世界はひとつの教室 「学び×テクノロジー」が起こすイノベーション

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478020463

作品紹介・あらすじ

本書は、カーンアカデミーの驚くべき成長の物語であると同時に、いやそれ以上に、従来の教育システムが抱えていた制約をテクノロジーがどのように解き放つのか、その可能性を探ろうとするものです。

感想・レビュー・書評

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  • "カーンアカデミーを創設したサルマン・カーンさんがウェブで無料の教室を立ち上げて軌道に乗せるまでの出来事を語った本。
    日本語でしか視聴していませんが、数学はとてもわかりやすいし、それなりにコンパクトにまとまっている大変素晴らしい教材といえる。
    言語の影響を受けにくい科目なのか、数学に関するテーマが充実している。世界共通の言語=数学ともいえる学問であるが故なのだろう。"

  • この本は名著と呼ぶにふさわしい。著者はアメリカの人だが、日本語で読んでも違和感がなく、平易で分かりやすい。

    著者のサルマン・カーンはカーン・アカデミーというEラーニングサービスを提供している。サービス自体はそれほど目新しいものではなく、youtubeに算数や数学の授業をアップするというものだ。今なら、色々な人がやっている。

    しかし、本書の主題はサービスの紹介ではない。本書の素晴らしい点は、従来型の学校教育(カリキュラムベースの教育、学年別・クラス別指導)の問題点を分析し、明快にまとめた上で、それに対する解決策を明示している点にある。

    現状の問題点を明らかにした上で、テクノロジーを用いた新しい教育方法によって、どのような指導が可能となるか、それがどのような点で効果的かを示している。それも、憶測ではなく自ら実験を行って効果を実証している。著者はMIT出身とのことだが、本当に細かいところまで分析が及んでおり、一つ一つの手続きが極めて科学的だ。教育について論じた本は世の中に山のようにあるが、説得力がまるで違う。安易な抽象論で終わっていない。

    著者は決して学校が不要だとか、Eラーニングが万能だということは言っていない。テクノロジーの導入によって、こんな教育が可能になるというビジョンを示している。知識もアイデアも豊富だ。彼のアイデアは成人教育にまで踏み込んでいる。

    まだまだ面白い点はあるのだが、是非読んで確かめて欲しい。本当に素晴らしい価値のある本である。

  • カーンアカデミー使ってみてから読めばよかった。とにかく一般論な感じに思え、数多あるオンライン教材とどう違って、なぜカーンアカデミーがすごいのかということがイマイチ伝わってこなかった。

  • いまはやりのMOOCsについての作成者側からの意図をはっきりと記載した本である。卒論には使えないが、MOOCsを使うあるいは作るためには読んでみるといい本である。

  • 小学校から大学まで、受講者が同じ時間に同じ教室に集まり先生の講義を集中を切らさず聴いて同じように理解できたことをテストの特典で示さなければならない教室授業に疑問を投げかける本として興味深いです。分からなかったところがあっても低い成績評価のままとりあえず合格と見なされることがあるため、ひとつつまずくと、勉強ができない層に落ちていってしまう。理解出来るまで繰り返す学習の機会を与えられない教室授業に対し、ネット教材の強みを取り入れた教室授業のあり方など、示唆に富むと思いました。

  • アメリカも最も注目されている教育イノベーションを引き起こしたカーンアカデミー主宰者による著作。教育に関心のある人も起業に関心のある人も楽しめる。特に教育に関心ある人は必読。いわゆる社会起業の成長モデルとしてもとても興味深い。現在の教育の仕組み(同じ年齢の子供を一つの教室に集め、理解の達成・未達成に係らず、スケジュールに従って進行するもの。理解が未達成は子供は落ちこぼれとされ、以降、高等教育の機会が失われる)は、1800年代(!?)にその基盤が出来たものであり、それがいまでも実施されている。これが最適なモデルかどうかわからないのに、当たり前と思っていた自分の考えを反省。また、カーンアカデミーの仕組みがアメリカで生まれ、日本では生まれなかったことも残念だなあ。

