「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

  • ダイヤモンド社
3.72
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478039472

作品紹介・あらすじ

「健診を受けていれば健康になれる」「テレビを見せると子どもの学力が下がる」「偏差値の高い大学に行けば収入は上がる」はなぜ間違いなのか? 世界中の経済学者がこぞって用いる最新手法「因果推論」を数式なしで徹底的にわかりやすく解説。世のなかにあふれる「根拠のない通説」にだまされなくなる!

感想・レビュー・書評

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  • 夜型さんの紹介

    2021.2.16  入手しました。少し読みました。当たり前のことを、文章にされている、という印象を受けました。我慢して読んでいきます。
    「軽薄な人間は運勢を信じ、
    強者は因果関係を信じる」
    19世紀を代表するアメリカの思想家・作家であるラルフ・エマーソンの言葉。…そうですか。我慢して読む。50ページまでは、印象変わらず。51ページ、チョコレートの消費量が増えると、ノーベル賞受賞者が増える?のコラムから、面白くなってくる。

    第2章読み終わる。知らなかった言葉がでてきた。
    自分の都合のいい論文の結論だけを正しいとする。このような行動のことを、英語ではチェリー・ピッキング(サクランボ狩り)と呼び、特に研究では厳に慎むべきだと考えられている。残念なことに、昨今の日本のインターネットのまとめサイトでは、このチェリー・ピッキングが散見され、間違った情報が広められていることも少なくない。
     こんなときに用いるのが「メタアナリシス」である。「メタ」とは「高次の」、「アナリシス」とは「解析」という意味で、複数の研究結果を1つにまとめて、全体としてどのような関係があるのかを明らかにする研究手法のことである。
    、、、なるほど。覚えておくことにする。

     半分ほど読む。1600円+税の分の、情報を得ようと、懸命によむ。ほとんど頭の体操である。

    、、、とにかく読み終えた。ああ、ロマンスのかけらも無い文章を読んでしまった。これ、何かりまのの役に立つのだろうか。悔しいので、何度も読むことにする。

    、、、夜型さんは、この本、面白いと思われたのでしようか。この先、面白さが分かるまで、読み込んでいこうと思います。のちに。普段絶対読まない本を、紹介していただきありがとうございました。

    りまの

    • りまのさん
      夜型さん
      夜型さんの クールなところも、嫌いじゃないです。
      夜型さん
      夜型さんの クールなところも、嫌いじゃないです。
      2021/09/07
    • 夜型さん
      りまのさん。はい。べっとりなのところ、好きです。
      りまのさん。はい。べっとりなのところ、好きです。
      2021/09/08
    • りまのさん
      夜型さん、ありがとう。
      おやすみなさい……。
      夜型さん、ありがとう。
      おやすみなさい……。
      2021/09/08
  • 以前読んだ著者の一人・中室牧子氏の『学力の経済学』が面白かったので、本書を手に取ってみた。ちょっと予想とは違って本書は「因果推論」の入門書であり、純粋な学術書。
    因果推論の根底にある考え方を図やイラスト、そして身近な事例などを踏まえて徹底的にわかりやすく説明するために執筆された本である。

    ・健診を受けていれば健康になれる
    ・テレビを見せると子どもの学力が下がる
    ・偏差値の高い大学に行けば収入は上がる

    など、一見して「これはそうなんじゃないの?」と思うようなことがらについて、それが「因果関係」なのか「相関関係」なのかが分かりやすく説明されている。

    「因果関係」と「相関関係」を誤って認識してしまうと、全く違った方向に企業戦略や国家戦略が向かってしまうことが往々にしてある。
    例えば、Aという政策をやったらBという結果がでた。だから「Aをやれば必ずBになる」のかといえば、そうはならない。
    その結果はもしかしたら
    1「まったくの偶然」かもしれない
    2「第3の要素C」が関係しているかもしれない
    3「逆の因果関係」で、BだったからAなのかもしれない
    ということがあるのだ。

    こういったことを踏まえ、本書では日本の各種政策等がきっちりとした検証が行われずに行き当たりばったりで行われているのではないかと思われるような事例も多く紹介されている。

