銀翼のイカロス

著者 :
  • ダイヤモンド社
4.09
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感想 : 776
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478028919

作品紹介・あらすじ

頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、500億円もの債権放棄を要求する政府の再生タスクフォースと激突する。シリーズ史上最大の倍返し!

感想・レビュー・書評

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  • 前作の「ロスジェネの逆襲」まではいたって冷静に読めていたのに、もうこれはだめ。すっかりドラマのキャストが頭にこびりついて半沢は堺雅人に脳内変換だし、中野渡頭取の台詞は北大路欣也の声になっちゃうし、渡真利が出てくるたびに「きゃー、ミッチー!」って嬉しくなる。
    シリーズを通して小説の中で花ちゃんの影は薄いはずなのに、あれ?上戸彩全然出て来ないじゃんとか思っちゃう。
    良くも悪くもドラマの影響ってすごいわ。
    それだけドラマが成功したって事よね。

    池井戸さんは直木賞を取る前から応援していて、友人知人に勧めてはいたもののまだまだマイナーな作家だった。
    直木賞を取ってからはぽつぽつとドラマ化されたり売れてきているなとは思ってみたものの、さほどでもなかった。
    それがなに?、今やこの人気!
    飛ぶ鳥落とす勢いじゃないの。
    この作品だってブクログのレビューの数の多いこと。まだ発売間もないのに。
    すごいわー、驚くばかり。
    作家ってこうやってのし上がっていくのね・・・。(違うか!?)

    さて肝心の中身よ。
    うん、まあまあかしらね。
    もう池井戸さんの作品をいくつか読んでると読めちゃうでしょ、先が。
    だからお決まりの展開を良しとするかって所なんだけれど。
    私はちょっとマンネリ気味かな。
    最後の方の怒涛の展開にはグッと来たけれど、前半はちょっとだれた。
    半沢はもう正直良いかな。
    「空飛ぶタイヤ」みたいな骨太な作品が読みたいの。
    今までにない業界を舞台にした、新しい作品だとなおさら良いかも。

    なんだかこのレビューも黒崎のオネエ言葉に影響されてる気がする。
    たまらないわよね、あのキャラ。
    小説はお腹いっぱいだけど、ドラマはやっぱり見たいわ。
    ミッチーの出番多めでお願いします(笑)

  • やっぱり池井戸さんは、いいなあ。
    こんなふうにうまくいくのは、小説の中だけだとわかっていても、信頼のおける同期の仲間や部下と八方手を尽くして、知力や行動力を武器に難局に立ち向かう。絶体絶命の状況から小さな駒を黒から白へとひっくり返したのをきっかけに、敵の悪意と策略をあぶりだして、自らがけん引するプロジェクトを完成させる。
    それもドラマティックに、水戸黄門のような終盤の大立ち回りを経て、敵ががっくりと地面に突っ伏すまできっちりとけりをつける。
    苦しい気持ちも登場人物たちと一緒に味わっているから、爽快感も十分味わえて、すっきりした気持ちで本を閉じることができる。

    半沢直樹シリーズ第4弾。
    半沢が戻ってきた古巣の銀行は合併10年を経たが、旧銀行同士の勢力争いやいがみ合いが今なおくすぶる。政治家への黒い融資疑惑。破たん寸前のナショナルフラッグの再生に関わって、欲にまみれた人間たちの思惑が複雑に絡み合う。

    半沢の出身銀行がもう一方の銀行を支援し、吸収合併した様相であることから、相手方からの敵意が色濃く、善悪の立場が強調されすぎていたように思う。相手方の銀行の良心ともいえる人が登場すれば、救いがあるのかなとも思う。航空会社には互いに協力し合う、同志ともいえる人が用意されていただけに残念。

    池井戸さんの小説は明日に希望が持てたり、今は気づいていないだけでちゃんと正義が用意されていたりする。一緒に働きたいと思える上司や同僚が多く描かれ、働く人への応援歌になっている。
    上手くいく日やそうでない日。物事が期待通りにに進まない日の方が多い。そんな中で、目の前のことを精一杯建設的に、よりよく解決しようと努力をしているはず。その人たちが、報われる道が用意されていて、励まされる。

    きっと優秀なサラリーマンであったであろう池井戸さんの人を観察する視線の鋭さと温かさ、働く人への敬意が登場人物を存分に描いていて、企業小説の枠を大きく超えた、熱い小説になっている。
    特に本書は、銀行や経済に疎い私にも難解に感じられる描写が少なく、ストーリーに没頭しやすい。
    中野渡頭取の苦悩や人となりが今まで以上に描かれている点も強く印象に残る。仕事に対する誇りと厳しさ、出来うることを精一杯し尽くしたあとの毅然とした決断。部下に対する信頼。企業トップの孤独が滲む。

    次はどのような戦いと奮闘が待っているのか?
    読みおわった瞬間から次回作に期待し、はやる気持ちが抑えられない。

  • 半沢シリーズこれにて完結!

