本屋さんで待ち合わせ

著者 :
  • 大和書房
3.39
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本棚登録 : 2540
感想 : 321
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479681724

作品紹介・あらすじ

口を開けば、本と漫画の話ばかり。2012年度本屋大賞に輝く著者が本と本を愛するすべてのひとに捧げる、三浦しをんの書評とそのほか。

感想・レビュー・書評

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  • 『一日の大半を本や漫画を読んで過ごしております。こんにちは。』

    という三浦しをんさん。なんだかちょっと羨ましくなるその生活ですが、そこに至るご苦労は数々のエッセイで拝見しております。恐れいります。さて、三浦さんというとエッセイ!です。もう、やいのやいのと、ハイになる気持ちを抑えられないその世界は一度ハマると抜け出せなくなるドッボーンな世界です。でも、ややや、この作品は、ちょちょっと違うようです。テンションまっくすー!でいこうかと思いましたが、これは三浦さんが読んでこられた数多の本の『書評集』です。まあご本人がおっしゃるには『ちゃんとした評論ではなく、「好きだー!」「おもしろいっ」という咆哮になっちゃっているので、お気軽に』ということですが、まんまエッセイではないので、今日の私はテンション控え目で参りたいと思います。狂った さてさてを楽しみにしていらした皆さんには許してチョンマゲでごじゃるが、それ以上に面白かったでごじゃるので、早速進めてまいりましょう!

    ということで、この作品は、全部で135作品以上の本、本、本!を、色んな角度から取り上げた書評集です。「キュリアス・マインド(ジョン・ブロックマン)」、「江戸の下半身事情(永井義男)」、「双調 平家物語(橋本治)」、「魚偏漢字の話(加納喜光)」などなど、国内も国外も、過去も現代も、そしてジャンルの垣根などなく極めて多彩です。ちなみに、私が読んだことがあるのは『八日目の蝉(角田光代)』、一冊しかなかったぁ orz orz orz という残念!無念な事実。それにしても凄いなあ。この本の山。では、ちょっと見てみましょう。

    まずは、エッセイの体裁の中に本の紹介が登場するタイプ。〈読むと猛然と腹が減る〉というエッセイの一節からは、三浦さんの普段の日常生活が窺えます。『一人で食事するときは、たいていなにかを読みながら食べる』という三浦さん。なるほどぉ。確かに一人で食事してる時って、視線のやり場に困りますよね。カウンターに座って店員さんと目があっても罰の悪い思いをするだけだし、料理をじっと見つめていてもアブナイ人だし。なので『食事と読書はセット』という三浦さん。『片手でページをめくりやすいことを基準に、外食のメニューを選ぶ』ということで、『フォークとナイフを使う洋食』も『茶碗やらお碗を持ち替える和食』も避けるので『酒のつまみと酒ばかり』になったという結果論。う〜ん、それでいいのかぁ?という気もしますがご本人が良いならそれでいいのでしょう。また、本の内容も『登場人物がつらすぎる目に遭ってたりすると、「呑気に食べててすみません」という気分になっていけない』。なるほど。『性描写が濃厚すぎると、食事そっちのけで読みふけってしまう』。な、なるほど。だから『悲しすぎず、生々しすぎぬものが、食事時には向くようだ』というなるほどなお話。そして、そんな食事向きな一冊ということで選ばれたのが「ロッパの悲食記 (古川緑波)」という1959年に出版された随筆。『おいしいご飯をブラックホールのごとく無尽蔵に吸いつくす強靭な胃袋』、『いくら食べても腹が減ってしまう生き物の哀しみと不毛に、無謀にして悲愴な戦いを挑んでいるかのよう』というその内容に感心する三浦さん。そしてそんな本を読んだ読後は『食事時でもないのに猛然と腹が減り、コンビニのたらこスパゲッティ499kcalを食べた、嗚呼』という、これまたなオチの結果論。『罪つくりなロッパ氏であった』とまとめます。60年も前の本に食欲がそそられるって、どんな本なんだろ、ちょっと興味がわきました。

    そして他は、さてさてのレビューでは珍しくダイジェストでまいりましょう。いや、それだけどれもこれもご紹介したくなる面白い本ばかりなんですよ。なので、6つの本を駆け足します。

