トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

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  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478460016

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  • 大野耐一『トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして』ダイヤモンド社。

    今からおよそ40年前に執筆された生産管理のバイブルと言える名著。初心忘れるべからず、という思いから再読。

    豊田佐吉により産み出された『自働化』と豊田喜一郎により産み出された『ジャスト・イン・タイム』を二本柱とし、大野耐一により体系化されたトヨタ生産方式の源流と原理原則を理解する上では最良の書。但し、トヨタ生産方式の概念や思想、考え方が中心なので、トヨタ生産方式を実践する上では自分自身で具現化するための方策を検討するか、具現化手法の解説書に頼らざるを得ない。

    今や年間1兆円という、とんでもない利益を創出する巨大企業に成長したトヨタ自動車であるが、先人たちの努力と決してぶれない強い意思があってこそのものだと思う。

    従って、社長交替の都度、経営の方向性が変わるような電気メーカーがトヨタ生産方式を採用したところで、単なる模倣に過ぎず、根本的な収益力の改善にはならない。

  • 言わずと知れたトヨタ生産方式の名著で、第一人者が平易に記述したもの。とても分かりやすく書いていて、製造業に携わる者でなくとも学ぶことがたくさんある。トヨタ生産方式の内容について書かれているのは本の前半で、後半はその由来やフォード・システムとの比較。集中して読むべきところは前半の130ページほどにまとまっている。

    面白いところは随所にある。前工程から後工程へのつなぎは、バトンリレーだと書いている(p.47-49)。つまり、水泳のリレーのように前者が到着してから後者がスタートするのではなく、バトンリレーのように並走する期間を設ける。前者に多少の遅れが合った時は並走期間の早い段階で後者が受け継ぐ。これはつまり前者の遅れをカバーすることだ。また、カンバンを取り入れることは多能工化を導く(p.67-73, 175-177)。カンバンで前工程に渡される必要量が大きく変動すると、前工程は混乱し負荷がかかる。カンバンを用いるということは、後工程の生産量の平準化が必要となる。前工程が生産する物の使用量を後工程が平準化するというということは、一度に一品種を大量に作る(同じ部品を大量に消費する)のではなく、多品種を少しづつ作ることになる。したがってラインに多品種が混在することになる。するとこれに対応して、前工程では段取りを短くし、多能工化することになる。

    省力化、省人化、少人化の概念区分(p.120-123, 208f)なんてのも面白い。省力化は作業者一人にかかる負担を軽減するもので、作業者の作業におけるムダが増える。省人化は多能工化を進めてそれぞれの作業者の作業を集約し、作業に必要な人数を減らすこと。少人化はさらに、作業に必要な定員をなくす。機械の操作に必要な人数とか並行して進めることが必要な作業などがあれば、その分、作業に必要な定員が生まれてしまう。こうした定員を、機械の改修や作業の組み換えを通じて減らすことが少人化。

    まさに現代の古典と言えるような本。IT系でも例えばアジャイル開発でその名もKanbanという手法があったりして、単に製造業の話と考えずに見るべきものはたくさんある。

  • トヨタのカンバン(JIT)は、無駄な製品在庫、仕掛品、材料を持たないが原則
    ・工業簿記と連動して考えれば理解がはやい
    ・B/Sの製品、仕掛品、材料を出荷予定、製造予定、ライン上の在庫のみに割り当てることにより小さくする
    ・すると、資金や、在庫を小さくすることができるので、P/L上の支払利息、倉庫費用や、給料等の労務費用等を小さくできる。
    ・結果ムダがなくなるので、資本等の回転率や、資金の回収率、回収サイクルが高くなるので、C/Fを含めて、経営の安全性を高めることができる。
    ・ただし、在庫を小さくすると、背反事象である、発注回数が多くなるので、購買の発注回数に応じて、システムを大きくする必要がある。
    ・QCDを管理するためには、各工程等の状況を把握(見える化)するため、多くの項目を、ロットや単品管理を行う必要がでてくるため、精緻な生産管理システムが必要となる。

  • アジャイル・リーンの入門書を何冊読むよりも原点にもっと早く当たるべきだった。実務者で現場主義の著者らしく無駄な説明やわかりにくい冗長な言い回しもなく重要な事項がすっと頭に入ってきた。
    これが1978年に発行された本だとは信じられないほどに内容が色あせていない。

  • スクラムを調べていた流れで古典とされているこの本を読んでみた。古い本だし、図書館から借りてきた本だからつまらなかったらすぐ返せばよいと思って読み始めたが、結果は・・・さすがに「古典」と呼ばれるだけあって名著。トヨタ生産方式やカンバンがただの「生産方式」ではなく、深い考察と強い信念のもと、多年に渡る実践と改善によって生まれた、思想を伴った仕組みであることがわかった。

