水を守りに、森へ―地下水の持続可能性を求めて (筑摩選書)

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著者 : 山田健
  • 筑摩書房 (2012年1月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480015341

水を守りに、森へ―地下水の持続可能性を求めて (筑摩選書)の感想・レビュー・書評

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  • サントリーが水源の森を守る為に行っているエコ活動。ただ闇雲に植林をすれば良いと言うわけではなく、間違った植林するとかえって地下水が減ってしまうとか、将来のDNAを考えて土地に合った木を選ぶなど、興味深い内容でした。
    残念な事に、読み終わらないうちに返却期限が来てしまった。

  • サントリーの水源保護事業の事業部長の本。こんなん読んだらまた白州・山崎行きたくなっちゃうよ。。。


     日本の林業が終わっているってのはわかっていたが、今ここまできているとはね。

    _____
    p22 軟水のワケ
     日本は軟水で、海外は硬水である。それは日本と海外の土壌の質の差も関係しているが、保水力の差が大きい。
     日本は国土が狭いため、地中を流れる地下水が湧出し海に流れるまでの時間が短い。そのため水にミネラル分があまり含まれない。海外はその逆。

    p51 7000haの反応
     サントリーの水源涵養力調査の範囲は7000haもあった。普通の企業じゃそんな無駄に見えるようなことに手を出さない。サントリーの社風が気の長い仕事に慣れてきたからであろう。「まぁ、やってみなはれ」の精神

    p58 植樹で水が減る
     植樹すれば森の保水力が簡単に増えるかと思ったら大間違い。適切な植樹でなければ逆効果になる。
     植樹すれば雨の水はその木や葉に付き、地面に到達する前に蒸発する分がある。また、木は蒸散によって水を地面から吸い上げる。つまり降水量の多い土地でなければ、植樹は逆に土地の水分を蒸発させる効果しかない。
     中国やオーストラリアで植樹の結果、井戸水が枯れたという事案もある。

    p68 不耕起
     地面を耕すのは、何も人力で掘り起こさなくても、雑草に頼めば良い。
     地に深く根をはる植物は、成長とともに根も伸びる。そういった雑草を固い地面に撒く。草が生えてきたら、根元で刈って、根は残す。そうすると、根はそのままで新たな草が伸びてくる。根はさらに深く伸びる。これを繰り返していけば、雑草が深く地面を掘り起こしてくれて、自然に地面が柔らかくなる。これが、不耕起。

    p73 なぜ植えたのか
     昔の人は山奥の急峻な土地にも植樹してした。感心するばかりだが、その本心は「植えるだけ植えて、管理も伐採もする気はなかった」なのだ。植えれば植えるだけ補助金がもらえたのだから、そういうずるがしこさが働くのも訳ない。

    p77 林道
     林道って作るのにすごい技術と知識がいる。適当に作った林道は水の通り道によって浸食されて崩れる。
     林道は目的地へ最短距離をとりがちだが、地形に合わせて設計しないとすぐに崩れる。山道こそ急がば回れ。

    p91 なすび狩り
     林道を作るのに補助金が出る。それに集って、林道を作って良い木材だけ伐採して、その後は山を放置する。茄子の収穫も大きく育ったものから獲って、出来の悪いものは残しておく。
     一度しか使わない道を作って(補助金で)金になる木だけ獲って放置する、あくどい考え。林道造りはこういう蛇の道もある。

    p99 苗木は喰われる。
     鹿害が深刻。植樹で植えた木も、鹿に喰われる。自然に生えた若木よりも、植樹した苗の方が喰われる。手塩にかけた苗の方が栄養価が高いからか、虫にも食われる。

    p102 林業組合の現実
     仕事のない林業組合は技術がない。プロのはずなのに、サントリーの職員に逆にやり方を聞いちゃう始末。

    p108 ヒノキの危険性
     ヒノキは杉の木よりも悪質。ヒノキ林では腐葉土はできない。
     ヒノキの葉っぱは落ちても崩れてすぐに飛ばされてしまう。それに、ヒノキは雨水を葉っぱで貯めて、大粒にして地面に落とす。そうすると地表が吹き飛ばされやすくなり、流失しやすくなる。その結果、ヒノキ林の地表は裸で下草も育たない。

    p130 鹿の保護
     戦後の食糧難で鹿は過剰に捕獲された。さらに駐屯軍のスポーツハンティングの餌食になって絶滅の危機になった。
     その後の保護政策で減少は食い止められた。さらに、林業の推進策で、伐採と植樹が進んで大量の雑草が生える環境が山にできた。それがエサになり鹿は増殖した。現代では雪道の凍結防止塩が冬場のエサになり、若鹿の死亡数が減り、鹿の増殖を後押ししている。

