幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478102480

感想・レビュー・書評

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  • この本が残酷な所は、これから、個人が、
    「好きなことで生きていく」「得意なことで生きていく」ことが、
    「正しい生き方」であると、言っている点だと思います。

    少し前の、日本では、それらの価値観は、「正しくない生き方」とされ、
    全否定されていました。

    強者以外は、それらの言葉を口にはできませんでした。
    「そんな人生甘くないよ」、「もっと現実をみろ!」というのが、
    その価値観を否定する、もっともスタンダードな反応です。

    しかし、ここ十数年で、
    日本と日本人を取り巻く環境がガラリと変わってしまいました。

    相変わらず、政府は、経済成長、経済成長と言っていますが、
    成長できる資源は、日本は、どんどん減少しています。

    多くの識者が指摘していますが、日本の国際競争力は、
    もはやかなりの分野で、失われています。
    これから、競争力をつけるといっても、その担い手である、
    人材の絶対数が著しく減少するので、
    今の状態を維持するのも、やっとだと思います。

    また、上場企業が倒産することは、珍しくなくなりました。
    リストラは今や当たり前となり、組織に依存して生きるというのが、
    かなりリスクな生き方になりました。

    日本は、超高齢化社会+人口減少社会+少子化+労働者数の減少という
    未曽有の社会に突入し、社会の様々なシステムが機能しなくなっています。

    橘氏の一連の著作は、個人が経済的合理的に生きるには、
    どうすればいいか、個人が国家や組織に依存せずに、
    どう生きればいいかという視点で書かれたものが多いですが、
    この著作では、個人の生き方をリスクヘッジする上での
    最適化する「生き方」を述べています。

    それが、自分の持っている資源(人間関係、能力、資産等)を、
    「好きなこと生きていく」、
    「得意なことで生きていく」へ投入するというやり方です。
    これが、最も個人を最適化できる生き方です。

    何かに依存することでしか安定を感じられない、そうでなければ、
    不安になるというのが、
    多くの日本人のメンタリティーです。

    以前は、会社が豊かになれば、個人が豊かになりました。
    今は、全くそうではありません。
    それは、世帯収入を見ると、はっきりします。
    94年比較で、2割以上収入が低くなっています。一方GDPは増加しています。
    一生懸命努力してきましたが多くの日本人は、貧しくなりました。
    今後は、もっとこの傾向が顕著に出てきます。

    以前まで美徳とされていた人生観や労働観が、全く役に立たなくなっています。
    それを認識する上で、橘氏の著作が一定の指示を受けるのは、非常に頷けます。

  • 幸福のインフラが、金融資産、社会資本、人的資本の3つで構成され、その構成割合で8つのタイプ(リア充、プア充、、、)と分けるのは極めてシンプルだが、その通り。各種専門家の研究内容をエビデンスとして採り上げるので、説得力あり。
    主張はシンプルで合理的。しかし、それを実現するためには政治による意思決定が必要。そこが一番の問題。すっきりした読後感とは裏腹に、一種絶望的な気分になる。

  • この本は幸福を研究しています。橘さんの悪魔的思考で幸福を考えている、というところが面白い。現代の、この日本という国で、どうやって幸福になることができるのか?それを3つの資本と3つの資産を使って考察しています。その結果、橘さんが最終的に提示する「幸福になる方法」というのは、とてもシンプルな答えです。確かになるほどねぇー、と思いました。だけど、それを書くとネタバレになるので書きません(笑)気になる方は本書を読んでみて下さいね。

    今回は、本書の中で面白いと思った考え方をひとつ紹介いたします。それは「幸福製造装置」という仮想モデルを使って、幸福を考えているところです。それによれば「幸福というアウトプット」を得るには、自分の中にある「幸福製造装置」に、3つの資産と資本、金融資産、人的資本、社会資本を材料としてインプットしなければならない、ということ。
    結果、出来上がる製品としての「幸福」の質と量は、インプットする量と、各自が持っている「幸福製造装置」の変換効率によって変わってくるということ。変換効率というのは同じ量と質の資本や資産をインプットしても、人によって幸福に感じる度合いは違ってくるということですね。これを変換効率と表現しています。