    本書は数式など出てこず、非常に分かりやすく説明されており、ビジネスパーソンとしてはマーケティングなどを担当している人が読んだら非常に参考になると思う(もしかしたら、そのような人にとっては「ここに書いてあることは常識だよ!」と言われてしまうかもしれないが・・・)。
    本書を読んで、さらに「因果推論」を勉強したいという人には専門書もきっちりと紹介されているので、興味を持った人はそちらも読んでみると良い(僕はいいかな・・・)。

  • 相関関係があるということは、因果関係があるということを意味しない。
    相関関係と因果関係の違いについて、学術的な難しい説明は一切なく、素人にも非常に分かりやすく書いてある概要書だった。
    アメリカやメキシコではエビデンスに基づく政策を重視する動きがある。
    わが国はどうか。短期的に得票に結びつくような政策ばかりが議論されてはいないだろうか。

  • 「因果推論」の入門の入門
    普段混同しがちな「因果関係」と「相関関係」をわかりやすく解説してくれています。
    「学力の経済学」からテーマを医療まで広げて、具体的な因果関係の証明方法について様々な手法を紹介しています。

    因果関係を確認する3つのポイントとして
    (1)まったくの偶然ではないか
    (2)第3の変数は存在していないか
    (3)逆の因果関係は存在していないか
    としていて、その3つが存在しない証明として、反事実と比較する事としています。

    本書では
    ランダム化比較試験
    自然実験
    差の差分析
    操作変数法
    回帰不連続デザイン
    マッチング法
    回帰分析
    といった手法を使って、さまざまな因果関係を解説しています。

    んで、
    ランダム化比較試験を用いた分析の結果、
    メタボ検診を受けても長生きにはつながらない
    自己負担割合を高くしても貧困層以外の健康状態は変わらない

    自然実験を用いた分析の結果
    女性医師が担当すると患者の死亡率が低くなる
    出生時体重が重い赤ちゃんは健康状態が良い

    差の差分析を用いた分析の結果
    認可保育園を増やしても母親の就業率は上がらない
    最低賃金を上げても雇用は減らない

    操作変数法を用いた分析の結果
    テレビを見ると偏差値が上がる
    母親が大卒だと生まれてくる子供の健康状態がよい

    回帰不連続デザインを用いた分析の結果
    学力の高い友人に囲まれても自分の学力は上がらない
    高齢者の医療費の自己負担割合が増えても死亡率は変わらない

    マッチング法を用いた分析の結果
    偏差値の高い大学に行っても収入は上がらない

    といった驚きの結果を導き出しています。

    「メタボ検診を受けても長生きにはつながらない」って、意味ないじゃーん!
    「認可保育園を増やしても母親の就業率は上がらない」って本当かよって思います。

    一方で、
    「テレビを見ると偏差値が上がる」
    については、実験結果が1940年から1950年の子供についてなので、現在の子供にそのまま適応は出来ないと思います。

    また、教育ネタでは
    「学力の高い友人に囲まれても自分の学力は上がらない」
    「偏差値の高い大学に行っても収入は上がらない」
    についてはその通りだよなって思います。

    さて、このような分析結果だからどうだという事ではなく、本書の目的は、「根拠のない通説」に騙されないという事。
    因果関係と相関関係の違いを理解して、本当に因果関係があるのかをちゃんと考える様にする事が大事と思います。

    お勧め!

  • 本書は「はじめに」でも記載されている通り、因果推論の根底にある考え方を徹底的にわかりやすく説明するために執筆された、因果推論の「入門の入門」である。
    これまで因果関係と相関関係という言葉を同じように使ってきたが、明らかに因果関係が証明されているもの以外に取り組んでも期待した結果が得られないため、今後はノウハウ本や講演会などでは、その方法が因果関係に基づいているかを見極めて、取り入れる必要がある。


    ・済学では、「2つのことがらのうち、どちらかが原因で、どちらかが結果である」状態を、因果関係があるという。つまり、体力があるという「原因」によって、学力が高いといいう「結果」がもたらされたのであれば、この関係は因果関係だと言える。一方で、「2つのことがらに関係があるものの、その2つは原因と結果の関係にないもの」のことを相関関係があるという。相関関係の場合、「一見すると原因のように早えるもの」が再び起きても、期待しているような「結果」は得られない。因果関係と相関関係をきちんと見分けることが重要なのである。因果関係と相関関係を混同してしまうと、誤った判断のもとになってしまう。

