熟考する力~流されない自分をつくる本物の思考術

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著者 : 木山泰嗣
  • 大和書房 (2016年12月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479795568

熟考する力~流されない自分をつくる本物の思考術の感想・レビュー・書評

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  • ブック紹介

    『熟考する力』
    -流されない自分をつくる本物の思考術
     木山 泰嗣 著
     大和書房
     2016/12 248p 1,400円(税別)

     序 熟考する力とは?
     1.解釈の視点
     2.事実認定の視点
     3.評価の視点
     4.結論の視点
     5.主張を読解する視点
     6.反応する技術

    【要旨】ツイッターをはじめとするSNS、LINEなどのメッセンジャーの爆発的
    普及により、現代人は、自分の考えを素早く短文で発信し、それに深く考え
    ずに即対応することが求められる傾向にある。一方で国内外の諸問題は複雑
    で予測不能になる一方であり、さまざまな要素を勘案して深く考えなければ
    とうてい解決が不可能だ。本書では、法律家(裁判官、検察官、弁護士)が
    実務のツールとして常に用いている法的思考(リーガルマインド)を解説す
    ることで、深く、正しく、慎重に物事の真偽や正当性、最善の行動などを判
    断するための思考法のヒントを提供。法律家は法解釈と事実認定から結論を
    導く「法的三段論法」を駆使して「熟考」しているのだという。著者は弁護
    士から大学教員になり、現在、青山学院大学法学部教授(税法)、同大学大
    学院法学研究科ビジネス法務専攻主任を務める。
      ------------------------------------------------------------

    ●法律家は常に「法的三段論法」を使い熟考している

     目まぐるしい情報の吸収をするばかりで、ささいなことへの反応ばかりし
    てしまいやすい毎日のなかでは、じっくりと考えて、冷静に事実を調べて、
    さまざまな意見を客観的にとらえたうえで、最後に自分の結論を導く。こう
    した「思考プロセス」をたどれる技術をぜひとも得たいものです。

     SNSがなかった時代は、日記を書くなど、だれにも知られずに自分の考えを
    まとめる程度で終わりました。今はそれをすぐに投稿することができます。
    そして一瞬にして多くの人に見られてしまう。そんな状況になりました。そ
    こでむしろ、すぐに反応しないための「熟考する力」のニーズが、高まって
    きているのです。

     すぐに反応しないためには、ささいなことにも反応してそれを外部に表明
    してしまう自分の感情をコントロールすること、そして冷静な分析力を身に
    つけることが求められます。熟考する力とは、「冷静な対応をする技術」と
    いうこともできます。

     弁護士などの法律家は、目の前にいる依頼者が切々と訴える話であったと
    しても、それを鵜呑みにすることはありません。証拠などを見せてもらいな
    がら、依頼者の言っている話が本当なのかを冷静に確認していきます。法律
    家が事実を確認する、その源泉は裁判で使われている「法的思考(リーガル
    マインド)」と呼ばれるものにあります。

     法律家は、常に「法的三段論法」という思考形式を使って結論を導きます。
    そもそも「三段論法」とは、「抽象的な命題」に対し、「具体的な事実」を
    当てはめることで「結論」を導いていく思考法です。「人は死ぬ」という抽
    象的な命題に対し、「アリストテレスは人である」という具体的な事実を当
    てはめることで、「アリストテレスは死ぬ」という結論を導くのです。

     法的三段論法とは、論理学における三段論法とどこが違うのでしょうか。
    それは命題の部分が、法律に規定されたルールが前提となっていることです。
    法律の規定の善悪は、その時代、時代において、必ずしも絶対的に正しいの
    かはわかりません。社会に合わないと判断されれば変わります。時代に合わ
    せて、法律のルール(命題)は変わる、ということです。

     それだけにとどまりません。法律の規定には、「解釈」が介在します。法
    的三段論法の最初に行うべきことは、その事実に適用すべき法令の解釈です。
    これは「法解釈」と呼ばれるものです。