    ・『著者は「六千人の女性とセックスした」』という記述に『セックスを通して人間関係の機微をひたすら追求しようとするところが素晴らしい』、そして『身近にいる大切なひとと、心と体をより深く楽しく通じあわせるために、ぜひ参考にしたい』という「エリートセックス (加藤鷹)」。
    ・『不倫に破れた「あたし」が、源氏物語を執筆中の紫式部のもとへタイムスリップする物語』では、『平安時代の美男美女が、どう考えても美男美女じゃない』、『おかめの大群!』だと感じる一方で『「美人」の基準は変わっても、男と女、ひととひととのあいだの溝は、千年前から変わらない』という「小袖日記 (柴田よしき)」。
    ・聞き捨てならない『左きき短命説』というものが登場し、その理由が『左ききが戦争時の戦闘場面で命を落としやすい』。それは『武器は多数派である「右きき仕様」になっている』からという「左対右 きき手大研究 (八田武志)』。
    ・三浦さんイチオシの『ボーイズラブ』繋がりで、『イギリスのゲイ(同性愛者)は、活発な消費活動を行っている』、『ゲイ・マネーはなんと、いまや年間十八兆円を超える』、なので日本に沢山呼べば大きな経済効果が期待できると三浦さんが主張する「ゲイ・マネーが英国経済を支える!? (入江敦彦)」
    ・『著者の「人生の選択」はトイレでおしっこするときに、音消しの水を流さないと決めた』という一節に『私も常に大いなる欺瞞と矛盾を覚え、どうすべきか悩んでいた』が、『笑いとともに決めました。「音消ししない」、と』という「猫座の女の生活と意見 (浅生ハルミ)」。
    ・『小学生のころ、ウン○を食べる話を読んで感銘を受けた』、『谷崎先生のウン○の描写はねっちりしている』という「少将滋幹の母 (谷崎潤一郎)」。などなど。

    また、一章を丸ごと超読み応えのある解説でまとめた『読まずにわかる「東海道四谷怪談」』。これには普段その背景を深く考えたことのなかった『四谷怪談』がこんなに奥深い世界だったのか、ととても驚きました。すごいなぁ、この考察。三浦さんって何者なんだろう。

    ということで、三浦さんの読書の量と幅、そして絶妙な書評の書きっぷりにただただ圧倒されるこの作品。135冊以上の文学作品や漫画について、その読み込みの深さにも圧倒されるこの作品。『子どものころは、「よく本を読んでえらいわね」』と褒められたのが、『本を読むのもいいけど、あんた結婚どうすんの?』に変わってしまって、でも『いま読書中だから、その話はまた今度な』とさらりとかわす三浦さん。『本を読めば人格が磨かれ、知識が深まり、情緒が豊かになるかというと、そうでもないことは我が身で実証済み』という三浦さんは、『読書は、限りある生を、より楽しく深くまっとうするための、ひとつの手段にすぎない』とまとめます。『本は、人間の記憶であり、記録であり、ここではないどこかへ通じる道である』という本、そして読書の世界。日々、レビューを書いていて、その本のどういった部分をどうレビューに反映させていくかに悩むことも多いですが、三浦さんの書評を読んで、自身の感情に突き刺さったもの、自分の心に正直に、下手に飾らず自分らしく展開する。結局は、それが読んでくださる皆さんにも心通じる唯一の方法なのかなと思いました。

    私がレビューを書く中で一番心掛けていることは、『読みたい』に登録してくださる方が一人でも多く出るような内容にすること。それこそが、私に感動を与えてくれたその作品に私ができる唯一の恩返しだと思うからです。この作品からは、そんなレビュー作成へのヒントをたくさんいただきました。三浦さん、ありがとうございます。

    他のエッセイ集に見られる振り切れた世界はありませんでしたが、三浦さんならではの鋭い、もしくは奇抜な切り口からバッサバッサと切った書評がたっぷり詰まった充実の一冊。やっぱり三浦しをんさんはいいなぁ、しみじみと感じた、そんな作品でした。

  • 『本屋さんで待ちあわせ』なんて魅力的なワードは、ファミコン世代ど真ん中の僕にとっては『ビックリマンチョコ』とほぼ同義語であります。

    本来、メインであるはずの「チョコ=待ちあわせ」を凌駕するおまけの魅力。
    「ビックリマン=本屋さん」欲しさに大量のチョコを通学路の側溝に捨てる。そんな悪い子供ではなかったが、デートの待ち合わせで彼女を呪い殺す予定もないのに、ついつい河出文庫のフェアの前で黒魔術と中世の拷問具についての知識を無駄に増やしていたことはある(それを笑って許してくれたのが現在の妻です)。

