会社は頭から腐る―あなたの会社のよりよい未来のために「再生の修羅場からの提言」
- ダイヤモンド社 (2007年7月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478000700
作品紹介・あらすじ
真剣勝負で「負け」を経験した人をトップに任命せよ!産業再生の請負人が提言。
感想・レビュー・書評
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『挫折力』が面白かったので、遡って読んでみた。
その昔、毎日のようにニュースで見た産業再生機構の4年間のドラマはすごく刺激になった。
P132
重要なことは、カネボウの意思決定者が、合理的な意思決定を下せるように、プラットフォームをすっきりしてあげることなのだ。
P146
経営というのは、基本的に自由裁量行為である。違法行為や反社会的行為は論外だが、何をするのかは経営に委ねられる。執行と監督を分離した取締役会なら、ビジネスジャッジメントの範囲である限り、そこで口出しはするべきではない。
P152 (株主主権に関する記述)
マルクスではないが、生産手段、付加価値の源泉は、再び「働き手」、人的資本の側に戻ってきたのである。そんな彼らにとって、納得感のない統治権など、現実には機能しない。観光客に選挙権を与えるような仕組みがあるなら、そこに住む住民は、たまったものではないだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
産業再生機構のCOOを勤めた筆者の経営者を語った本ですが、極めてストイックかつ、バランス感覚を持った意見に思いました。
経営は理詰めで合理的に進めなくてはいけないものだが、いかんせん人間は情に流されやすい存在なので、経営者たるものは合理と情理の両方を極めなくてはいけないとの意見は、経営現場で苦労された方だからこその意見に思いました。
この本に書かれてある事を踏まえますと、日本大企業にプロの経営者と言えるべきトップはほとんどいないように思います。他の本で筆者が現場の最前線にいる30代に経営者的視点を持つように提言していますが、経営者世代の方がしっかりとした経営者の観点を以てもらえれば、日本の閉塞した状況は打開できるように思いました。
30代でも組織のリーダーたらんと考えている方は読んでみれば参考になることは多いと思います。 -
・インセンティブの奴隷。リスクを取らない方向に組織としてインセンティブが向かっているのならそのように動く。ベスト&ブライテストでも一緒。
・挫折力に似てるな。
・PDCAの章はちょっと意味不明
・日本人は、確実なことは世の中が不確実なことであるということを忘れてしまった。
・失われた?年は先人たちが築いた資産を食いつぶした時代。
・既得権益者がリーダーでは変革は行われない
・人間は40歳をすぎたあたりから著しく生産性が下がってくるとのこと。
・カネボウ化粧品の例だと、41歳社長。社内ベンチャーで。
実際は若手が会社を引っ張っているという話。
現場が20代で、商品企画やマーケティングは30代。で、間が空いて60代のおじいちゃん社長をもってきてもシャーないやろうといういう話になっていた。
・技術者などの高付加価値ワーカーは国際市場で戦っていて、すでにgoogleはすごいことになっている。コンピューターサイエンスの天才達をあつめまくっているというわけだ。サムソンもそうだね。
・うちの液晶テレビのビジネスだって、高い商品価値をもっていた時のビジネスモデルと今のビジネスモデルって全然違うんだよ。
・40代になってから部下をもってもダメだろうという話。社長なんてできやしないよ。
・リーダーは徹底的に現場に入って行く必要がある。会えて七に飛び込むことも必要だ。 -
人間の心理の深~い部分を全部炙り出した1冊です。
『「人はインセンティブと性格の奴隷である」だから、小賢しい組織論やスキル論よりも「人間集団を正しく動機づける」ことの方がパワーを生み出す』
『人間の価値観、行動洋式そのものを変えるのが真の経営者だ、という人もいるが、実態は、そこにいる個々人が本来持っていた個性ややる気に対して働きかけた結果、モチベーションと組織能力が飛躍的に高まった』
『経営者としての私のスタンスは、まずは人間を動機づけているものの本質を理解する努力を行う。そこに的確に働きかけ、勇気づける。本人が相互に矛盾するインセンティブの相克に苦しんでいるのなら、それを整理して、あるいは自分自身がその一部を引き受けて、その人を葛藤状態から解放すべくベ ストを尽くす』
『部下は上司の「見たい現実」を報告するように動機づけられている。ミクロの次元では「理に適った」行動が、全体としての転落を加速していく』
『ホワイトカラーおやじ組織で、やたらと会議が大人数になるのは、意志決定に関する責任が自分ひとりにふりかかって来ないようリスクヘッジをするインセンティブが働くから。こうした「相互安全保障」を目的とした会議や根回しの業務量は、人と人の組み合わせの数に応じて増えていく』
『そもそも、経営が送り出すメッセージに対して、ただちに心から反応し、動機づけられて行動する人間は多くない。経営者がそのメッセージをどこまで本気で送っているのか、それに素直に乗っかることが自分にとって得か損か、自分にとって気分のよいことか悪いことか。まずは、値踏みモードに入る。』 -
