幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」

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著者 : 橘玲
  • ダイヤモンド社 (2017年6月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478102480

幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」の感想・レビュー・書評

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  • この本は幸福を研究しています。橘さんの悪魔的思考で幸福を考えている、というところが面白い。現代の、この日本という国で、どうやって幸福になることができるのか?それを3つの資本と3つの資産を使って考察しています。その結果、橘さんが最終的に提示する「幸福になる方法」というのは、とてもシンプルな答えです。確かになるほどねぇー、と思いました。だけど、それを書くとネタバレになるので書きません(笑)気になる方は本書を読んでみて下さいね。

    今回は、本書の中で面白いと思った考え方をひとつ紹介いたします。それは「幸福製造装置」という仮想モデルを使って、幸福を考えているところです。それによれば「幸福というアウトプット」を得るには、自分の中にある「幸福製造装置」に、3つの資産と資本、金融資産、人的資本、社会資本を材料としてインプットしなければならない、ということ。
    結果、出来上がる製品としての「幸福」の質と量は、インプットする量と、各自が持っている「幸福製造装置」の変換効率によって変わってくるということ。変換効率というのは同じ量と質の資本や資産をインプットしても、人によって幸福に感じる度合いは違ってくるということですね。これを変換効率と表現しています。

    この「幸福製造装置」の具体的な例を挙げてみると、例えば200円という金融資産を使って、缶ビールを買う。すると「うまいなぁ〜」という幸福を感じる。つまり、200円が「うまいなぁ〜」という幸福に変換された、ということですね。で、その「うまいなぁ〜」という幸福感の量と質は、同じ200円を使っていても、人それぞれ全く違ってくる、これが「変換効率」ですね。人によっても違うけど、同じ人でもタイミングによって、調子によっても変わってくる。このあたりは調整は難しい。

    だけどはっきりしているのは「幸福製造装置」にインプットするものがゼロならば「幸福」は出来上がらないということ。3つの資産と資本の話に戻りますが、金融資産とはそのままお金のこと。人的資本とは個人でいうと労働力や能力ですね。多くの人は労働という形で「人的資本」を労働市場に「投資」することによって、「お金」という「金融資産」を得る。それから社会資本というのは人とのつながり、などですね。

    話は脱線しますがこの3つを使って、橘さん言うところの「人生パターン」というのを分析しているところも面白い。

    例えば「プア充」と言われる人たち。マイルドヤンキーなんて言い方もしますね。地元で昔からの仲間と楽しく生きている人たち。彼らはそれほど収入も高くないけれど、結構、幸福度が高い。なぜなら、仲間のつながりという「社会資本」をたくさん持っているからなんですね。

    対して「リア充」と言われる方たちはどうか。たいてい趣味に、付き合いに「金融資産」を投資しているので、それほどお金はない、だけど、友人が多く「社会資本」が多い、加えて仕事も出来たりするから「人的資本」も多い。

    レアなパターンとしては「金持ちトレーダー」というのもいる。ひたすら部屋にこもって株やFXなどの投資に励んで成功している人たち。この人たちは、当然マーケットを読む能力と、自分をコントロールする意志力という「人的資本」をたくさん持っている、加えて成功しているわけだから「金融資産」も持っている。ところが、部屋にこもりきりで友達とは疎遠、ということで「社会資本」はあまり持っていない。

    最近現れたのが「ソロ充」という人たち。それほどお金もないので「金融資産」はない。しかし人付き合いを極力減らすことによって、つまり手持ちの「金融資産」を、自分の趣味や能力向上に振り向けることによって、広い意味での能力「人的資本」をたくさん所有する。変わり者っぽいですが、そうとも限らず、起業したばかりの人たちも、当然付き合いより仕事ということになるのでこのパターンに入る。

    と、その他にも、いくつかのパターンがあるのですが、それぞれが、それぞれにたくさん持っている、または持っていない資本と資産があって、それをどのように投資していくのか?ということが大事。で、問題は持っている資産や資本がひとつしかないと、それを失った際にはかなり危険、つまり幸福が製造できなくなる、つまり「不幸」になってしまう、ということ。

    上の例ですと、ソロ充は「人的資本」ひとつしかないので、例えば何らかの事情があって、仕事をすることができなくなった、つまり「人的資本」を失ってしまうと、他の資本に頼れない。また「プア充」はもしも、つながりから、追い出されてしまった、またはその集団が崩壊してしまった場合、他の資本がないから厳しい。ということで、やはり常に複数の資本と資産を持っておくようにしておかなくてはならない、ということ。

    おっと、ネタバレはまずい、とかいいつつ、ほぼほぼ、橘さんの結論に近づいてきてしまった(笑)ということで、このあたりで止めときます。でも、ここに書いている以外にも、悪魔的に面白い事がたくさん書いてありますよ(笑)

  • この本が残酷な所は、これから、個人が、
    「好きなことで生きていく」「得意なことで生きていく」ことが、
    「正しい生き方」であると、言っている点だと思います。

    少し前の、日本では、それらの価値観は、「正しくない生き方」とされ、
    全否定されていました。強者以外は、それらの言葉を口にはできませんでした。
    「そんな人生甘くないよ」、「もっと現実をみろ!」というのが、
    その価値観を否定する、もっともスタンダードな言葉です。

    しかし、ここ十数年で、日本と日本人を取り巻く環境がガラリと変わってしまいました。
    相変わらず、政府は、経済成長、経済成長と言っていますが、
    成長できる資源は、日本は、どんどん減少しています。
    多くの識者が指摘していますが、日本の国際競争力は、
    もはやかなりの分野で、失われています。
    これから、競争力をつけるといっても、その担い手である、
    人材の絶対数が著しく減少するので、
    今の状態を維持するのも、やっとだと思います。

    また、上場企業が倒産することは、珍しくなくなりました。
    リストラは今や当たり前となり、組織に依存して生きるというのが、
    かなりリスクな生き方になりました。