  • 内容も翻訳もとてもよかった。
    p16
    数学や科学の理論だけでなく美しさを生徒たちに教えたいと思いました。
    p37
    性格、態度、様式、なにごとにおいても、最高の美徳は飾り気のなさである。
    p38
    「問題と解法が何もないところから現れる」のが見た目に一番良いと思いました。
    p48
    固定すべきは高いレベルの理解度であり、ばらばらでよいのは理解に要する時間だというのです。
    p110
    宿題はもっと多くするんじゃなくて、もっと難しくするべきだ!
    p125
    新しいテクノロジーをいくら迅速に取り入れても、それが表面的なものであるかぎり意味がない。
    p167
    最も良い道具ができあがるのは、道具の作り手と使い手のあいだに、率直で敬意のこもった会話が成り立つときである。
    p178
    教師が指導役というよりもガイド役を担う自主学習のほうが、すべての人に適しているのではないでしょうか。
    p181
    いかにして学ぶかを子供たちに教えることです。子供たちに学びたいと思わせること、好奇心をはぐくみ、素直な驚きを促し、自信を植え付けて、将来、まだ見ぬ数多くの問題に対する答えを探せるようにしてあげることです。
    p204
    いまの夏休みは、時間とお金の壮大なる無駄です。
    p217
    わが子を救うもっとよい方法は、すべての子を救うことです。
    p244
    失敗への恐れに対しては、「だから何?」と言っておきましょう。失敗の過程で学んだことがきっとあるはずです。

  • 1)
    現行の教育は、人が効率良く学べる方法と乖離している。
    本来、人はそれぞれの知識に「繋がり」を見出すことで、より効率的なインプットが可能になります。
    しかし一方で現在の学校教育は、学習を教科に分けて、国語と数学の繋がりを見出そうとはしていない状態。

    2)
    75点で合格というテストは本当に正しいのか?
    人が最も効率良く学べる方法は、各知識間に「繋がり」を見出すやり方。
    だから「完全学習」は有効なのです。
    「完全学習」とは「一つの知識を100%習得してから次を学ぶ学習方法」。
    テストが「75点でok」だとこの概念は実現不可。

    3)
    混同しがちな教育の3要素。
    ①指導・学習
    いかに最善の学習法を提供するか?
    ②社会化
    仲間同士でいかに協力するか?
    ③資格認定
    「この人は〇〇について学習を完了した」ということをどう証明するか?

    4)
    自ら考える環境を整備することが現代教育の課題。
    誰がアインシュタインに「相対性理論はここまで、次はヨーロッパ史」などと言うでしょうか?
    創造性や独創性を鍛える議論をする前に、時間割と学年別で区切られた「創造性や独創性を殺す教育」から脱却すべき。

    5)
    行動。ただ行動。
    新しく大胆なアプローチは絶対にテストされる必要がある。
    現状維持はその大敵。
    行動を起こさないツケは円やドルではなく、人の運命の損失に直結する。
    問題があるところには解決策有りと信じて、いかに行動し失敗から学べるか。

    6)
    学校で生徒に対して「有給」を導入できるか?
    『世界はひとつの教室』で提唱されている「完全学習」「マイペース学習」が実現されれば、「自分のペースで休みやすい」状況が生まれる可能性があるそう。
    逆に、夏休みのような固定された長期の休みは脳の機能を衰えさせる可能性がある。

    7)
    プロイセン型学習モデル(年齢別画一教育)の問題点。
    年齢で教室がわかれる為、年上は年下に対してリーダシップを発揮する機会を失う。年下は年上のマネをしたり、自分にとってのヒーローを見つける機会を失う。
    「完全学習」「マイペース学習」への移行加速が必須か。

    8)
    非認知能力を鍛えるために、「そもそも思考」を子供に身に着けさせることが有効か。
    例えば運動会。
    「かけっこにエントリーするか綱引きにエントリーするか」考えるだけではなく、「そもそもなぜ運動会があるんだろう?」を親と一緒に考えられるかなどですかね。

    9)
    「人とは違う」こと自体が本来創造的。
    appleもteslaも「違い」から生まれています。
    ただ現行の教室では「普通」を善とし、「不完全な数値化(主にテスト)」によって「違い」をもつ人格を排除してしまう傾向にあるそう。
    「違い」は「価値」だと認識しましょう。

  • カーンアカデミーについて。

    「下部構造が上部構造を規定する」わけだから、カーンアカデミーを成り立たせているような技術の出現・発展によって、教室や一斉授業中心の従来型の教育のあり方も、必然的に変わっていく、と考えるべきなのだろう。

  • カーン氏の熱意と完全習得学習というコンセプトはすばらしいと思う。完全習得学習というのは、年齢や時間に関係なく、完全に習得したら次のステップへ進めるという学習方法のこと。年齢ごとに一律の教育(テスト&宿題)のあり方(=プロイセン・モデル)にはたしかに疑問がある。