    ・因果関係が存在しないことの何が問題なのか、と思う人もいるだろう。メタボ健診を受けないより受けたほうが、テレビばかり見るよりほどほどにしたほうが、偏差値の低い大学よりは高い大学に行くほうがましだろう、と考える人もいるのではないか。しかし、私たちが何か行動を起こすときには、けっこうなお金や時間かかかることが多いということを忘れてはならない。因果関係があるように早えるが、実はそうではない通説を信じて行動してしまうと、期待したような効果が得られないだけではなく、お金や時間まで無駄にしてしまう。そのお金や時間をきちんと因果関係に基づいたことに用いれば、よい結果が得られる確率ははるかに高くなるだろう。

    ・因果関係なのか相関関係なのかを正しく見分けるための方法論を「因果推論」と呼ぶ。日常生活の中でも、因果関係と相関関係の違いを理解し、「本当に因果関係があるか」を考えるトレーニングをしておけぱ、思い込みや根拠のない通説にとらわれることなく、正しい判断ができるだろう。


    ・2つの変数の関係が因果関係なのか、相関関係なのかを確認するために、次の3つのことを疑ってかかることをおすすめしたい。その3つとは、
    1.「まったくの偶然」ではないか
    2.「第3の変数」は存在していないか
    3.「逆の因果関係」は存在していないか
    である。
    この3つが存在しないということを、どのように証明すればよいのか。その方法が、現実と「反事実」を比較することだ。反事実とは「仮に〇〇をしなかったらどうなっていたか」という、実際には起こらなかった「たら・れば」のシナリオのことを指す。現実に起こったシナリオを「事実」というのに対して、事実と反対のことを思い浮かべるという意味で、「反事実」という。
    ・因果関係の存在を証明するためには、原因が起こったという「事実」における結果と、原因が起こらなかったという「反事実」における結果を比較しなけれほならない。ただし、「だいたい同じ」を「比較可能」と呼ぶことはできない。

    ・素晴らしい偉業を達成した人のサクセスストーリーは、事実の部分だけしかとらえておらず、反事実はわからない。それにもかかわらず、事実の部分だけを見て、あたかも因果関係があるかのように錯覚し、やみくもにテレビを見るのを禁止したり、やたらに健診を受けたりしたら、偉業を達成するどころか、ただ単にお金や時間のムダ遣いになってしまう力もしれない。

    ・因果関係を明らかにするための方法は1つではない。しかし、それらの方法に通底している目標は、「比較可能なグループを作り出し、反事実をもっともらしい値で置き換える」ということなのである。

    ・経済学で使用するエビデンスという言葉は、因果関係を示唆する根拠のことである。このため、経済学者は、単なるグラフやチャート、アンケートの結果などはもちろんのこと、単に相関関係を示したのにすぎない分析のことをエビデンスと呼ぶことはない。

    ・エビデンスが高い順は以下の通りです。それぞれの詳細の説明は省力する。
    1.因果推論の理想形「ランダム化比較試験」
    2.たまたま起きた実験のような状況を利用する「自然実験」
    3.トレンドを取り除く「差の差分析」
    4.第3の変数を利用する「操作変数法」
    5.ジャンプに注目する「回帰不連続デザイン」
    6.似た者同士の組み合わせを作る「マッチング法」
    7.すでに手元にデータがあるときによく用いられる「回帰分析」

    ・貧困アクションラボは「ランダム化比較試験の専門機関」とも言うべきもので、ランダム化比較試験を用いた研究ばかりしているという徹底ぶりだ。彼らは「政治的流行に左右されやすい政策を、エビデンスに基づくものにする」という目標を掲げ、ランダム化比較試験を「政策評価の理想形」と呼ばれるまでにその地位を押し上げることに成功した。経済学では、因果推論に基づいて政策の効果測定を行う研究領域のことを「政策評価」と呼んでおり、近年その体系化が急速に進展している。

