組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか

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著者 : 菊澤研宗
  • ダイヤモンド社 (2000年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478373231

組織の不条理―なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのかの感想・レビュー・書評

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  • ガダルカナル戦、インパール作戦と言えば、「失敗の本質」以来、様々な戦史において徹底的に批判されてきた。曰く、敵戦力の軽視、戦力の逐次投入、補給を無視した作戦計画・・・。現在の視点から戦史を語る場合には、敵味方双方の完全なる情報を得ているので、「合理的に」ああすれば良かった、こうすれば良かったと自由に批判を加えることができる。しかしながら、敵の情報が入らない戦時下において、しかも味方についても客観的な評価が難しい状況で、そんな完全合理性を踏まえた判断ができたのか。筆者は「限定合理性」をキーワードに、これらの戦史を読み解いていく。

    筆者はガダルカナル戦には「取引コスト」、インパール作戦には「エージェンシー理論」という制度派経済学の理論を持ち出している。簡単に言えば、ガダルカナルにおいて、これまで日本陸軍の必殺技とされてきた白兵戦重視を捨てる訳にはいかなかったし、インパール戦では役割分担の細分化が進んだ官僚組織において、上位に声の大きい者がいると、それを牽制すべき者たちが合理的に沈黙してしまう、ということだろうか。

    これを現代企業社会に当てはめると、技術革新によりこれまでの商品や販売方法が通用しなくなっているのに、ガダルカナルのような悲惨な戦いを強いられる、とか、インパール作戦の牟田口のように名誉欲に駆られた役員・部長が主唱する無謀なプロジェクト巻き込まれる、ということだ。本書では戦史に続いて、今から15~20年ほど遡り、バブル期の放漫経営から来ているような破綻事例が多く採り上げられており、「なぜ企業は日本陸軍の轍を踏み続けるのか」という副題もそれなり首肯できる。

    ここまでは、良くわかる。

    人は限定合理的だから失敗や非効率は避けられないが、その解決策は完全合理性の追求ではなく、組織の中に批判的合理構造を備えることだと筆者は言う。そして巻末に至り、太平洋戦争の導火線になった北進・南進論をユートピアと批判した上で、「漸次改善」こそが目指す道と説く。この辺で、若干の論理的破綻が見え始める。

    牟田口の作戦に異を唱える将校は多かったし、ガダルカナルで必要だったのは用兵思想の抜本的な転換と、制空権の確保だった。筆者は強いリーダーシップを解決策とすることに懐疑的だが、制空権を取れない中で連合艦隊が戦艦によるガダルカナル空港砲撃というイノベーティブな作戦を立てた際、実働の栗田艦長らは艦隊保存の立場から「合理的に」反対し、山本長官らが強引に押し切ったのではなかったか。ある組織において批判がタブー視される傾向があるとすれば、それが徒に意思決定を長引かせ、また批判の横行が組織風土に悪影響を与えるからでもある。

    そもそも、佐藤優がこの本を薦めていたのは組織の不条理さを教えるためだった。不条理さの由来は良く分かった。「完全に合理的な」解決策まで求めるのは酷というものか。

  • 経営戦略は軍事戦略を例にすることが多いですが、正にそれを生かした太平洋戦争時の日本陸軍の組織行動を分析されています。経営や経済の基本的な概念、日本陸軍の行動、実在企業の行動の3本柱でまとめられています。行動メリットという具体的なメッセージも繰り返し、説明され期待以上の良著です。

  • 内容は著者の「組織の経済学」と同様。完全な合理性が陥るわなと不完全な合理性こそが結果として合理的な結果を生むことを記述。沖縄戦からガタルカナル戦まで具体的に書かれていることと現代の企業例までかかれていることは分かりやすい。

  • 組織的に動くとは何か…考えさせられる一冊。
    詳細は後ほど。

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