    この「幸福製造装置」の具体的な例を挙げてみると、例えば200円という金融資産を使って、缶ビールを買う。すると「うまいなぁ〜」という幸福を感じる。つまり、200円が「うまいなぁ〜」という幸福に変換された、ということですね。で、その「うまいなぁ〜」という幸福感の量と質は、同じ200円を使っていても、人それぞれ全く違ってくる、これが「変換効率」ですね。人によっても違うけど、同じ人でもタイミングによって、調子によっても変わってくる。このあたりは調整は難しい。

    だけどはっきりしているのは「幸福製造装置」にインプットするものがゼロならば「幸福」は出来上がらないということ。3つの資産と資本の話に戻りますが、金融資産とはそのままお金のこと。人的資本とは個人でいうと労働力や能力ですね。多くの人は労働という形で「人的資本」を労働市場に「投資」することによって、「お金」という「金融資産」を得る。それから社会資本というのは人とのつながり、などですね。

    話は脱線しますがこの3つを使って、橘さん言うところの「人生パターン」というのを分析しているところも面白い。

    例えば「プア充」と言われる人たち。マイルドヤンキーなんて言い方もしますね。地元で昔からの仲間と楽しく生きている人たち。彼らはそれほど収入も高くないけれど、結構、幸福度が高い。なぜなら、仲間のつながりという「社会資本」をたくさん持っているからなんですね。

    対して「リア充」と言われる方たちはどうか。たいてい趣味に、付き合いに「金融資産」を投資しているので、それほどお金はない、だけど、友人が多く「社会資本」が多い、加えて仕事も出来たりするから「人的資本」も多い。

    レアなパターンとしては「金持ちトレーダー」というのもいる。ひたすら部屋にこもって株やFXなどの投資に励んで成功している人たち。この人たちは、当然マーケットを読む能力と、自分をコントロールする意志力という「人的資本」をたくさん持っている、加えて成功しているわけだから「金融資産」も持っている。ところが、部屋にこもりきりで友達とは疎遠、ということで「社会資本」はあまり持っていない。

    最近現れたのが「ソロ充」という人たち。それほどお金もないので「金融資産」はない。しかし人付き合いを極力減らすことによって、つまり手持ちの「金融資産」を、自分の趣味や能力向上に振り向けることによって、広い意味での能力「人的資本」をたくさん所有する。変わり者っぽいですが、そうとも限らず、起業したばかりの人たちも、当然付き合いより仕事ということになるのでこのパターンに入る。

    と、その他にも、いくつかのパターンがあるのですが、それぞれが、それぞれにたくさん持っている、または持っていない資本と資産があって、それをどのように投資していくのか?ということが大事。で、問題は持っている資産や資本がひとつしかないと、それを失った際にはかなり危険、つまり幸福が製造できなくなる、つまり「不幸」になってしまう、ということ。

    上の例ですと、ソロ充は「人的資本」ひとつしかないので、例えば何らかの事情があって、仕事をすることができなくなった、つまり「人的資本」を失ってしまうと、他の資本に頼れない。また「プア充」はもしも、つながりから、追い出されてしまった、またはその集団が崩壊してしまった場合、他の資本がないから厳しい。ということで、やはり常に複数の資本と資産を持っておくようにしておかなくてはならない、ということ。

    おっと、ネタバレはまずい、とかいいつつ、ほぼほぼ、橘さんの結論に近づいてきてしまった(笑)ということで、このあたりで止めときます。でも、ここに書いている以外にも、悪魔的に面白い事がたくさん書いてありますよ(笑)

  • 日本人は幸福になろうと「強いつながり」を求めるが、その結果、(個人でなく)「間人」として人間関係の中に埋め込まれ、身動きが取れなくなる。そして長時間労働や過労死、過労自殺。

    日本は「自分の人生をどの程度自由に動かすことができるか」の国際比較で57カ国中最下位。


    人生の土台となる3つの資本=資産。
    「金融資産」自由、
    「人的資本」自己実現、
    「社会資本」共同体、人間関係、繋がり

    幸福の製造装置(ブラックボックス)

    資本を一つしか持ってないとちょっとしたきっかけで貧困や孤独に陥る。

    「自由」とは「誰にも、何者にも隷属しない状態」のこと。そのためにはお金が必要。

    テレビ局の番組の政策方針。粉飾決算。不正燃費データ。。生活を会社に依存するサラリーマンであれば、会社の方針に従うのは(隷属するのは)当然かも。ただそれを「自由」とは言わないだけ。