    日本は、超高齢化社会+人口減少社会+少子化+労働者数の減少という
    未曽有の社会に突入し、社会の様々なシステムが機能しなくなっています。

    橘氏の一連の著作は、個人が経済的合理的に生きるには、
    どうすればいいか、個人が国家や組織に依存せずに、
    どう生きればいいかという視点で書かれたものが多いですが、
    この著作では、個人の生き方をリスクヘッジする上での
    最適化する「生き方」を述べています。

    それが、自分の持っている資源(人間関係、能力、資産等)を、
    「好きなこと生きていく」、「得意なことで生きていく」へ投入するというやり方です。
    これが、最も個人を最適化できる生き方です。

    何かに依存することでしか安定を感じられない、そうでなければ、
    不安になるというのが、
    多くの日本人のメンタリティーです。

    以前は、会社が豊かになれば、個人が豊かになりました。
    今は、全くそうではありません。
    それは、世帯収入を見ると、はっきりします。
    94年比較で、2割以上収入が低くなっています。一方GDPは増加しています。
    一生懸命努力してきましたが多くの日本人は、貧しくなりました。
    今後は、もっとこの傾向が顕著に出てきます。

    以前まで美徳とされていた人生観や労働観が、全く役に立たなくなっています。
    それを認識する上で、橘氏の著作が一定の指示を受けるのは、非常に頷けます。

  • 久しぶりの楽しい読書。
    言われなくても80歳まで働くつもりでいたが、金融資本、人的資本、社会資本という概念で整理され、低金利時代の今、資産運用には期待できなのだから、働いて人的資本を労働市場に投入すべき、とズバッと書いてあって、とてもすっきりした。なるほど、そうだよね、それでいいんだよね、と。好きなことに人的資本を集中投下する、ということも、言われなくても分かっているつもりだし、そうしたいと思っていたけれども、改めていろいろな根拠をもとに説明されるとこのままではだめだ、という気持ちが強くなった。うじうじ悩んでないでアクションを起こさねば、と背中を押される。
    そして、これまで自分がサラリーマンとして、いったい、何に苦労をしてきたのか、その背景が的確に表現されていた。私はマックジョブを正社員という立場でやってきたわけで、それは常に間人としてであり、チームのことを考えて自分の休みを調整したり、やりたくない仕事も「ない袖は振れない」と上司に言われ、チームのために引き受け、人権侵害を感じながらも、我慢してやってきた。こんな生活をしていては決して幸せにはなれない。もう若くはなく、既に手遅れかもしれないけれど、今すぐ動くべきなのかもしれない。
    この本のメインターゲットは私のような読者なのだろう。きっとマーケティングは抜かりなくやられているはずだ。そのマーケティング戦略にまんまとはまってしまった。たくさんの読者に受け入れられ、書籍の売上を伸ばすことも想定して書かれたのだとしたら、私のようなサラリーマンは多い、ということだろうか。著者の意見に反論はなく、100%agreeだが、きっとそうではない読者もいるはずで、逆にそういう人たちの意見を聞いてみたいと思う。

  • 日本人は幸福になろうと「強いつながり」を求めるが、その結果、(個人でなく)「間人」として人間関係の中に埋め込まれ、身動きが取れなくなる。そして長時間労働や過労死、過労自殺。

    日本は「自分の人生をどの程度自由に動かすことができるか」の国際比較で57カ国中最下位。


    人生の土台となる3つの資本=資産。
    「金融資産」自由、
    「人的資本」自己実現、
    「社会資本」共同体、人間関係、繋がり

    幸福の製造装置(ブラックボックス)

    資本を一つしか持ってないとちょっとしたきっかけで貧困や孤独に陥る。

    「自由」とは「誰にも、何者にも隷属しない状態」のこと。そのためにはお金が必要。

    テレビ局の番組の政策方針。粉飾決算。不正燃費データ。。生活を会社に依存するサラリーマンであれば、会社の方針に従うのは(隷属するのは)当然かも。ただそれを「自由」とは言わないだけ。

    幸福の話をするには「限界効用の逓減」に触れなければならない。暑い日のビールの美味しさ(効用=幸福度)は1杯目が最高で、2杯3杯と追加していくと減っていく(効用の変化=限界効用)。これはお金にも当てはまる。日本では年収800万円(世帯年収1500万円)を超えると幸福度はほとんど上昇しなくなる。お金がありすぎるてお金のことを考えすぎると不幸になる。

    資本主義ってなんだろう?資本主義=資本市場とは「株式会社によって自己組織化した複雑系のネットワーク」株式会社とは複数の株主が有限責任で事業に投資することでリスクを分散する仕組み。また株式会社の特徴は借金(融資など)で株主資本にレバレッジをかけること。

    マイナス金利の世界では、賢い人は利潤を最大化するために金融資本よりも人的資本を有効活用する。すなわち「働く」こと。

    お金持ちの倹約のルール「同じ結果を得られるのなら、安ければ安いほどいい」これで自然と倹約することになる。

    収入は多ければ多いほどいい。でも同じ収入なら(あるいは多少少なくても)自己実現出来る仕事がいい。

    「知識社会化 + グローバル化 + リベラル化」の三位一体は知能の高い人が大きなアドバンテージを持つ社会。そこから脱落した人の怒りは社会の保守化=右傾化を招き、トランプ現象となっている。

    企業であれ、個人であれ、知識社会に適応できなければ脱落するだけ。

    日本企業は本社採用と現地採用といった国籍差別や年功序列、終身雇用といった日本的雇用制度を取っている限り(グローバル化リベラル化に対応できず)負け続ける。
    サラリーマンは日本だけ。

    オンリーワンでナンバーワンの戦略。スペシャリストになるには、1)好きなことに人的資源の全てを投入する。2)好きなことをマネタイズ(ビジネス化)できるニッチを見つける。3)官僚化した組織との取引から収益を獲得する。

    世の中になぜ会社があるのか?それは「分業した方が効率がいい」から。

    「幸福」は社会資本からしか生まれない。

    人間関係には「愛情空間~5」「友情空間、イツメン~30(政治空間~150)」「貨幣空間~∞」

    日本の社会における「友だち」は厳密なルールがある。中学、高校の同じクラス。先輩、後輩とは違う。「友だち」は奇跡。

    「統治の倫理」(権力争い、武士道、国盗り、天下平定、勝者総取り、嫉妬、憎悪、殺人、敵を殺すことでより大きな権力を獲得する、戦争に駆り立てる血なまぐさい世界)と「市場の倫理」(お金儲けゲーム、商人道、一番にならなくてもほぼ裕福になればハッピー、信頼関係、契約履行、他人と協力)

    あなたは個人主義(欧米人型、かけがえのない自分)か間人主義(アジア人型、共同体の中の自分、他人の上から目線を不快に思う)か?

