菜の花食堂のささやかな事件簿 (だいわ文庫) (だいわ文庫 I 313-1)

著者 :
  • 大和書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479305804

作品紹介・あらすじ

「自分が食べるためにこそ、おいしいものを作らなきゃ」菜の花食堂の料理教室は今日も大盛況。オーナーの靖子先生が優希たちに教えてくれるのは、美味しい料理のレシピだけじゃなく、ささやかな謎の答えと傷ついた体と心の癒し方…?イケメンの彼が料理上手の恋人に突然別れを告げたのはなぜ?美味しいはずのケーキが捨てられた理由は?小さな料理教室を舞台に『書店ガール』の著者がやさしく描き出す、あたたかくて美味しい極上のミステリー!書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 日常の謎のお仕事ミステリーですね。
    東京の武蔵野の住宅街の一画、昔ながらの細い街道沿いに、ふつうの住宅を改装して、小さな庭と、テラスのある昭和モダンな木造家屋が印象的なお店『菜の花食堂』がある。
    定休日に『料理教室』を開いている。
    物語は、『菜の花食堂』の店主靖子先生と、助手の優希さん、そして『料理教室』にやって来る生徒たちで紡ぎ出されます。
    六話の短篇連作です。
    もちろん『菜の花食堂』の『料理教室』ですから、グルメ満載、レシピが嬉しいですね。
    『菜の花食堂事件簿』はシリーズになっています。
    一作目は『料理教室』が主体に構成されていて、生徒たちの持ち込んでくる謎を、靖子先生が鮮やかに解き明かします。
    成長物語、お仕事物語、人情、恋愛、武蔵野の生活のなかの人びとの生活を描きながら朗らかに綴られています。
    靖子先生ののんびりとしながらも、意思の強い毅然とした謎解きは『ミス・マープル』を連想させます。
    優希さんの抱える悩みや、希望も共感を持ちながら成長物語を読ませます。
    読んでいて、楽しくなる物語ですね。

  • 『東京郊外の、武蔵野と呼ばれる一画』の『坂下の、びっしり立ち並んだ住宅の間』の『細い街道沿いにある』<菜の花食堂>。
    『地元の野菜をふんだんに使ったランチが売り』の店で、かつではディナーもやっていたようだが店主の靖子先生が『体力的な衰えを理由に止めてから』『定休日を利用した料理教室が開かれるようになった』、その下河辺(しもこうべ)靖子先生が探偵役で料理教室の助手・館林優希が助手役。

    杉田比呂美さんのカバーイラストと言い、還暦の探偵役と言い、少し世代は若いが吉沢南央さんの草さんシリーズをイメージしてしまうが、靖子先生は草さんと違って押しつけがましさがないのが良い(あちらは草さんのキャラあっての押しつけがましさなのだが)。
    他人のプライベートや心の中に踏み込むことはタイミングもやり方も難しいし、その後の生徒との関係を考えれば、優希のようにそもそも踏み込んでいいものかどうかを考えてしまう。
    靖子先生は基本的に生徒の村田が好きなうわさ話には加わらないし、本人に頼まれてなぞ解きをするときもいそいそという感じはない。

    だが、いざなぞ解きとなると鮮やか。
    恋人に作った料理が気に入られなかったのは何故か、妻が作ってくれた茄子の揚げびたしは他のレシピと何が違うのか、買ってきたばかりのケーキはなぜ酸っぱかったのか、息子が灰汁が残ったまま小豆を煮ていたのは何故か…。料理を元にその人の想いをくみ取り、その先に向かう一歩まで後押ししていく。

    優希と同じ目線と推理力しかない私は靖子先生の洞察力に恐れ入るしかないが、その靖子先生もまた辛いものを抱えていた。だからこそ追いつめられていた優希を救うことが出来たのだろう。
    優希が職場を辞めた理由はあまりに理不尽だが、こういう人はどこにでもいるし、結局は靖子先生の言うように『関わらないのが一番』というほかないのだろう。関わらない状況になれた優希は良かった。