    幸福の話をするには「限界効用の逓減」に触れなければならない。暑い日のビールの美味しさ(効用=幸福度)は1杯目が最高で、2杯3杯と追加していくと減っていく(効用の変化=限界効用)。これはお金にも当てはまる。日本では年収800万円(世帯年収1500万円)を超えると幸福度はほとんど上昇しなくなる。お金がありすぎるてお金のことを考えすぎると不幸になる。

    資本主義ってなんだろう?資本主義=資本市場とは「株式会社によって自己組織化した複雑系のネットワーク」株式会社とは複数の株主が有限責任で事業に投資することでリスクを分散する仕組み。また株式会社の特徴は借金(融資など)で株主資本にレバレッジをかけること。

    マイナス金利の世界では、賢い人は利潤を最大化するために金融資本よりも人的資本を有効活用する。すなわち「働く」こと。

    お金持ちの倹約のルール「同じ結果を得られるのなら、安ければ安いほどいい」これで自然と倹約することになる。

    収入は多ければ多いほどいい。でも同じ収入なら(あるいは多少少なくても)自己実現出来る仕事がいい。

    「知識社会化 + グローバル化 + リベラル化」の三位一体は知能の高い人が大きなアドバンテージを持つ社会。そこから脱落した人の怒りは社会の保守化=右傾化を招き、トランプ現象となっている。

    企業であれ、個人であれ、知識社会に適応できなければ脱落するだけ。

    日本企業は本社採用と現地採用といった国籍差別や年功序列、終身雇用といった日本的雇用制度を取っている限り(グローバル化リベラル化に対応できず)負け続ける。
    サラリーマンは日本だけ。

    オンリーワンでナンバーワンの戦略。スペシャリストになるには、1)好きなことに人的資源の全てを投入する。2)好きなことをマネタイズ(ビジネス化)できるニッチを見つける。3)官僚化した組織との取引から収益を獲得する。

    世の中になぜ会社があるのか?それは「分業した方が効率がいい」から。

    「幸福」は社会資本からしか生まれない。

    人間関係には「愛情空間~5」「友情空間、イツメン~30(政治空間~150)」「貨幣空間~∞」

    日本の社会における「友だち」は厳密なルールがある。中学、高校の同じクラス。先輩、後輩とは違う。「友だち」は奇跡。

    「統治の倫理」(権力争い、武士道、国盗り、天下平定、勝者総取り、嫉妬、憎悪、殺人、敵を殺すことでより大きな権力を獲得する、戦争に駆り立てる血なまぐさい世界)と「市場の倫理」(お金儲けゲーム、商人道、一番にならなくてもほぼ裕福になればハッピー、信頼関係、契約履行、他人と協力)

    あなたは個人主義(欧米人型、かけがえのない自分)か間人主義(アジア人型、共同体の中の自分、他人の上から目線を不快に思う)か?

    日本的経営はアメリカ企業をも変容させた。ボスではなく同僚・仲間によるチェック(チームワーク重視)。製造業、レストラン、介護などの労働現場での生産性を上げた。

    「幸福な人生」の最適ポートフォリオは、大切な人との小さな愛情空間を核として、貨幣空間の弱いつながりで社会資本を構成することで実現できる。強いつながりを家族に最小化し、それ以外の関係は全て貨幣空間に置き換える。その上で一つの組織(伽藍)に生活を依存するのではなく、スペシャリストやクリエイターとして人的資本(専門知識)を活かし、プロジェクト単位で気に入った仲間と仕事をする。

    本当の自分はどこにいるか。あなたの過去にいる。本当の自分は幼い頃に友達グループの中で選び取ったキャラなのかもしれない。大人になるということは子供時代のキャラを捨てることである。心の中に子供時代のキャラが残っていて、「見つけてよー」と訴え続けているのかも知れない。

    幸福な人生とは。

    ①金融資産:「経済的独立」を実現すれば(金銭的不安から解放され)自由な人生を手にすることができる。
    ②人的資本:子供の頃のキャラを天職とすることで「ほんとうの自分」として自己実現できる。
    ③社会資本:政治空間から貨幣空間に移ることで人間関係を選択できるようになる。

