ブランド論---無形の差別化を作る20の基本原則

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478027592

作品紹介・あらすじ

ブランド論確立の立役者、デービッド・アーカーの20年におよぶ研究成果をコンパクトに集約した一冊。数々の理論を"煮詰めた"ブランド論のエッセンシャルな決定版!

感想・レビュー・書評

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  • ブランドを語るなら読まずにはいられない名著。
    ブランドエクイティの概念とその体系化は秀逸。
    理論が主なので実践には現実に合った思考が必要。

  • この本を読めば、ブランド構築に必要なことを網羅的に把握できると思う。
    ━━━━━━━━
    ブランドは“資産”である。
    魅力的なブランドビジョンを掲げ、その価値観を組織自体が体現し、模範可能な機能的便益だけではないMust haveのブランドを目指す。イノベーションによって生まれたブランドは、新たな枠組みを作って差別化して守らなければならない。
    顧客のスイートスポットを考慮したアイディアを、デジタル技術を利用して柔軟な一貫性を保ちつつブランドを構築する。その際、社内ブランディングが有効になる。
    構築したブランドは、他社との関係にも常に目を張りながら、活気を与え続ける必要がある。
    さらに、各ブランドのポートフォリオを、横も縦も意識して拡張していく。その際の組織内のサイロを上手く利用する。

  • ブランドに関する入門書。
    ブランディングやマーケティングに関わる人は一度は読んだ方がいいとのことで、手に取った1冊。

    主な学びは以下。
    ・ブランド・パーソナリティーを決める(例:昔ながらの母親、尊敬できる教師や牧師、堅実、刺激的、信頼できる、上流階級、頑丈)

    ・市場で強いブランドを生み出すには、社員と事業パートナーがブランド・ビジョンを理解し、実現を意識する必要がある
    └ 「ブランドを学ぶ」→「ブランドを信じる」→「ブランドを演じる」の順番

    目新しい内容はあまりなかった。
    ブランディングにより上段から関わるようになったときに読めばまた視点も変わるのだろうか。

  • 第1章 ブランドは戦略を左右する資産である
    第1章のまとめ
    「資産としてのブランド」という考え方の重要性は、どれほど強調してもしすぎることはない。マーケティングの歴史において、実際のマーケティング活動を真に一変させてきた考え方はいくつかある。マス・マーケティングやマーケティング・コンセプト、そしてセグメンテーションは確実に挙げられるだろう。しかし「資産としてのブランド」という見地でブランドとブランド構を捉えることも、実現が容易とは限らないとはいえ、そのリストに加える必要がある。


    第2章 ブランド資産には真の価値がある
    第2章のまとめ
     ブランドは戦略的価値のある資産である。こう宣言することですべてが変わる。ただし、宣言するだけでなく説得力をもって伝える必要がある。そうしないと、ブランドを構築しプラン資産を維持するために予算と人員を割くよう組織を動かすことはできない。説得力を持たせるには、ケーススタディやブランド価値の試算、そしてブランド資産が株の利益に及ぼす効果の定量的研究が心強い味方になる。それでもなお、各々の個別状況に応じた証拠も挙げないと不十分だ。すなわち、ブランドが事業戦略に与える影響を示す概念モデルを開発し、さらに「テストして学ぶ」ための実験を行うのである。


    第3章 ブランドビジョンを生み出す
    第3章のまとめ
     ブランド構築に取り組む際には、方向性と着想と根拠を与えてくれるブランド・ビジョンが不可欠だ。ここまで解説してきた「ブランド・ビジョンモデル」は多次元的で、コアエレメントと拡張エレメントを持ち、必須でないがブランド・エッセンスを持つこともでき、ブランドごとの独自環境にカスタマイズでき、高い理想を抱き、製品市場ごとの違いに応じた修正もできるモデルである。ブランド・ビジョン構築のカギとなるプロセスの一つは、高い理想を掲げたブランド連想をすべて書き出してグループ分けし、それぞれのイメージを命名する作業だ。また、戦略的必須事項を明確にすることで、”希望的観測”と現実的な望みとを区別できる。続く六つの章では、ブランド・ビジョンを血の通ったものにするために頼りにできる考え方を解説する。