    しかし、それにしても三浦しをんさんの読書量と守備範囲の広さよ。
    『女工哀史』からヤクザ本、『平家物語』から久生十蘭に加藤鷹までもがすべて同列に並んでいるとは。
    しをんさんは、文中で複数名についての評伝を読むことを「星座読み」と命名されているが、評伝に限らず多岐にわたって幅広く本を読むことは、自分の中にオリジナルの「星座」を創ることでもあるなぁ、とあらためて思った。

    普段の小説とは違う語りに少々面食らいながらも楽しかった。
    太宰をコスプレで、芥川龍之介と谷崎をウ◯コで論じるというブーメランのような斬新な切り口にも、投げた得物が美しい軌道を描いてパシッと見事に手元に返ってきた時には「なるほど」と納得。

    『東海道四谷怪談』についての項が一番面白かった。
    そしてなにより、ネットの古書通販で時々お世話になっている高原書店さんで、しをんさんが働いていたことがあるという事実に驚く。
    古本屋での本との出会いは「結婚」 払うお金は「仲人への謝礼」という言葉にはこれまた納得と感動。
    そう考えれば我が家の「大奥」には久しく疎遠になっている妻たちが数多く控えている。一夫多妻制を敷く国でもすべての妻に等しく愛情を注ぐことがその条件であるらしいから、きちんと丁寧に読まなければなぁ。

    「おわりに」を読んで、「パラノーマル・ロマンス」なるジャンルがあることにまたまた驚く。
    そして僕には未知のBLの世界。
    『まほろ駅前多田便利軒』を読んだ時に漂った雄の匂いに、女性作家でよくこの感じが出せるなぁ、と思ったものだが妙に腑に落ちた。
    この世界は歌舞伎などの古典芸能にも通じるのではないかと個人的に思っているので、気になってはいるのだがまだまだ敷居は高い。

    最近、読書傾向が偏ってきているような気がするので、もっといろいろ読んでみようかな。

    • mieronさん
      『ビックリマンチョコ』の例えから「いったいどういうことなんだろう?」と興味を引かれ、レビューを読んで納得しました。私も同感です。
      本書の分の...
      『ビックリマンチョコ』の例えから「いったいどういうことなんだろう?」と興味を引かれ、レビューを読んで納得しました。私も同感です。
      本書の分の切り口も面白そうですね。今度手に取ってみようと思います。

      kwosaさんの読み応えのあるレビューを、一回しか読まないのではもったいないと思いフォローさせていただきました。
      また本棚にお邪魔いたしますね。
      こちらこそフォローありがとうございました。
      2013/06/19
    • kwosaさん
      mieronさん!

      コメントありがとうございます。

      作家が書く、本のエッセイ、ブックガイドって面白いですよね。
      あたりまえですが、よく書...
      mieronさん!

      コメントありがとうございます。

      作家が書く、本のエッセイ、ブックガイドって面白いですよね。
      あたりまえですが、よく書く人は本当によく読む。
      その人の作風からは一見かけ離れたような本も数多く読んでいる。でも、そういうあらゆるものが滋養となって豊かな物語が生まれるんでしょうね。

      あらためましてフォローありがとうございます。
      たくさん本のお話ができるといいですね。
      2013/06/19
  • 誰かと待ち合わせするなら、ぜったいに本屋さん!

    本好きの友達と待ち合わせて、
    「あの人なら、きっとあの棚のあたりにいるにちがいない!」と
    わくわくして覗き込んだところに、ちゃんと相手がいたときのうれしさ♪
    反対に、「今日の私はひと味違うのよ!こんな本も読んじゃうんだから」と
    いつもの嗜好とは違う場所にいたのに、相手に見つかってしまったときの
    「やられた~!でも、なんかうれしいのはなぜ?」という、複雑な心境。

    そんな気持ちもすんなりわかってくれそうな、しをんちゃんの書評集です。

    強風に飛ばされて崖下に放置され、ふやけてカビが繁殖した本でも
    捨てられず、ポリ袋に密封したあげく観察したり
    ベッドの幅半分を本に浸食されたあげく、就寝中に本の雪崩に遭って
    毛布の上に椅子を載せて寝ていたというキュリー夫人の
    物理学者とは思えない暖のとりかたを疑似体験したり。

    相変わらず本のためなら奇人変人と呼ばれようと厭わない生活を送りながら
    『真綿荘の住人たち』の書評みたいに、研ぎ澄まされた文体で
    読み手の心を鷲掴みにするような掌編を書いてしまうのだから、すごいなぁ!