    ①金融資産は分散投資する。
    ②人的資本は好きなことに集中投資する。
    ③社会資本は小さな愛情空間と大きな貨幣空間に分散する。

  • 橘玲さんの本は、毎度世の中を今までにない視点で見ることを教えてくれる。しかも、裏付けをしっかりつけているので納得感も凄い。
     今回は“生命誕生のプログラム遺伝子の目的”から始まった。まるで『アマデウス』のようだ。

     この語りを細かに記憶にとどめるという姿勢はない(話しのネタとしては相変わらず宝庫)。頭の中を、刺激されながら通過したこの記憶さえあれば、そして橘さんのような囚われのない視界を持つ人たちの眺めている視線を借りて世の中を眺めることができれば、自分のが生きている世界が自ずと創られていく。それが本を読むことのひとつの目的なんだな。

  • お金は幸せじゃないけどあったほうが良い。
    でも、お金が幸せ、ないと生きていけない、と思った途端、不幸は始まっているのかもしれない。
    幸せになりたければ、不幸な人と縁を切れ、
    綺麗になりたければ、綺麗な人と仲良くなれ。
    確かにかなり理にかなっていると思った。
    毒舌なことも多々言う筆者ではあるけれども、これまたこの人も寄り添いながら真理を言う人で、素晴らしい一冊

  • 文章がシンプルで読みやすく、知的好奇心をとてもくすぐる。
    引用や過去の本の内容が多い。
    資本と資産を考える上でとてもオススメ

  • 経済学的な視点から幸福度を考える

    読んでいて、納得出来る部分もあったが、やや極論的な理論の展開をしている印象も受けた一冊。


  • 3つの資本は面白い。何となく、色々なケースが当てはまりそうな気にさせてくれる。他の本で読んだ内容の受け売りも多く、"There's nothing under the sun."とはよく言ったものだと実感。

  • 幸福になるために3つの資本(金融資産, 人的資本, 社会資本)のどれか2つ以上から恩恵を受けることであると説いています。お金で自由を、働くことによって自己実現を、人間関係から幸福を得ることができるとしています。

  • 幸福の条件
    ・自由・自己実現・共同体=絆
    幸福の条件の3つのインフラ
    ・人的資本・金融資産・社会資本
    人生は8つのパターンに分類できる
    貧困→何も充実していない
    プア充→社会資本だけの充実
    退職者→金融資産だけの充実
    ソロ充→人的資本だけの充実
    お金持ち→人的資本と金融資産が充実
    旦那→金融資産と社会資本が充実
    リア充→人的資本と社会資本が充実
    超充→人的資本、金融資産、社会資本のすべてが充実

    年収800万円までの収入、金融資産1億円までは増えるほど幸福度が増す。

    知識社会化、グローバル化、リベラル化によって日本型の働き方(年功序列など)は破綻してきている。これからは、能力に応じて採用される、能力に応じて仕事が選べるジョブ型雇用の時代である。
    →同一賃金同一労働が基本である。しかし、日本の非正規雇用などは、世界的に見れば同じ仕事をしていにも関わらず待遇が良くないことから差別だと見られている。

    ジョブ型雇用が進むと、独自性のあるクリエイティブクラスと誰でもできる仕事のマックジョブ型に仕事が分かれてくる。ただし、自己実現は個人の感覚の上で成り立つので、どちらが良いというわけではない。

    日本では、突飛なことをされたくない場合は、何も個性がない人材を採用する場合がある。

    電気ショックを与えられる犬の実験
    電気ショックの回避方法がある犬は、回避方法を学習していく。しかし、回避方法を与えられていない犬は、時が経過すると、抗うこともしなくなる。学習性無力感。職場での無力感に当てはまる実験ではないだろうか。

    スペシャリストになるには、他者との差別化が大切である。そのためには、好きなことに人的資本を投入しする。オンリーワンの分野でナンバーワンになればよい。ランチェスター戦略に似ている。

    35歳までにやらなければならないのは、試行錯誤によって自分のプロフェッション(好きなこと、専門分野)を実現できるニッチを見つけることである。フリーエージェント化し、企業と連携できるようになるとベスト。

