内在的論理を理解する重要性と難しさを改めて感じさせられる。



    ~対日問題に関して世間一般の通念と異なる意見を発表したりすると、往々にして「お前は民族の裏切り者だ」と決めつけられ、この「漢奸」という言葉の爆弾を投げつけられることになるからです。
    p261

    そこにたとえ意図的な操作がなくとも、世論・メディアは往々にして、一部の意見は過小化され、別の一部の意見が主流として作り上げられてしまう。その特性を忘れずに、ことの本質を見極める「目」を養いたいと思った。

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著者プロフィール

中国問題ジャーナリスト、北海道大学名誉教授。1955年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。読売新聞上海特派員、北京特派員、シンガポール支局長、国際部次長、中国総局長、編集委員を歴任。2012~2019年、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授。専門は現代中国論、中国共産党史。主な著書に『客家と毛沢東革命――井岡山闘争に見る「民族」問題の政治学』(日本評論社)、『「嫌中」時代の中国論』(柏艪舎)、『臨界点の中国』(集広舎)、『現代中国の苦悩』(日中出版)、『嘆きの中国報道』(亜紀書房)、『客家と中国革命』(東方書店、共著)。訳書に『わが父・鄧小平 「文革」歳月(上下)』(中央公論新社、共訳)、『殺劫――チベットの文化大革命』(集広舎、共訳)など。

「2024年 『現代中国を知るための54章【第7版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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