    p132 ヤマビル
     鹿が増えるとヤマビルも増える。鹿がエサになるし、移動手段になる。鹿が山から下りてくれば、ヤマビルもやってくる。ぎゃあ

    p139 孟宗竹は外来種
     江戸時代に中国から渡来した外来種である。奴らは猛威を振るっている。山崎の天王山も浸食されている。見てくれば良かった。

    p144 日本の国蝶
     オオムラサキなんだって。ちなみに平氏の家紋はアゲハチョウ

    p148 どんぐりは不作ではない
     近年、クマなどの山の置物が人里まで下りてくる理由として「どんぐりなどのエサとなる実が山にないから」というが、実はどんぐりではなく、どんぐりが実る木がなくなっているのである。
     カシノナガキクイムシという害虫のせい

    p151 ほったらかし
     昔の人は山を「ほったらかし」にしていれば元通りになって、再生産可能だったなんて言っているが、ちゃんと管理していた。
     木を伐採しても、新芽が何本も伸びてきて鬱蒼としてしまう。適度に間引きしなければならないが、昔の人は芝刈りと称して、ちゃんと間引き管理をしていた。
     昔の人の言う「ほったらかし」を簡単に信じてはいけない。

    p153 人工林とは
     現代の人のイメージは人工林は「スギ・ヒノキなどの木材を植えた林」だが、昔ながらの里山も立派な人工林である。
     きちんと管理した山林ほど美しい。 天然のありのままの山なんて、踏み入ることもできないジャングルで、美しくもなんともない。

    p169 マツノザイセンチュウ
     海外から来たもの。松に取り付いて、松脂の分泌を抑える。松に寄生する、マツノマダラカミキリと共生して、松を絶滅に追い込んでいる。

    p175 炭スゴイ
     マツノザイセンチュウ対策は、松の根元に炭を埋めるだけ。そうすると、松の根につく菌根菌が活性化して、松自身が強くなる。

    p179 ウイスキーの松と竹
     白州蒸留所は松林が多い。だから森の香りや柑橘類のような香りが漂うようになる。
     山崎蒸留所は竹林が多い。だから重厚な味わいの香りがする。
     らしい…。イイハナシダナー。

    p186 常緑樹
     日本の原風景は落葉の広葉樹であっただろうというイメージが多い。そうでないところもいっぱいあるらしい。常緑の広葉樹が潜在植生で、関東以西ではその傾向があったらしい。

    p191 人工の地下水
     田んぼに水をためるのは涵養力がある。田んぼを耕作放棄地にすると井戸が枯れることもある。

    _____

     思いのほか面白かった。

     日本の林業は投資しても回収できないんだから、無理して金つぎ込んでも意味はない。と思っていたけれど、「情けは人のためならず」なるんだなー。

     ウイスキー造りは日本が適地だったんだなー。

  • 水資源・森林関係書籍でおもしろそうなものを見つけたため、買ってきました。
    初めて購入する表紙タイプだったので無駄に緊張しました。

    著者はサントリーに勤める企業人の方です。
    購入当初はてっきり学者の方だと思っていたので、読んでみて少なからず驚きました。
    内容は今までにサントリーで行ってきた、地下水涵養を目的とする森林保全。
    森林が国土の2/3を占める日本で、今森林の多くは放置され荒れ放題となっている。
    著者は、あくまで飲料生産という企業の生命線を守るために、その要となる地下水保全を見据えて日本各地の森林を復活させるプロジェクトを実行しています。
    実際に行ってきた活動の紹介なので説得力があると共に、元コピーライターであるという経歴からか非常に文章が簡素で読みやすく感じます。
    「社会貢献から、本業へ」の一言に、企業が取り組める環境保全活動のあるべき姿を感じられた気がします。

  • 著者はサントリーのエコ戦略部。

    サントリーがまじめに森作りと地下水の保全に取り組んでいることが分かった。

    気を植えれば水が湧くと、僕は思っていました。
    でも、違いました。

    そのことが分かっただけで、読んだ価値がありました。

    内容はまじめなのですが、著者のユーモアにときどき笑ってしまいました。

  • サントリーの水源滋養という視点からの、森を育てる話。

    タイトルや装丁からは想像できない柔らかな内容です。
    林業が抱えている「材料の出口」、という問題以外はすべて書いてある、といったら過言かもしれませんが、そういうアプローチではないからこそ、より多くの人に読んでもらえるのかもしれません。
    そして僕のような感化されやすい者は、ビールはやっぱりサントリーだよな、などと思うのです。

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日本は水の豊かな国だと思われているかもしれない。しかし、それは幻想にすぎない。その水資源を養うはずの森では、驚くほど深刻な事態が進行している。下草が一本もない森、ヒノキや杉が立ち枯れ、鹿が跋扈し、竹林が雑木を侵食し、松やナラが大量枯死する…いったいなぜこのようなことになったのか。はたして森林と地下水の再生は可能なのか。そのためには何が必要なのか-。さまざまな難関を超えて、五十年百年先を見すえた森林再生プロジェクトに挑む。

水を守りに、森へ―地下水の持続可能性を求めて (筑摩選書)はこんな本です

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