  • 因果関係‥2つのことがらのうち、どちらかが原因で、どちらかが結果である状態

    相関関係‥2つのことがらに関係があるものの、その2つは原因と結果の関係にないもの

    相関関係の場合、一見すると原因のように見えるものが再び起きても、期待しているような結果は得られない。

    世の中には相関関係を因果関係と思わせてることが多いんだな。

  • 筆者のそもそもテーマ選択から大好きで、世間やニュース報道がもう少しこの考え方に寄れたなら世界はいくらか生きやすいだろうなと思います。

  • 因果関係:原因が起きたから結果が起きた。
    相関関係:原因と結果の関係ではない
    確認チェック3つの点
    1全くの偶然ではないか
    2第3の変数は、存在しないか
    3逆の因果関係は、存在していないか

    交絡因子:相関関係に過ぎないものを因果関係があるかのようにみせる情報

    エビデンスの階層 
    メタアナリシス、ランダム化比較試験、自然実験と疑似実験、回帰分析

    統計的に有意
    観察された差が偶然の産物である確率、5%以下のとき統計的に有意という。偶然でない意味のある差ということ。

  • 自分にあまり考える力がないので、人が言っていることを鵜呑みにしがちだが、それではまずいと感じる今日この頃。データを分析して語られることはとてももっともらしいけど、意図的に事実が曲げられていたり、分析者もよくわかっていなくて正しく伝えられていなかったりすることがあると思う。ときどき、グラフなどを見て、おかしいなぁと思うことがあるが、そういうものに限らず、正しく分析されているのか意識する必要がありそうだ。相関関係があることを、経験的に因果関係があるように捉えてしまうのは危険。むしろ逆の結果が出て、実験を中止したこともあるなどは驚いた。私は分析する立場にはないが、嘘を人に伝えないように、情報の正しさについて、もう少し気をつけたいと思った。おわりにに書かれていた日本の政治のことは、本当に共感。論点をずらされていることに気づかず、マジョリティを支持してしまう怖さ。このような本を読むとまともな国民に近づいてきた気がする。

  • ◯安易に前後比較デザインを用いて政策を評価することは「スケアード・ストレート」のように期待した結果が得られないどころか、むしろ社会的な害悪となる可能性がある政策を高く評価してしまうということになりかねない。(112p)

    ◯「政治的流行に左右されやすい政策を、エビデンスに基づくものにする」ことが重要なのではないか(187p)

    ★因果推論の本。ランダム化比較試験、自然実験、差の差分析、操作変数法、回帰不連続デザイン、マッチング法を説明している。最後に回帰分析についても紹介している。『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』と同じテーマ。どちらも読みやすい。

  • 「原因と結果」の経済学 中室牧子、津川友介著
    社会に生かせる統計の手法

    2017/4/1付日本経済新聞 朝刊
     本書は、社会科学の実証分析において最も重要な役割を果たす「因果関係」の検証方法をわかりやすく解説した啓蒙書である。著者はそれぞれ教育経済学、医療経済学の専門家で、この分野における様々な研究を使用して、因果関係を検証する統計的な手法を、数式やテクニカルな用語をあまり用いず、身近な問題を取り上げて説明している。
     具体的には「メタボ健診を受けていれば長生きできる」「男性医師は女性医師より優れている」「認可保育所を増やせば母親は就業する」「テレビを見せると子どもの学力は下がる」といった普段は特に疑問を抱かず受け入れている通説に対して、関係はあっても、原因と結果の関係にはない。つまり相関関係はあっても、因果関係は成立していないことを明らかにしている。
     因果関係の検証方法として「ランダム化比較試験」「自然実験」「疑似実験」(差の差分析、操作変数法、回帰不連続デザイン、マッチング法)といった分析手法が紹介される。これらの方法は因果関係のチェックで必要な(1)「まったくの偶然」ではないか、(2)「第3の変数」は存在していないか、(3)「逆の因果関係」は存在していないか、という3つの条件を完全あるいは部分的に満たしている。
     実験的な手法を使用しない政策評価分析は信頼性に欠けるという認識で経済学者の見解は一致している。そのなかでも「ランダム化比較試験」が因果関係を明らかにするという点では最も理想的である。しかしながら、費用、倫理、厳密な実験の実施や現実の問題への適用で問題は残り、観察データを用いた「自然実験」「疑似実験」の手法を、与えられた状況に応じて適宜分析に使用するよう本書は提唱している。
     最近は、実証的な証拠に基づく政策を推進する必要性が強調されるが、そのためには統計の整備に加えて、本書で紹介された研究手法による分析を蓄積する必要がある。特に医療や教育は私たちの生活の質を大きく左右する重要な政策であり、政党やイデオロギーに左右されないデータや証拠に基づく議論が必要不可欠である。本書は政策論議の深化に必要な有益な指針を提供する。
    (ダイヤモンド社・1600円)