    古本屋さんは、過去と現在を、現在と未来を、ゆるやかに結び付ける仕事で
    古本屋さんに払うお金は、本と客という時間を超えたお見合いの場を用意してくれた
    仲人への謝礼なのだ、と言い切る潔さ。
    本好きもここまでいけばあっぱれ!と言うしかないしをんちゃんを
    出没するかもしれない本屋さんで、「待ち合わせ」ならぬ「待ち伏せ」をして
    どんなにやけた顔で本とお見合いするのか、
    柱の陰からじーっと観察したくなってしまう、愛に満ちた1冊です。

    • HNGSKさん
      本屋さんで待ち合わせなんかした日にゃあ、「ち、もう来やがったか・・・」って思ってしまう私がいます。(笑)

      「真綿荘の住人たち」と「ランナ...
      本屋さんで待ち合わせなんかした日にゃあ、「ち、もう来やがったか・・・」って思ってしまう私がいます。(笑)

      「真綿荘の住人たち」と「ランナー」は、しをんさんのこの書評を読んで、手にとって見た作品です。どちらも私なりにレビューを書いてみましたが・・「ランナー」の方は、不細工すぎて、ブクログにアップもできませんでした。

       やはりしをんさん、素敵ですねえー。
      2013/01/31
    • まろんさん
      あやこさんたら♪
      でも、「ち、もう来やがったか・・・」にも、しっかり共感してしまう私です(笑)
      娘と一緒に古書店に行くと、「じゃあ4時半にレ...
      あやこさんたら♪
      でも、「ち、もう来やがったか・・・」にも、しっかり共感してしまう私です(笑)
      娘と一緒に古書店に行くと、「じゃあ4時半にレジね~」とか約束しておいて
      いつも時間に間に合わず、「今まだ『は』行の作家までしか探せてないから
      せめてあと15分!おねがい~!」と懇願するのは私のほうなので。

      「真綿荘の住人たち」は、いつもの私なら手にする機会のない本だと思うのですが
      しをんちゃんのあまりに素晴らしいレビューに、読まなければ一生の損になるような気がしてしまって。
      ほんとにすごい作家さんです!
      2013/02/01
  • 三浦しをんの書評&エッセイ集。
    大の本好きのこと、どこがどんなに面白いのか!喜びあふれるいきいきした指摘が楽しい。
    取り上げた本はとても広範囲~読売新聞の書評欄で書いたものが多いから、よけいでしょうか。
    自分の体験も交えて、笑わせてくれるのは、いつものしをんちゃんです。

    『どうしてこんなに本や漫画が大好きなのか。読まずにいられないのか。たまに自分がこわくなる。ほかにすることあるだろ、掃除とか、洗顔とか、ダイエットとか』というのに爆笑。
    洗顔て。
    ベッドに積み上げた本の山が崩れてきて全身を覆われ、重いけど、暖かい‥
    というところで、キュリー夫人が寒さをしのぐために椅子を身体の上に載せたという(子供の頃に読んで強烈に覚えているらしい)のを追体験?したり。

    ひとつのテーマのもとに、複数名の人物の評伝を集めたものを、「星座読み」といっているとか。
    平家物語の登場人物の多さと似た名前ばかりなのに閉口して、あだ名をつけて「愛称読み」しているとか。
    『とくに平家のみなさん、名前の最後になんでもかんでも「盛」の字をつけるのはやめてくださらんか!』って‥
    わかるわ~。「頼」も一家に一人限定にして欲しいぐらいよね!