    第4章 ブランド・パーソナリティでつながる
    第4章のまとめ
     ブランド・パーソナリティは、製品属性を伝え、エネルギーを供給し、顧客関係を決定し、ブランド構築計画を導き、ブランドに対する顧客の態度や行動を理解するうえで役立つ。適切なパソナリティを選べたかどうかは、ブランドイメージ、ブランド・ビジョン、および、今後パーソナリティが果たすべき役割によって決まる。適切なパーソナリティという恩恵を与えられたブランドは、人々の目を引き、差別化され、ロイヤルティを獲得・維持するため大いに有利となる。なぜなら、パーソナリティを真似することは通常、難しいうえに効果がないからだ。

    第5章 組織とその大いなる目標が差別化をもたらす
    第5章のまとめ
     組織がどのような企業体質、イノベーション、または顧客を重要視するかによって見えてくる「組織の価値観」は、ブランドの差別化をもたらし、顧客関係の基盤を生み出す。この組織の価値観は、真似するのが難しいがゆえに耐久力を持つ。組織の価値観は価値提案を代弁し、それゆえ人々に伝えることができる。エンドーサーとして信頼を得ることができる。さらに顧客と社員に評価される大いなる目標を生み出すことができる。ここで難題となるのは、ブランドにとってどのような組織の価値観がうまく合うかを見出すことだ。もう一つの難題は、その価値観に対する信頼を市場から勝ち取る方法を見つけることだ。

    第6章 機能的便益を超えて
     このように顧客を「合理的な個人」とする見方は、便利ではあるもののたいていは間違っている。ほとんど常に、顧客は合理的とは言い難い。ダン・アリエリーの『予想どおりに不合理』(二〇〇八年、早川書房)など何人かの研究者がそのことを本にしている。我々もまた、その事実を日常的に目にしている。例えば、トラックについての調査を見ると、顧客は耐久性や安全機能、オプション、出力といった合理的な製品属性を最も大事な点として挙げている。しかし実際にはかっこいいデザインや運転が楽しい"、パワフルな感じがする"といった、より漠然とした属性が顧客の購入決定を左右している可能性が高い。顧客自身はそんな飾りのような点が自分にとって本当は重要であると気づかない、または認めないことが多いだけだ。山のような詳細なデータをもとに航空機を購入している航空会社でさえ、最終的には直感に左右されるであろうことはほとんど疑いの余地がない。大半の購入状況では、購入対象から得られる成果を最大化しようという意欲や、そのための時間、情報、能力などが顧客の側に欠けている。そこで機能的便益の代わりに他のブランド連想からそれを予想することで済ますのである。
     さらに悪いことに、機能的便益に基づく戦略は役に立たないことが多いのだ。顧客は、その機能的便益が是が非でもブランドを買うべき理由になるとは説得されないかもしれない。もしくは、ある機能的便益についてはどのブランドでも十分だと思い込んでいることもあるだろう。例えば、ホテル業界ではチェックアウト時の効率性は重要だが、すべてのホテルがだいたい似たような効率だと認識されているのではないだろうか。そして最悪の点は、どのような機能的優位性であれ、競合他社が真似(らしきこと)をするであろうことだ。
     また、ブランドを枠に押し込めてしまう点でも機能的便益に基づく戦略には限界がある。とりわけ市場の変化に対応するときや、ブランドの拡張を手探りしているときにはこの問題が大きい。例えば、ハインツがどろりとした濃いケチャップを象徴するという事実は、ブランド拡張戦略におけるハインツの役割を制限しかねない。一方でイタリア料理を連想させるコンタディーナ・ケチャップは、ブランド拡張の柔軟性が高い。実のところ、製品属性の強みを生み出した源泉がマイナス材料に転じることもあるのだ。