    ▼中室氏は慶応大准教授。著書に『「学力」の経済学』。津川氏は米ハーバード公衆衛生大学院リサーチアソシエイト。

    《評》学習院大学教授 
    乾 友彦

  •  統計的なデータの見方の基礎がきちんと書かれた良書。

  • 因果推論について「因果関係とはなにか」「相関関係とはなにか」という大前提の説明から始まり、続いて複数の実際の試験・分析方法について各章で詳しく説明されています。それぞれの試験・分析の解説では具体的な研究が例として出てくるので、非常にイメージしやすくわかりやすい構成です。またその研究内容自体も自分たちの生活に馴染みある教育、医療分野のものなので、研究内容を見ているだけでもためになりました。

    ところどころ図解もありますが、とてもシンプルな最低限の図です。本全体を通して、カラフルな図解がふんだんに使われたような親しみやすさはありません。ですが文章も解説も非常にわかりやすいので、ビジネスで分析や評価をしなければならないけれど苦手意識があるといった人や経験のない新入社員でもすらすら読み進められると感じました。

  • マクロ経済学の授業内容とシンクロしていました。
    学歴と収入の関係や認定保育園と母親の就業率など気になるトピックをサクサクさばいてくれます。
    読みやすいうえ、自分がレポートなどをまとめる際の参考にもなりました。

  • たまたま著者インタビューを見かけて、子育てにも大きなヒントになるというようなことが書いてあったから、買いました。因果関係と相関関係の違いを再確認できたりいろいろ勉強になったけど、これは学術書ですよね。通勤電車で気軽に読むには難しい。

  • 因果関係と相関関係の違い、そして因果関係を検証するための様々な手法について書かれる。内容的には統計経済学の初級的なもので、もう少し掘り下げた内容を期待していたため、少しものたりない。
    入門書的な扱いであれば、読みやすく良書だと言える。

  • 相関関係と因果関係は、別ものであり、それを正しく見分けるための方法論を「因果推論」という。

    本書は、因果推論を学ぶ「入門の入門」のための本であり、数式が出てくるわけではないため、統計学や数学に苦手意識を持っている人でも楽に読み進めることができる内容。

    相関関係があるからと言って必ずしもそこに原因と結果の関係があるわけではない。では、どうすれば相関関係と因果関係を見分けられるのか。その具体的な手法を本書ではジュエリーショップの広告と売上の関係やタバコと疾患、学歴と収入などの実例をもとに紹介している。

    まず相関か因果かを見分ける基本的な考え方は

    ・全くの偶然ではないか
    (ジブリ作品がTV放映されると米国株価下落?ジブリの呪いは単なる偶然?)
    ・第三の変数(交絡因子)は存在していないか
    (体力がある子供は学力高い?それって単なる教育熱心な親の影響?)
    ・逆の因果関係は存在していないか
    (警察官の人数が多いところは犯罪が多い?それって逆じゃない?)

    という3つの視点を持ち、「仮にしなかったらどうなっていたか」の反事実を示すこと。

    ただし、時計の針を巻き戻せない以上、反事実を観察することは不可能である。
    (ドナルド・ルービン「因果推論における根本問題」)

    そのため、反事実をもっともらしいデータで補完し比較可能にしていく手法が必要となる。

    それらの手法が以下である。
    ・ランダムに介入群と対照群に分けて2群を比較するランダム化比較試験
    ・外生的なショックによって介入群と対照群に図らずとも自然に分かれた2群を比較する自然実験
    ・介入群と対照群で介入前後の結果の差をとって2群を比較する差の差分析
    ・原因のみに影響を与える第三の変数を用いて2群を比較する操作変数法
    ・カットオフ値(50人以上など)の前後で2群を比較する回帰不連続デザイン
    ・共変量(店長の年齢など)を用いて似た者同士の比較するマッチング法

