英語指導における効果的な誤り訂正: 第二言語習得研究の見地から

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  • 大修館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469245943

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  • 不定詞
    形容詞的用法は、付け足し
    仮定法
    概念を理解

  • 白畑先生の本はとりあえず読んどけという風潮。何も考えずに訂正フィードバックを与えるのはやめようと思いました。生徒の反応よく観察して、経験積んで効果的な訂正ができるようになりたい。

  •  教室における明示的な指導にどの程度の効果が認められるのか、主に大学生(静岡大?TOEICの平均が350~450点程度)を被験者として、様々な項目について、その直後としばらく経ってからのテストの結果を検証したもの。
     「文法の明示的指導」というのは、学校や予備校では最も行われてきた指導であるから(たぶん。今の中高は違うのか?でも少なくともバリバリの進学校では主流だと思う)、そういった指導がどれだけの効果を発揮するのかというのを実験する、というのは面白いことだと思った。そして経験的に、あるいは感覚的に共感できる内容が多いことも、面白かった。あとは「明示的指導」に「肯定証拠」と「否定証拠」をそれぞれどのくらい含めるか、という話も興味深かった。特に学習初期の段階で「否定証拠」を与えることは、あまり効果がなく、それよりは多くの肯定証拠を元に「意味のあるやりとり」を通じて使ってみる、というプロセスを組むのが良い、ということは、何となく感覚で分かっていたことが裏付けられたようでスッキリする。(だから中学生に「誤文訂正」をやらせすぎるのもどうか、という話。)
     あとは3単現とか冠詞とか、目くじらを立てて指導しまくっても、短期的に効果があったとしても、最後は元に戻ってしまう、というのも空しい話だ。そういうことでイライラしないようにしないといけない。それから、もっと空しいのは「包括的誤り」(グローバルエラー)の修正が意味ない、ということ。これもよく「ライティングを一生懸命添削しても意味がない。線を引いただけの場合と効果は同じ」という本を読んだり聞いたりしたことがあったが、ここでも同じことが裏付けられていた。最近、別の学年の教員が「エッセイを時間かけてネイティブに添削してもらって、それと同じ課題を試験で出しても合格答案を書けた生徒があまりにも少なかった」と嘆いていたが、つまり「リライトさせる効果」自体に対する疑問もあるし、そもそも「リライトする意欲」を起こさせることの難しさ、という問題もあり、おれの学年ではこういうことは極力止めようと思う。あと、グローバルエラーだけは修正しましょう、という話も聞いたことがあるが、「TOEICのスコアが450点あたりの学習者にとって、文の構造を根本的に変えられてしまう誤り訂正を受けても、その意味が分からず、結局、修正されてもほとんど役に立たない」(pp.160-1)というのに妙に納得してしまった。確かに英語教員にとっては、誤った文を前にして、それをどうすれば意味が通じる文法的に正しい文になるのか、放っておけない、というかそこで直せないと自分の英語力が足りないのをそのまま放置しているような感覚が、少なくともおれにはあるのだが、結局、「放っておくのがよいと思う。全体的な英語レベルが上がってくれば、包括的な誤りの数は次第に減ってくると予想する。」(p.175)ということで、それよりは全体的な英語力を上げることを考えましょう、ということだ。こういうことは他の教員とも共有してみたい。
     ちょうど今、高2用に、高校の文法の重要項目(英語表現Ⅰの内容)を総復習しながら英作文の基本を1回10分未満で確認するような冊子教材を作っているところなので、どういう項目の指導を強化すべきか、ということについて、とても参考になった。
     ただ、ところどころ、修正後の英語がどうなんだろうと思ったところ、あと「比較の応用的な表現」とか「語彙」についての実験は、結局理解の有無というよりは「知っているか知っていないか」に行きつくような気がして(もちろん「比較」だって色々表現の成り立ちを説明すれば「理解」になるのは分かるが、少なくとも筆者の「明示的指導」はそういう感じではなさそう。あるいは使用されたテストがただの空欄補充だとすれば、あまり「理解」は関係ないかもしれない)、そういった「知っているか知らないか」の問題を実験することに対する違和感を覚えたり、あとテストによっては誤りを訂正できたところで正答として、ただ誤っていることが分かっただけでは誤答とする(主語と話題のところとか)のに、接続詞の実験では誤っているかどうか分かっただけで正答として、有意な差がでた、などとしているところがちょっと納得出来なかった。最後に、実験で使ったテストの抜粋というよりは全体を資料として示してくれれば、だいぶ読者の実践に役に立つし、読者なりに追試が出来るのに(著作権の問題?とかは置いといて)、ちょっともったいない気がした。表紙に書いてある"Who's afraid of grammatical errors?"という文は意味深な気がする。(19/03/17)

  • ものすごいななめ読み。L2学習者の文法的な誤りについてフィードバックを与えることの効果についての研究結果をまとめたもの。

    1.短期的には明示的な指導は効果がある。
    2.長期的に効果を残すのはなかなか難しい。
    3.語彙的なものであれば、明示的な指導は効果があり、長期的にも残りやすい。
    4.文法項目的なものであれば、短期的には効果があっても長期的には効果が残りずらい。
    5.その原因として、L1の転移があげられる。
    6.その他の原因として、文法項目の内的複雑性があげられる。
    7.複雑なことには、明示的な説明を与えるだけよりも、アウトプットを伴うような練習を行うことが効果的である。



    →7を聞いて、やっぱり、想起Retrievalによって、脳内のシナプス同士の活性化を促し、それが文法項目的なものの習得を促進しているのではないかと思ったりした。つまり、産出的な想起を行うことにより、より、文法項目の習得を促進し、また、逆の面からみると、文法項目同氏は、そのような脳内のシナプスのつながり京子によりもたらされ、それは、産出的な想起によって形作られるのではないかという、そういった一連の妄想を僕にもたらしてくれた。

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著者プロフィール

白畑知彦(しらはた ともひこ) 静岡大学教育学部教授
静岡県遠州森町生まれ。博士(文学)(大阪大学)。著書に『英語指導における効果的な誤り訂正』(大修館書店),『英語教育用語辞典 第3版』(共著,大修館書店),『ことばの習得』(共著,くろしお出版),『第二言語習得研究モノグラフシリーズ(4巻)』(共編, くろしお出版),『詳説 第二言語習得研究』(共著,研究社)など。

「2020年 『英語のしくみと教え方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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