     たとえば「人を殺した者は殺人罪に処する」という刑法の規定ひとつとっ
    ても、「人」には自分も含まれるのかと考えます。もし含まれるとすれば、
    自殺も殺人罪になってしまいます。そこで、「人」とは他人を指すと解され
    ることになります。このように法律の条文に規定された内容を解釈したあと
    を「法規範」といいます。

     法解釈によって導かれた法規範に当てはめるべきものが事実です。この事
    実についても認定が必要になります。一つひとつの事実について、5W1H(い
    つ、どこで、だれがだれとの間で、何を、どのようにしたのか、それはなぜ
    か)を明らかにする作業です。そして、原則として、その一つひとつについ
    て裏付けとなる「証拠」が必要になります。

     裁判官がある事実について一つの評価としての結論を出すときに、また、
    弁護士がある事件についてコメントするときには、こうした「法的三段論法」
    を視点として、「法解釈はどうか」「事実認定はどうか」「結論はどうか」
    と、その一つひとつをチェックしています。だからこそ、法律家はある対象
    が目のまえにやってきたときでも、安易に反応をすることなく、マスコミの
    報道があるようなときでも、冷静に中身を見ていくことを習慣的に行えるの
    です。


    ●ルールを字面どおりではなく目的に沿って解釈する

     図書館に行ったときに、「廊下では携帯電話の使用を控えてください」と
    いう貼り紙があったとします。これを文字通り解釈してみましょう。スマホ
    を使ってLINEをする。インターネットで検索する。こうした音も立てずにま
    わりに迷惑をかけない行為であったとしても、「廊下で」の「携帯電話の使
    用」にはあたりますよね。そうすると、控えるべき行為になります。

     ただ、貼り紙の目的は、おそらく図書館の静かな環境を守ることにあるで
    しょう。このように「なぜそのルールができたのか」という「目的」を考え、
    ルールの目的に沿った解釈をすべきだという考え方があります。これを「目
    的論的解釈」と言います。このように考えると、音も出さないでLINEをして
    いる、本を読んでいて気になった内容を検索する、これらは図書館の静かな
    環境を害することではないですよね。そうすると、禁止されている携帯電話
    の使用にあたらないと考えることもできます。

     ルールは抽象的に規定されます。そのため個別の事例に機械的に適用しよ
    うとすると、常識的におかしな結論になってしまうことがあります。そのよ
    うな場合は、裁判官が法律の規定を柔軟に解釈していくことになります。

     このことは、法律に限られません。社内規程でも団体のルールでも、何か
    の決まりの違反の問題が起きたときには、ルールの字面を追うだけでなく、
    そもそも「なぜこのルールはできたのだろう?」と考えてみましょう。落ち
    着きのよい、解決の糸口が見つかると思いますよ。


    ●事実認定はまず「一次情報」を見た上で「二次情報」を参考に

     事実認定の視点としては、「まず一次情報に触れる」ことが出発点になり
    ます。裁判では、当事者双方から主張が書かれた書面が提出され、それを裁
    判官は読み込むことになります。訴状、答弁書、準備書面と呼ばれるもので
    す。原告の書面であれば、原告に有利な内容が記載されていて、被告の書面
    であれば被告に有利な内容が記載されています。しかしこうした主張書面を
    読むだけで、裁判官が判断を下すことはありません。なぜかというと、あく
    まで主張書面は二次情報(※主観などをまじえて加工された可能性のある情
    報)だからです。

     一次情報にあたるためには、証拠に基づく認定が必要です。主張はあくま
    で、証拠を見た上での評価の参考にすぎません。一次情報をきちんと見た上
    で「二次情報を参考にする」発想は有用です。二次情報には誤りが多く混在
    している可能性があります。一次情報にあたらないで二次情報を見た人も、
    一次情報にあたれば別の評価を下していた可能性がある、ということです。
    この点を考えて、冷静に判断することが必要です。