    それぞれの手法が成立するための前提条件はあるが、2群に分けて比較することで、因果を推論をしていくというのが紹介されている。

    ***
    因果推論の解説の中で、興味深かったのは実際の時事問題を扱った「認可保育所を増やせば母親の就業が増えるのか」という話。
    「日本死ね」という待機児童の社会問題を思い浮かべると、解決策として一見もっともらしく思える。しかし正しく施策効果を評価するためには保育所を増やすことが母親就業の解決策になるのか、因果なのか相関なのか以下の見極めが必要。

    ・認可保育所があるから母親が就業する(因果関係)
    ・就業する母親が多い地域ほど認可保育所が多い(相関関係)

    因果関係を分析する手法の一つである「差の差分析」によって行われた調査によると、なんと「因果関係を見出すことができない」という分析結果になったという。

    その理由は、就業意欲の高い母親は認可ではない私営の保育所に子供を預けることで既に就業をしており、認可保育所が増えたとしても、それらの層が私営⇒認可へ流れるだけであって、未就業の母親の就業を促したわけではなかったためという。むしろ最も代替関係があったのは、祖父母の育児であったと推測されている。

    では、認可保育所を増やすことには何も効果がなかったのだろうか?本書では次のように結論付けられていた。

    "認可保育所の整備が母親の就業に因果効果を持っていなかったとしても、保育所が保育士のような専門的な知識や技能を持つプロフェッショナル集団であることを考えれば、子供の発達や健康にはプラスの影響がある可能性があることを指摘、、(略)。認可保育所の整備は母親の就業のためというよりは、子供のよりよい将来のためと位置付けるほうが適当なのかもしれない"

    この理由の部分が分析の肝であり、手法を用いて得られた分析結果に対して「なぜ?」「だから何なの?」byちきりん)を問うことで、合理的な結論を導く力も、因果推論の考え方と同様に必要なものだと感じた。

    ***
    統計学の教科書(SAS)に面白い記述。
    相関係数は求めたにしてもそこから因果関係が導けなければ意味がない。結局そこには何らかの合理性が存在しなければ使い物にならないからだ。
    仮に何らかの合理性が存在していたとしても、その合理性を裏付けるだけの理由を説明できなければ、これもまた同様に使い物にならない。

  • 因果関係と相関関係の違いを分かりやすく解説してくれる。因果関係の検証方法について書かれており、大変参考になった。

  • 入門者向け。非常にさらっと読める。これに加えて、いくつか同じ分野の本を読んだ方がいいと感じた。

  • 世の中にあふれるもっともらしい通説を事例に、
    正しいデータ分析の在り方を教えてくれる1冊。

    「メタボ健診を受けていれば長生きできるのか」
    「テレビを見せると子どもの学力は下がるのか」
    「偏差値の高い大学に行けば収入は上がるのか」
    それぞれがまるで「原因」⇒「結果」(因果関係)のように論じられることがあるが、実は因果関係はないことも多いことを、各章で丁寧に説明してくれています。

    第1章だけでもとても面白い。
    第2章以降で様々な分析手法が具体的に書かれていますが、
    それも経済学の専門書のように難しくなく読みやすいので、
    あっという間に読めます。

    情報過多な世の中で、
    事実を見極めるスキルを持っていたいと改めて思いました。

  • 世の中の出来事は「因果関係」ではなく「相関関係」のものごとの方が多い。これを確かめるための分析法を基礎から教えてくれる書だった。

    これから論文で書くテーマとしたら、第5章の「操作変数法」をいかして書くかなとか思った。
    香川県の条例で注目を集めた、「ゲームの時間」と「学力」の因果関係を調べるために、操作変数を「ゲーム機を所有しているかどうか」に置くとかかな。
    まだ詳細は考える必要があるけど。


    全く統計の知識がない自分にとっては、因果推論の5ステップがわかり良かった。

  • まさかのゼミ卒業後に読了。

    将来管理会計をするにあたり、会計の数字の増減の原因を正しく認識する力が必要になると考え、手に取った。

    世の中に氾濫するデータを正しく読み取ったり、根拠のあやしい通説を正しく理解したりするのに、因果推論は非常に重要な方法論である。
    また、時代の流れに左右されやすい政策も、因果関係をはっきりさせることができれば首相や政党が変わってもその政策を長期的に実施できる。首相や政党がコロコロ変わりやすい日本にとって大事。

