経済は「予想外のつながり」で動く――「ネットワーク理論」で読みとく予測不可能な世界のしくみ

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478021811

作品紹介・あらすじ

時にあっけにとられるほど弱々しく崩れさり、時に信じられないくらい逞しく危機を乗り越える。予測不可能に陥った経済をもう一度理解するため、異端のエコノミストが新しいモデル「ポジティブ・リンキング」を提唱する。

感想・レビュー・書評

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  • 経済学の前提となっている「人は合理的である」という定義自体が、じつは非合理であるということを論説している本。仮に合理的でありたいとは思っても、膨大な選択肢から「最適」を求めることは無理だし、それ故にいわゆる「口コミ」に影響を受ける方が多いのは、結果が示している。ということを、色々な角度から説明しているものの、最後は若干お腹いっぱいというか、冗長にも思えなくもない。でもマクロ経済をどうこうしようというのではない限り、実際のビジネス上はこの視点を前提とした方が合理的ではなかろうか。

  •  サブタイトルは、「ネットワーク理論」で読みとく予想不可能な世界のしくみだ。

     人間は合理的な判断のもとで経済活動をしているといった経済学の標準理論では、到底阪大できない不測の事態がいろいろ起こっている。そんな中で、「予想外のつながり」や「ネットワーク」に注目して今の社会を読み解く今回の本。

     著書でも例に上がっているが、ノーベル経済学賞を受賞したような優秀な人でさえ、不測の事態に対応できずに破たんしたロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)はいい例だ。数学を駆使して生き物である経済を完全に理解できるならだれも苦労しない。

     人は不合理な選択を選ぶことがあるとして例の一つとして挙げられているのがアマゾンの「翌日配送」だ。何らかの事情で急いでいる、あるいはせっかちな性格の人は、数日待てば無料配送してもらえるのにも関わらず、有料でもいいから翌日配送してもらう選択肢を選ぶ。「正統派」経済学と言われる世界で人は合理的だという理論と整合性が取れない。

     猫と同じで人間も気まぐれなところあるからなあ。腹がすいているときに、つい必要以上に料理を注文して後で腹が膨れて苦しい思いをすることが分かっていてもそうしてしまう人間の弱さ。数字ばかりを見ていると分からないことはたくさんある。

  • このネットワークは、ミラーニューロンの言い換えかな?という意識で読んだ。結論から言うと、似ているところもあるが、違うところもあった。周りの人の影響を受けた行動、旧来のコネの話。つながり(ネットワーク)という切り口で、経済というよりもっと広く、人の営みを解釈してくれる。日本の失われた20年が肯定的に書かれていところはちょっと好感が持てた。

  • 【由来】
    ・amazonで意志や選択の科学の関連本。

    【期待したもの】
    ・フューチャーセンター的なものを漠然と考えている今の自分にとって「つながり」の考察は役に立つのではないかと
    →そういう内容ではなく、インセンティブよりネットワークの相互影響の方が経済学におけるインパクトが大きいという内容。

    【要約】


    【ノート】
    ・P68まで。

    【目次】

  • レビューはブログにて
    http://ameblo.jp/w92-3/entry-12109313872.html

  • 経済は「予想外のつながり」で動く ポール・オームロッド著
    需要が刺激される仕組み考察

    2015/11/1付日本経済新聞 朝刊

     ネットワークといえば、生産活動におけるサプライ・チェーンが知られている。これは経済学でいう供給サイドの特徴である。一方、需要サイドにも、「つながり」による強力なネットワークがあるという。ユーチューブの動画や音楽配信サイトでは、再生・ダウンロードの回数の分布がランキング上位に極端に集まる。人気者にますます人気が偏り、その他大勢はさっぱり不人気という傾向である。







     こうした現象が起きるのは、消費者が他者のまねをするからだ。消費者が新曲は聞いてみないと良さがわからないと思ったとき、ランキング情報や口コミを当てにして、ダウンロードをしてみる。不確実な選択を迫られると、とりあえずまねをすることが最善策というわけだ。


     需要が消費者同士の口コミでつながっているとすれば、売り手は影響力のある人気ブロガーに好評価を書いてもらって情報を操作しようとする。しかし、多くの場合、その戦術は成功しない。口コミ・マーケティングに再現性がなく、同じことを試みても、同じ結果を導けないという不安定さがあるからだ。


     需要のネットワークへの働きかけが成功しない理由はほかにもある。ネットワークの種類がイメージと異なっている点だ。多くの人は、情報ネットワークが中核から放射線状に延びたハブ・アンド・スポークの連結でつながっていると連想する。


     しかし、消費者のネットワークには中核など存在せずに、知り合いの知り合いがドーナツ状につながる「狭い世間」で成り立っていることもある。「狭い世間」の中での口コミの影響力は、非常に強力なのである。「狭い世間」で影響力のある情報発信をする人は、身近な知り合い同士を飛び越えて、長距離で別のつながりに連結できている人物だ。そうした人物はネットワークの中で区別がつきにくいかたちで隠れているので、外部からの働きかけは困難なのだ。


     本書は、正統派経済学を批判する経済学者がそうした立場から書いているため、一般読者には少しだけ縁遠い雰囲気がある。それでも、日ごろ、「良い製品をつくれば必ず売れる」と信じて苦闘している企業人こそ、需要の背後に隠れているネットワークの原理を知ってほしい。経済学の本を読まなかった人が、異なる知的ネットワークにアクセスしたとき、仕事に役立つアイデアを発見できる確率は高まる。著者も、経済学で良い研究をしたければ、幅広い科学論文を読んで着想することが大切だと喝破している。




    原題=POSITIVE LINKING


    (望月衛訳、ダイヤモンド社・2000円)


    ▼著者は英国のエコノミスト。著書に『経済学は死んだ』など。




    《評》第一生命経済研究所首席エコノミスト


    熊野 英生

  • 経済学の標準理論であるインセンティブが効かなくなったり、社会・経済には大きな偏りができてきたのはネットワーク効果であるとして、その例を500年前の宗教問題(改宗しなければ火あぶり)を皮切りに、プラハの春、アラブの春からユーチューブの視聴などの実例を語る。そして政策などもネットワーク効果を配慮すべきとして、その役割を終えた従来型の啓蒙主義に代えて意思決定の分散化を提唱している。

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