    日本的経営はアメリカ企業をも変容させた。ボスではなく同僚・仲間によるチェック(チームワーク重視)。製造業、レストラン、介護などの労働現場での生産性を上げた。

    「幸福な人生」の最適ポートフォリオは、大切な人との小さな愛情空間を核として、貨幣空間の弱いつながりで社会資本を構成することで実現できる。強いつながりを家族に最小化し、それ以外の関係は全て貨幣空間に置き換える。その上で一つの組織(伽藍)に生活を依存するのではなく、スペシャリストやクリエイターとして人的資本(専門知識)を活かし、プロジェクト単位で気に入った仲間と仕事をする。

    本当の自分はどこにいるか。あなたの過去にいる。本当の自分は幼い頃に友達グループの中で選び取ったキャラなのかもしれない。大人になるということは子供時代のキャラを捨てることである。心の中に子供時代のキャラが残っていて、「見つけてよー」と訴え続けているのかも知れない。

    幸福な人生とは。

    ①金融資産:「経済的独立」を実現すれば(金銭的不安から解放され)自由な人生を手にすることができる。
    ②人的資本:子供の頃のキャラを天職とすることで「ほんとうの自分」として自己実現できる。
    ③社会資本:政治空間から貨幣空間に移ることで人間関係を選択できるようになる。

    ①金融資産は分散投資する。
    ②人的資本は好きなことに集中投資する。
    ③社会資本は小さな愛情空間と大きな貨幣空間に分散する。

  • 感想として言いたいことは沢山あれど、今回は仕事に関する章の部分だけ。
    昨今芥川賞で、津村記久子のポトスライムとか、コンビニ人間とか、仕事を題材にしたものが授賞するのはやはり偶然じゃなくて、仕事する上でのこの閉塞感が、まさに現代という世相を表しうるキーポイントなんだろう。
    個人と間人の話はモロ、身につまされる、ていうか今までの価値観が揺らぐ。自分みたいなマックジョブに属する凡人は、間人にならざるを得ないと思ってた、まさに「自ら自分を律する」性質の人間だ。
    これは、非スペシャリストだし、非正規だし、新卒でなく三十路過ぎてから中途でもぐりこんだ会社にとっては不要因子かもという負い目から、また、そもそも元々が自己評価が低い人間であることも起因してるのかな。であるからして、自ら進んで会社にとって都合の良い人(同僚にとっても上司にとってもね。)に成り下がっていたのか。かと言って、組織の中で働くって、そういうことだと思っていたし、そこは私の仕事の契約外です!とつっぱねるのもなんか違うぞ、とモヤモヤしてしまう性分だから、結局は自分が気持ちよく働く為にそうしてる部分も有り、これからも、意識するしないに関わらず、そうして愚直に働き続けるしかないんだと思う。まあ、プライベートもまさに自分で自分にストレスをかける性質だし、一種の生き方というか。それとも、このままこうして働き続けることはどんどん自分の首を締めていく行為であるから、根本的に意識改革しなくてはいけないのかもしれないのか。
    側から見たら、やっぱり都合の良い人間なだけで、誰も評価してくれてないのかも。バカな人間だと揶揄されてんのかな。だから軽んじられるのかな‥‥。私は間違っていない、いや間違ってたのかも‥というエンドレスのぐるぐる。
    幸福になる糸口は橘氏曰く、好きなことに人的資本を、全て捧げなさい!(但し20代後半が決断のリミット)なワケだけれど、35歳過ぎちゃったアホな自分は、もう軌道修正できないのか。そして、35歳転職限界説により、会社という組織に中途半端な状態のまま(えーと、今現在直接雇用の非正規です。)転職も出来ずにがんじがらめに身柄を拘束されてしまうのか。
    とかウダウダ考えながらも、今日もパブロフの犬化した自分は相も変わらずキチンと遅刻もせずに会社に行ってしまうのです。

  • 人が幸せを実感するために必要な要素を3つに分類している。

    社会資本:地元のつながり
    人的資本:成人してからの人のつながり
    金融資産:土地や不動産など

    ①金融資産はこれから重要性が下がる
    勝手にこの著者のことを投資のスペシャリストだと思っていたのだが、そんな著者が本書では「経済成長率がゆっくりになっていくこれからの時代においては金融資産の重要性は下がっていき、むしろ人的資本=すなわち労働を有効活用した方がいい」と主張するのは興味深かった。また読者が読み進めるうえでもちそうな疑問も解説の中で丁寧に回答してくれるので、結果的に完全納得してしまった。笑

    ②好きなことを仕事にすることの大切さを問いている
    近年流行り?の幸福学=社会資本を強化(強いつながりを大切にしよう)といった主張が多い中、著者は「強いつながりは最小限に留めたうえで、弱いつながりをたくさん持つ生き方」="フリーエージェント"戦略という主張に帰結する。

    ③3つの資本全てを高めることはできない
    金融資産の増大と社会資本の増大は相反するため。なんとなくわかることではあるが、遺伝学と歴史からの解説が多くの気付きを与えてくれる。

  • これからの時代を生きる人に読んでほしい本。生きるために大切なお金、好きなこと、社会に対する向き合い方が理解できるからこそ、今持っている不安に確信を持って向き合える。

    大好きなものにしっかり力を注いで、自分の成長に向き合い、社会や人に価値が提供できるようになれば、自分で生きる道を切り開くことができる。

  • 私たちが自分に似たひとのようになりたいと思い、自分に似たひとたちを真似しようとすることから説明できます。ヒトの脳は、無意識のうちに周囲のひとびとの感情を真似し、吸収するようにできています。意識のうえでは他人とちがうことをしたいと思っていても、無意識のレベルでは群衆に合わせているのです。

