「する」と「なる」の言語学: 言語と文化のタイポロジ-への試論 (日本語叢書)

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  • 大修館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469220322

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  • 「する」と「なる」の言語学―言語と文化のタイポロジーへの試論 (日本語叢書)

  • 日本語が状態の変化から、場所の変化への変遷があり、
    英語は場所の変化から、状態の変化への変遷があるとのこと。

    おみえになるという言葉のが、来るという意味で使える日本語。
    GO, COMEが、状態の変換も表す英語というような感じでしょうか。

    もう少し、深めたい主題だと思いました。

    池上さんの本を参考文献にあげている方がおみえだったので、本書を手に取りましたが、本書の中で、自分が読んだことがある本を引用していたので、知識が閉じたような気がしました。

  • 場所の変化として捉える代表的言語英語。
    抽象的変化として捉える代表的言語日本語。
    両者にはそれぞれ背後に「する」と「なる」という違いが存在する。
    英語は個別的にものの変化を捉える好みがあるが,
    日本語は個を埋没させ状況の変化として捉える傾向がある。
    そのため,英語は主語が目的語に影響を与え,
    それのみならず状態変化後の状況までを含意する構文を持つ。
    SVだけでなく,SV+PP,SV+O,SV+O+PPという風に他動性を上げる。
    自動詞も他動詞のように,I sang a baby to sleep.と他動詞化する。
    一方,日本語は英語と比べて必ずしも目的語を必須要素としない。
    多くの言語は歴史的に見ると「なる」的要素を多分に含んでいる。
    筆者の推論であるが,
    英語はドイツ語,フランス語と比べても他動性が非常に強い。
    これは,つまり原始の自然に支配されていた頃の形を残しているのが「なる」言語。
    科学の力によって,もはや自然を支配する時代の言語が「する」言語と言える。
    個の状態変化(場所)の個は,最たるものが人間であり,
    このことが筆者の推論を支持する理由の一つでもある。

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著者プロフィール

1934年、京都市の生まれ。東京大学で英語英文学、イェール大学で言語学専攻。現在、東京大学名誉教授、日本認知言語学会名誉会長。インディアナ大学、ミュンヘン大学、チュービンゲン大学、ベルリン自由大学、北京日本学研究センターなどで客員教授、ロンドン大学、カリフォルニア大学バークレー校などで客員研究員。Longman Dictionary of Contemporary English(3rd ed.),『ロングマン英和辞典』の編集で校閲者。著書に『意味論』『「する」と「なる」の言語学』(大修館書店)、『記号論への招待』『ことばの詩学』(岩波書店)、『〈英文法〉を考える』『日本語と日本語論』(ちくま学芸文庫)、『英語の感覚・日本語の感覚』(NHKブックス)など。言語学研究書の翻訳、論文多数。

「2022年 『ふしぎなことば ことばのふしぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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