菜の花食堂のささやかな事件簿 (だいわ文庫) (だいわ文庫 I 313-1)
- 大和書房 (2016年2月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784479305804
作品紹介・あらすじ
「自分が食べるためにこそ、おいしいものを作らなきゃ」菜の花食堂の料理教室は今日も大盛況。オーナーの靖子先生が優希たちに教えてくれるのは、美味しい料理のレシピだけじゃなく、ささやかな謎の答えと傷ついた体と心の癒し方…?イケメンの彼が料理上手の恋人に突然別れを告げたのはなぜ?美味しいはずのケーキが捨てられた理由は?小さな料理教室を舞台に『書店ガール』の著者がやさしく描き出す、あたたかくて美味しい極上のミステリー!書き下ろし。
感想・レビュー・書評
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日常の謎のお仕事ミステリーですね。
東京の武蔵野の住宅街の一画、昔ながらの細い街道沿いに、ふつうの住宅を改装して、小さな庭と、テラスのある昭和モダンな木造家屋が印象的なお店『菜の花食堂』がある。
定休日に『料理教室』を開いている。
物語は、『菜の花食堂』の店主靖子先生と、助手の優希さん、そして『料理教室』にやって来る生徒たちで紡ぎ出されます。
六話の短篇連作です。
もちろん『菜の花食堂』の『料理教室』ですから、グルメ満載、レシピが嬉しいですね。
『菜の花食堂事件簿』はシリーズになっています。
一作目は『料理教室』が主体に構成されていて、生徒たちの持ち込んでくる謎を、靖子先生が鮮やかに解き明かします。
成長物語、お仕事物語、人情、恋愛、武蔵野の生活のなかの人びとの生活を描きながら朗らかに綴られています。
靖子先生ののんびりとしながらも、意思の強い毅然とした謎解きは『ミス・マープル』を連想させます。
優希さんの抱える悩みや、希望も共感を持ちながら成長物語を読ませます。
読んでいて、楽しくなる物語ですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『東京郊外の、武蔵野と呼ばれる一画』の『坂下の、びっしり立ち並んだ住宅の間』の『細い街道沿いにある』<菜の花食堂>。
『地元の野菜をふんだんに使ったランチが売り』の店で、かつではディナーもやっていたようだが店主の靖子先生が『体力的な衰えを理由に止めてから』『定休日を利用した料理教室が開かれるようになった』、その下河辺(しもこうべ)靖子先生が探偵役で料理教室の助手・館林優希が助手役。
杉田比呂美さんのカバーイラストと言い、還暦の探偵役と言い、少し世代は若いが吉沢南央さんの草さんシリーズをイメージしてしまうが、靖子先生は草さんと違って押しつけがましさがないのが良い(あちらは草さんのキャラあっての押しつけがましさなのだが)。
他人のプライベートや心の中に踏み込むことはタイミングもやり方も難しいし、その後の生徒との関係を考えれば、優希のようにそもそも踏み込んでいいものかどうかを考えてしまう。
靖子先生は基本的に生徒の村田が好きなうわさ話には加わらないし、本人に頼まれてなぞ解きをするときもいそいそという感じはない。
だが、いざなぞ解きとなると鮮やか。
恋人に作った料理が気に入られなかったのは何故か、妻が作ってくれた茄子の揚げびたしは他のレシピと何が違うのか、買ってきたばかりのケーキはなぜ酸っぱかったのか、息子が灰汁が残ったまま小豆を煮ていたのは何故か…。料理を元にその人の想いをくみ取り、その先に向かう一歩まで後押ししていく。
優希と同じ目線と推理力しかない私は靖子先生の洞察力に恐れ入るしかないが、その靖子先生もまた辛いものを抱えていた。だからこそ追いつめられていた優希を救うことが出来たのだろう。
優希が職場を辞めた理由はあまりに理不尽だが、こういう人はどこにでもいるし、結局は靖子先生の言うように『関わらないのが一番』というほかないのだろう。関わらない状況になれた優希は良かった。
