したたかな生命

  • ダイヤモンド社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478810033

作品紹介・あらすじ

大腸菌、癌細胞、ジャンボジェット機、ルイ・ヴィトン、吉野家、インターネット、メタボ…これらに共通する法則とは?あらゆるシステムの基本原理。

感想・レビュー・書評

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  • ●どのようなロバスト(強靭な)なシステムにも脆弱な(fragileな)面がある。ロバストネスとフラジリティーは、あらゆるシステムの表と裏の顔なのだ。 
    ●システムバイオロジーと言う言葉自体私(北野宏明)が1996年ごろから使い始めた言葉。
    ●ロバストネスと言うのはシステムの特徴で「システムが、いろいろな擾乱に対してその機能を維持する能力」と考えます。
    ●ロバストネスを向上させる方法には、システム制御、耐故障性、モジュール化、デカップリング。光学システムでは、エンジニアの設計によって行われるわけですが、生物の場合、進化の結果としてそのようなデザインが選択されていくことになります。
    ●情緒性と多様性は生物でもいろいろな局面で利用されています。腎臓が2つあるのもそうです。耳や目は2つありますが、1方が機能しなくなると機能が低下する。
    ●モジュール化。システムが細かく分けされている。生物で言えば細胞。
    ●デカップリング。(バッファリング)あまり影響のない物理的なノイズなどは切り離される。
    ●糖尿病。人のシステムは飢餓と戦ってきたわけで、低血糖のリスクがありますから、血糖値を上げていく方向にフィードバックループが進化する。ロバストネスが向上した結果生じる病気。
    ●がん細胞をスライスすると、1つのがん細胞の中でもいろいろな種類の細胞が混在している。遺伝的に多様性を持ったがん細胞君は、その違いごとに薬や治療に対して違う反応する。
    ●蝶ネクタイ構想の免疫系システム。
    ●従来はジャンクなどと思われていたゲノムの部分が、ノンコーディングRNAと言う転写産物を作っていることがわかってきました。高度な生命機能に関わるネットワークのいろいろな側面を制御していることがわかってきました。
    ●緩やかな進化はダーウィン的な要因が支配的かもしれないが、劇的な進化の背後には「共生」が隠れている可能性が高い。少なくとも生物の進化の場合には。

  • ロバストネス:幅広い攪乱に対して、対応できる能力

    ・機能の維持と状態の維持
    ・ロバストネスとフラジリティ
    ・何に対してロバストネス(フラジリティが有る)?

  • 自分が「XPと生態学」で言いたかった主張のような漠然とした感覚のようなものが、もっと分かりやすく説明されている。

    あのLTの続きで、本当は多様性だけでなく「移入と移出」「有意なコンフリクト」にも触れたかったのだけど、この本では「ロバストネス」という観点で見事に統一的に扱われている。

    デカップリングという観点は自分にはなかったので、これは収穫。

  • システム生物学、というキーワードに興味を持ち読んでみたが、ピンと来なかった。生物というよりは航空機の例とか、生物以外の話題が多い印象。著者はソニーの研究所副所長、物理出身の工学博士。

  •  失敗をなくすためには、同種と異種、言い換えると、冗長性と多様性の両方の要素が必要になるのです。
    比ゆ的な説明になりますが、例えば上司が部下に指示を伝える場合、同じ指示をそのまま繰り返すのであれば、それは冗長です。これは、聞き漏らしなどに対して、そのようなことが起こるリスクを低減させることができます。しかし、その指示の仕方に問題があって、理解してもらえないことには対応できません。
    一方、同じ命令を、表現を変えて伝えるのであれば、それは多様性(ここでは、表現の多様性)を利用していることになります。この場合、ある言い方では理解できない場合でも、ほかの表現でより正確に理解してもらえる可能性があるので、伝達上の問題を低減することができます。この二つを使い分けることにより、指示が伝わり損なって失敗する危険を回避することができます。(p.54)

    今の癌治療というのは、「腫瘍のサイズが小さくなることは、非常にいいことである」という前提です。それは確かに悪くはないことですが、小さくなった結果、ロバストネスがすごく上がってしまうと、結局、もっと悪化する結果になる可能性も否定できません。ですから、「ロバストネスをコントロールする」ということを、治療のターゲットにするべきなのだと思うのです。別に癌そのものを完全になくしたり、小さくできなくても、現状維持で転移もしないような状況に眠らせてしまえばいい、という考え方も成り立ちます。重ねて明らかにしておきますが、これらは、現在、基礎的な検討の段階での仮説であって、すぐに臨床に応用できるレベルのものではありません。(p.164)