    日本人の悲しい性
    日本人はつながりを求める間人である。遺伝的に関係性に重きを置いてしまう。したがって、会社は嫌いだが、会社なしでは生きていけない。

    ソロ充化する人々
    ソロ充が増えている理由の1つは、痛みを伴う場合がある人間関係から離れたいからである。一度の強い痛みよりも、弱い痛みが継続的に受ける方が人は幸福度が下がる。

  • 「金融資産」「人的資本」「社会資本」の3つを資本をブラックボックスに入力したときに出力されるものが「幸福」である。
    どのような計算式で幸福が出力されるかはわからないし、人によって違うが、何にせよ幸福のもととなる資本は大きければ大きい方がいいのは間違いない、というのがこの本のスタンスであり、共感したのでこの本を手に取った。

    「金融資産」「人的資本」「社会資本」の3つをどのように大きくすればよいか、”日本人の立場で”語っているのがこの本の魅力である。
    現在の日本には閉塞感が漂っているが、それでも世界第三位の経済大国に生まれたことは、全人類で考えればめちゃくちゃ幸運なことである。
    そのうえで、この幸運を生かしつつ、日本特有の問題(特に働き方の問題)にどう対応すればいいか。
    株などの金融資産運用でもそうだが、どれか一つの資産に依存していると、その資産が崩壊したときのリスクに対応できない。(株で言えば、自分の資金をある一社の株に集中投資したら、その会社がもし倒産したら無一文になってしまう)
    そのため、投資の世界では分散投資が一般的に吉とされており、これは幸福の資本においても同じである。

    以下は自分向けのメモです。

    【金融資産】
    ・会社員として生きていく以上お金持ちにはなれない

    【人的資本】
    ・働いて収入を得るという行為は、自らの人的資本を労働市場に投資し、運用するという言葉に言い換えられる。
    ・ジョブ制ではなく、身分化した正社員制を採用している日本的な働き方は、製造業などの一部の職種においては高い生産性をもたらすが、直近のグローバル化、知的産業化に対してはフットワークが重いため、ベンチャーや海外企業の後塵を拝するのは仕方のないことである。
    ・市場が変化し、すでに会社にいる人材では対応しきれなくなった場合、海外企業は労働市場から新たなマネージャーや労働者を雇用して体制の変化を図る。不要な人材は金銭解雇する。
    それに対し、日本は会社にいる人材のみで対応しようとするため、適応不全を起こしている。
    ・終身雇用と年功序列による収入の安定は、他社での仕事との代替可能性を放棄することによって得られる。終身雇用制が崩壊しつつある今、他社でも通用するスキルがなければ、働く場所がなくなる。
    ・35歳を過ぎ、自分の人的資本が乏しく転職が厳しくなると、会社にしがみつき、定年までじっと待つしかなくなる。
    ・会社におけるメンタルヘルスの本当の原因が自分の能力不足の場合もある。結構えげつないこと言ってるようだが、冷静に分析すると、自分に合っていない仕事をしているから、ともいえる。その仕事に求められる能力を自分が持ち合わせていないあるいは足りない場合、つらい思いをするのは当然である。
    自分の人的資本を最大化するためには、「好きなことに人的資本を全力投入」するしかない。それこそ就業時間以外にも楽しくてやってしまうような。投入量が増えればリターンが増えるのは投資の世界でも常識である。
    ・しかし上記を実現するには、ゼネラリストを求める日本的企業ではかなり難しい。
    ・まだ若い僕たちが生き延びるためにやらなければならないのは、自分の好きなことを見つけ、そこに自分の人的資本をすべて投入すること。
    さらに、その自分の好きなことをビジネス化、マネタイズできる場所を見つけること。ルールがシンプルなゲームは強者(大企業)が強い。大企業が入り込めないようなニッチな場所がねらい目。

    【社会資本】
    ・社会とのつながり、具体的には家族や友人との関係が社会資本。社会資本特有の特徴は「幸福は社会資本からしか生まれない」という点。
    ・地元の友人を大切にするマイルドヤンキーの持つ幸福の資本における、社会資本の占める割合はめちゃくちゃ高い。
    ・日本人は、セロトニン運搬遺伝子が黒人、白人と比べて短く、うつになりやすいメランコリー親和型である人が多いことが分かっている。
    ・これは悪いことだけではなく、幸福な物事に対して幸福をより多く感じられることもわかってきている。
    ・日本人は嫌われることを極端に恐れる。そのため、会社や学校といった政治空間は実は大嫌いである(極論?)。
    ・持てる社会資本における強いつながりを家族や恋人に最小化して、それ以外のつながりをすべて弱いつながり(貨幣によってつながる客と店員の関係)に置き換える人もいる。筆者もそう。