    帝国航空の債権放棄を巡って、東京中央銀行vs進政党のバトルが繰り広げられた。
    旧Tの問題貸し出しの隠蔽疑惑が浮上し、一時は棄却した債権放棄案を突きつけられたが、半沢・富田らの捜索で政府への違法融資を発見する。
    中野渡が紀本に話したこの銀行の未来について、自ら下した経営者の覚悟はぐっと胸にくるものがあった。

  • «どこまでも堅実に誠実に。仕事内容に「プライド」を持て»
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    ※この物語はフィクションです。実在する人物及び団体とは一切関係ありません


    この一文を再確認しないと、今にも怒髪が天井を突き破りそうな方、いらっしゃるんじゃないでしょうか。
    私もそのひとりですが、安心してください、フィクションです(再掲示)
    ジョージ・オーウェル先生の『動物農場』を読んだ時にも感じたのですが、(ロシア革命を上手いこと風刺した名作です。)筆が立つ小説家の方は、人の感情を操作するのがほんっとに上手だなと思いました。(拍手とともに)

    本題ですが、今回ガッツリネタバレを含んでおりますので、以下未読の方はご注意ください。

    ━━━━━━━━━━━━━━━
    今回の話は今までの難題のようにひとつひっくり返せば万事上手くいくという訳にいかないのが難しいところだったなと思います。
    根幹の(経営者が)気難しい航空会社の再建のみならず、(むしろここを早々に味方につけられたのは少し意外!)
    折り悪く政権交代をきっかけに絡んでくる議員の皆様、(顔と前職の評判だけで議員を選んじゃダメ!の好例かと。見極め大事ですね。)
    そしてまさか身内にまで問題を抱えていたとは……(組織全体がピンチなのに、自己保身と半沢憎しで身内まで潰そうとする曽根崎と紀本は本当に何なんでしょうね)
    四面楚歌の状況でも、冷静にひとつずつ問題を切り崩していく半沢に、今回も勇気づけられました。全て解決とまではどうしてもいきませんでしたが、これを機に色々な部分が見直され、再建されていけば良いなと思います。

    今回の話を読んであらためて「プライド」というものを考えた時、これは所蔵する組織や立場によって作られるのではなく、自分の行ってきた、あるいは行っている活動内容によって形作られていくものなんだろうなと思いました。

  • 冒頭───
    序章
    半沢直樹が、営業第二部長の内藤寛に呼び出されたのは、十月の午後五時前のことだった。
    ちょうど朝から降り続いた冷たい雨が止み、雨雲の切れ間から晩秋の錆び付いたような夕焼けがオフィスを染め上げている。デスクからその光景を一瞥した半沢は美しさに息を呑み、心を奪われたかのように動きを止めたが、すぐに視線を引きはがしてフロア最奥にある部長室へと足早に向かった。

    半沢直樹シリーズ第四弾の最新作。
    すでに私の頭の中では、半沢は堺雅人としてスムーズに脳内再生されている。
    テレビドラマの影響というものは恐ろしいものだ。
    今回も同様、半沢が黄門様のように独自の勧善懲悪世界の中で、悪者をバッタバッタと切り捨てる。その爽快感は何物にも替え難い。

    いやあ、気持ちいいですな。正義が悪を徹底的に懲らしめる。現実がこんなだったら、どんなに素晴らしい世の中になるだろう。上司にも、政界の重鎮にも屈せず、飽くまでも正論で立ち向かう半沢。こんなサラリーマンになれたらなあ、と誰もが思うことでしょう。

    もし、これもドラマ化されるとしたら、前回の敵役大和田常務は香川照之が見事にはまったが、今回敵役になる紀本常務は誰が演じるのがいいのだろう。
    今、しきりに考えているところです。

  • だいぶ前に、ドラマ版を見ていたが小説も圧倒的に面白い。少々、半沢に都合良すぎな展開な気もするけど、それを補って余りあるカタルシスがたまらない。これぐらい、自分の意見を言えたら人生かわるんだろうなぁ。

  • シリーズ4作目。半沢が営業第二部長に返り咲いて活躍する。旧Tと旧Sの対立がなぜこんなに根が深いのか、今回で理由がわかった。富岡が良いキャラクターだった。

    めげずに読み進めているけど、このシリーズいまいち没入しきれないのは経済や政治に自分が弱いからだろうか、、、

  •  今度の敵は悪徳政治家と国交省大臣、その私設諮問機関とさらにスケールアップ。徹底的に悪役を糾弾してくれるので気持ちが良い。現実でも半沢みたいな人が出てきて、裏金疑惑やら何やら完膚なきまでに打ちのめしてくれたらいいのに。帝国航空社長は序盤だけの登場でほぼ財務部長が同社の顔となっていたが、再建のための意識改革は現場から自発的に起こってきていたのか。旧Sとか旧Tとか心底下らないと思うが、合併銀行あるあるなのかな。スピンオフではなく続編早く出ないかな。

  • 半沢直樹シリーズ第4弾。
    今回も面白かった。
    銀行の論理と政治の論理のせめぎ合い。
    理不尽さの中、バンカーとしての矜持をいかにして保つのか。
    元ネタも記憶に新しく、わかりやすい展開が、痛快で楽しい。
    黒崎のねちねちぶりが相変わらずで笑った。
    またドラマ化してほしい。

  • 半沢直樹シリーズ第4弾

    “ロスジェネの逆襲”でウルトラX級の大逆転を決め、見事に花形部署の次長に返り咲いた半沢直樹が頭取勅命で “帝国航空” のテコ入れに乗り出す。

    JAL救済と民主党、銀行の反社会勢力とのリンクがモチーフ。
    宿敵 黒崎はかすかに半沢側に有利に動いて見せるが、彼が代表する霞ヶ関の利益もおぞましい。

    世間も銀行も煮え湯を飲まされた結末は誰もが知る所だけに前作のような前向き感はなく どよーんとしたお話でした。

    自殺で締めようとするのはダメですね。

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著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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