産業再生機構の代表の著書。最近出版された著者の「挫折力」と内容が重複する。現在の日本の経営者の能力低下に警鐘を鳴らすとともに現場の重要性を説く。また、官僚機構を初め大企業の競争等は中小企業が遭う修羅場に比べたら対した物ではなく、大企業のエリートこそその修羅場を経験し、挫折の重要性を説いたものである。「人が足りないという部門からはむしろ人を取り上げた方が本質的な効率改善が進む」という指摘。このパラドックスはうちの会社をそのまま指摘したものに思えてならない。
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端的でわかりやすい、冨山さんらしい本でした。
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確かにこの著者は経験・実績もあり、言ってることも筋が通っている。
経営者をやるからにはそれなりの覚悟を持ち、私利私欲だけではなく、社会のために・・・ということだが、なにかしっくり腑に落ちないところもあった。
だが、ところどころ良いことも書いてある。
P118
・人間は安心したい生き物
・人間は、自分が見たい現実しか見ない生き物
・企業の再生は言い訳との戦い -
”産業再生機構COOとして企業再生に関わってきた冨山和彦さんが「現場を活かすために、真の経営人材を鍛えあげるべき!」と提言した一冊。エピローグに込められた強い想いに共鳴した。同時に、リーダーやマネジメントへの厳しい要求にも背筋が伸びる想いがした。
冨山さんは、2007年4月に株式会社経営共創基盤(Industrial Growth Platform, Inc. (IGPI))を設立。社名に込めた想いは“より良い「経営」と「経営人材」をみなさまとともに創り出していくことを通じて、経済の持続的な成長を実現していくためのプラットフォームの一つとなる”。
<読書メモ>
・組織は、人はなぜ動くのか。そもそも会社とは、企業とは何なのか。経営の基本原理とは。そしてなぜ会社は、人は、基本原則を踏み外すのか。これからの経営者に本当に求められる資質とは。(p.v)
・そこで私自身が今の時点で「考えている」重要な視点は何かというと、それは人間の弱さへの着眼である。(p.4)
・小ざかしい組織論やスキル論などよりも、人間集団を正しく動機づけることのほうが、いかに大きなインパクトを持つかを思い知らされた。そして企業組織の強さの根源が、よくわかった。それは、動機づけられた現場人材たちが、こまごまとした職務規定や指示命令なしに、自発的な創意工夫や相互補完で臨機応変に目的を達成していく力にある。(p.15)
・制度的なものだけでは個々人の個別性や状況の変化に対応することには、必ず限界がある。人間は一様ではない。人の気持ちも事業状況も一定ではない。現実は同期状態を常に狂わすように働く。そこにインフォーマルな働きかけ、非制度的な動機づけの重要性が生まれてくる。(p.31)
・このPDCAを回すというのは一見簡単に見えるかもしれないが、人間の本性と違うものを要求されているのだ。基本的に人間は弱いもので、見たい現実しか見たくない生き物なのである。(p.50)
★マネジメントやリーダーは、自分の仕事の責任の重さ、それも真の重さを認識しておかなければならない。なぜなら、それは他人の人生に影響を与えてしまう仕事だからである。部下が10人いたら、10の人生に責任を持たなければいけない。100人なら、100の人生がある。こういう役割は、誰でもできるような仕事ではないし、誰もがなれるような立場でもない。相当な覚悟、意志、鍛錬がなければ、立ってはいけない立場である。人の人生を背負おうという決心・覚悟のない人は、マネジメントをやらないほうがいい。
(略)
こういったものを背負いながら、リーダーは、情と理、人間的要素と算数的要素の中で、のたうち回っていくことになる。半永久的に矛盾がある構造の中で、苦しみ、もがきながら、自分の柱をつくっていくのだ。そうして「観」は出来上がる。人生観であり、価値観であり、世界観である。(p.213)
#くぅ、ここは胸に響いた。
・最大の救いは、日本の現場を支えている人々の力、モラールは何とか世界のトップレベルを維持しているということです。(略)だから会社も日本も再生が可能なのです。「会社は頭から腐り、現場から再生する」のです。(p.219:エピローグ)
#冨山さんが言いたかったのは「現場から再生する」の方なんだろうな。
★リーダー層の脆弱化が国の宝である現場人材を食いつぶす前に、私たちはしっかりしたリーダー、真の経営人材を真剣勝負の修羅場で鍛え、つくり直さなければならない。能力的な要素はもちろん、いやそれ以上に人間的な意味でしっかりとした信念の背骨を持ったタフなリーダーたちを、一人でもたくさんつくる努力、もちろん自分たち自身も少しでもそれに近づく真剣な努力を、ただちに始めようではありませんか。(p.219-220:エピローグ)
★経営において最終的に最も大事なものは、マネジメントする人の志です。経営の仕事は、社会や他人の人生に大きな影響を与えます。経営の単位が企業であれ、国家であれ、使命のために体を張る覚悟がなければ、引き受けるべきではありません。リーダーとは、そういう存在です。「後世への最大遺物は、勇ましい高尚なる生涯である」という内村鑑三の言葉を、私は最も愛しています。(p.222:エピローグ)
<きっかけ>
社内読書会 5月の課題本。社長からのオススメ。” -
これは買いですね。12年前の本とは思えません。