    ●「形式論」と「実質論」の2つの観点で物事を判断する

     法人税の実効税率(法人が所得について負担する税率)を下げるべき、と
    いう議論があります。税率が高いと、企業が税率の低い海外に出ていってし
    まうことが懸念されます。そこでこれを国際水準並みに下げるべきだ、とい
    う議論がなされてきました。

     裁判所が判決を書くときに見る2つの観点で、裁判以外のものごとの判断
    にも使える思考法があります。その一つが、「形式論と実質論」という視点
    です。

     法人税は利益に対する課税なので、赤字の法人は法人税を負担しません。
    こうした赤字法人(欠損法人)が7割近くあるため、住民税や事業税といっ
    た地方税で別の観点から税金を課す仕組みが考えられています。利益が出て
    いなくても、外形標準課税といって資本金や従業員数などの会社の規模に応
    じて税金を課すのです。
     法人税が減税されても、このように赤字法人でも負担しなければいけない
    税金が増えていくのです。果たして企業にとってプラスになるかどうかは難
    しいところです。

     法人税減税の問題ひとつとっても簡単ではないですよね。形式的に見えて
    いるところだけで、賛成反対とすぐに反応するのではなく、実質的なメリッ
    トやデメリットもよく確認することです。

    コメント: 『物理学者が解き明かす重大事件の真相』(ビジネス社)の著
    者、下條竜夫・兵庫県立大学理学部准教授は、同書で「批判的思考(クリティ
    カルシンキング)」を「自分がどこまで理解しているのか、その限界をはっ
    きりさせる」ことと定義している。「わかっている」ことと、「わからない」
    ことを明確にするということだ。本書『熟考する力』で解説されている法的
    思考、とくに証拠をもとにした事実認定も、まさしくこれにあたるだろう。
    一知半解で「わかった気」になると、間違った判断をするリスクが高まる。
    手間と時間をかけて「わからないことをわかる」のが、著者の言う「熟考」
    の本質なのではないか。

  • Amazonで取り寄せをして週末に読んだ本です。
    著者は青山大学法学部教授で弁護士の木山泰嗣先生。
    流されない自分をつくる本物の思考術というサブタイトルがついています。

    SNSやYahooニュースなど巷には情報があふれています。情報洪水の中で流されないようにするためには思考力を鍛え、自分で判断しなければならない、そんな趣旨だと思います。内容とタイトルで微妙な不一致感がところどころあるのですが、最初は反応しない技術という仮タイトルだったということで納得しました。流されず、踊らされず、慎重に反応することが大事、ということがよくわかります。

    また、例としてあげられていることも政治や裁判の内容が多く、これは木山先生の本業からくる部分だと思いますが、学生や若いサラリーマンにとっても読みごたえがあると思います。

  • 熟考する力は、「法的三段論法」つまり法解釈と事実認定によって結論を導くという裁判で使われる思考法のこと。裁判官が何をどのように考えて判決を導くのかについては参考になる。
    司法の世界だけでなく、日常生活での思考にこの法的三段論法を使うことが提案されているが、個々のフィルターたっぷりの情報の中で原則的なルールを知ることさえも困難で、その解釈まではとても及ばないし、事実認定にしても調査能力も権限もない中でつかんだ情報が果たして真実なのか認定のしようもない。つまりは熟考するまでもなく結論は出せない、あるいはえいやっ!と出すしかないものになりそう。
    だからSNSなどで安易に非難したり反応したりすることは自重した方が良いという主張の方が本書を貫いている印象だったが、当初は「反応しない技術」というタイトルだったというあとがきを読んで納得した。タイトルにしても「流されない自分をつくる本物の思考術」というサブタイトルにしても盛り過ぎだろうと編集にも反省してもらいたい。
    ツィートなどでの反応の問題認識には同意するが、著者が理由にするような、他者からの評価を落とすかどうかは本質ではなく、正しい結論が得られないものに対して批判することの責任は自ら負うものということだと思う。
    17-41

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ルールは柔軟に"解釈"。ニュースは発言者の立場に注目。レビューは1次情報と2次情報を区別。-人気教授が教える法的思考の授業。

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