    一見面倒だったり取っつきにくそうだったり、逆にスマートで何でも上手くやって来たような人でも、その人なりに抱えているものはいろいろあるんだなと思える。靖子先生同様に。
    最後になって靖子先生にも優希にも転機になりそうな出来事が。これは記憶が薄れないうちに続きを読まねば。

  • 菜の花食堂のオーナーである下河辺靖子は、定休日に月2回料理教室をしている。
    優希は、料理教室の助手としてオーナーのお手伝いをしている。
    なぜ優希がここへ通うことになったかの経緯も含め、オーナーが、料理教室の生徒さんたちの困りごとを解決する物語。
    メインの料理や食材とともに6話の短篇。

    オーナーである靖子先生は、素朴で家庭的な料理の腕前も凄いのだが、料理教室に通う人たちの悩みや困りごとを瞬時に理解して、的確なアドバイスをする。
    料理だけでなく心まで癒やしてくれる。

    物語自体は、悩みを解決するのがメインなので詳しい料理のレシピが無いのが残念。

  • 2016年2月だいわ文庫刊。書き下ろし。シリーズ1作目。はちみつはささやく、茄子は覚えている、ケーキに罪はない 、小豆は知っている、ゴボウは主張する、チョコレートの願い、の6つの連作短編。離職して料理教室のアシスタントを務める優希さん目線で描かれる日常の謎解きがそれなりに楽しい。次作に進もうかどうしようか迷ったが、最終話で優希さんのマネージャー的な役割の話が出てきて、気になるので読み進めることにします。

  • (あらすじ引用)
    「自分が食べるためにこそ、おいしいものを作らなきゃ」
    菜の花食堂の料理教室は今日も大盛況。
    オーナーの靖子先生が優希たちに教えてくれるのは、美味しい料理のレシピだけじゃなく、ささやかな謎の答えと傷ついた体と心の癒し方……?
    イケメンの彼が料理上手の恋人に突然別れを告げたのはなぜ?
    美味しいはずのケーキが捨てられた理由は?
    小さな料理教室を舞台に『書店ガール』の著者がやさしく描き出す、あたたかくて美味しい極上のミステリー!

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    お野菜を一つテーマに選んで作る料理教室。
    この本を読んで、町にあるJAの素晴らしさが分かりました(笑)新鮮な野菜を使った料理はどれも美味しそうで、私も自分のために作って食べたいと思いました。

    今日は朝の開店と同時にJAで、
    この本に出てくるような丸っこい茄子を買いました。
    今日は茄子の煮浸しにします

  • お料理教室の先生が鋭い観察力を持っていて、生徒さんの悩みを解決していく。

    主人公の行動や考え方には少し引っかかったけど、
    さらっと読みやすい。

  • 読んでて美味しそう、かつ無茶苦茶な謎の出方のない日常が良かった。
    心がささくれたときに読むと、途中のトラブルに感傷的になりそう…。

  • 書店ガールの著者のシリーズを、別のだいわ文庫の書籍で知って読んでみたいと思った。
    食堂で助手を務める優希と食堂主で料理教室の先生でもある靖子先生。日常の謎をふっと靖子先生が紐解いていくところがいい。

  • シリーズ第一弾。

    菜の花食堂の料理教室を舞台に描かれる、連作6話。

    作品紹介では“ミステリー”と書かれていますが、剣吞な事件が起こるわけではなく、日常の謎やお悩みを食堂のオーナーで料理教室の先生をしている、下河辺靖子先生が鋭い洞察力で解明していく、という内容です。
    全体的な雰囲気は温かな感じではあるのですが、ちょいちょい人の醜い部分にも触れていて、本書の主人公で、料理教室の助手をしている優希が前に勤めていた会社で受けた嫌がらせの話(第三話「ケーキに罪はない」)とか、リアルにしんどいです。
    当の靖子先生の背景は謎のヴェールに包まれていて、第六話「チョコレートの願い」でフランスに娘さんがいるらしい事が判明し、その娘さんからの謎のメッセージを受けて、慌ただしくフランスへ旅立ったところでこの巻は終わります。
    読みやすいですし、料理の描写も楽しめるので、次の巻も読んでみる所存です。