    職業について書かれた本はたいてい面白く、小説の設定のために調べ始めても読みふけってしまうとか。
    「漢字は日本語である」という本の著者は、小学1年の夏休みの自由研究で自分なりの漢和辞典(ノート2冊分)を作ったという~す、すごいっ。

    読者からの、寛容になれないという手紙にたいして~
    「たったひとつの冴えたやり方」や「絶対貧困」を読んでの感想を紹介し、
    『怒りの大半は「理解できない」「理解されない」がゆえに生じる気がします。「相手を知りたい」「自分を知ってほしい」という願いを諦めてしまったら、怒りすらわかなくなるでしょう。そう考えると、もっと怒ったっていいのかもしれませんね』
    というところへ持っていく。
    なるほど‥こういう気持ちのもちようがすがすがしいですね。
    少女マンガにみゃくみゃくとある正義感が芽吹いている気がします。

    中島敦や太宰治など、有名な作家についても、切り口が面白い。
    萩尾望都原画展で、線がまったく枯れずに瑞々しいのに驚嘆し、その理由を考えるところとか。確かに‥
    (あ、「マージナル」大好き!)
    共感するところもいっぱい。

    読んでみたい本もたくさん!
    ピンと来なかった本は取り上げないという方針には共感します。
    それでも多すぎて、どうしよう~中には、このエッセイの文章が一番面白くて読んでみたらそれほど私好みじゃなかった‥というのもありそうな気がするんだけど、そのへんどうなのか?見抜くのが大変だわ。

    4章では、歌舞伎の東海道四谷怪談についてのエッセイも。
    伊右衛門の悪の魅力。忠臣蔵とのかかわりとか。そういや、なんで東海道なんだろう‥?などと。
    中村勘九郎のお岩について書かれていたのも面白かったです。
    あれもこれも‥本のタイトルをメモしなくちゃ!

  • 読売新聞の読書委員会で「色物担当」のしをんさんらしい書評集。
    さすが色物好きとあって今まで足を踏み入れたことのないジャンルの本が多々あり、お陰で世界が広がった。
    本を暖房代わりにしたり、通い婚の復活を夢見たり、教科書に載っていた中島敦の『山月記』に笑い転げたり、漫画やBL物についてアツく語ったり、と書評だけでなく本に纏わるしをんさんの日常もまた面白い。

    特に共感したのは、子供の頃に本を読んでいると誉められたのに、大人になって本ばかり読んでいると煙たがれるエピソード。
    私もしをんさんと同じで不思議な現象だと思っていたし、しをんさんとの共通点が見つかってなんだか嬉しい。

    しをんさん曰く
    「本は、人間の記憶であり、記録であり、ここではないどこかへ通じる道である」
    「本は、求めるものの呼びかけに必ず応えてくれる」
    たっぷり笑わせくれるのに最後は必ず素敵な言葉できっちり締めるしをんさんにまたお逢いしたい。
    待ちあわせ場所はもちろん本屋さんで決まりでしょう。

  • 一言で言えば、
    「ブックガイド」
    三浦さん自身も、そう紹介されています。

    目次では70冊ちょっとしか挙がってないが触れられている本は100冊以上。

    文学、歴史、社会問題、芸能、風俗・・。

    様々なジャンルが散りばめられている。

    僕が直感的に読みたいなと思った本は、
    ・『BESTっす!』ゲッツ板谷
    ・『潤一』井上荒野
    ・『なほになほなほ 私の履歴書』竹本住太夫
    ・『圏外へ』吉田篤弘

    フォロワーさんは、三浦さんの、
    「お友だちからお願いします」
    を話題にされていて、こちらの方も読んでみたいなと感じました。

    三浦さんは、
    本に埋もれるような、本を中心とした、食事どきでさえ本と向き合う人生。

    そんな情熱・執着を持ち続けているうちに書いて楽しませる側にも回ったんだ、と感じた。

    まだ読んでいないが、
    『舟を編む』

    気に入って何回も映画を観た作品なので、
    いつか彼女の原作を読んでみたい。

    きっと素晴らしい作品なのだろうと思う。

    • goya626さん
      shukawabestさん
      映画は見ていないのですが、本の方の「舟を編む」はよかったですよ。ほほう、と思うことが多かったです。「本屋さんで...
      shukawabestさん
      映画は見ていないのですが、本の方の「舟を編む」はよかったですよ。ほほう、と思うことが多かったです。「本屋さんで待ち合わせ」も随分以前に読んだので、内容を忘れてしまっていますが、面白かった記憶があります。
      2022/03/26
    • shukawabestさん
      goya626さん
      コメントありがとうございます。
      この本も読まれてましたか。すごいですね、読書量が。

      「舟を編む」
      原作いいでしょうね。...
      goya626さん
      コメントありがとうございます。
      この本も読まれてましたか。すごいですね、読書量が。

