預けたお金が問題だった。-マネックス松本大が変えたかったこと

著者 :
  • ダイヤモンド社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478011799

作品紹介・あらすじ

投資銀行で仕事をしていたときの素朴な疑問をきっかけに、日本という国のお金の流れのおかしさに気づいた。時代の流れをとらえて、金融の民主化というビジョンを描き、自分たちの手で、自分たちのための金融機関をつくった松本大とその仲間たちの挑戦と現在。

感想・レビュー・書評

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  • 松本大と仲間たちは、日本のお金の流れを変えるために、マネックス証券という新しい金融機関を作ろうとチャレンジした経緯がわかる一冊です。インターネットというツールを使うことと、投資家教育・育成も捉えて取り組むことで、預貯金ばかりで貯金命な日本人の考え方を変えて、儲けることが悪いことではないと伝えてきたのだと理解しました。
    投機ではなく、投資をできる日本人を増やすために、立ち上がって、マネックス証券を育ててきた彼らの努力を感じました。オススメの一冊です。

  •  ネット証券の先駆けであるマネックス証券の創業者である松本大氏へのインタビューを通して、創業の経緯や現在に至るまでの苦難などがまとめられている。著者自身が金融の専門家ではないためか、全体を通して平易な文章で書かれており、非常に読みやすい(実際、30分程度で読了)。

     1999年、松本大氏は35歳という若さで、しかもほとんんど一人で、ソニーを創業パートナーに迎え、マネックス証券を立ち上げる。その動機は、「日本のお金の流れがおかしい」と考えたからであった。
     日本人は、安全第一と考え(というかむしろ何も考えずに)銀行にお金を預けている。その大半は、貸出や株式投資ではなく、日本国債の購入に充てられているのが現状であり、間接金融から直接金融へお金が流れないどころか、行き場を失ったお金が結局は、政府の大規模な財政出動を誘引し、国の財政悪化、無駄な公共事業の増加を招いている、というものである。

     そもそも、日本国民の貯蓄率の高さは、「日本人=農耕民族」という民族性として解釈されがちであるが、歴史を紐解くと、プロパガンダの影響を強く受けている。第二次世界大戦後、復興のための資金が全くなかった政府は、「貯蓄広報委員会」なる組織を作り、国民に貯蓄を奨励することで、その資金を得ようとした。その天才的発想は、日本の高度成長期までは恐るべき効果を見せたが、バブル崩壊後、金融機関へ集まった預金は、行き場を失ってしまう。
     そこで政府は、1999年金融自由化を一気に加速させる。これまで、非常に高額であり、直接金融参入への大きな壁となっていた株式売買手数料を自由化し、さらに貯蓄を奨励してきた「貯蓄広報中央委員会」を「金融広報中央委員会」へ変更し、「貯蓄から投資へ」というスローガンを大きく打ち出したのである。 その時期が、まさに松本氏がオンライン証券を創業するタイミングであった。

     「常識を疑い、自分の頭で考えること」が大切であると、松本氏は終始強調しているが、それにもまして、ゴールドマンサックスのゼネラルパートナー(共同経営者)という地位を得て、なおかつ上場を目の前に控えた時期に、ゼロからオンライン証券の起業という挑戦を行った行動力には頭が下がる。
     現在のところまだ、松本氏が思い描いている変化はまだ見られていないように思う。アメリカでは、約4000兆円の個人金融資産のうち、4割の約1600兆円が株式や投資信託で運用されている一方、日本では、個人金融資産1400兆のうち、100兆円ほどしか直接金融に流れていない。リーマンショック以降、金融危機の震源地であるアメリカでさえもが回復しつつある中で、日本のマーケットが、諸外国に比べ回復しきれていない原因まさにここにあるのではないだろうか。
     銀行は、預貸率が低下し続けている中、貸出を伸ばそうと必死になっているが、成熟した日本経済において、今後貸出需要が大きく増加するとは考えにくい。
     今後、直接金融へお金を流すためには、制度改革やインフラ整備とともに、日本国民の金融リテラシー向上が必要になる。もちろん、株式や投資信託で資産を運用することが必ずしも正しいことではない。ただ、現在のように盲目的に、預金と言う選択肢しか持たない状況は、当然打破する必要がある。この超低金利下においては、まさに今がそのタイミングである。
     また、預金をかき集め、国債を買い漁るだけの金融機関もどうにかしなくてはならない。縮小傾向にあるマーケットにおいて、企業の目指すべき姿は、最大ではなく最適であることを理解しなくてはならない。

  • マネックス証券創業の思いや歴史をインタビューをまとめて書いた本。読み物としては悪くないけど、誰が想定読者なんだ?

  • ライターが、取材した範囲でしか書いていない。
    もう少し角度を変えて書けることもあったと思うんだけど。
    マネックスの主観的な歴史を知りたい人には良いかもしれないけど

  • 松本さんとその仲間がマネックスという会社を創出することで果たしたかったことを伝えたい、というシンプルな内容。それで?とか、だから?とかそのテーマ以上のことはきっとつっこんじゃいけなかったのでしょうね。

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著者プロフィール

1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒。リクルート・グループなどを経て、94年よりフリー。幅広く執筆やインタビューを手がける。著書に『マイクロソフト 再始動する最強企業』『10倍速く書ける 超スピード文章術』(共にダイヤモンド社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『職業、ブックライター。』(講談社)等多数。ブックライターとしても、『プロ論。』シリーズなど100冊以上を執筆、累計売上は200万部を超える。2011年より宣伝会議「編集・ライター養成講座」講師。2013年、ブックライター塾開講。

「2019年 『これなら書ける! 大人の文章講座』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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