- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478102091
感想・レビュー・書評
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週刊文春の編集長が、仕事のノウハウを述べたもの。大手雑誌編集長だけあって、大きな組織を切り盛りし、維持発展させている努力は並々ならぬものがあり、仕事に対する熱意や仕事術には参考となることが多い。ただし、結局は、スキャンダルを追いかけることに熱心なだけであって、社会に何の役に立っているかは大いに疑問。政治家にしろ芸能人にしろ、大物の足を引っ張ることにしか生きがいを感じていない組織はおかしい。世界や日本、社会をよくするためにどうするのかといったビジョンは全くなく、逆にそのような社会のために頑張っている人や組織をいかに潰そうかと考えているようでならない。週刊文春のように、くだらないことしかしていない組織にお金を出し続ける人はいないだろうから、衰退していくのも目に見えているのではないか。
「(スキルやノウハウと無縁)世の中で起こっている様々な出来事、あるいは話題の人々を「面白がる」気持ちがスキルやノウハウよりも大切だ。世の中の空気を肌で感じ、あらゆるモノゴトに敏感になること。それが、すべての原点である」p5
「取材源の秘匿は何よりも厳しい掟」p24
「苦手な人と立て続けに会っていると、自分のテンションも落ちてくる。疲れてしまう。やはり、会って元気が出る人と会いたいものだ」p39
「バットは振らなければ絶対ボールには当たらない」p44
「おもしろいことに、肩書きが外れても人間同士の関係を維持するタイプの人の方が、その組織の中で圧倒的に出世しているということである」p49
「組織というのは大きくなるほど「結果が読めない」ものに対して臆病になるのが普通だろう。売上が立つのかどうかわからないものに投資することを嫌う」p72
「「マルコポーロ」は95年2月号で「ナチのガス室はなかった」という記事を掲載した。程なくしてイスラエル大使館から抗議が来た。ユダヤ人団体による広告引上げキャンペーンなどがあり、結局雑誌は廃業してしまった」p167
「リーダーの首は組織を守るためにある」p185詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
昨今のスクープ連発で世の注目を浴びる『週刊文春』の現編集長が、自らの仕事術を開陳したもの。
『週刊文春』におけるスクープの舞台裏が明かされるのはもちろん、編集者として駆け出しだったころからの思い出を振り返っており、ちりばめられたエピソード自体に読み応えがある。
たとえば――。
〝山口組系若頭射殺事件の関連で、ある大物組長の取材をしたときには、こんなこともあった。取材の最後にその組長に写真撮影をお願いすると、「写真十年や」と断られた。「ワシらの世界では、近影が出るとそれだけ的にかけられやすくなるから、寿命が十年縮むんや」というのだ。その取材からまもなく、インタビューした幹部3人のうち2人が射殺されたときには本当に驚いた。〟
昨年から今年にかけて続々と刊行された“『週刊文春』本”のうち、私が読んだのはこれが3冊目だが、3つのうちいちばん面白かった。
「仕事術」本としても、編集者の仕事に限らない普遍的なノウハウが多数紹介されている。
たとえば以下の一節などは、あらゆる営業仕事に通ずる極意だろう。
〝1回断られたぐらいであきらめてはいけない。あなたの熱意はその程度のものなのか、ということだ。
よく現場の人間にも言う。断られたところから俺たちの仕事は始まるんだ、と。「ファーストアタックは失敗だったけど、次はどういう口説き方があるか」を全力で考える。編集者や記者の仕事は、口説く仕事だ。そして、私たちの仕事にはマニュアルがない。「こうすれば口説ける」という答えはない。そこは、みんなそれぞれ考えることしかない。〟
また、編集長としてどう人材育成してきたか、編集部の結束力をどう高めてきたかが随所で綴られており、リーダー論・組織論としても価値がある。
印象に残った箇所を引用しておく。
〝 職人肌の編集長、デスクほど、「美しい雑誌」を作りたがる。だが、週刊誌は美しさより鮮度。突貫工事でもイキのいいネタを突っ込むべきなのだ。丁寧に積み上げたものを最後にガラガラポンする蛮勇もときには必要なのである。〟