    第6章のまとめ
     ブランド・パーソナリティ、組織連想、情緒的便益、自己表現便益、そして社会的便益はいずれも、ブランド関係とロイヤルティを推進する強力なドライバーであり、製品・サービスに規定される機能的便益と比べて、この二者をより広く、かつ深くすることができる。これらは非常に根源的なニーズと動機に訴えるのだ。これらを使うことで、機能的便益の魅力に基づく自社ブランドと顧客との関係を競合他社が断ち切ろうとしても、それが困難になる。機能的便益を超えることのメリットは非常に大きい。

    第7章 競合をイレレバントにする"マストハブ"
    第7章のまとめ
     競合のレレバンスを低下させるマストハブ"を生み出し、その後競合がレレバントになるのを防ぐ参入障壁を築くことは、ごくまれな例外を除き、成長への唯一の道である。そしてこの道は高い収益という見返りにつながることが証明されている。"マストハブ"の潜在候補は、市場から"マストハブ"と認識されるものでなければならず、またその企業が提供できる製品・サービスを代表するものでなければならない。"マストハブ"戦略のカギとなる要素は、競合がレレバントになるのを防ぐ参入障壁を築くことだ。新たに大きなサブカテゴリーを形成し、市場で大牽引力となるようなイノベーションは滅多に起きないが、それが起きたときは、リスク回避を重視しすぎるあまりチャンスを逃してはならない。

    第8章 イノベーションをブランド化する
    第8章のまとめ
     ブランド差別化要素とは、ブランド化され、積極的に管理運営されるブランド化特徴、成分、技術、サービス、またはプログラムであり、それらはブランド化された製品・サービスのためにかなりの長期間にわたって有意義でインパクトのある差別化ポイントを生み出す。ブランド差別化要素は、イノベーションを自社のものとし、そのイノベーションへの信頼感をもたらし、中身の伝達をより簡単に、より印象的にするための道を提供する。ブランド差別化要素となることが確実であれば(そうでないこともある)、それはブランド・ポートフォリオの強力な一部となる。

    第9章 サブカテゴリ―をフレーミングする
    第9章のまとめ
     ブランドの優れた点を喧伝するのではなく、サブカテゴリーのフレーミングによって競合を排除するまたは不利にさせることを考えるべきだ。強力なフレームは顧客の合理的な情報処理を押しのけ、歪めることで、ブランド選択を左右する場合もある。また、サブカテゴリーのエグゼンプラーになることは、そのサブカテゴリーを自社で仕切るための最良の道である。エグゼンプラーになるためには、プランドではなくそのサブカテゴリーを売り込み、サブカテゴリーのラベルをつくり出して巧みに管理し、市場リーダーとの認識を得ることが必要となる。

    第10章 ブランド構築の着想をどこから得るか
    第10章のまとめ
     ブランド構築予算を使い切るだけで仕事をしたつもりになってはならない。そうではなく、画期的なアイデアを追い求めるのだ。あらゆる場所から着想が生まれる可能性はある。しかし、アイデアが生まれやすくなるための手法とプロセスは多数ある。外部のロールモデルを探す、ブランド・タッチポイントを分析する、顧客の動機や未対応のニーズを見つけ出す、既存の資産を活用する、好機を素早く見極める、などだ。これらと同様に重要なのは、ブランド・ビジョンを後押しする投資を積極的に行う姿勢、そのビジョンを実現しようという意欲、"偉大な"ブランド構築アイデアを生み出そうという大志である。

    第11章 顧客のスイートスポットに注目する
    第11章のまとめ
     製品・サービスやブランド、または企業を売り込む取り組みは、ほとんどのマーケティングの基盤であるが、顧客はそうしたことに興味を持たない。代わりとなるつの方法は、顧客が実際に熱中している活動や関心事、すなわち、スイートスポットに焦点を当てることだ。この際に難しい課題となるのは、自社ブランドが顧客から共通利害を持つパートナーだとみなされるようなスイートスポット・プログラムを生み出すことだ。これは遠大な計画であり、結果としてプランドに対する熱意・好感信頼性と、より深い顧客関係の基盤、および活発な社交のネットワークをもたらすこともできる。共通利害プログラムに至る高速道路の入り口は三つあり、製品・サービスがそのプログラムに埋め込まれているのか、それともリンクしているのか、それとも切り離されているのかによって入り口が異なる。固有で自前のプログラムなら自社でそのコストや進化を管理できるが、すでにブランド力も実績もある外部の既存プログラムを利用するほうが、効果的で現実的な場合も時にはある。

