「偶然」から読み解く日本文化: 日本の論理・西洋の論理

著者 :
  • 大修館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469213270

作品紹介・あらすじ

現代世界をリードする西欧文明は、敵・味方、正・邪、要・不要などを二分法的に峻別し、原因・結果の連鎖で世界を説明し尽くそうとする必然の論理を基盤にしてきた。一神教とも結びついたその発想が随所で行き詰まる現在、八百よろずの神を認め曖昧さや偶然にも対応する日本的なしなやかな論理が、次代を切り拓く力を秘めたものとして注目されている。本書では、偶然と必然をキーワードに、西欧文化と日本文化の相違を根底から洗い直し、その考察は仏教論理にも及ぶ。次に転換期を生きた吉田兼好と福沢諭吉を取り上げ、上記の視点からその生き方をたどることを通して、日本的無常観の成立および西欧と相対する中で日本的なものを生かす方途を探る。さらに、日本語の特質と遣隋使以来連綿と続く外来文化の柔軟な受け入れ方のなかに、日本の可能性を展望する。著者ならではのユニークな視点から日本文化の特質と可能性を探った比較文化論。

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  • 【書誌情報】
    『「偶然」から読み解く日本文化――日本の論理・西洋の論理』
    著者:野内良三
    ジャンル:ヨーロッパ文化・比較文化 > 比較文化
    出版年月日:2010/01/22
    ISBN 9784469213270
    判型:四六
    ページ数:296ページ
    定価:1,980円(本体1,800円+税10%)

    ◆「偶然」を手がかりに文化の相違の根底に迫る
     二分法的に世界を峻別し、原因-結果の連鎖に基づく必然の論理ですべてを説明しようとした西欧文明が随所で行き詰まる現在、八百よろずの神を認め曖昧さや偶然にも対応する日本的なしなやかな論理が、次代を切り拓く力を秘めたものとして注目されている。偶然と必然をキーワードに日本文化の可能性を探るユニークな比較文化論。
    [https://www.taishukan.co.jp/book/b198181.html]

    【目次】


    第1章 必然と偶然
    なぜ偶然か/西洋哲学と必然性/アリストテレスの偶然論/アリストテレス的伝統/必然性から確実性へ/アリストテレスの四原因論/デカルトの「懐疑」/デカルトの自然観/ヒュームの「懐疑」/因果性を考え直す/因果性と時間/必然性と偶然性の本質/科学と因果的必然性/ポアンカレの偶然論/バタフライ効果/カオス理論と人生/九鬼偶然論を導きの糸にして/偶然と驚きの情/偶然と縁/偶然と事後的意味付与/偶然の主観性

    第2章 因果と縁起
    二つの因果連関/西洋哲学史の三つの指標――世界・神・人間/因果律と縁起観/縁起のロゴス/縁起と無我/ナーガールジュナの言語思想/言語不信対ロゴス主義/論理性と矛盾律/マクロの視点とミクロの視点/縁起観の見直し/「容」偶然主義とは/ロゴスとレンマ/テトラレンマとは/レンマの情理/即非の論理/偶然と必然のダイナミックス

    第3章 日本的無常と『徒然草』
    西洋哲学と東洋思想/無常と偶然を分かつもの/日本的無常観/「もののあわれ」から「浮世」へ/「いろは歌」の無常観/あっけなさ、あるいは瞬間の美学/はかなさ、あるいは滅びの美学/「この世」を見る三つのスタンス/ありてなければ/『徒然草』偶感/兼好とは何者か/無常を見すえて/出家遁世と仏道修行/無常だからこそ趣がある/『徒然草』一三七段を読む(その一)――花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは/『徒然草』一三七段を読む(その二)――万の事も、始め終わりこそをかしけれ/『徒然草』一三七段を読む(その三)――すべて、月・花をば、さのみ目にて見るものかは/〈この世〉を直視せよ、さらば〈美〉を見いださん/転換期を生きたダンディスト

    第4章 福沢諭吉の人生哲学――近代主義と伝統
    はじめに/人間=蛆虫論とは/「安心法」は人生哲学である/「安心法」をめぐる四つの評価/「安心法」と体用論/「こころ」の東西比較論/福沢の欧化主義のしたたかさ/福沢における「日本的なもの」/「安心法」とレンマの論理/福沢のカオス理論/マクロの視点/ミクロの視点/肉食の思想/人間中心主義のバリエーション/福沢の歴史観/「みずから」の選択から「おのずから」の選択へ

    第5章 日本語の論理と構造
    はじめに/「ウナギ文論争」/日本語はコンテクスト依存的言語である/直列型と並列型/言語に優劣はない/時枝誠記の言語過程説/「零記号」の役割/日本語の論理/語順の問題/主格のハとガ/ハの包摂作用/ハは変化する/ハは日本語にしかないか/ハと「切れ」/日欧比較統辞論/結び

    第6章 異文化受容と伝統――カラゴコロ今昔
    日本の特殊性/物として見、物として行う/異文化受容と「容」偶然主義/ヨーロッパ文化は恐ろしい/遣隋使・遣唐使の意味/文字を通じての文化受容/訓読と漢意/カラゴコロが日本を救った/訓読から漢字仮名混用法へ/和魂漢才から和魂洋才へ/和魂洋才の現在/日本語は本当に滅びるか/文化的「雑居」から「雑種」へ

    主要参考文献
    あとがき

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著者プロフィール

1944年生まれ、東京教育大学仏文科卒業。フランス語、フランス文学専攻。現在関西外国語大学教授。
主な著書として『イラスト・フランス語入門』(第三書房)、『フランス語ひとくちコミュニケーション』(白水社)他。

「1999年 『パルロン・フランセ CD付』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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