  • 幸福の3条件
    自由 → 金融資産
    自己実現→ 人的資本
    共同体、絆 →社会資本

    全て持たないのが貧困
    1つしか持たないとハイリスク

    最適ポートフォリオは
    金融資産、経済的独立を実現し金銭的不安から解消され自由な人生を手に入れる
    人的資本、子供の頃のキャラを天職として自己実現する
    社会資本、政治空間から貨幣空間に移り、人間関係を選択できるようにする

    進化論的には不幸からの回復力を得るために継続する幸福を犠牲にしている。
    困難を乗り越えて幸福感が得られるので幸福は理想の人生のポートフォリオにあるのではなく、幸福な人生を目指して頑張っている中にある


    お金と幸福
    ・お金の事を考えすぎると不幸になる、ある程度まではお金が増えると自由が増して考える必要がなくなるので幸福感は増す
    ・年収800万、世帯年収1500万までは収入が増えれば幸福感は増す
    ・金融資産1億円までは資産が増えるほど幸福感は増す
    ・一旦お金の心配から解放されると、それ以上お金が増えても限界効用の逓減により幸福感は増えなくなる

    人的資本と自己実現
    ダイエットや片付けや節約は確実な自己実現方法
    人的資本を投資する仕事のルール
    ・収入は多い方が良い
    ・同じ収入なら安定している方が良い
    ・しかし、収入によらず、自己実現できる仕事が良い

    仕事の分類
    拡張可能なクリエイター
    拡張不可なスペシャリスト
    マニュアル化された拡張不可な マックジョブ

    サラリーマンはスペシャリストとマックジョブの間
    日本の医者はサラリーマン寄り
    スペシャリストはいないので、マックジョブが増えてくる事で雇用が変わる

    好きなことに人的資本を投入し、自分だけのニッチを探す
    小さな土俵、複雑さ、予測困難さ、を利用する
    官僚化した組織との取引から収益を得る

    老後とは人的資本を失った状態
    老後問題とは老後が長すぎることで、不安を減らすには人的資本を維持して老後を短くする

    幸福は社会資本からしか生まれない
    人間関係は、愛情空間、友情空間、貨幣空間
    進化論的に愛情と友情の比率は高い
    友情の核は平等体験、同級生、同期、ママ友
    社会には愛情友情にお金が関与してはいけないというルールがある

    弱いつながりの強さ
    転職など責任が伴う場合にはつながりは弱い方が良く、可能性も広がる

    貨幣空間が広がり、貨幣を介さない弱いつながりも増えてきた
    会社や学校と異なり、個人として振る舞える

    強いつながりである共同体や会社が社会資本の全てだと逃れられない

    幸福は伝染する。相手の幸福度を考慮した友だちポートフォリオの最適化

    幸福も不幸も社会資本から生まれる
    仏教の悟りは人間関係の悩みの解消でもあり、現在ならお金とテクノロジーで可能になった。

    幸福な人生の理想は
    経済的に独立し、充実した仕事をして、家族の愛情と強いつながりの友情を持つこと

    強いつながりを家族に最小化し、友情は弱いつながりの貨幣空間に置き換える
    仕事は1つの組織に依存せず、人的資本を有効に使ったプロジェクト型を選ぶ

    サラリーマンは定年退職で人的資本と社会資本の両方を失うのがリスク


    今の時代の日本に生まれたのが最大の幸運
    下を見ればきりがないが、上を見たらすぐに限界がある

  • ■幸福は伝染する。
    新しい仕事や住む場所をきめるときには「私の幸福にもっとも貢献してくれるひとたちはどこに住んでいるか」を考慮スべき  幸せな人と友人となり、不幸な友人とは縁を切りなさい。

    ■生涯共働きを超える最強の人生設計はない 182
    人生100年時代の人生戦略はいかに人的資本を長く維持するかにかかっている。そおためには、好きを仕事にすることが唯一の選択肢。生涯現役なら老後問題そのものがなくなる。60,70になっても人的資本、仕事を維持できるかどうかで、超高齢社会の格差はさらに拡大していく。好きを仕事にする以外、生き延びることはできない。