    第12章 デジタル―ブランド構築の必須ツール
     デジタルは人々を巻き込み、豊富なコンテンツを可能にし、狙いを定め、信頼を生み出す。ブランド構築のために、製品・サービスを膨らませ、製品・サービスを支援し、ブランド構築プラットフォームを新たに生み出すか、もしくはその他のブランド構築プラットフォームを増強する(その両者を同時に行うこともある)。デジタルで成功するためには、多種多様な手段に手を出し、統合マーケティング・コミュニケーションを実現し、デジタルは単なる戦術にすぎないとは考えず、実験し、プログラムに耳を傾け、好機を逃さず、コンテンツを充実させ、評価を行うことが必要となる。

    第13章 一貫性が勝利をもたらす
    第13章のまとめ
     ブランドが一貫性を持つことで、効率的なポジションを築くことができ、特定のポジションを所有でき、顧客を快適にし、コスト効率も改善できる。革新的で新鮮で現代的なブランド・プログラムを支え、後押しする。明快で説得力のあるブランドビジョンを最終目標とすべきである。すべてのブランドがそのすべてを達成できるほど恵まれているわけではないが、それでもメリットはあまりに明白だ。
     一貫性とは、何が何でもビジョンを変えないという戦略上の頑固さとは違うし、不十分な戦略遂行にこだわって執拗に繰り返すことでもない。ブランド戦略やその遂行を変更するには非常に現実的な根拠がある。例えば、戦略やその遂行が弱い、もしくは機能していない、市場や事業戦略が変化している、熱意に欠けている、などだ。とはいえ、変更の正当性はしっかり確認すべきであり、変更へのバイアスを見つけ出し、それに対抗することも必要だ。早計な、または正当とされないブランド戦略変更が決定されるのを防ぐため、変更が必要であるとの証明は可能なかぎり客観的かつ包括的であるべきだ。誰かの直感に任せてはならない。

    第14章 社内向けブランディングがカギとなる
     強力なブランドを構築するには、まず内部から始めることだ。市場で強いブランドを生み出すためには、社員と事業パートナーがブランド・ビジョンを理解すると同時に、その実現を意識する必要がある。明快で説得力のある社内向けブランディングによって、ブランドを前進させるプログラムを生み出すための方向性と意欲が得られ、ブランド・プロミスを混乱させたり効果を弱めたりするプログラムを避けることができるだろう。社内で強力なブランドを構築するには、トップ・マネジメントや顧客と向き合う社員、社内のブランドアンバサダーなどを主な対象として、「ブランドを学ぶ」「ブランドを信じる」「ブランドを演じる」という三つの段階を経る必要がある。また、ブランドを生き生きと、本物として伝える一助とするため、テーマ・ストーリーを集め、利用すべきである。

    第15章 ブランド・レレバランスを脅かす三つの要因
    第15章のまとめ
     勝つのは非常に気持ちがいい。しかし、市場の重要分野でレレバンスを失うという「負け」を回避することも、時には勝つのに匹敵するほど実りあることだ。一般に、大きな勝利を当てにするよりも、レレバンスを維持するほうが簡単でコスト効率もよい。そのうえ、将来の勝利に向け戦略のお膳立てができることもある。
     ブランドは、三つのパターンのいずれによってもレレバンスを失う危険がある。サブカテゴリが縮小しているパターンの対策としては、十分でない側面でパリティを得る(同格になる)。一足飛びに競合を追い抜く、ブランドのポジションを変更する。自分のことだけに集中する戦略を採る投資中断または撤退する、などがある。「買わない理由」が生じたパターンは、マイナス点を打ち消すか、話題を変えることで中和できる。三つ目のパターンである活気の喪失については次章で扱う。
     こうしたレレバンスの脅威を見逃さず、敏感でいることは難しい課題だ。脅威への対策は可能だが、それは脅威を見つけ、理解できてこその話である。深刻な病気と闘う場合と同じで、気づくのが早ければ早いほど効果的な手を打つのが容易になる。だが、脅威に気づくのは簡単でないこともある。必要なのは、市場調査能力とデータから知見を読み取る力、そして、市場の変化とブランドの新たな弱点を読み取る戦略的センスのある人材である。