      「舟を編む」
      原作いいでしょうね。映画でさえ大変気に入ったので。映像化のための脚色が抜かれ、言葉そのものに向き合う職人たちの姿勢がもっとダイレクトに伝わってきそうな気がします。この前、図書館で女子大生風の子が小脇に抱えていたのですが、「その本、こっちに貸してくれ〜」お願いしそうになりました。
      2022/03/26
    • goya626さん
      shukawabestさん
      「舟を編む」借りれるといいですね。
      shukawabestさん
      「舟を編む」借りれるといいですね。
      2022/03/27
  • 三浦しをんさんの書評集。

    どの本の書評もすごく面白く書かれていて、
    どこもこれも読みたい!と、メモしようと思ったが、
    結局一冊もメモせずに本を閉じた。

    閉じて目にする、この表紙も好きだなぁ。

    女性が本の世界に没頭している。
    そこへ近づく、きっと待ち合わせしているはずの男性。

    本の世界への扉は容易く開けられ
    容易く閉じられる。

    女性は声をかけられると、「あっ、今来たの?」それまでいた世界から
    本屋へと速攻戻ってくるのだろう。

    そして、本は再び他の誰かを待つんだ。

    しをんさんは本当に本が好きで好きでどうしようもない人だった。
    幸いな事に、
    彼女がそれまで読み、閉じられた本は数多いが、
    本屋という(図書館でも古書店でも)空間と繋がって、
    いつか必ず私も手にとるだろう。

    いつもはちっとも当たらない私の直感であるが、
    不思議に今回だけはそれが確かな事に思えてならなかった。

    • MOTOさん
      kwosaさんっ♪

      こんにちわ~
      夏は大好きな季節なんですっ。^^♪
      涼しい木陰で、図書館で、夏もいっぱい読書を楽しみましょうね!

      kw...
      kwosaさんっ♪

      こんにちわ~
      夏は大好きな季節なんですっ。^^♪
      涼しい木陰で、図書館で、夏もいっぱい読書を楽しみましょうね!

      kwosaさんのお便りを読んでいて、ふっと思ったのは、
      しをんさんの、この本を読んでいた時と同じワクワクを感じるなぁ~、という事。
      これは、
      きっと、
      読書人にのみ、通じる何か、
      何かが、きっとあるんだな、と、漠然とですが
      確信した次第でございます。(笑

      私は長い冒険の果てに最後に開ける宝箱のなかには
      (どーか、本が詰まっていますように!)と、まじで願う派ですから。(どんな派だ?^^;)
      私にとって、宝=本!
      しをんさんもkwosaさんも、きっとそうだろうな。
      と、今勝手にそう思い込もうとしている所です!

      kwosaさんみたいに巧いレビューは書けませんが、
      幸い書く事も大好きなんで、これからもマイペースで書き続けますよ♪
      私も、kwosaさんのレビュー楽しみにしてます!
      同じ本を読んだ後、再び訪問するのもわくわくします♪
      2013/07/24
    • kwosaさん
      MOTOさん!

      おおっ!
      「勇者MOTOは長い冒険の果て、宝箱から『本』を手に入れた」
      素晴らしいですね。
      僕は「輪ゴムで縛った図書カード...
      MOTOさん!

      おおっ!
      「勇者MOTOは長い冒険の果て、宝箱から『本』を手に入れた」
      素晴らしいですね。
      僕は「輪ゴムで縛った図書カードの束」を願ってしまう盗賊キャラなので(笑)
      これからもMOTOさんの旅路にお供させてくださいね。
      2013/07/24
    • MOTOさん
      kwosaさんっ♪

      大事な鍵を持っているのは盗賊キャラだけ。
      まず、扉を開けてくれないと、
      勇者も魔法使いも僧侶も戦士もその先にすすめませ...
      kwosaさんっ♪

      大事な鍵を持っているのは盗賊キャラだけ。
      まず、扉を開けてくれないと、
      勇者も魔法使いも僧侶も戦士もその先にすすめませぇ~ん。(^^;

      これからもどんどん道をお開きになってくださいね♪よろしくお願いします~
      2013/07/25
  • blogによると「『お友だちからお願いします』と『本屋さんで待ちあわせ』を二冊並べると、カバーの絵に仕掛けが……。」
    ですって、気になりますよね!

