- Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478021743
感想・レビュー・書評
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「漂白される社会」というタイトルには本当にしっくりきた。この本に描かれている「汚れ」はどちらかというとわかりやすいものだが、もっともっと些細なことに対しても、とかくこの国の社会はそういうものに対して不寛容すぎると思う。そういうところに対しては、何かこう、間違ってるんじゃないかと思ってきた。とはいえ、この本を手に取ったのは、ただ単に下世話な興味だけというのが正直なところですが笑
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著者の言う「漂白される社会」っていうのは宮台真司のいう「新住民運動」と近いのかなぁ。
<blockquote>本書の目的は、現代日本の「周縁的な存在」に注目しながら、「現代社会とはいかなる社会なのか」という問いの答えを明らかにしていくことにある。(P.24)</blockquote>
宮台がFree Dommuneで「社会の皺はとれない。取ろうとしても何処かに皺寄せが来るだけだ」と3回も強調して繰り返し言っていたんだけど、そのことを強く強く感じながら読み進めた。
<blockquote>「現代の貧困」とは、かつておような可視的な「貧しさ」と直接結び付けられる「貧困」とは異なる。それは、目に見える「貧しさ」が、私たちの視界に入りそうになる場所において、「あってはならぬもの」として表面的に隠微され行くなか、それでも残る「貧しさ」と、達成されつづける「豊かさ」との狭間に生まれた「不可視な存在」に他ならない。(P.69)</blockquote>
在特会にしても、ヘサヨにしても、上記のような意味で"どっちもどっち"だなと思った。
結論……「自分の見たい現実」があって、それに合わないもの、否定されるものは「あってはならぬ」のだ、という志向と思考。
<blockquote>人も情報も過剰であるが故に、労働力(あるいは土地)に付与される「値段」の格差は顕著になり、「持つ者」と「持たざる者」とを隔てる溝がより鮮明になる。世代・ジェンダー・低学歴・エスニシティー・しゅっ時の非対称性を背景としながら、相対的弱者が貧困のループに飲み込まれやすい状況が生まれているのだ。(P.74)</blockquote>
ところで、渋谷、六本木、ロンドンでテクノDJしていて脱法ドラッグに詳しいツトムって誰? もちろん仮名だろうけど、ツトムって(笑) -
<目次>
はじめに
序章 「周縁的な存在」の中に見える現代社会
第一部 空間を越えて存在する「あってはならぬもの」たち
第一章 「売春島」の花火の先にある未来
第二章 「現代の貧困」に漂うホームレスギャル
第二部 戦後社会が作り上げた幻想の正体
第三章 「新しい共同体」シェアハウスに巣くう商才たち
第四章 ヤミ金が救済する「グレー」な生活保護受給者
第三部 性・ギャンブル・ドラッグに映る「周縁的な存在」
第五章 未成年少女を現金化するスカウトマン
第六章 違法ギャンブルに映る運命の虚構
第七章 「純白の正義」に不可視化する脱法ドラッグの恐怖
第四部 現代社会に消えゆく「暴力の残余」
第八章 右翼の彼が、手榴弾を投げたワケ
第九章 新左翼・「過激派」の意外な姿
第五部 「グローバル化」のなかにある「現代日本の際」
第十章 「偽装結婚」で加速する日本のグローバル化
第十一章 「高校サッカー・ブラジル人留学生」の10年後
第十二章 「中国エステのママ」の来し方、行く末
終章
漂白される社会
おわりに
<メモ>
なぜ、「周縁的な存在」にアプローチするのか。それは、「周縁的な存在」にこそ、その社会の持つ性質が顕著に現れるからだ。(4)
学校や会社などの社会的包摂が崩壊し、また規制強化・浄化作戦が行われたことにより、市民の目に触れられなくなり、街から排除され、地下が促進され、「あってはならぬもの」になっていった。
「白/黒つける」「合法/脱法の規制を構築していく」作業は、問題をなくす、もしくは減らす意図を持ってなされているはずだが、二分化を進めれば進めるほど、本来の意図に反して「脱法」へと人々を誘導することになる。(223)
これまで確かだった「結婚」や「家族」という制度、それにまつわる規範自体が、収入や社会的地位に恵まれた一部の者が得られる「嗜好品」のひとつと化していく。(309)
社会が複雑になるほど、多様な選択肢の束を前にした私たちは、選択を躊躇してしまい動けなくなってしまう。たとえば、福島第一原発事故直後、福島周辺はもちろん、東京においても、外に出ていいのか、水道水を使っていいのか、あるいはメディアで言われていることを真に受けていいのかなど、これまで当然のこととしていた行動が、逐一「命に関わる重大な選択」となった。(395)
二クラス・ルーマンによれば「信頼とは社会の複雑性を縮減するもの」だという。つまり、複雑化する社会をシンプルに店、私たちがスムーズに生活できるのは「信頼」があるからだ。(395)
(周縁的な存在は)「自由」と「平等」を求める人々の、あるいは「豊かさ」を求める人々のピュアな欲望によって、自動的かつ自発的に構築されていく。(401)
2013.04.27 内藤さんのブログで見つける。
2013.08.05 読書開始
2013.08.09 読了 -
あってはならぬもの、ならぬことにされたもの、長谷川氏の本に倣うなら、ディズニーランドのそとの世界についての様々な入口。
ダイヤモンドで連載されてたときの内容に加え、その構造の分析や解説も。 -
売春島における高齢化、原発の影。移動キャバクラのホームレスギャル二人。シェアハウスに蔓延するネズミ講、オフ会ビジネス。生活保護受給マニュアル。見えている世界、見えざる世界。
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現代社会の「周辺」の人たちの物語。
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開沼博『漂白される社会』読了。“周縁的な存在”を見ることで現代社会を考える。社会が純化し“綺麗”になることで周縁的な存在は消えるのでは無く不可視化してゆく。境界線を引くことでむしろ見えなくなる闇。ホームレスギャル、脱法ドラッグなど猥雑さは見え辛くなり続けるのか。無くなりはしない。