    この本を読むと、日頃会社で見聞きする方針や施策、業務プロセスがいかに表面的で無思慮なものかを痛感する。もちろん、その中に自分も含まれてしまっているのだが(反省)。

    ある意味、世の中も会社もロクにものを考えていない場当たり的な規則や言説だらけで、最初はアホらしいとか、ヤレヤレとか思っていても次第に感覚がマヒしてきて、しまいには自分もそうした言動をするようになる。これは一種の洗脳で、ときどき意識的にリセットしないとバカになってしまう。

    閑話休題。

    トヨタ生産方式は「ムダの徹底的な排除」を基本思想としているのだが、「ムダとはなにか」について徹底的に考え抜いているのがすごいところ。

    たとえば、10人で100個作っていたのが同じ人数で120個作れるようになったから生産性向上、のような話があってもそれで終わらない。20個余計に作って売れないで在庫になるならムダ。むしろ8人で100個作るようにすべき、となる。それも最新設備を導入して実現するのではなく、古い設備のまま保守や作業の段取りを工夫したほうがよい。設備の価値は減価償却上の残存価値で決まるのではなく、稼ぐ価値を有しているかどうかで決まる。それを無視して何の工夫もなく設備を更新するのは、根本的なムダ(作業の段取りの問題)を残存させることになる、とこんな具合だ。

    この本のさらにすごいところは、生産現場と原価計算だけ見ているのではなく、チームワークやトレーニングまで含めて考えている点。たとえば以下。

    「十分な訓練もしないで、達成できる目標など、どんな小さな目標でも存在しないのではないか。」

    「離れ小島をつくるな」(※一人だけポツンと仕事をさせず、何人か集めてチームワークが取れるようにすること)

    タイトルこそ「トヨタ生産方式」だが、生産とか製造とかにかかわらず、チームで仕事をしていて思うようなアウトプットや生産性が上がらないで解決策を求めている人なら誰でも得るところのある本。そういう普遍性を感じさせるところが「古典」と呼ばれる所以と思われる。

  • 大野耐一さんが、TPSの思想である、規模を追わない生産方式「JIT 」を語り、人間尊重の組織によってそれを成し遂げた。経営システムとしてのTPSの思想が散りばめられた本。

    以下感想
    リーダーの仕事は、あるべき姿を考え、思想を具体化し、示していく事なのだと気付いた。そして、それを実現する方法として組織のあるべき論があり、それも具体化した仕掛けにしていく事で、思想が実現できるのだと思う。

    人間尊重とは、人は個を生かし、知恵を使い、手柄を上げ、喜びを得る事だと解釈した。

    経営論として普遍的な部分が多く、これから繰り返し読んでいきたいと感じた

  • ザ・ゴールと同じようなことを言っているが、元祖はこちらか。ジャスト・イン・タイムの発想とそれを実現した数々の努力と手法はもちろん、時代は進歩しても根本的なことは変わらないのだとつくづく思う。

  • 1978年に初版発行の本書。繰り返し2回読んだ。
    トヨタ生産方式の2本の柱となる自動化とジャスト・イン・タイムについて後者をトヨタ社内で具体的に計画、普及させていった張本人の言葉で書かれているので非常に参考になる。
    どのように扱うかという方法や事例よりも、どちらかというと豊田喜一郎氏の発言から着想を得たこの生産の在り方を、大野氏がどのようにして社内で実現していったか、その辺りの過程が詳細に書かれている。

    量の関数意識(まとめてたくさん作るほど安くなる)や、生産工程は前から順番に後に流していくといったそれまでの常識に反したことを実現、定着させるのはトヨタ社内だけでもいかに苦労を伴うものであったかがよく分かった。トヨタはある時期いきなりこの手法に切り替えたのではなく、大野氏の職位が上がるに連れ、少しずつ適用範囲を広げていったことが時間は要したけれども成功の要因になった、ということも学んだ。

    そのほか、個人的に興味を持ったのは下記の2点。
    (1)豊田喜一郎氏の引用で、自動車製造事業立ち上げに至る3年間に何をしていたかの部分
    (2)後半の自動車王ヘンリー・フォードの引用と大野氏の考察

  • 元トヨタ自動車工業(株)副社長、大野耐一(おおのたいいち)氏の著作。1978年が初版だが、手元の本は2003年の79刷。 長らく売れ続けているのだろう。 コンピュータ化に関しては、(今の視点だと)多少先入観があるように思うが、現在のトヨタの生産システムを構築したのが大野氏であることがよくわかります。

  • トヨタ生産方式について知ることができた。
    必要なところだけ読めばいいと思う

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