    第16章 ブランドに活気を与える!
    第16章のまとめ
     十分に活気のあるブランドは少数であり、十分すぎるほどの活気があるブランドはまれにしかない。活気の欠如はブランドの世界に蔓延する流行病である。ほぼすべてのブランドにとって、活気を生み出すことは最優先事項である。活気が足りないということは、購入決定時に思い出してもらえる確率が減り、古臭くて陳腐で自分向きではないと認識され、ブランドイメージが劣化することを意味する。だが有り難いことに、ブランドに活気を注入する方法がある。新しい製品・サービスによる活力を利用したり、マーケティング・プログラムを活性化したり、社内外でブランド活性化要素を発見開発する方法だ。

    第17章 ブランドにはポートフォリオ戦略が必要
    第17章のまとめ
     放置していてもうまくいくブランドは多くない。混乱状態に陥り、チャンスを見逃すことになる。そうではなく、わかりやすさ、シナジー効果、レレバンス、ブランド活用、よく練られた各ブランドの役割といったものをブランドにもたらすために、組織はポートフォリオ戦略を練る必要がある。その際は、ブランド関係チャートとドライバーの役割について理解していることが大切だ。ブランドならマスター・ブランドから一定の距離を生み出せる。保証付プランドならさらに距離が広がるし、新ブランドを創造すれば完全にマスター・ブランドから切り離せる。ドライバーの役割とは、そのブランドが顧客の購入意思決定を左右する程度と使用経験を規定する程度を表す最適なプランド・ポートフォリオの構築に決定的に重要なのは、戦略的ブランドを選び出して適切な経営資源を確実に配分することだ。戦略的ブランドとは、現在のパワー・ブランドと将来のパワー・ブランド、そして基点ブランドである。さらに戦略的マネジャーは、ニッチ・ブランドとフランカー・ブランド、そしてキャッシュ・カウ・ブランドを管理運営し、同時に客観的な分析を用いてそれ以外のブランドをポートフォリオから取り除く必要がある。ブランド担当チームがポートフォリオ戦略を正しく行えば、魔法のような成果が生まれることもある。その場合、全体は部分の総和よりはるかに大きなものになるだろう。

    第18章 ブランド拡張の方向性を見極める
    第18章のまとめ
     ブランド拡張は事業基盤を広げ、新たな成長プラットフォームをもたらすことができる。「よい」拡張なら、ブランドが新しい製品・サービスの認知を高め、必要な連想を得る助けとなる。「さらによい」拡張なら、新しい製品・サービスがブランドの認知と連想を強化するうえ、ブランド範囲を広げ、ブランド構築予算を増やしてくれる。しかし「悪い」拡張になると、ブランド連想が新しい製品・サービスの助けにならないどころか、妨げにすらなり得る。「悲惨な」拡張になると、新しい製品・サービスがブランド・イメージを薄めたり、望ましくない連想を生み出したり、市場で失策や事件を起こすことによって、 元ブランドを傷つけてしまう。ブランド拡張の候 補を決めるには、利用可能なブランド連想を見極め、説得力のある価値提案を持つ製品・サービ スを見つけ、その拡張が場当たり的でなく、長期的ビジョンの一部であることを確実にする。