    計量経済学の本も引き続き読もうかな。
    大学在学中にしとけという話ですね

    • わっかーさん
      僕まつおさんにいろいろおすすめ図書教えてもらいましたよ!LINEで送りましょーか?
      僕まつおさんにいろいろおすすめ図書教えてもらいましたよ!LINEで送りましょーか?
      2020/04/25
  • 統計学、因果推論の入門書。

    一見「因果性」のように見えても、それは「相関関係」に過ぎない。世に出回った噂は因果関係と相関関係を混同させたものが非常に多い(ex.健診を受けるほど長生きする、運動神経が良いと学力が上がる)しかし因果関係の検証には反事実が必要であるが故に、因果推論は非常に難しい。疑似実験等を応用させるしかない。

    初心者の自分にとっても分かりやすい本だった。例示も分かりやすく、とても読みやすい。(1日で読めた)これを機に統計学の知見を深めたい。

    quote:
    軽薄は人間は運勢を信じ、強者は因果関係を信じる
    ーラルフ・ウォルド・エマーソン

  • これはちゃんと研究前に読んどけばよかったかも

  • 因果関係と相関関係を相当混同していたことが分かった。

  • 【因果推論の入門書】
    単なる相関関係のデータを見れられ、さも因果関係があるように結論づける情報が多くなっている。その中で自分が騙されないようにするためにも、因果推論を知ることは実はこのネット社会で知る必要性が高まっているのかもしれない。
    本書の第1章は、そういう意味でも是非読んでおくべき内容。

  • 初めて因果推論に関して触れるには、このくらいの内容でありがたかったです!
    数式なんかも出てきませんし、図が多いので直感的に理解しやすく、かなり面白かったです。

  • 因果推論の入門書です。
    因果関係と相関関係についてややこしいと感じましたが、全体的に分かりやすく、丁寧に解説してありました。

    因果関係を確認する3つのチェックポイント。
    1「まったくの偶然」ではないか
    2「第3の変数」は存在していないか
    3「逆の因果関係」は存在していないか

    根拠のない通説が山ほど溢れる世の中ですが、因果関係があるかどうかを考える癖付けをして、正しい判断ができるようになりたいと思いました。

  • 因果推論について解説した本。相関関係があることと因果関係があることは別物、ということについて、数々の研究を取り上げて説明している。

    読んでいくとよくわかると思うが、科学的根拠に基づいていないにも関わらず、政策決定者(や政策の意思決定に大きく関わる「世論」を形成する国民)の価値観や信念、時には感覚や経験に基づいて政策が決まることが往往にしてありうる。医療の世界ではもはや常識となっているが、同様に"Evidence-Based Policy"を強く進めていくことが必要と感じた。そのために、政策に関わる人(政治家や行政職など)はもちろん、多くの人がこの本の内容を理解し、実践していくことが重要と思った。

  •  2018年、一発目はこの本です。今年は忙しくなりそうですが、しっかり読書をしていきたいと思います。

    p.186「本書でもたびたび、永田町・霞ヶ関で行われている政策的な議論を取り上げたが、残念なことに、現在の政策的な議論が因果関係を示唆するエビデンスに基づいて行われたものとはとうてい言いがたい。それどころか、選挙が近づくと、短期的に得票に結びつくような政策ばかりが議論され、これまで公約とされてきたことが覆ったり、突如として何の根拠もない政策が強引に推し進められたりして、結果として納税者である国民の利益が著しく損なわれているのを目にすることも多い。」

     『「学力」の経済学』を読んで以来、根拠って大切だなと思う今日この頃です。限りある税金は効果的に使ってほしいものですが、アベノミクス、一部の人には効果があるようでも庶民には実感なし。さらに、実感がないくらいならましですが、大きな反動が来そうで怖いです。私たちがこういう本をしっかり読んで、選挙の時に、政策を見極めて投票できるようにならなければダメですね。そのためには、国会で中身のある議論をして欲しいです。

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