- Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480013460
作品紹介・あらすじ
1969年1月に発表された「失われた世界の復権」と「文化と狂気」は、70年代の知的シーンの幕開けをうながすために投擲された二個の爆弾であった。この二篇を軸に集められた最初の評論集である本書は、その後「道化」を知的活動のモデルに据え、動脈硬化しがちな現実を活性化するために「周辺」的な存在に着目し、刺激的な文化理論を展開していった著者の出発点を証す冒険と挑発にあふれた書物である。
感想・レビュー・書評
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【書誌情報】
筑摩叢書346 人類学的思考
シリーズ:シリーズ・全集
定価:本体2,796円+税
Cコード:0070
整理番号:
刊行日: 1990/11/28
判型:四六判
ページ数:506
ISBN:4-480-01346-6
JANコード:9784480013460
在庫 ×
「道化」を知的活動のモデルに据え、動脈硬化しがちな現実を活性化するため刺激的な文化理論を展開した著者の、七〇年代の出発点を証す最も輝かしい軌跡の集成。
<http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480013460/>
【簡易目次】 (※ルビは亀甲括弧〔 〕に入れました)
目次 [i-iv]
I
人類学的認識の諸前提――戦後日本人類学の思想状況 004
マルクス主義と人類学――石田英一郎『文化人類学ノート』をめぐって 027
調査する者の眼――人類学批判の批判 043
人類学的調査について――帝国主義と人類学 072
柳田に弟子なし――若き民俗学徒への手紙 084
II
アフリカの知的可能性 100
未開社会における歌謡 130
瓢箪と学生 154
黒の人類学 175
地獄以前 188
王権の象徴性 203
III
徒党の系譜 228
アマチュアの使命 246
文化の中の知識人像――人類学的考察 262
マンガと劇画――子供のためのマンガから 285
文盲のすすめ――文字と人間 293
狂気の民俗学 303
IV
ヤン・コット『シェイクスピアはわれらの同時代人』 316
川口久雄『大江匡房』 323
幻想・構造・始原――吉本隆明『共同幻想論』をめぐって 328
宇都宮貞子『草木ノート』 358
オルテガと人間科学〔シアンス・ユメーン〕 364
夢野文学と「文化あるいは構造人類学」――夢野久作フウに 370
贋学生の懺悔録――『渡辺一夫著作集』によせて 376
V
文化と狂気――ホモ・デリルス 382
失われた世界の復権 422
解説 鏡の国の山口昌男(中沢新一) [483-492]
初出覚書 [493-494]詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
[ 内容 ]
1969年1月に発表された「失われた世界の復権」と「文化と狂気」は、70年代の知的シーンの幕開けをうながすために投擲された二個の爆弾であった。
この二篇を軸に集められた最初の評論集である本書は、その後「道化」を知的活動のモデルに据え、動脈硬化しがちな現実を活性化するために「周辺」的な存在に着目し、刺激的な文化理論を展開していった著者の出発点を証す冒険と挑発にあふれた書物である。
[ 目次 ]
人類学的認識の諸前提―戦後日本人類学の思想状況
マルクス主義と人類学―石田英一郎『文化人類学ノート』をめぐって
調査する者の眼―人類学批判の批判
人類学的調査について―帝国主義と人類学
柳田に弟子なし―若き民俗学徒への手紙
アフリカの知的可能性
未開社会における歌謡
瓢箪と学生
黒の人類学
地獄以前
王権の象徴性
徒党の系譜
アマチュアの使命
文化の中の知識人像―人類学的考察
マンガと劇画―子供のためのマンガから
文盲のすすめ―文字と人間
狂気の民俗学
文化と狂気―ホモ・デリルス
失われた世界の復権〔ほか〕
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
博覧強記の評論集。
「狂気」に関する考察や、論理的整合性では掬い取れない事象(まさに文化人類学が掬い取ろうとするもの)に関する考察についてはなるほどと頷ける。アフリカでのフィールドワークを背景とした考察にも同意できる。
しかしながら、これが巻末の「失われた世界の復権」と題された論文になると途端に難解極まりないものになる。理由は明快で、参照されているテキストがあまりに広範に渡り、素人の知識では追いきれないから。このようなテキスト引用型の論文は、その引用されたテキストの信憑性にも疑問が残るし、そもそもオリジナルはどこにあるのか?と考えると疑問はさらに混迷を極める。(この論文の趣旨は現代社会が失いつつあり、一方で前近代社会や未開社会に残る日常性を超える行為を明らかにすることだと思うが、難解。)
その部分を差し引いたとしても、基本的にこの本を読んで理解するには相当広範な知識が要求されるし、山口氏もそれを当然のことと考えている節がある。そのような山口昌男の立ち位置というか雰囲気のようなものは通読すると掴めるし、それが本書のタイトル「人類学的思考」なのだろうと解釈した次第です。