システムを「外注」するときに読む本

著者 :
  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478065792

感想・レビュー・書評

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  • 発注者から眺めた、IT関連のプロジェクトの怖さ、難しさを言語化した問題提起の書。

    情報システムの構築にあたっての最上流 要件定義の以降の工程をとらえて、しかも発注者の立場からシステム開発を論ずる書です

    プロジェクト中に発生するさまざまな問題に対して、ベンダと一緒に対応したり、ベンダの作成したシステムをテストするなど、発注者にもたくさんの役割を果たす義務があります。
    これを、「ユーザの協力義務」といい、その義務を果たさない発注者は、使えないシステムに膨大なお金を払った上に、損害賠償まで請求される危険すらあります。
    プロジェクトの失敗とは、「納期オーバ」、「コストオーバ」、「完成したシステムに当初望んだ通りの機能が備わっていない」という3つのいずれかに当てはまるケースです。

    本書の目的は、「本当に役に立つシステム」を完成させるための最低限の知識をお伝えすることです。
    著者は、ソフトウエア開発会社にて、プロマネを経験し、ITコンサルとなり、経産省にて政府CIO補佐官として政府の基幹系システムに従事した経験をお持ちです。

    システム開発プロジェクトは発注者が構想し、リードする時代に入ったといっています。

    気になったのは、以下です。

    ・いきなり要件定義書を造ってはいけない。
    ・まずは、社内全体の業務を俯瞰して、全体最適の視点から業務の問題点や新しいシステムが実現することで改善される点、全社的なメリットなどがひと目でわかる資料を作成します。
    ・そのためには、まずは、業務フローを作成します。そして、その中にさまざまなことをメモ書きしていきます。
    ・ベンダーにどんな機能や性能をもつシステムがほしいかを決めて、ベンダに伝えることは発注者の役割になります。
    ・そのためには、2つの業務フローを作成します。AsIs:現在の業務の流れ、ToBe:現在の問題点を解決して実現する新しい業務の流れ
    ・システム化を行うのは、効果が明確に説明できるところのみを対象とします。そのために、システム化する範囲は何度も考えて決定します。
    ・業務フローをつくっていい点は、会社の各部門が有機的につながってこそ機能するということが、1枚の図でよくわかることです。
    ・次に業務フローに合わせて、社内の発注者の役割を付していきます。①エンドユーザの責任者、②プロジェクト承認者(社長など)、③プロジェクトマネージャー、④システム担当者
    ・そしておもな作業は、さらに工程別にブレークダウンします。①要件定義、②委託先選定、③プロジェクト計画、④設計・要件変更、⑤受け入れ試験、⑥移管・サービスイン

    ・システム開発成功のキモは、受託ベンダーの「リスク管理」にある
    ・ベンダーの能力は「プロジェクト管理計画」で評価できる
    ・プロジェクトを管理するためのツール、プロジェクト計画書、プロジェクト管理計画書、WBS,リスク管理票、課題管理表、故障管理表、
    ・プロジェクト管理工数は、全体工数の10%前後、プロジェクトの進捗遅れは、5日以上遅れたらアラートを上げる

    ・ITシステムは、ビジネスの主役になりつつあり、本業と同様重要な課題になっている。
    ・各部からは、多忙を理由に要望の取りまとめに協力してくれないケースが多い システム担当者が孤立してしまいがち。

    ・ユーザからは、ベンダー自体のリスクは見えにくい。いわば盲点となっている。
    ・ベンダーのリスクもユーザと共有すべき リスクチェックポイント、リスク管理表

    ・ベンダが勝手に作業を進めても、黙認すると「合意」したとみなされる
    ・要件定義終了時に宿題と、方針をチェックポイント会議で確認する
    ・技術的な話は、最終的にベンダが責任をもつが、それを決める過程では発注者だって口出ししてかまわない
    ・気になることがあれば、何度でもエンジニアに質問したり設計のやり直しを依頼する
    ・もやもやが消えるまで質問や注文を繰り返すことで、発注者もベンダも、今のやり方の正しさに自信が持てる

    ・業務フロー図に、現状の問題だけでなく、自分たちのいいところ、残したい業務も書いて貼っておく

    目次

    はじめに 発注者は「お客様」ではなく「プロジェクトメンバー」
    第1章 システム作りは業務フロー図から
    第2章 発注者がこれだけは知っておくべき最低限のこと
    第3章 失敗しないベンダの選び方
    第4章 社内の強力を得るために
    第5章 リスク管理で大切なこと
    第6章 ベンダとの適切な役割分担
    第7章 情報漏えいを起こしてしまったら
    エピローグ