    著者は従来型の教育(プロイセン・モデル)を否定するが、完全習得学習がないわけではない。日本の中を見れば、公文や進級が必要な習い事・お稽古事(ソロバン・水泳・電子オルガンやピアノ)は完全習得学習を取り入れている。

    また、私自身、4月に配布された教科書は、学校の先生に言われるまでもなく、自分の興味本位でさっさと読んでしまった。理解しているかどうかは別として、興味があれば今でも教科書を先読みできる。

    従来型の学校教育を悪だとやや決め付けているところがあり、また、完全習得学習の進級テストをどう設計するのか?という点について、十分な回答がなされていないように感じる。

    親によっては、自分の子どもに対し、完全習得学習を取り入れるのはよいと思う。しかし、公教育に導入するには、超えなければいけない課題を解決する目処は、本書を読んだ限りでは、ほとんど立っていない。

    <目次>
    はじめに
    第?部 「教える」ということ Learning to Teach
     ナディアの家庭教師
     ごくシンプルなビデオ
     重視すべきはコンテンツ
     完全習得学習
     「学び」とは何か
     ギャップを埋める
    第?部 壊れたモデル The Broken Model
     慣習を疑う
     プロイセン・モデル
     スイスチーズ的学習
     テストの功罪
     創造性に貼られるレッテル
     宿題
     教室をひっくり返す
     学校教育のコスト
    第?部 現実の世界へ Into the Real World
     理論と実戦
     カーンアカデミーのソフトウェア
     現実の教室へ
     ゲームのように楽しく
     一世一代の決心
     ロスアルトスでの実験
     教育は年齢を超えて
    第?部 世界はひとつの教室 The One World Schoolhouse
     不確かなのは当たり前
     生徒だったころの私
     「教室はひとつ」との思い
     チームスポーツとしての教育
     「秩序ある混沌」はOK
     夏休みを見直す
     これからの成績表
     教育を受けられない人たちのために
     これからの資格認定
     大学はどうなるか

    <メモ>
    はじめに
    私の名はサルマン・カーン。世界中のすべての人に無料で教育を届けたいと本気で考えている組織「カーンアカデミー」の創設者で、創設当初からそこで教えています。私たちの教育や学習のあり方は1000年に一度の転換期にあるーそう信じるから、私はこの本を書いています。(9)

    昔ながらの教室モデルは、いまの私たちのニーズには合いません。従来のモデルは基本的に受動的な学習法ですが、世界はもっともっと能動的な情報処理を必要としています。(9)

    どこで天才が出現するかなんて、だれにもわかりません。アフリカのどこかの村に、がんの治療法を見つける可能性を持った少女がいるかもしれません。ニューギニアの漁師の息子が、海洋環境について信じがたい知見を持っているかもしれません。なぜ彼らの才能をおろそかにするのでしょう?(12)

    いまの教室にありがちな退屈な教え方はしたくないと思いました。次のテストでよい成績をとること以上の有意義な目的を持たない、丸暗記とか公式のたぐいです。私が望んだのは、ある授業と次の授業とのつながりを生徒たちに気づかせることでした。(16)

    人はいつ、どこでいちばん集中できるのか?答えはもちろん「人によってちがう」です。(中略)このようなちがいがあるのに、なぜ、指導や学習の根幹部分は教室という限られた場所で、チャイムやベルを合図に行われるべきとこだわるのでしょう?(20)

    テクノロジーには、そうした制約から私たちを解き放つ力があります。(20)

    人々の実際の学習法に関する基本的事実の抜け落ち:学習スピードは人によって異なるのに、授業のペースは画一的であること。(30-31)

    完全習得学習=mastery learning(47)
    「ニーズに応じた条件を与えられれば、すべての生徒が学ぶことができる」という信念に基づいていました。(47)
    完全習得学習のカリキュラムは時間ではなく、理解度や達成度の目標に基づいて構成されていました。(47)
    「完全習得学習プログラムで学んだ生徒は・・・みずからの学習に対する責任を引き受けるようになった」(52)
    能動性より十ぢょ宇正が優先されることに加え、脳の「連想学習」の能力を最大限に活かしていない。(55)

    スイスチーズ的学習がもたらすもうひとつの現象は、一流の教育を受けた聡明な人も含めて、教室で学んだことを、社会で出くわす問題と結びつけられない人が多いということです。(92)

    プロイセン・モデル




    2014.03.13 「反転授業」を調べていて見つけた。Wikipediaの記述を見ると「カーン・アカデミー」という教育WEBを主宰しているらしい。
    2014.04.06 読書開始

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