〝伸びる記者かそうでないかを見分けるのは簡単だ。例えば「あれやってくれ」と指示をする。その指示に対して「指示どおりやったけどダメでした」と報告に来る記者は、そこまでだろう。本当に優秀な人間は「言われたとおりやってダメだったけど、こうやったらできるんじゃないですか」と返す。「こうすれば、記事は形になりますよ」「実際、こうやってみました」とくれば言うことなしだ。〟
〝社交辞令で終わらせない。これは、仕事ができる人の特徴だ。何よりスピードがすごい。「○○さん、今度紹介してくださいよ」「いいよ」と言って、その場で電話をかける。「今、俺の目の前に文春の新谷さんって人がいるんだけど、ちょっと今度会ってやってよ。電話代わるから」といきなり電話を渡されるのだ。
私もデスクや現場から「人を紹介してもらえませんか」と言われたら、なるべくその場で電話をかける。スピード感が大切なのだ。「どうしようかな」とウジウジ寝かせていたらネタは腐ってしまう。〟 -
不倫や過去を暴露して文春砲と称されるスクープを連発している週刊文春に対しては正直あまり良いイメージはない。
しかしこの本を読んでみるとなるほどと思える部分も多い。
考えてみたら文春の記事を読んだことが一度もない。
興味がないから、好きになれないからと言って避けるのではなく、今度、もし気になる記事があったらまずは読んでみようと思います。 -
意気込みは伝わる‼️
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現役の週刊文春の編集長が、実名で自分の仕事のやり方を(しかも文藝春秋からではなくダイヤモンド社からの出版物で)書いた本。
数々のスクープを飛ばし、修羅場をくぐってきた敏腕編集長のものすごいノウハウが詰まっているのかと思ったが、書かれていることは至極まっとうなビジネスの基本ルールというか、イロハのようなことばかりで、かえって安心した。
「雑誌の編集長というと特殊な職業のように聞こえるが、実際はそんなことはない。仕事の本質、核の部分は、他の職業と全く変わらない。むしろ、ビジネスの根幹である「人と人の関わり」を究極的に濃密に日々行っているのが我々の仕事なのだ。」(P.3 はじめに)
これまでのスクープの苦労話やスキャンダラスな事件の裏話的なエピソードがふんだんに散りばめられていて、読者の下世話な興味にもこたえているが、読んでいて感心するのは、著者が「読者ファースト」を貫き「「スクープを狙う」という戦い方を変えていない」(P.190)ことだ。
このシンプルな目標に向かって、編集長や記者は何をしなければいけないか、一糸乱れぬ統率力が発揮できていると感じる。こういう組織は強い。
「幹を太くすることは何でもやる。読者との双方向性を強化し、情報収集ネットワークを拡大するために「文春リークス」を立ち上げる。取材費を補填し、かつスクープの価値を他のメディアに理解してもらうために、記事使用料をもらう。これらは全て幹を太くする施策だ。このいちばん根幹の部分は全く揺るがない。その強い幹から、どういうふうに枝葉を張り巡らせるかという発想が大切なのだ。」(P.229)
「「見たい、読みたい」という読者のニーズに即応できなければ、ビジネスとして生き残れない。」(P.239)
ビジネスを伸ばし成功させているという一面では肯ける面はあるものの、スクープ至上主義の頂点にいる人間に物事を正しく見えるのか、多少うさんくさい思いが残ったのも確か。 -
チームの作り方、上司とは
そう言ったものに対する1つの解答かもしれないと思う内容でした
著者自身が何回も相反するものを含有する雑誌だと言っているように感じたけれど
この語り口調も中身も、好き好きあるかなと思います
ただ、理想に向かいひたむきに、著者曰くフルスイングする姿勢には頭が下がります -
10/31 借ります(神田)→返却済みです
3/14 借ります(安田) -
スクープを連発して、週刊誌の先頭を走り続ける文春の編集長。一昔前のテレビディレクターのように、イケイケな感じの人かと思いましたが、仕事の進め方はいい意味でとても、普通な感じでした。
とはいえ、自分が目をつけられたり、書かれたりするのは本当にいやです。そして、新谷編集長自身も感じているように、叩いていいとなったら徹底的にたたきまくる世の中になってしまったことも同感です。
お金を出して文春を買うことはありませんが、ギリギリの線で仕事をしつづけるリーダーのあり方を学ぶには、とてもいい本だと思います。 -
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