    (「幸福」も「不幸」も周囲の人に伝染する:橘玲の「幸福の資本論」
    ダイヤモンド・オンライン2017.11.8
    http://diamond.jp/articles/-/148548?page=2

    【目次】
    Part 0 「お金持ち」と「貧乏人」の三位一体幸福論
     1 幸福の3つのインフラ
     2 最貧困から人生を考える
     3 人生の8つのパターン
    Part 1 自由のための金融資産
     4 お金と幸福の関係
     5 マイナス金利の世界
    Part 2 自己実現のための人的資本
     6 人的資本は「富の源泉」
     7 クリエイティブクラスとマックジョブ
     8 サラリーマンという生き方
     9 オンリーワンでナンバーワンの戦略
     10 超高齢社会の唯一の戦略
    Part 3 幸福のための社会資本
     11 友だちとはなんだろう?
    12  個人と間人
     13 うつは日本の風土病なのか?
    14  幸福になれるフリーエージェント戦略
     15 「ほんとうの自分」はどこにいる?

  • ・若者が徒手空拳で大きな富を合法的につかめる時代がやってきた。

    ・全ての富は差異から生まれる。

    ・サラリーマンは、職業ではなく身分である。

    ・官僚化した組織との取引から、収益を獲得する。

    ・人間関係を選択できるのが「フリーエージェント戦略」

    ・幸福の統一理論
     1)金融資産は分散投資(普通預金と外貨預金)する
     2)人的資本は、好きなこと(=得意なこと)に集中投資する
     3)社会資本は、小さな愛情空間(家族、恋人)と大きな貨幣空間に分散する

  • 橘玲氏の作品は、タイトルだけ変えて中身は同じということがなく、いつも新鮮な内容が詰まっています。今回も今現在の世相を反映させたうえで、日本人が幸福になるための条件を非常に分かり易く解説してくれています。少しでも幸福になれるように、本書の内容を忘れずに日々の生き方に反映させられればと感がさせられました。購入しても損をしない本です。


    ・幸福の条件として、①自由、②自己実現、③共同体=絆の3つが挙げられます。この3つの幸福の条件は、3

    つのインフラ、①金融資産、②人的資本、③社会資本に対応しています。
    ・資本というのは「富を生み出すち力」のことで、資産は「富を生み出す方法」です。
    ・ひとは金融資本、人的資本、社会資本を「運用」することで"富"を得します。金融資産は(不動産を含めた)財

    産、人的資本は働いてお金を稼ぐ能力、社会資本は家族や友だちのネットワークのことでした。この3つの資本=

    資産の合計が一定値を超えていれば、ひとは自分を「貧困」とは意識しません。逆にいえば、これらをすべて失

    った状態が「最貧困」です。
    ・私たちはみな「幸福の製造装置」を持っていて、そこになんらかの刺激をインプットすると、あるメカニズム

    によって幸福に変換されアウトプットされるのです。このとき、幸福の大きさを決める要因は2つしかありません

    。インプットの量(あるいは質)と「製造装置」の変換効率です。
    ・インプットされるのは金融資産、人的資本、社会資本ですが、その量は多ければ多いほどいいというわけでは

    なく、人的資本と社会資本では量よりも質が重要になります。さらに同じインプヅトでも大きな幸福を感じるひ

    とと、なにも感じないひとがいるように「幸福の製造装置」の変換効率は一人ひとりちがっており、その仕組み

    はいまだブラックボックスです。
    ・しかしそれでも、ひとつだけ確かなことがあります。インプットがゼロであれば、幸福というアウトプットも

    ゼロになるはかない、ということです。このことから、資本をひとつしか持っていないと、ちょっとしたきっか

    けで貧困や孤独に陥るリスクが高くなることがわかります。
    ・「自由」とは「誰にも、何ものにも隷属しない状態」のことで、そのためには一定の条件を満たさなければな

    りません。この条件とは、端的にいえば"お金"です。「自由」を経済的な意味で定義するならば「国家にも、会

    社にも、家族にも依存せず、自由に生きるのにじゅうぶんな資産を持つこと」になります。これが「経済的独立

    」です。このような考え方を「市場原理主義」とか「ネオリべ」と呼んで嫌う人がいます。
    ・私たちは人生のさまざまな場面で、きびしい選択を迫られます。そして多くの場合、「自由」ではなく「隷属

    」を選ばざるをえません。なぜなら、国家や会社、あるいは夫(家)に生活を依存し、経済的に独立していないの

    ですから・・・。
    ・限界効用の逓減は、うれしいことにも悲しいことにもいずれ慣れてしまうという、ヒトの心理にもとづく普遍

    的な法則ですから、(ほとんど)あらゆるものに当てはまります。もちろんお金も例外ではありません。それでは

    お金の限界効用はどのように逓滅するのでしょうか。これはもちろん個人によってなりますが、アメリカでは個

    人の年収7万5000ドル、日本では年収800万円(夫婦なら1600万円)を超えると幸福度はほとんど上昇しなくなる

    ことがわかっています。興味深いことに、アメリカと日本で幸福度が一定になる金額はほとんど変わりません。
    ・誤解のないようにいっておくと、これは「幸福になるのにお金は関係ない」ということではありません。逆に

    、「お金は幸福になるもっとも確実な方法た」ということを示しています。一方で、「お金のことを考えすぎる

    と不幸になる」ということも示されています。切実なのは貧しい人たちで、家賃や光熱費、子供の授業料などを

    常に考え続けていることで、大きく幸福度を引き下げるのです。
    ・また金融資産においても、お金と幸福度のアンケート調査によれば、金融資産が1億円を超えると幸福度が増え

    なくなることが示されています。
    ・複雑系の特徴は、ルールはきわめて単純でも、多数のプレイヤー(要素)同士が相互に影響し合うため、その結

    果がどんな超高速コンピュータを使っても原理的に予測不能なことです。これが株式投資に必勝法がない理由で

    あり、(ごく少数を除いて)すべての専門家が2007年の世界金融危機やその翌年のリーマンショックを予測できな

    かつた理由です。
    ・界最高の投資家であるウオーレン・バフェットですら、「私の成功のいちばんの理由は米株式市場の長期的な

    成長に乗つたこと」と述べているように、予測不能な複雑系の市場から利益を得るには運も必要です。
    ・経済成長が右肩上がりなら、個人投資家は株式市場に長期投資することで、(時間を味方にっけて)機関投資家