    第19章 垂直ブランド拡張のリスクとメリット
    第19章のまとめ
     垂直方向へのブランド拡張には、抵抗しがたいビジネス上の論理的根拠があることもある。なぜなら、バリュー市場には成長に加えて規模もあり、高級市場では成長と利幅と話題性が手に入るからだ。こうした動きを推進する際に重要なのは、組織が非常に異質なブランド・プロミスを実現できることを確認し、ブランドの選択肢とそれに関連するメリット、リスク、またはその両方を理解することだ。高級ブランドを使ってバリュー市場への拡張を支援する場合、その高級ブランドの価値が下がったり、共食いを引き起こしたりするリスクがある。一方で、高級ブランドを使って超高級市場へ参入すると、信頼性に欠けるかもしれない。サブブランドや保証付ブランドを使えば、こうしたリスクを軽減できる。

    第20章 ブランド構築を妨害する組織内サイロ
    第20章のまとめ
     孤立した製品別・国別・部門別のサイロは、もはや現実的な選択肢ではない。こうしたサイロがあると、一貫したブランド・メッセージを生み、成功事例を活用し、プログラムを規模拡大し、ブランド構築資源を最適配分し、複数サイロにまたがる製品・サービスをつくり出し、必要とされる能力を開発することができなくなるからだ。しかし、だからといって、急いで中央集権化や標準化を進めるべきだとはならない。そうではなく、最終目標とすべきは、孤立と競争の代わりに対話と協力の文化を育てることだ。うまくいくやり方は、CMOチームにありきたりの役割を与える、チームとネットワークを活用する、共通のプロセスとシステムを導入する、ブランド・ビジョンを適応させる手段を持つ、サイロをアイデアの源泉にする、CEOに難しい組織的妥協を実現させる、などだ。機能別サイロの問題は、デジタル時代の到来とともに深刻になっている。このためIMCチームが必要であり、チームの機能を維持していくためには、継続的に生まれる問題への対処法も学んでいかなければならない。

    エピローグ ブランディングの10の課題
    1.ブランドを資産として扱う
     短期的な財務成果を求めるプレッシャーが常にあるうえ、メディアの細分化とも相まって、組織はどうしても目先の戦術と計測可能な数値ばかりを追いかけがちで、資産を築くという目標を無視したくなるだろう。
    2.人を動かすビジョンを持つ
     ブランド・ビジョンとは、差別化を生み出し、顧客の心に響き、実行可能で、変化の激しい市場でも長期にわたって意味を持ち、状況が変わっても適応でき、伝達可能でなければならない。ブランド・パーソナリティ、組織の価値観、大いなる目標、機能的便益からの超越、といった概念は役立つものの、実際に採り入れるのは簡単ではない。
    3.新しいサブカテゴリーをつくり出す
     成長できる唯一の方法は、マストハブ"イノベーションを生み出すことで新しいサブカテゴリーを形成し、競合がレレパントになれないよう障壁を築くことだ。例外は滅多にない。そのためには、重要イノベーションまたは転換イノベーションが必要であり、さらにそのイノベーションが勝てるようにサブカテゴリーの認識を管理運営する新たな能力も必要となる。
    4.画期的なブランド構築を生み出す
     ブランドビジョンを実現するためには、競合のひしめく競争環境を突き抜ける並外れたアイデアとその実行が必要である。この二つは予算規模の多寡よりも重要だ。普通によいだけでは不十分である。コミュニケーションの支配権が顧客の側に移っていることを考えると、ブランドや企業を売り込むよりも、顧客のスイートスポットに目を向けるほうが有効だ。ただし、これも簡単ではない。
    5.統合型マーケティング・コミュニケーション(IMC)を実現する
     IMCの実現はかつてなく困難になっている。理由の一つは、広告、後援活動、デジタルといった多種多様な形態が、互いを補強し合うのではなく、競争しがちなせいだ。別の理由として、メディアの状況とその選択肢があまりにも複雑になったこともある。また、市場の変化があまりに激しいこともある。さらに、製品別国別のサイロが協力と対話ではなく競争と孤立に結びついていることもある。
    6.デジタル戦略を整理する
     デジタルの市場は複雑で変化が激しく、そのうえ市場の大半において視聴者が支配権を握っているという現実から、今までとは異なるマインドセットが必要になる。新しいケイパビリティと創造的な構想、そして他のマーケティング形態と協働する手段が必要となる。
    7.社内向けにブランド構築をする
     IMCの導入も画期的なマーケティングも、社員がブランド・ビジョンを理解し、かつ愛を持っていなければ、実現は困難である。ブランド・ビジョンに大いなる目標を欠くと、そのビジョンに社員を感化する作業がより困難だと気づくことになろう。
    8.ブランド・レレバンスを維持する
     ブランドが直面する脅威は三つある。そのブランドが提供するものを買う顧客が減少する。買わない理由が出現する、活気を失う、の三つだ。それぞれの事態に気づき、対応するためには、その市場に関する深い知識が必要であり、加えて投資と変化を恐れない覚悟も必要だ。
    9.シナジーとわかりやすさを生むブランド・ポートフォリオ戦略を策定する
     ブランドには、よく練られた役割とその役割を支えるビジョンが必要だ。どれが戦略プランドなのかを見分け、そこに資源を割り振らなければならない。また、ブランド差別化要素とプラン活性化要素を生み出し、管理運営することも必要だ。
    10.成長を可能にするためブランド資産を活用する
     ブランド・ポートフォリオは、新しい製品・サービスを可能にすることで、または、ブランド垂直方向や他の製品クラスに拡張することで、成長を促進すべきだ。最終目標は、ブランドが価値を付加でき、同時にブランド自身も進歩するような新しい環境に、そのブランドを当てはめることにある。