  • 口を開けば、本と漫画の話ばかり。2012年度本屋大賞に輝く著者が本と本を愛するすべてのひとに捧げる、三浦しをんの書評とそのほか。(Amazon紹介より)

    作家であり、超が付くほどの読書家でもある三浦しをんさんが、自身の好きな本・感銘を受けた本をひたすら紹介していく書評エッセイです。「まほろ駅前シリーズ」を読んだときにも感じたことですが、この方は影がある人物を描写するのがすごくうまい。その根幹は、この方の独特の読書観にあるのだと思いました。紹介される本のテーマが「ヤクザ」「トランスジェンダー」など、現代の世においてマイノリティで虐げられている存在であることが多く、特に、ノンフィクションや研究書と呼ばれるジャンルにおいてはその傾向が顕著です。それらを愉快なものとして取り込んでしまえるのは、相当な読書経験と自分の世界がないとできないことだと思います。

    ちなみに、三浦しをんさんは巻末で読書という趣味について以下のように述べています。すごく共感できるとともに、文調の軽快さも相まって笑ってしまいました。

    〝本を読めば人格が磨かれ、知識が深まり、情緒が豊かになるかというと、そうでもないことは我が身で立証済みだ。むしろ、家に籠る時間が多くなるので人見知りになり、脳内でこねる屁理屈だけは立派で、毒にも薬にもならぬ夢想に遊び疲れてさっさと就寝する。そんな人間ができあがる可能性が高い。〟

    ひどい言い様です笑
    一方で、本というモノについては、

    〝本は、人間の記憶であり、記録であり、ここではないどこかへ通じる道である。特別な機械も作法も充電器も必要なしに、時間と空間を超えた異世界へ、私たちを連れていってくれる。〟

    と述べており、本と読書への愛情がほとばしっているなぁと感じました。

  • 単純に読むためのものではなく、装丁を眺める楽しみも付加されている。
    その考え抜かれた作り方に先ずは脱帽。
    (しをんさん風に言えば『シャッポを脱いだ』かな)
    『お友だちからお願いします』と2冊並べて所蔵するべき本である。
    などといいつつ2冊とも図書館で借りてるけど(爆)。

    『はじめに』を読んだ時点で既に面白い。
    『ピンとこなかったものは黙して語らない』というくだりに勝手に頷いたり
    淀川長治さん風と書かれてる部分、実は水野晴郎氏とミックスじゃん! と突っ込んだり
    『ほかにするべきことあるだろ、』のくだりでは一緒にどんよりしたり。
    前書きだけでこんなに面白かったらどうなっちゃうんだろう、と思ってたら
    期待に違わず面白かったし、書評なのに読み応えがあった。

    何よりも取り上げられた本の内容の振り幅に目を見張る。
    これはしをんさんに関して言えば今に始まったことではないのだけれど
    流石に源氏物語と四谷怪談と太宰治と加藤鷹とボーイズラブを同じ土俵に上げて
    しかも同じ目線で評する姿勢には度肝を抜かれた。
    例によってしをんさんの書評を読んで読みたくなった本がたくさんあるのだが
    その中に手に取るのに勇気が要る本が含まれるのが可笑しくもあり
    その辺りがしをんさんの書評たる所以なのかも、と思った。

    何はともあれ、しをんさんの書評には本とそれを書いた人に対する愛情がダダ洩れしている。
    こういう人の書評を読むとさらに読みたくなるし、
    本好きとしては同類を見つけたという安心感を感じるとともに
    なんとなく赦されたような気がして(何に?)嬉しくなるのであった。

    • kwosaさん
      こんにちは。

      めぇーさんの的確なレビューと突っ込みに、最初から最後まで「うんうん」と頷き過ぎて首が痛いです。
      しをんさんの振り幅には本当に...
      こんにちは。

      めぇーさんの的確なレビューと突っ込みに、最初から最後まで「うんうん」と頷き過ぎて首が痛いです。
      しをんさんの振り幅には本当に目を見張りますよね。
      自分のレビューでもそのことを伝えたくて、若干の気後れを感じながら引合いに出した加藤鷹。
      めぇーさんのレビューを読んで、源氏や太宰と本のチョイスは違っても「やっぱりそこははずせないのね」と笑ってしまいました。
      僕もなんとなく赦されたような気がして嬉しくなっています(笑)
      2013/07/06
    • ぶっかけさん
      断然この書評が読みたくなってきました!
      プラス、「2冊並べて所蔵するべき」もう1冊も。
      断然この書評が読みたくなってきました!
      プラス、「2冊並べて所蔵するべき」もう1冊も。
      2013/07/08
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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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