    を上回る利益を手にすることも可能でした。しかし経済成長率もインフレ率も金利もすべてゼロという超低体温

    の経済環境では長期投資もほとんど効果はなく、銀行の普通預金を「無料の貸金庫」として使うのがもっとも賢

    明な「投資法」になるのです。
    ・金融資産の価値が減るということは、相対的にその他の資本=資産の重要度が増していくということです。金

    利収入を期待できないのですから、金融市場から富を獲得するよりも人的資本を労働市場に投資する方がはるか

    に効果的なのは明らかです。
    ・知識社会というのはその定義上、知能の高いひとが大きなアドバンテージを持つ社会です。知識社会化が進む

    ということは、仕事に必要ときれる知能のハードルが上がるということでもあります。そう考えれば、「知識社

    会化=グローバル化=リベラル化」が三位一体で進むにつれてそこから脱落するひとが増えるのは避けられませ

    ん。これが「中流の崩壊」と呼ばれる現象で、彼らの怒りが社会の保守化1右傾化を招いています。
    ・マックジョブはマニュアル化された拡張不可能な仕事で、達成感はないかもしれませんが責任もありません。
    ・スべシャリストとは、クリエイティブクラスのなかで拡張不可能な仕事に従事するひとたちで、大きな責任を

    担うかわりに平均して高い収入を期待できます。
    ・クリエイターはクリエイティブクラスのなかで拡張可能な仕事に挑戦するひとたちで、いちど大当たりすれば

    信じられないような富を手にすることができますが、大半は鳴かず飛ばずのままです。
    ・これは、どれがよくてどれが悪いという話ではありません。若者は果ての国での拡張可能な(夢のある)仕事に

    魅力を感じるでしょうが、ブラックスワン(きわめてまれな成功)に出会えるのはごく一部のひとだけです。スべ

    シャリストの仕事は高給で安定していますが強い重圧がかかり、マックジョブでは大金は稼げませんが仕事や人

    間関係で悩むことはありません。
    ・働くことを「労働とみなす」ひとたちは、本質的にそれが必要悪であり、目標達成のための手段(生計を立てる

    ために必要なもの)で、ポジティブでもなけれぽ精神的な見返りもないと考えています。彼らが働くのは、仕事以

    外の時間を楽しむためです。
    ・働くことを「キャリアとみなす」ひとたちは、自分を成長させるものとして仕事をとらえています。彼らは、

    仕事と人生を一体化しようとまでは考えませんが、より多くの収入や社会的ステイタスを得たいという野心を持

    ち、多くの時間とエネルギーをキャリアアップに注ぎ込みます。
    ・働くことを「天職とみなす」ひとたちは、自分の仕事に充実感や社会的意義を見出し、金銭的な見返りや出世

    のためではなく、楽しいから働いています。彼らは仕事と人生を切り離すことができず、生涯現役で働くのを当

    然と考えるでしよう。
    ・研究者は、お金のためと割り切ってマックジョブをするひとと、マックジョブに意義を見出すひとの幸福度を

    測ってみました。結果はおわかりのとおり、仕事で自己実現する労働者の幸福度が圧倒的に高かったのです。た

    だし、ここには落とし穴があります。清掃の仕事は時間給なので、生活のために仕方なく働く(不幸な)清掃員に

    も、自己実現のために献身的に働く(幸福な)清掃員にも、病院は同じ時間あたりの給与を払えばいいだけです。

    すなわち経営者は、意図的かどうかは別として、自己実現を利用して労働者のやりがいを"搾取"できるのです。

    これが犯憂でないことは、現代のグローバル企業がマックジョブ的なマニュアル化を脱し、「日本化(ジャパナイ

    ゼーション)」に向かいつつあるという興味深い現象が示しています。
    ・多くの人事経験者に取材した際もサラリーマンに求められる能力は、「目立った能力や特別な資格を持つ人材

    を採りたいとは思っていない」というのが彼らに共通した意見でした。大手企業の採用責任者が見ているのは、

    その学生が「興昧の持てない仕事、裁量権のない仕事、希望していない地域での勤務」を命じられても、組織の

    なかで縁の下のちから持ちの役割を果たせるかどうかなのです。大学では学生たちにへ企業は「有能な人材を求

    めている」と教えますが、有能だが個性的な人材は真っ先に選考から外されるのです。
    ・欧米の会社の人事システムが「ジョブ型」であるのに対し、日本の会社は「メンバーシップ型」だという大き

    なちがいがあります。ジョブ型というは職務(ジョブ)」を基準に仕事が成り立っている組織のことです。人事部

    は、経営者が決定したビジネス戦略にのっとって必要なジョブを補充し、不要なジョブを削減しますが、職務問

    の異動は原則としてありません。営業が人手不足になれば、労働市場から適任者を募集します。その一方、間接

    部門で人材の余剰があれば金銭解雇(リストラ)によって適正な規模に戻します。こんなとき日本の会社だと、当

    然のように人事部や総務部から営業部への配置換えが行なわれますが、欧米のビジネスマンがそれを聞いたら腰

    を抜かすほど驚くでしょう。
    ・ジョブ型の特徴は、仕事に必要な能力や資格が厳密に決まっており、その基準をクリアする労働者なら誰でも

    代替可能なようにマニュアル化されていることです。そのため同じ能力・資格で安く働く労働者(たとえば移民)

    がいれば、いまの社員を解雇して彼らを雇うのが経済合理的であり、中国やインドなど新興国に同じ能力・資格

    の人材が集まっていれば工場ごと移転するのがより合理的ということになります。
    ・それに対してメンバーシップ型は、その名のとおり「メンバー」を中心に仕事が成立している会員制組織のこ