  • 『書店ガール』でおなじみ(?)の碧野圭さんのライトミステリー。
    6編の短編集。

    下川辺靖子は東京の武蔵野で「菜の花食堂」を営んでいる。
    地元の野菜をふんだんに使ったランチが売り。
    もうひとつの人気は月に二回開催される料理教室。
    生徒たちから靖子先生と慕われている。

    館林優希は靖子先生が開いている料理教室の助手。
    といっても、靖子先生の好意でのこと。
    そこに至るまでにはちょっとした縁が…

    靖子先生の料理教室で起こるちょっとした事件。
    う~ん、事件とまではいかないちょっとした出来事。
    靖子先生が解決してみれば、それは全て”あたたかい謎”だったから。


    ■はちみつはささやく
    和泉香菜は婚約者が「菜の花食堂」の料理の大ファンという理由で、料理教室に通ってきていた。
    毎月熱心に通っていた加奈が突然料理教室に来なくなった。
    ついには料理教室を辞めると言い出した加奈。
    生徒たちがささやく様々な憶測。

    ■茄子は覚えている
    杉本春樹は料理教室ではたったひとりの男性。
    他の生徒たちからは、定年後悠々な生活を送り、趣味で料理を習いに来ているのでは?と思われていた。
    その春樹が「妻の茄子の揚げ浸し」をもう一で食べたいと願う。
    あれ?杉本さんって奥さんがいなかったの?離婚?死別?
    生徒たちは興味津々!

    ■ケーキに罪はない
    優希が靖子先生と出会えたのは、優希の身に降りかかった悲しい出来事があったから。
    派遣社員として働きながら、料理教室の助手をして、元気を取り戻しつつあった優希に再び悪夢がよみがえる。
    そこから救い出してくれたのは、やっぱり靖子先生だった。

    ■小豆は知っている
    村田佐知子は50代の女性。
    ベテラン主婦の彼女はまるでもうひとりの助手のような存在。
    助手の優希としては、時々、その存在がうっとおしくなる。
    ある料理教室の日、当日キャンセルの電話をかけてきた。
    気になった優希が村田の自宅を訪れたのだが…

    ■ごぼうは主張する
    料理教室に通って来る大澤小百合、前田桃子、八木千尋の三人組。
    優希には三人をママ友と思っていたが、その関係がなんとなくしっくりこないと感じていた。
    優希がその関係の真実を知った時、事件が起こる…

    ■チョコレートの願い
    靖子先生と出会ったことで優希の暮らしは一変した。
    暮らしだけでなく、生き方そのものが変わり、未来が開けてきた。
    優希は靖子先生を信頼し、大好きだが、靖子先生のことを何も知らないことに気付く。
    自分は必要とされているのだろうか…
    そんな不安が頭を持ち上げてきたとき、靖子先生自身に事件が起こる。
    ここは優希の出番です!

    碧野圭さんの『書店ガール』シリーズも大好きですが、この本も良いです!
    普通の暮らしの中で起こる小さな出来事。
    その出来事の中心にいる当事者たちは混乱の中にいるのだから、自分たちで解決しようとしたら悪い方向に向かってしまう。
    そんなとき、靖子先生のような人がいたら、みんながハッピーになれるのに。

    ゆったりあったかな気持ちで読める本でした。
    これはシリーズ化されるかな…

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著者プロフィール

愛知県生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。フリーライター、出版社勤務を経て、2006年『辞めない理由』で作家デビュー。大人気シリーズ作品「書店ガール」は2014年度の静岡書店大賞「映像化したい文庫部門」を受賞し、翌年「戦う!書店ガール」としてテレビドラマ化され、2016年度吉川英治文庫賞にもノミネートされた。他の著作に「銀盤のトレース」シリーズ、「菜の花食堂のささやかな事件簿」シリーズ、『スケートボーイズ』『1939年のアロハシャツ』『書店員と二つの罪』『駒子さんは出世なんてしたくなかった』『跳べ、栄光のクワド』などがある。

碧野圭の作品

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