    ISBN:9784478065792
    出版社:ダイヤモンド社
    判型:A5変
    ページ数:336ページ
    定価:1980円(本体)
    発売日:2017年06月14日第1刷

  • 普段システムを受注して作る側なわけなんですが、一方で発注側支援コンサルみたいなこともやっていて、お客様側の話も理解したいなと常々思ってました。
    わりと最後の方ですが、発注側がベンダのキャリアパスとか考えてモチベートしていかないとみたいな話があって、まさか、お金出す側がそんなこと考えないといけないなんて、、と思いますが、私も最大限気を遣っていただいているのだなと思うと、なかなか胸熱だったりします。
    しかし、ヒューマンドラマの最後のオチ、あれはないわあ。

  • 物語仕立てで読みやすい。ストーリー形式で問題定期と解決策が示される為、未経験の人にとってはとても読みやすく、勉強になる本だと感じた。

    ただし、作中でも記載されていたが、あくまで参考書であって、教科書ではない。

    ITは新しいことばかりなので、日々情報収集や勉強が大事だと痛感した。

  • 日頃のベンダー管理がうまくできていないと感じていたので、業務改善の参考にしたいと読んでみた。
    ストーリーは置いておいて、物語仕立てなので、それぞれの立場でどう考えており、どんなことに気を付ければ良いかが、分かりやすく学べた。
    特に自社内のリスクも含めて、ユーザーと共有することについて、考えさせられた。
    言っても意味がないし、聞いてもらえないだろうと諦めてしまったことを思い出した。
    このように、教科書に載っていないような、他人の失敗を疑似体験できる良い本だと感じた。

  • めっちゃ面白い。プロマネの仕事やりたくなる。業務ベースで起こりうる問題をストーリー仕立てで提示していて読みやすい。
    71/100

  • システム開発はもめるもの。
    もめる前に知っておきたいこと。

  • 物語形式で話が進んでいく&1章ごとにテーマが分かれているため
    非常に読みやすい。
    ただ、読みやすいが故に読み終わった後にしっかり振り返らないと
    ビジネス小説を読んだだけ、になってしまう。

    というわけで振り返り。
    1章:主人公(白瀬)が社内システムを作ることになり、
    システム要件定義作成に四苦八苦する。
    →業務フロー図には目的・理想・懸念を書く
     自社の強みを活かすことを忘れない

    2章:ベンダが途中で撤退。その途中まで開発した分の費用を請求してくることに
    →要件の必要性・十分性をチェック
     フィーリングマップを作る(どの部署のどの役職が笑顔or不機嫌?)
    3章:規模の小さいベンダに大きなPJを任せたくないが・・・
      失敗しないベンダの選び方
     →リスク管理ができているか。ベンダ内部の問題も発注者に開示しているか。
      発注者はベンダの問題を取り込もうとしているか。
    4章:社員がシステム要件作成に協力してくれない
     →社員の意識を変えるため、経営トップが人事権を使う
      PJオーナーは社長。
    5章:ベンダの選定はばくちのようなもの?
      →ベンダが悪い、といっても得られるものはない。
       ベンダのリスクも共有する。3章同様。
    6章:発注者はどこまでわがままを言えるのか
      →モヤモヤが消えるまで質問や注文を繰り返す。双方ともやり方の正しさに自信が持てる
    7章:情報漏洩への対応
     →事前対策、事後対策を立ち上げ段階から考えておく。

  • 業務フローにメリデメ追記、社内巻き込み

  • 知ってるつもり、復習のつもりで読んだのだが、
    全然できてない、全然足りなかった。

    失敗したプロジェクト(検収とか納品はした)の分析・総括ができてなかったんだな。

    発注者・ベンダ、その時々でどちらの立場でもあるわけだが、
    大変に勉強・参考になりました。

    これ、ITだけじゃなく様々な企画のプロジェクトへ通じると感じました。

  • 面白い。システム開発のベンダーに何かを注文したとしても、発注主はただ任せるのでは駄目だというのがよく分かる。こういう世界に無知な自分にとってはとても参考になった。

著者プロフィール

ITコンサルタント、政府CIO補佐官。システム開発・運用の品質向上や企業のIT戦略立案の支援を行いながら著述、講演も行う。現在は、政府CIO補佐官としてデジタルガバメントの推進やIT化による行政改革などに取り組む他、行政におけるAI活用の研究を行っている。

「2018年 『ある日突然AIがあなたの会社に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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