    とです。そこでは正会員(正社員)と非会員(非正規社員)の身分が厳密に定められ、正社員には組織(イエ)の仲間

    と和を保ちながら、あらゆる職務(ジョブ)に対応できる能力が求められます。このような人材は便利ですが、そ

    の能力は(たまたま入社した)特定の会社に特化しているので汎用性がありません。終身雇用と年功序列で収入を

    安定させることは、他社の仕事との代替可能性(転職可能性)を放棄したことへの代償なのです。
    ・サラリーマンの働き方は、スべシャリスト(専門家)に対して「ゼネラリスト」と呼ばれますが、これは「サラ

    リーマン」と同じく和製英語で海外ではまったく通じません。ジョブ型の組織はスべシャリストの組み合わせで

    できていますから、さまざまなジョブを横断するゼネラリストはそもそも存在しないのです。
    ・ひとの心理には、損失が生じるとハイリスクを選ぶ(挽回しようとする)のに対し、収益を得ている局面ではロ

    ーリスクを好む(保守的になる)傾向があります。
    ・ネガティブ評価の空間を伽藍、ポジティブ評価の空間をバザールと名づけます。
    ・ザールは開放系で、参入も退出も自由ですから、相手に悪い評価を押し付けてもまったく効果がありません。

    悪評だらけになった業者はさっさと廃業して、別の場所や別の名前で商売を始めるからです。その一方でバザー

    ルでは、いったん退出すると(悪評とともに)よい評判もゼロにリセットされてしまいます。そのためたくさんの

    よい評判を獲得した業者は、同じ場所にとどまってさらに評判を増やそうと考えるでしょう。顧客は評価の高い

    業者から商品やサービスを購入したいのですから、これがビジネスを拡大するいちばん合理的な戦略なのです。

    こうしてバザール空間でのデフォルトのゲームは、「できるだけ目立つて、たくさんのよい評判を獲得すること

    」になります。これがポジティブゲームです。
    ・それに対して伽藍は閉鎖系で、いったん押し付けられた悪評はずっと付いて回ります。このゲームの典型が学

    校でのいじめで、いったん標的にきれると卒業までいじめつづけられるのですから、「できるたけ目立たず、匿

    名性の鎧を身にまとって悪評を避けること」が生き延びる最適戦略になります。これがネガティブゲームです。
    ・問題なのは、日本の会社が典型的な閉鎖空間(伽藍)になっていることです。その理由は年功序列・終身雇用の

    日本的な労働慣行で、誰もが知っているように、日本では中間管理職以上は中途入社がきわめて難しく、転職可

    能な年齢は35歳までです。40代半ぽからは会社を辞めても再就職はほぼ不可能です。
    ・これほどまでリスクが極大化されていると、中高年のサラリーマンは誰も会社を辞めたがらなくなります。す

    なわち経済合理的な判断から、会社に監禁されることを自ら求めるようになるのです。
    ・苦痛を回避する選択肢を与えられたイヌはストレスホルモンのレべルがさほど上がらないことがわかっていま

    す。それに対して選択肢を奪われたイヌは、ストレス値が耐えられる上限を超えてしまい、あらゆる刺激に対し

    てなんの反応もできなくなってしまうのです。
    ・セリグマンの「学習性無力感」の実験は、監禁された状態で長期にわたって苦痛にさらされると、こころに重

    大な損傷を被ることを示しています。そして閉鎖系の伽藍空間である日本の会社は、仕事につまずいたり周囲と

    の人間関係で折り合えなくなると、たちまちこの条件を満たしてしまうのです。
    ・本質的に自営業者であるスぺシャリストを、バックオフィスと同じマニュアルで働かせることはできず、マッ

    クジョブであるバックオフィスを、スぺシャリストと同じ成果主義で評価することはできません。こうして能力

    のあるスぺシャリストは、自分の仕事がバックオフィスと同じにしか評価されない(頑張っても報われない)こと

    に愛想をつかしてさっさと会社を辞めていき、社内には「バックオフィスより高度な仕事をしているものの、ス

    ぺシャリストとしての知識や技能を持たない」中途半端な人材が滞留していきます。これが、日本の会社で「ゼ

    ネラリスト」と呼ばれるひとたちです。
    ・こうした状況には、もちろん経営者も頭を悩ませています。そこでどうするかというと、バックオフィスの正

    社員を非正規に置き換えようとするのです。その結果日本の会社では、まったく同じ仕事をしながらも、正社員

    」と「非正規」という異なる身分ができてしまいました。
    ・勉強であれ、スポーツであれ、歌や踊りであれ、なぜ好きになるかというと、それが自分にとって得意なこと

    で、それに熱中することでより目立てるようになるからです。なぜ得意なのかというと、そこに遺伝的な差異が

    あるからですが、それは一般に思われているよりもずっとちいさなちがいでかまいません。5~6人のグループの

    なかでいちばん足が速いというだけでスポーツが好きになるし、歌がちょっと上手いだけでアイドルを目指すか

    もしれません。そしてこの(遺伝的・生得的な)わずかなちがいが増幅して、思春期になる頃には「好きなこと」

    がはっきり分かれるようになり、それぞれの「キャラ」が固定化します。これを私たちは、人格と呼んでいるの

    です。
    ・そう考えれば、私たちが自分に合ったプロフェッションを獲得する戦略はたったひとつしかありません。それ

    は仕事のなかで自分の好きなことを見つけ、そこにすべての時間とエネルギーを投入することです。なぜなら、

    誰もがものごころついたときからそれだけをやってきたのですから。
    ・会社にとって市場で取引するコストは予想外に高いといいます。だとすれば、効率性を至上のものとする会社

    は市場取引をできるかぎり内部化しようとするはずです。だったらなぜ、アップルは製造部門をすべて外部化し

    ているのでしょうか。その理由はひとつしかありません。それは、会社組織内部の取引コストが、市場取引以上

    に法外に高いからです。取引コストは、組織が複雑になるほど幾何級数的に大きくなっていさます。こうして製

    品数と従業員数を増やして自己増殖する会社は、いずれ自らの(内部)取引コストの重さに押しつぶされることに

    なります。
    ・組織においては、標準化はコスト減、カスタマイズはコスト増を招く」のです。この定理に従えば、利潤の最

    大化を目指す経営者はイノべーションを抑圧し、あらゆる業務を標準化しなけれぽなりません。これを徹底した

    のがマクドナルドで、それによって地方の小さなハンバーガーチェーンから世界的な大企業へと成長しました。
    ・しかしその一方で、なんの変化もなく旧態依然では、組織はやがて腐り果ててしまうでしょう。時代の変化に