    ■好きなことに人的資本のすべてを投入する。156
    勉強であれスポーツであれ、なぜ好きになるかというと、それが自分にとって得意なことで、それに熱中することでより目立てるようになるからです。なぜ得意なのかというとそこに遺伝的な際があるからですが、それは一般におもわれているようりもずっとちいさな違いでかまいません。 5-6人のグループのなかで一番足が早いというだけでスポーツが好きになる。このわずかな遺伝的な違いが増幅して、思春期になる頃には好きなことがはっきりと別れるようになり、それぞれのキャラが固定する。それを私たちは人格とよんでいる。それ以外のことは、やってもできないのです。 そう考えれば、私達が自分にあったプロフェッションを獲得する戦略はったひとつしかありません。それは仕事のなかで自分の好きなことをみつけ、そこに全ての時間とエネルギーを投入することです  なぜなら誰もがものごころついたときからそれだけをやってきたのですから。

    ■能力が高い人間は個人学習を好む。
    超一流になるのは才能か、努力か。バイオリンのSランクの生徒は、ABランクの生徒よりも長時間練習しているが、才能がなくても努力で超一流になれるわけではない。 人が3時間も4時間もバイオリンを引けるのは好きだからで、ひとは自分が得意なことを好きになるのです。やればできる、ではなく、やってもできない、が人の本性。ひとは好きなことにしか熱中できない 嫌いなことはどんなに努力してもやれるようにはならない。石の上にも3年というが、3年も座っていられるのは好きだからで、そうでなければ誰もそんな拷問に耐えられないでしょう。


    ■自分のプロフェッションを実現できるニッチをみつける
    好きなことに人的資本のすべてを投入する
    好きなことをマネタイズできるニッチをみつける
    官僚化した組織との取引から収益を獲得する

    人生のどこかの時点で組織の外にでて大組織と取引するフリーエージェント化が知識社会の基本戦略。


    ■新しい働き方を理解するためのキーワードは
    グローバル
    知識社会 ◎
    リベラル化

    グローバルな競争に生き残る企業は、能力以外のすべての差異(性別、国籍、宗教、年齢、性的指向LGBT、身体的や精神的な障害)を問題とせず、もrっとも大きな人材プールのなかから最適な人物を採用する会社だ。

  • 橘玲氏の著作ということで読んだ本です。しかし、この本を読んでみると、以前読んだLIFE SHIFTの日本版という感じでした。しかも日本の社会を前提にしたこれからの生き方の指針を示しているので、アメリカ社会を前提にしたLIFE SHIFTより参考になりました。

    LIFE SHIFTでは個人が持つ資産/資本をあげ、それぞれの資本を生かした戦略を説いていましたが、この本でも「金融資産」「人的資本」「社会資本」という3つの資本をあげ、その3つの資本から「幸福に生きるためのインフラストラクチャー」の設計を提案しています。

    その3つの資本の構成によって、人生を8つのパターンに分けています。
    プア充:社会資本;○、人的資本;×、金融資産;×
    貧困: 社会資本;×、人的資本;×、金融資産;× 
    リア充:社会資本;○、人的資本;○、金融資産;×
    超充: 社会資本;○、人的資本;○、金融資産;○
    お金持ち(投資家):社会資本;×、人的資本;○、金融資産;○
    旦那:社会資本;○、人的資本;×、金融資産;○
    退職者:社会資本;×、人的資本;×、金融資産;○
    ソロ充:社会資本;×、人的資本;○、金融資産;×

    こんな感じでわかりやすく人生をパターン分けしているのですが、退職者や、ソロ充といった日本で特徴的な人物像についても言及しているので、自分がどのパターンに属しているのか想像しやすくなっています。

    また、日本特有の雇用形態であるサラリーマン(正規雇用社員)を特権階級として、日本社会が差別社会であり、なんだかんだ言ってもサラリーマンは優遇されており、その身分に身を置くことのメリットを説いています。

