新しい火の創造

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  • ダイヤモンド社 (2012年10月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478016978

新しい火の創造の感想・レビュー・書評

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  • 500ページもある大著。なかなか読むのが大変でした。孫正義も推薦する、ビジネス視点のエネルギー問題解決処方箋というのがウリ文句。

    「新しい火」とは炎を出さない火のこと。特に再生可能エネルギーの導入を推進している。反対に「古い火」とは化石燃料のこと。こう聞くと、地球環境問題に関する重苦しい内容と思われがちですが、内容としてはビジネス視点で2050年までに化石燃料依存から脱する道程を示し、それによって得られる報酬がリスクを上回るということを、膨大なデータで示している。ただ、それには忍耐強さとリーダーシップが必要である、と述べている。

    日本人が好きな「脱原発や省エネ」というと、我慢を強いるイメージだが本書はいかにもアメリカらしい、あくまでビジネスでもってエネルギー問題を解決するという内容であふれています。

    例えば、著者は京都会議など環境問題に関する世界会議の内容が「利益を生むのではなくコストがかかる」「気候変動に対する懸念から対策を推し進める」「世界全体で条約締結をする必要がある」などと考えていることに疑問を投げかけ、このような国際的な団結よりも、各国の企業と手を組み政府よりも民間部門と手を組んで、経済基盤で対策を推進すべき、としています。いくら地球環境のため、とはいえ我慢や痛みを伴う政策では誰も行動しようとはしない、と言うわけです。

    本書の特徴として、再生可能エネルギーを導入しましょう、ということはむしろ遠まわしでしか書かれておらず、どちらかというと小さな企業努力によってできることがある案が提示されています。

    例えば、自動車の軽量化(パーツを減らす、ただし強度はそのままかそれ以上の素材を使用。これにより安全性も増し、製造工場の機械のコストも下がる)、空気抵抗を削減できる設計(目に見えないが、これを減らすことで燃費が向上する)、テレビ会議システムの導入(航空機を使って出張するよりも安くつく、自宅で仕事することで通勤ラッシュを減らす)、工場のボイラーを見直す(多くの工場では過剰で古くて低効率のものを使っている)、配管をみなおす(カーブが多くエネルギー伝達の効率が悪い)、日光による照明を利用する、断熱力の高い窓ガラスを利用する、など。一つの会社が無駄を省くために行っている企業努力を、地球規模で推し進めるだけでエネルギー問題は減らすことができる、というもの。

    ある地域で原発のように大量の電力を発生させ、電線で分配するという現在の方法は、個人宅へ電気が届くまでにすでに原発数基分のロスが発生し、さらに、この配線が切られるだけで広範な地域が停電となる安全面での問題が指摘されている。これは自然災害でもテロリストによる攻撃でも同じで、配線がもはや人間には複雑すぎて復旧にも時間がかかる。このことからも、小さな地域、あるいは個人宅での発電(もちろん再生可能エネルギーで)を推奨している。あくまで、今のやり方はリスクが大きく、生命をも脅かすため、経済的に考えて再生可能エネルギーの方がよいという主張です。

    これだけ長く書いても書き切れないほどの提案が出されていますが、それだけ脱化石燃料への道のりは険しいということです。正直、地球規模でここまでやりとおすことは難しいように思われますが、「選択肢は多いが未来は一つ」。

  • アメリカの化石燃料消費を2050年までにゼロに近付けるためのアクションを、運輸、建物、工業、電力の4分野について具体的にプランを説明。アプローチは大きく3通りで、「より少ないエネルギーで目的を達成する」「需要構造を変える」「供給方法を変える」もの。特に、工業では最終目的(例えば加熱、動かす、など)から、そのための手段を見直すというアプローチが新鮮。汎用化が難しいという問題はあるが、考え方は他のことにも応用が効きそうだ。最終的には目的を達成できれば良い訳だ。
    もちろん、ビジネスとして成り立つのが条件であるが、インセンティブとしての政府の適切な施策も重要。また、自然に近付けるアプローチ、例えば極力自然光を活用する、外の空気を利用する、などすぐに思い浮かぶことだけでなく、処理時間が長くなるとしても、光合成の仕組みを人工的に利用することや、貝が殻を作る仕組みを素材作りに応用するなどというアイディアも興味深い。
    日本語訳に際して「省エネ」という言葉は我慢や忍耐を強いるイメージがあり、これは使わないというのも印象的。

  • 第1章 燃料の非化石化
    第2章 運輸
    第3章 建物
    第4章 工業
    第5章 電力
    第6章 選択肢は多いが未来は一つ

  • 電力の変革期。化石燃料の見えざるコスト、エネルギーセキュリティについてなど、社会的影響度を大域的に見ながら、今後あるべきエネルギー社会の築き方を説いた本。ここまで丁寧にまとめられた本はない!丁寧過ぎて、全てを語ろうとしすぎるあまり、話が発散している感は多少否めない。コラム多過ぎw

