アイヌ語をフィールドワークする―ことばを訪ねて

  • 14人登録
  • 4.20評価
    • (3)
    • (0)
    • (2)
    • (0)
    • (0)
  • 3レビュー
著者 : 中川裕
  • 大修館書店 (1995年2月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469211924

アイヌ語をフィールドワークする―ことばを訪ねての感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • フィールドワークがどんなものなのかということに興味があったのと、アイヌ語の入門的な内容について知りたいと思って買ったが、アイヌ語の具体的な話はほとんどないので、その意味では期待外れだったが、これまであまり知らなかったアイヌの世界について、著者の思いとともに、十分に理解できたので、結果的にとても良い本だったと言える。言語学のフィールドワークをする上での著者の葛藤、つまり話者を単に研究対象、つまりインフォーマントとしか見ていないのか、それとも人間として触れ合っていくのかという、フィールドワークの上での大きな問題と思われる点について著者自身で解答を与えながら著者の体験を紹介している。言語学を勉強しているおれにとっても「言語学が世の中の何に役に立つのか」といった大きな問題について考えさせられた。
     本書の大部分は、著者の直接体験を通して、古老たちのナマの声を紹介しながらアイヌ文化が語られており、一般の入門書とは一味違って、臨場感をもって迫ってくる感じがある。高校の修学旅行で北海道に行って、アイヌの博物館に行ってアイヌの伝統的な踊りを見たりしたが、そんなお仕着せの体験をすることよりもこの本を読んだ方がよっぽどアイヌの文化や世界観についてよく分かった。特に「アイヌとカムイ」、「イオマンテ」の話が印象的だった。

  • 四谷図書館

  • P109「イオマンテ」のように聞き慣れた言葉でも,
    意味をよく知らなかった。
    イが不定目的格人称接辞で,対象を限定しないでなにか漠然と指すものとのこと。オマンテが送り。神であるカムイを指し,神の代表的な熊を指し,熊送りを指すことになる。文法と風習の両面から説明があり、アイヌ語に対する興味が増した。

    「あとがき」に、月刊「言語」の
    「アイヌ語を訪ねて」という連載の転載が第一部で、
    さらに書き足したものが本書とのこと。
    標題も「アイヌ語を訪ねて」にした方がよかったかも。
    社会調査を「フィールドワーク」という片仮名語で表しているところに違和感がある。

    P250「気がつかずにまだ問題を残しているところがあるかもしれない。もしあれば伏してお詫びしたい。」という表現の「もし」はいらない。「もし」を付けていることが、「気がつか」ないことではないのだろうか。

    すごく細かいことは、いくつかある。

    P250「プランが揺らぐものだから、おおいに悩みまくった。」すごく現実的な表現だ。「プランが揺らぐ」のではなく「心が揺らぐ」とした方がよくはないか。片仮名語を使っているところに,怪しい表現が多くはないだろうか。

    P11「アイヌ語の調査が社会言語学の調査などと根本的に違ってくるのは、いやそればかりでなく、アイヌ語の場合,調査という範疇からはみだしたものにすらなってくるのは、」
    社会調査は、根本は同じで、「調査」という範疇からはみ出したもである。「社会」という「物理」とは桁違いに不確実なのを扱うのに「範疇」の範囲に収まるはずがない。「社会調査」をどう感じているのだろう。

    P30「言っては悪いが自業自得である。」とうのは、そのまま著者に帰してもいいのかもしれない。「初対面の人に「中川です」というと、」初対面の人に、どこの誰かを言うのに姓名と地名を言わないのが悪いのだろう。言っても分かってもらえないかもしれない。それでも、姓しか言わない人は、誤解してくれと言っているのだということに気が付かないのだろうか。

    題材は素晴らしい。成果もすばらしい。表現がそれに見合っていないかもしれない。社会調査をする人なら、表現にも配慮があるといいかもしれない。誤字,誤植が10箇所訂正がついている。表現を改めて,見直しをすれば、社会調査の教科書としてすばらしくなると思うのは私だけだろうか。

    「範疇」を超えない限り,社会調査は成功しないという事例としてすばらしい。外部観察は言語においてあり得ないことを主張するとよいのではないか。話者と聞き手の主客の関係において言語が成立していることを思えば。

全3件中 1 - 3件を表示

中川裕の作品

アイヌ語をフィールドワークする―ことばを訪ねてを本棚に「読みたい」で登録しているひと

アイヌ語をフィールドワークする―ことばを訪ねての作品紹介

アイヌ語は滅びてゆく言語ではない。「調査」のために古老たちの中に入っていった学者の卵が、"大事なこと"を伝え残そうとするアイヌの人々の想いにふれたとき、言語学者としての道が決まった。様々な出会い、優れた文化への驚き、辞書作り…エピソードを織りまぜてかたるアイヌ語とアイヌ文化の入門書。

ツイートする