    ただし日本人は忖度など人間関係を重視し、欧米人は個人や論理を重視しますが、それを「間人」と「個人」と定義し(社会学者・浜口恵俊が提唱)、その性格から言語認識においても欧米人は「名詞」をアジア人は「動詞」を重視しています。
    しかし、アメリカでは「日本化」が進んでおり、チームワークを重視することによって労働力を搾取しているようです。

    そして最後に、幸福な人生への最適戦略を次のように要約しています。

    ①金融資産:「経済的独立」を実現できれば、金銭的な不安から解放され、自由な人生を手にすることができる。
    ②人的資本:子どもの頃のキャラを天職とすることで、「ほんとうの自分」として自己実現できる。
    ③社会資本:政治空間から貨幣空間に移ることで人間関係を選択できるようになる
    そして幸福の統一理論を次のようにまとめています。
    ①金融資産は分散投資する
    ②人的資本は好きなことに集中投資する
    ③社会資本は小さな愛情空間(家族)と大きな貨幣空間(ゆるい繋がり)に分散する。

    この本は自分にとって少なからず、これからの人生を生きる指針になった本です。

  • 久しぶりの楽しい読書。
    言われなくても80歳まで働くつもりでいたが、金融資本、人的資本、社会資本という概念で整理され、低金利時代の今、資産運用には期待できなのだから、働いて人的資本を労働市場に投入すべき、とズバッと書いてあって、とてもすっきりした。なるほど、そうだよね、それでいいんだよね、と。好きなことに人的資本を集中投下する、ということも、言われなくても分かっているつもりだし、そうしたいと思っていたけれども、改めていろいろな根拠をもとに説明されるとこのままではだめだ、という気持ちが強くなった。うじうじ悩んでないでアクションを起こさねば、と背中を押される。
    そして、これまで自分がサラリーマンとして、いったい、何に苦労をしてきたのか、その背景が的確に表現されていた。私はマックジョブを正社員という立場でやってきたわけで、それは常に間人としてであり、チームのことを考えて自分の休みを調整したり、やりたくない仕事も「ない袖は振れない」と上司に言われ、チームのために引き受け、人権侵害を感じながらも、我慢してやってきた。こんな生活をしていては決して幸せにはなれない。もう若くはなく、既に手遅れかもしれないけれど、今すぐ動くべきなのかもしれない。
    この本のメインターゲットは私のような読者なのだろう。きっとマーケティングは抜かりなくやられているはずだ。そのマーケティング戦略にまんまとはまってしまった。たくさんの読者に受け入れられ、書籍の売上を伸ばすことも想定して書かれたのだとしたら、私のようなサラリーマンは多い、ということだろうか。著者の意見に反論はなく、100%agreeだが、きっとそうではない読者もいるはずで、逆にそういう人たちの意見を聞いてみたいと思う。

  • YouTubeで岡田斗司夫が激賞していたので、その前にマイケル・サンデルの「実力も運のうち」を読み始めたが「これから正義の話をしよう」ほど納得できなかったので途中で放棄して本作を読み始めたが、経済学書ははっきり言って読みにくい。しかし日本人は日本で生まれたことで半分勝ち組で、セレトニンの話になると日本人は人類の究極進化ではないかとも思えてきた。本書で言いたいのは「金融資本」「人的資本」「社会資本」から幸福の土台を設計しろと言うことだが、今一応公務員の職業を退職してもうそれだけで幸福なことなのだと納得した。

  • 幸福な人生とは
    金融資産(経済的独立を目指す 分散投資)
    人的資本(自分の好きなこと得意なことに集中投資)
    社会資本(小さな愛情空間と大きな貨幣空間に分散)
    これを土台として生きていく。
    自分は金融資産と社会資本はある程度理解して行動出来ている。人的資本はまだまだ探してる最中。
    人的資本を探す旅はまだまだ続きます。

  • 出だしは読みやすかったけど、だんだん頭に入らなくなっていった。とりあえず読み切った感。

  • 幸せとはどういう状態なんでしょうか。

    そこには、3つの柱が必要と言うことでした。

    人的資本、社会資本、金融資本。
    自分と仲間とお金。この3つのバランスで幸せの状態が決まる、という話だと思いました。

    考え方自体は、アンドリュースコットのライフシフトを著者なりに噛み砕いたような感じの本なのかな、と。

    自分が何を持ってるか、どこを手入れすべきか、色々考えるきっかけになりました。

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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