    合わせて新しい製品やサービスを開発していかなければ、市場からの退出を迫られます。こうして組織は、イノ

    べーションを抑圧しつつ、イノべーションを実現するという困難な課題を抱え込むことになるのです。
    ・そこでいまでは、企業のR&D (研究開発)はマーケティングやセールス部門と連携し、顧客がお金を払う製品に

    結びつけるよう管理されています。しかしこちらもやりすぎるとイノべーションを抑圧し、営業部門に説明しや

    すい陳腐な製品を山のように「開発」することになってしまうのです。経営者や管理職なら誰でも知っているこ

    とでしょうが、管理主義と革新性はトレードオフで、その両立は不可能とはいわないまでもきわめて困難なので

    す。
    ・日本の会社がイノべーション競争で後れをとる第1の理由は、画期的な商品やサービスを生み出そうとすれば失

    敗する可能性も高くなりますが、雇用の流動性がない(伽藍の)会社では、いったん失敗した社員は生涯にわたっ

    て昇進の可能性を奪われてしまうのです。
    第2の理由は、大きなリスクを取ってイノべーションに成功したとしても、成果に相応しい報酬を与えられないこ

    とです。「正社員の互助会」である日本の会社では、一部の社員に役員や社長を上回る高給を支払うことができ

    ません。
    ・組織の取引コストを極大化させた大企業はイノべーションを放棄して、べンチャー企業に投資し、成果が出れ

    ば買収しようとします。これはアメリカの大手IT企業でも頻繁に行なわれており、組織が官僚化して定型化され

    た業務以外のことができなくなると、リスクをアウトソースして成長を維持しようとするのは日本もアメリカも

    同じです。それにともなってべンチャー企業のエグジット戦略も、上場から事業を大手企業に売却することへと

    変わっていきました。
    ・人生100年時代の人生戦略は、いかに人的資本を長く維持するかにかかっています。そのためには、「好きを仕

    事にする」ことが唯一の選択肢なのです。60代、70代になっても人的資本を維持できるかどうかで、超高齢社会

    の格差はさらに拡大していくでしよう。私たちは、「好きを仕事にする」以外に生き延びることのできない残酷

    な世界に投げ込まれてしまったのです。
    ・「幸福」は社会資本かもしか生まれない。
    ・社会資本とは、人間関係=つながりのことです。なぜ"つながり"が幸福感を生むのか。これは、「長い進化の

    過程でヒトがそのようにつくられたから」としか答えようがありません。
    ・徹底して社会的な動物であるヒトは、家族や仲間と"強いつながり"を感じたり、共同体のなかで高い評価を得

    たときに幸福感を感じるような生得的プログラムを持っているのです。
    ・そう考えれば、「幸福になる方法」は理論的にはものすごくかんたんです。社会資本の最適なインプットによ

    って、もっとも大きな幸福感がアウトプットできるよう人生を設計すればいいのですから。
    ・西洋人の認知構造が世界をもの=<個>へと分類していくのに対し、東洋人は世界をさまざまな出来事の<関

    係>として把握する、ということです。この世界認識のちがいが、西洋人が「個人」や「論理」を重視し、東洋

    人が「集団」や「人間関係」を気にする理由です。すなわち西洋人は「個人的」で、東洋人は「間人的」なので

    す。
    ・「個人」は英語でindividual manで、その原義は「分割できない者」です。これは近代社会が、「普遍的な人

    権を持つ市民」という分割不可能な単位を基礎に成立していることによく対応しています。それに対して「間人

    」は英語でcontextual manの訳語があてられており、これは関係性(コンテキスト)に埋め込まれていることをよ

    く表わしています。個人とは「かけがえのない自分」で、間人とは「共同体のなかの自分」なのです。
    ・日本語の複雑な尊敬語や謙譲語は、お互いの身分や関係を常に気にしていなければならなかつた時代の産物で

    す。それが身分のちがいのない現代まで残ってしまったため、命令形は全人格を否定する"上から目線"になって

    しまいました。日本語は、フラットな人間関係には向いていないのです。
    ・クリエイターとスぺシャリストからなるクリエイティブクラスの仕事は「個人の世界」で、それがグローバル

    スタンダードです。知識社会化とテクノロジーの進歩によって、クリエイタイブクラスは大きな組織に依存する

    必要がなくなり、こうした仕事ではますます「個人」が前面に出るようになっています。
    ・その一方で、専門性を必要としないマックジョブの仕事は欧米においても、誰も気づかないうちに、日本的経

    営(ジャパナイゼーション)が支配する「間人の世界」になりつつあるのです。これは、日本人の働き方がグロー

    バルスタンダードになるということでもあります。なぜなら、チームワークを導入した方が従業員の満足度が高

    く、労働生産性も上がるのですから。「自分の責任範囲の仕事だけすれぱあとは関係ない」という個人主義的な

    働き方は、仕事を生活のための必要悪とみなすことですから、そこに自己実現はありません。それに対してマッ

    クジョブに間人主義で仲間意識を持たせると、従業員のモチべーションは上がり「幸福」を感じるようになりま

    す。ただしその代償として、日本化した労働現場はたちまち会社による「やりがいの搾取」に変貌してしまうの

    ですが。
    ・幸福についての研究では、「自分の人生を自分の自由に決められる」ことが幸福感に結びっくことがわかって

    います。これが「人己決定権」で、人生の自由度が大きいほど人生に対する満足感は大きくなります。日本人は

    調査対象肝力国中最下位です。
    ・日本の社会は、ムラ的な間人主義に最適化され、そこから「やりがい」を生み出すようになっています。会社

    に滅私奉公することを「幸福」と感じるサラリーマンの感覚はその典型です。しかしりべラル化する世界でこう

    した「間人の幸福」は古臭いものになり、自己決定権を持つ「個人の幸福」へと価値観は変わりました。それに

    もかかわらず、日本の社会は複雑なコンテキストで覆われたべタな政治空間のままで、「自由」な人生を生きる

    ことはできず、旧態依然とした「間人の幸福=伽藍のなかでのやりがい」を強要されています。これが、サラリ

    ーマンが会社を憎悪する理由であり、現代日本の「閉塞感」の正体なのでしょう。
    ・セロトニンを運搬する遺伝子(セロトエントランスポーター)にはS型とL型があることがわかっています。この

