アイアンマウンテン報告: 平和の実現可能性とその望ましさに関する調査

  • ダイヤモンド社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478180167

作品紹介・あらすじ

アメリカを揺さぶり続ける禁断の偽書。60年代末期のアメリカで物議を醸し、封印されたはずの衝撃のレポートが、今また注目の的に。武装極右集団のバイブルとなった危険なロジック。オリジナルのレポートに加え、発行の経緯、その後のメディアの反応を集めた顛末記が収められた九六年発行のサイモン&シュスター社版を全訳。

感想・レビュー・書評

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  • SF作家リュインによる一種の偽書。ワシントンの政治家、経済学者など、15人のさまざまな分野の専門家が集まり、戦争がない社会を根源的なところから研究を行い、そこで作成されたレポートという形式を取るパロディー。まずクラウゼヴィッツによる戦争は政治の手段というテーゼを否定し、戦争こそが人類の文化を作ってきたとし、政治・経済面のみならず、社会、文化、生物学的な観点から段階的に常識を突き崩していく。ところどころ狂気じみた結論が巧みに交えられ、それが強烈な皮肉として効いている。あと、翻訳の文章は、役人やシンクタンクの文体を模してあるせいか、あまり読みやすくない。以前、氏家尚が『戦争は消えない』というタイトルで出版したものの方がわかりやすい。なお、PDFはこちらで無料公開されている。http://cruel.org/books/ironmountain.pdf

  • 平和って何?っていってあなたは去ってしまったわ。そんなのやり逃げでしょ?そんなことじゃさっき身籠ったあなたの子を育てきれないわ。なんですって?一日目につくった空をみろって?そりゃあ星占いはしてみるけどさ、なにこれ、スラテマア?知らないよお、こんな星座。ヘビ座とかリンゴ座ならきいたことあるけど。そうね、この子のこと、よく思ってないのね。。。でもこの子は生まれてこなきゃいけない気がするの。そして、生まれてくるその子を抱いてなんとかやりくりしていかなきゃならないのが、いまのあたしの使命。多分大丈夫。この報告書だって、すぐに書き上がるわ。近くにはリンゴが茂ってるし。。。さむい。雪が降ってきた。今夜はこの馬小屋で、藁を敷きつめて寝よう。今日は星が一段と輝くわ。その中でも一段と輝くあの星。。。ベツレヘムっていうみたいなの。。。そしてあたしは。。。

  • 戦争は国家にとって有益であり、戦争が消滅すれば世界は崩壊する!!
    長年封印されていた、禁断のアメリカ政府機密報告書がついに日本語で読める事に。

    ちゃんと翻訳者山形浩生の解説読むように!!

  • キレイ事ばっかで足元も見ないで反戦とかいってる奴らが死ぬほど嫌いだ。
    2005年末の帰省行き帰りで読んだこの本は「1960年代半ば、冷戦終結の予感をもった匿名のアメリカ政府筋が民間有識者からなる委員会を組織し、この報告をまとめさせた。その結論が不穏で公表を差し控えることになったものの、委員の一人が危機感をおぼえ、あえて世に問うた」という設定の偽書。

    (下記URLは訳者あとがき ちなみに以下の文中に出てくる猪口邦子はこの前組閣されたショッキングブルードレスのドラえもん)
    http://cruel.org/books/ironmount.html

    全編においてみなぎる冷徹なロジックで導き出されたその結論とは

    「永続的な平和は、理論的には可能だが、現実的には実現不可能であり、またかりに実現したとしても、それが安定社会の最大利益と一致しないのは確実である」

    で、これを導き出す基本ロジックは批判対象であるハマーンカーンの

    「我々は時速30キロの速度制限を受け入れるよりも、自動車が毎年4万人の人々を殺すのを受け入れる方を選ぶ」

    というこの国に今でも十分に存在する(ちなみに今年は7千人)考え方であり非常に重要な現実認識だ。

    別に経済が戦争を要求しているというめくら陰謀論な話じゃあなくて、現代社会そのものの基盤に戦争ががっちり食い込んでんだから、平和が台頭した暁にはその代替を用意しなければ安定的社会は成り立たない(芸術すらそうである)という現実を元に作られていて、一言で言って大人な思考。平和っていいよねって言っとけばとりあえずOKで自分は高尚な目的に身を委ねているんだって子供じみた安心感とか一切ありえない。

    さらにこの書籍の背景も面白い。当時の心情左翼が上記ハマーンカーンに代表されるシンクタンクを攻撃するためにあえてその思考論述方式を用いて作成されたパロディー(偽書)であったがために、まじめに思考しようとするとどうしても躊躇してしまう領域に「笑いがとりたいから」という蛮勇を持って切り込みすぎてしまう思考の明晰さに「左翼って実は頭いいんだ」という驚きとそのよって立つポジションをひっくり返してしまう愚かさ。

    本書はPDFで全部読めるので興味のある方はどうぞ。
    http://cruel.org/books/ironmountain.pdf

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