    前半はほとんど省エネの話。
    運輸、建物、工業分野で、いかに非効率にエネルギーが使われていて、効率化するだけで、新材料や技術を使うだけで、半分以上のエネルギー消費を削減できるかを、技術動向や政策的な話を踏まえながら説明してくれている。これだけ読むと、なぜ人は効率の悪いものを使うのだろうか、と疑問に思うくらい簡単に効率化できそうな気がする。が、実際どこがどう効率が悪くて、改善するとどれくらいで回収できるのかは、なかなか分からないのだろうなと、感じた。加えて、対策をしても、大きなリターンにはならないから、コンサル的な企業も生まれないし、企業努力も後回しになる。やり方はあっても、普及のロードマップはやはり難しそう。導入喚起を促す政策が必要か、簡単なやり方の周知徹底が必要なのか。統合設計デザインも気になる。

    後半に、電力の話。分散電源のエネルギーセキュリティとか、日本で言う総括原価方式の話とか、よく聞く話がまとめられている。一つ思ったのが、エネルギー供給に合わせた生活がいいか、現在のやや高いが一定価格で特に供給状況を意識しない生活がいいかは、人それぞれな気がする。結局、バランスが大事。できる範囲を見極めて、少しずつ改善するという道を見つけて行きたい。

    今後、仕事でエネルギー関係について考えるときに辞書的に使おうかな。

  • 小泉元首相がこれを読み原発ゼロはイケると考えたと報道ステーションで紹介されてたので読んだ。けど、正直言って全部消化し切れなかった。読むの大変だった。
    読んでみるとこの本自体の主眼は脱原発にあるのではなく、いかにして石油、石炭などの化石燃料への依存から脱するかということ。運輸、建物、工業など分野ごとにそのシステム案を提供している。アイディア自体は脱原発に使えるのかもしれない。電力の項をみると、むしろアメリカでは、原子力発電はもともと投資家に何十億ドルもかけるに必要な信頼感を与えられず民間資金を集められないため低調のよう。この本によるとそれはアメリカに限らず世界の原発建設トップ事業者というAREVA社が建設事業の遅れのため株価が4年で71%下がったり、同社が手掛けるフィンランドの原発、フランス電力の原発などでもコストが高いのに不確かという状況にあるとのこと。その後の記述からもヨーロッパでは軒並み脱原発の傾向という状況であるとの話。でもこの本の示す現実的な目標としては、2050年までに電力の80%までを再生可能資源エネルギーによるものにし、最終的に100%を目指すというもののよう。
    多分この本を読むのが大変だった理由の一つは、自分の常識不足か、カタカナ語の意味・多義性。「アメリカのユーティリティーは原発事業を意欲的に進めようとした」「ユーティリティーのビジネスモデルの再編」:ユーティリティーはライフラインと読み替えて考えていいんだろうか。「マイクログリッド」は「小規模なエネルギーネットワーク」ってことを本の外で理解して読まないと理解が追い付かない~。

  • この本は2050年までに、原子力に頼らずに石油や天然ガスの化石燃料をほぼ0にするために「新しい火」を創造しようという試みを書いている。可能性はあるか?

    Could we reinvent a new fire as an alternatives to fossil fuel by 2050?

  • 新しい火の創造。原題はReinventing Fire。エイモリー・ロビンスの最新作です。運輸、建物、工業、電力の各分野で、「新しい火」をどう実現していくか、ということを解きます。

    ベースはアメリカの話であり、こと建物を見ると、アメリカというのがいかに建築物のエネルギー消費で遅れている国なのかとは思うけれども、他の分野では大体アメリカ発のような情報に慣れているので、情報の読み方はかくも難しいのかと思います。

    内容は、方向性は期待通り、ただ具体的な特効薬というよりも、やはり方向の話であり、そう虫が良いわけではない。

    「新しい火」とは何か。僕らの仲間なら、きっとわかるだろうし、そこには我慢や停滞、後退があるわけではない。「新しい火」でやっていこうという人たちが拠り所に出来るものにはなっていると感じます。

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新しい火の創造の作品紹介

本書で提案するのは、ビジネスモデルを活性化させ、クリーン・エネルギーをめぐる競争に勝つための新たなビジョンだ。それは、政策によって強制されるものではなく、持続的な利益を目指すビジネス主導で行われる。描かれているのは、現在から格段の経済成長を遂げた2050年への道筋と競争戦略である。そこでは石油や石炭、核エネルギーは無用で、天然ガス使用量も現在の3分の1以下となる。新たな発明も不要だ。「新しい火の創造」は、利益と雇用から、国家安全保障や健康、環境への責任まで、理路整然と、収益性のある実際的な道筋を指し示している。さらには、明晰かつ巧みに、企業が新たなエネルギー時代を築くという、驚くべき機会を明らかにしている。

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