一見面倒だったり取っつきにくそうだったり、逆にスマートで何でも上手くやって来たような人でも、その人なりに抱えているものはいろいろあるんだなと思える。靖子先生同様に。
最後になって靖子先生にも優希にも転機になりそうな出来事が。これは記憶が薄れないうちに続きを読まねば。 -
菜の花食堂のオーナーである下河辺靖子は、定休日に月2回料理教室をしている。
優希は、料理教室の助手としてオーナーのお手伝いをしている。
なぜ優希がここへ通うことになったかの経緯も含め、オーナーが、料理教室の生徒さんたちの困りごとを解決する物語。
メインの料理や食材とともに6話の短篇。
オーナーである靖子先生は、素朴で家庭的な料理の腕前も凄いのだが、料理教室に通う人たちの悩みや困りごとを瞬時に理解して、的確なアドバイスをする。
料理だけでなく心まで癒やしてくれる。
物語自体は、悩みを解決するのがメインなので詳しい料理のレシピが無いのが残念。 -
2016年2月だいわ文庫刊。書き下ろし。シリーズ1作目。はちみつはささやく、茄子は覚えている、ケーキに罪はない 、小豆は知っている、ゴボウは主張する、チョコレートの願い、の6つの連作短編。離職して料理教室のアシスタントを務める優希さん目線で描かれる日常の謎解きがそれなりに楽しい。次作に進もうかどうしようか迷ったが、最終話で優希さんのマネージャー的な役割の話が出てきて、気になるので読み進めることにします。
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(あらすじ引用)
「自分が食べるためにこそ、おいしいものを作らなきゃ」
菜の花食堂の料理教室は今日も大盛況。
オーナーの靖子先生が優希たちに教えてくれるのは、美味しい料理のレシピだけじゃなく、ささやかな謎の答えと傷ついた体と心の癒し方……?
イケメンの彼が料理上手の恋人に突然別れを告げたのはなぜ?
美味しいはずのケーキが捨てられた理由は?
小さな料理教室を舞台に『書店ガール』の著者がやさしく描き出す、あたたかくて美味しい極上のミステリー!
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お野菜を一つテーマに選んで作る料理教室。
この本を読んで、町にあるJAの素晴らしさが分かりました(笑)新鮮な野菜を使った料理はどれも美味しそうで、私も自分のために作って食べたいと思いました。
今日は朝の開店と同時にJAで、
この本に出てくるような丸っこい茄子を買いました。
今日は茄子の煮浸しにします -
お料理教室の先生が鋭い観察力を持っていて、生徒さんの悩みを解決していく。
主人公の行動や考え方には少し引っかかったけど、
さらっと読みやすい。 -
読んでて美味しそう、かつ無茶苦茶な謎の出方のない日常が良かった。
心がささくれたときに読むと、途中のトラブルに感傷的になりそう…。 -
書店ガールの著者のシリーズを、別のだいわ文庫の書籍で知って読んでみたいと思った。
食堂で助手を務める優希と食堂主で料理教室の先生でもある靖子先生。日常の謎をふっと靖子先生が紐解いていくところがいい。 -
シリーズ第一弾。
菜の花食堂の料理教室を舞台に描かれる、連作6話。
作品紹介では“ミステリー”と書かれていますが、剣吞な事件が起こるわけではなく、日常の謎やお悩みを食堂のオーナーで料理教室の先生をしている、下河辺靖子先生が鋭い洞察力で解明していく、という内容です。
全体的な雰囲気は温かな感じではあるのですが、ちょいちょい人の醜い部分にも触れていて、本書の主人公で、料理教室の助手をしている優希が前に勤めていた会社で受けた嫌がらせの話(第三話「ケーキに罪はない」)とか、リアルにしんどいです。
当の靖子先生の背景は謎のヴェールに包まれていて、第六話「チョコレートの願い」でフランスに娘さんがいるらしい事が判明し、その娘さんからの謎のメッセージを受けて、慌ただしくフランスへ旅立ったところでこの巻は終わります。
読みやすいですし、料理の描写も楽しめるので、次の巻も読んでみる所存です。