  • 東2法経図・6F指定:675A/A11b/Usui

  • 基本原則が20もあるのは、教育の戦略としてはあまり芳しくない。アーカーさんは真面目な研究者と見えたが、ここでは王少し切れ味を期待したい。

  • うーん。訳のせいなのか、元々の内容の問題なのか、まったく書いてあることが頭に入ってこない。ので、途中で読むのを断念

  • ブランドの重要性と構築手法が数多く論理的に説明されていた。
    ブランド構築は個別的戦術的課題ではなく、全体的かつ戦略的課題である。
    社内と顧客の両方に熱意と共感を持ってもらえるブランドビジョンを設定し、ブランドイメージは顧客への約束であると捉えて確実に実行できるような経営資源の構築と組織体制の整備を行い、長期的に一貫したビジョンを訴求する。
    顧客や市場が熱意や関心を持つ領域の活動により、競合から突出した信頼とロイヤルティを獲得できる。
    放置すると同一企業内でブランドは乱立するし、組織のサイロ化によってブランド構築の努力も分散したり干渉しあったり最悪の場合妨害しあったりする。これを防ぐためには、ブランド毎の役割と能力と将来性とシナジー等を踏まえて戦略的にブランドポートフォリオを管理する必要があり、また、組織内サイロは有用であるため構造としては維持しながら、トップの権限と評価基準や用語や価値観の共通化とブランドビジョンの柔軟化(各サイロでの微修正を可能にする)によって協働によるブランド構築努力の成果向上を図る。
    などが印象に残った。

    全体的に、シナジーや、差別化戦略の重要性や、組織文化の重要性や、組織間連携の手法など、経営戦略論全体を、ブランドという視点から説明していく書籍だった。

    ふんだんに実例による解説がなされていて、アメリカの企業や製品·サービスに精通していればより理解できたのだろうが、よくわからないものも多くて、残念だった。

  • 個人でも使える。

  • 戦術から戦略へ
    ブランドは資産
    戦略的かつビジョンを描く
    強いブランドが将来に向けた競争優位と長期収益性の基盤に
    ブランドエクイティを築き、高め、活用する

    ブランドは資産として扱う
    人を動かすビジョンを持つ
    サブカテゴリーを作り出し、成長する
    画期的なブランド構築をうみだす
    競争環境を突き抜ける並外れたアイデアと実行力
    統合型マーケティングコミュニケーションの実現

    デジタル戦略
    他のマーケットと協働 モチベーション維持

    ブランドを資産として成長のために活用

    心に残った内容

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