    遺伝子が組み合わされて、「SS」「SL」「LL」という3つの遺伝子型が決まるのです。S型の(短い)遺伝子はセロ

    トニンを運搬する能力が低く、L型の(長い)遺伝子は運搬能カが高い。すなわち、LL型の運搬遺伝子を持つひとは

    脳内のセロトニン発現量が多く、SL型、SS型とセロトニン発現量が低くなつくいきます。
    ・そしてこのセロトニン運搬遺伝子の型は、人種によって大きく異なることがわかっています。傾向としてはア

    フリカ人にLL型が多く、白人、アジア系と少なくなります。とりわけ日本人はS型の保有率が欧米人に比べて5割

    も多く、SS型保有者は3%と世界でもっとも少ないのです。すなわち日本人の97%がSL型かSS型で、脳内のセロト

    ニン発現量が少なく、ネガテイブなことに対して強い注意バイアスを持っています。これがメランコリー親和型

    の性格をつくり、うつを日本の「風土病」にしているのかもしれません。
    ・セロトニン運搬遺伝子の発現量が低いSS型のひとはハイリスクの金融商品に投資する率が平均より28%も少な

    く、その一方で、脳内のドーパミン分泌にかかわるドーパミン受容体D4遺伝子が長いタイプのひとは、対照群に

    比べて、リスクを冒してでも儲けを増やそうとする率が25%高いことがわかりました。投資における態度、ひいて

    は人生における重要な岐路でどのような選択をするかは、遺伝子によってあらかじめかなりの程度予測できるの

    です。
    ・遺伝子と環境の相互作用を調べたこれまでの実験では、被験者に起きたネガティブな出来事やそれがもたらす

    悪影響にばかり焦点を当てていたため、SS型はストレスに弱く、脆弱で感じやすい「うつ病の遺伝子型」とのレ

    ッテルが貼られることになりました。しかしフォックスの実験は、この陰惨な予言に新しい光を当てます。それ

    は、「悪いことが起きたときに非常に不利にはたらく遺伝子型が、良いことが起きたときには非常に大きな利益

    をもたらす」ということです。逆にいうと、ストレスに強く楽観的な性格に見えたLL型は、じつは「鈍感」なだ

    けだったのです。
    ・セロトニン遺伝子の発現量が低いひとはまわりの環境に影響されて反応しやすく、虐待を受けたりまわりから

    支援を得られなかったりしたときは深刻な負の影響を被りますが、その一方で素晴らしい環境に恵まれれぱそこ

    から大きな利益を引き出せるのです。
    ・農耕社会の中でポジティブなことにもネガテイブなことにも感じやすくなるよう進化することで、相手の気持

    ちを素早く忖度できるようになり、狩猟採集生活ではあり得なかった大きな共同体を維持することが可能になっ

    たのです。これが(いち早く農耕文明に移行した)ヨーロッパや東アジアにS型の遺伝子が多く、アフリカにL型遺

    伝子が多く残っくいる理由です。
    ・日本人は幸福になろうと"つながり"を求めますが、その結果、(間人として)関係のなかに埋め込まれ身動きがとれなくなってしまいます。会社は嫌いだけれど、会社なしでは生きていけないというのが、日本人の悲しい性なのです。しかしその一方でセロトニン運搬遺伝子についての最新の知見は、うつに対して脆弱な日本人が、よいことにもっとも敏感に反応できることを示してもいます。すなわち自分に適した環境に身を置くことで"鈍感"なひとにはない幸福を手に入れることができるかもしれないのです。そのためには、日本人の遺伝的特徴を前提として自分の人生を設計、ストレスのない環境を設計をしなければなりません。
    ・ヒトの脳は、無意識のうちに周囲のひとびとの感情を真似し、吸収するようにできています。意識のうえでは他人とちがうことをしたいと思っていても、無意識のレべルでは群衆に合わせているのです。より感情的に強くつながっている家族では幸福の伝染効果はさらに高くなり、とりわけ娘から親への感情の伝播が顕著です。女の子の方が親にこころの内を明かすからだとされます。
    ・やりがい(自営業)と安定(公務員)を頂点として幸福度がU字型になっていることを示しています。サラリーマンの幸福度が低いのは、縮小するマーケットのなかでやりがいが失われ、リストラなどで安定も覚束なくなってきたことから説明できるでしょう。
    ・日本にかぎらず先進国でうつ病が広がっているのは、現代社会では人間関係がます複雑化しているからでしよう。あらゆる調査で人生の悩みは「健康、金銭、人間関係」となっていますから、フリーエージエント化で嫌な相手とつき合わなくてもよくなれば、それだけで人生の問題の3分の1は消失してしまいます(経済的に独立すれば金銭の悩みもなくなりますから、残るは健康だけです)。
    ・「幸福な人生」の最適ポートフォリオは、大切なひととのごく小さな愛情空間を核として、貨幣空間の弱いつながりで社会資本を構成することで実現できるのではないでしょうが。これを簡単にいうと、「強いつながり」を恋人や家族にミニマル(最小)化して、友情を含めそれ以外の関係はすべて貨幣空間に置き換えるのです。そのうえでひとつの組織(伽藍の世界)に生活を依存するのではなく、スぺシャリストやクリエイターとしての人的資本(専門的な知識や技術、コンテンツ)を活かし、プロジェクト単位で気に入った「仲間」と仕事をします。
    ・「ほんとうの自分」とは、幼い頃に友だちグループのなかで選び取った「役割=キャラ」の別の名前です。
    ひとには(より正確には脳には)自分に起きた出来事をポジティブに考える癖があるからです(すべてのことを自分に都合よく解釈する、ともいえます)。

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