  • ロバストネス-それはいろいろな擾乱に対して対応できる能力のこと。頑健とか強靭とか訳されることもあるようですが、生物に対してはちょっと感じが違う。もう少ししなやかな強さということです。この生物の持つロバストネスという特徴を、飛行機のシステムだったり、吉野家の戦略だったりを例に出しながら話は進みます。後半の癌とか進化の話あたりになると私はついていけなくなったのですが、糖尿病のところはなるほどと感じました。今は病気ということになっているけれども、進化の過程において、飢餓状態などを考えると糖尿病の状態のほうが実は生き残るのに有利だったのだそうです。他にもこういう例はきっと見つかるのでしょう。そういえば、以前にも鎌状赤血球がマラリアに強いという理由で生き残ってきた人たちがいるという話を聞いたこともあります。生命はなんてしたたかな存在なのでしょう。もう少し、竹内さんが話に介入してくれば分かりやすく仕上がったようにも思うのですが、でも生命のしなやかな強さは感じることができました。ところで、ロバストネスの反対語はフラジリティ(脆弱さ)となるそうですが、私はスティングのフラジャイルという曲がとても好きです。

  • 2008-01-18

    ロバストネス,ロバストネス,ロバストネス・・・・・・

    ひたすらロバストネスで現象をきっていく本.

    ビジネス書の多い,ダイヤモンド社が何故この本をだすのかがはっきり言ってよくわからなかったが,
    システムバイオロジーや北野共生プロジェクトなどソニーCS研の北野宏明氏が書いています.

    例え話がふんだんでわかりやすくはあるんだけど,
    逆に縦書きで式などがない分

    「ここでいってるロバストネスって日常言語?テクニカルターム?」

    っていうのがよく分からなくなってしまうことがありました.

    制御論の話がでてくるから,そうなるとロバスト制御の話でいいのか?
    とおもいながら,どうももうちょっと広げた話になってる気も・・・.

  • 生命の進化のカギはロバストネスである。例えば糖尿病は、飢餓が起こりやすかった頃には有益に機能したが、運動量が減り、高カロリー食が増えた結果、病気とされている。

  •  生体機能が、制御工学の概念に似ていることは直感的には理解していても、具体的にそれが何か指摘できる人は少ないはず。本書を読むと、「あくまで仮説」と断わってはいますが、生命の進化の過程が、ロバストネスを高める方向に進んできたことが理解できます。例えば現代病の代表格である糖尿病。「そもそも生体は、血糖値が上がる方向にシフトしやすいようにできている。それは飢餓状態を克服するための進化の結果だ。」という。飽食の世にあって、そもそも緊急避難機能であったインスリン抵抗性(不要なインスリン消費を抑える)が跳ね返りとして生体に作用し、糖尿病を発症させるというメカニズムだそうです。
     ロバストなメカトロシステム構築を生業とする我々エンジニアにとって、生体メカニズムはもう1つの学ぶべき分野であると気づかされた一冊でした。

  • この社会のシステム、そして生命のシステムは、様々な状況に適応できるよう「ロバストネス(頑健さ・・しなやかさ)」が考慮されている。

    しかし、どんなに優れたロバストネスを持っていようが、常に100%というわけにはいかず、どこかに穴・・・脆弱性が必ず潜んでいる。

    本書は、そういったシステムを非常に身近な例で示している。
    が、ちょっと横文字や専門用語が多くて若干読むのに苦労するかもしれない。

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著者プロフィール

1977年北海道新聞社入社。釧路、千歳、旭川、札幌での勤務ののち東京支社で野党、平河(自民党)キャップを経て、宮沢、細川、羽田、村山政権で官邸・院内総括キャップ。北海道新聞社常務取締役(編集・制作・システム担当)、北海道新聞Hotmedia代表取締役社長などを歴任。共著に「北海道自立を考える」(北海道新聞社)など。論文に「地方分権なき『構造改革』」(「新聞研究」)など。日本記者クラブ会員、日本政治学会終身会員。北海道大学法学部卒。小樽市出身。

「2022年 『強い国より優しい国 元旭川市長・元内閣官房長官 五十嵐広三伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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