分断社会を終わらせる:「だれもが受益者」という財政戦略 (筑摩選書)

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  • 筑摩書房 (2016年1月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480016331

分断社会を終わらせる:「だれもが受益者」という財政戦略 (筑摩選書)の感想・レビュー・書評

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  • 本著は「信頼」をキーワードとして、わが国の租税の負担と給付についてあるべき方向性を論じている。
    データによれば、大きな政府(政府支出が大きい)だからと言って債務残高が増加するとは限らない(相関関係がない)にもかかわらず、わが国では大きな政府は忌避され、公務員や政府に対する信頼が弱い。したがって、租税負担に対する抵抗感が大きい。
    新たな租税を徴収することができないため債務削減を行うことができず、結果として既存の行政サービスを削減し、その資金を債務削減に回している。
    このような悪循環の原因について、本著では受益が特定の弱者救済にしか充てられておらず、租税負担に対する受益感を感じにくい点を挙げている。
    そこで、負担に関しては租税を分け隔てなく負担すること、給付に関しては現物給付をすべての人びとにおこなうことを、政策の方向性として示している。


    自分は社会主義を知らない世代なので、本著で提案されていたような行政サービスの一律給付策は先入観なく受け入れることができた。だが一方で、「誰もが等しく行政サービスを受けられる」国家だったはずの社会主義国家がなぜ失敗に終わったのかについて、よく考えてみなければいけないのではと感じた。


  • なぜ、日本人は増税をこれほどまでに嫌がるのか。
    今の日本の閉塞感はどこからきているのか。
    研究者らしく分析していて面白かった。
    日本の借金返済にはまだ余裕があるから、まずは普遍的な福祉を充実させてから増税につなげるべきという考え方。
    どうしたら増税ができるのか、それを考えなくては、財政再建もままならない。
    支出を切り詰めるより、収入を増やすことを考える、成長神話は終わってるという考えは至極納得できる。
    ただ、じゃあ増税に納得できる福祉ってなんだ、という部分が少し弱い気もした。
    そこを考えるのは、また別の人、もしかしたら私たちなのかもしれない。

  • 消費税の増税が先送りされ、「税と社会保障の一体改革」は頓挫したと言われる。高い支持率を誇る政権でも増税は難しい。社会保障(再分配政策)が「バラマキ」と非難されることも少なくない。なぜか。それは、この社会の基盤となるべき「信頼」が脆弱で、不安や疑心暗鬼の中で自己防衛に走るほかない生き方を強いられているからではないか。つまり私たちは巧妙に「分断」されていて、競争を強いられ、疲弊しているからこそ、誰かが救済されることになかなか寛容になれないのではないか。
    この本は、『経済の時代の終焉』(岩波新書)で昨年の大佛次郎論壇賞を受賞した経済学者が、経済学と財政学の知見を用いて、発想の転換を迫る提言書である。「市場原理」から「必要原理」へ、「成長=救済型モデル」から「必要=共存型モデル」へ、「救済型再分配」から「共存型再分配」への転換を掲げ、その実現可能性について検討する。
    自分には「受益」がなく「負担」ばかりだと思えば、租税抵抗が強まり、増税への同意は「分断」される。だから「誰もが受益者」になるよう制度を設計しなければならない。例えば義務教育は、所得の多寡に関係なく誰もが等しく無償で教育を受けられるサービス給付制度である。必要原理に基づく給付の古典的事例だ。同様に、教育以外の「必要」についても、受益者の範囲を広く設定できないか。希望の構想は、きわめて実務的に組み立てられていく。
    通常なら諦めてしまいそうな壮大な変革を、ある意味では地味な知見の積み上げによって成し遂げようとする。その知的執念が何より感動的で、学問への畏敬を再認識させられる本。

  •  格差による分断が起きている社会をどう変えていくか。

     分断がなぜ起きるのか。それをふまえて上でどう分断なき社会をつくっていくのかが語られる。
     貧困層だけでなく全市民に届く社会保障を充実させて痛税感を下げる。確かにこの方向性がいいと思うが、はたしてその意識改革が日本人にできていくだろうか。。。
     だが、それでもこの本の意味は大きい。

  •  所得・地域・世代間で分断化が進む現代日本。このままでは社会が壊れかねない。ならば税制も含め、何をどう変革すればいいのか? その原理を示す救国の書。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016331/



    【目次】
    目次 [003-006]
    はじめに [009-010]

    序章 分断社会・日本 011
    1 私たちの社会が痛んでいる 012
    2 弱者に冷淡な社会はこうして生まれた 018
    3 勤労国家の負の遺産 028
    4 未来を「選ぶ」から「創る」へ 041

    第一章 不安の発生源 047
    1 救済か? リスクやニーズの共有か? 048
    2 対立し、分断し合う人びと 063
    3 「三つの罠」が生み出す分断社会 086

    第二章 恫喝と分断による「財政再建」 095
    1 財政危機がやって来る? 096
    2 恫喝とルサンチマン 104
    3 総額重視の日本財政 111
    4 「公平性」と政府支出の削減 119

    第三章 不幸の連鎖からの脱却――「必要=共存」型の社会へ 127
    1 「必要原理」とは何か 129
    2 子供の教育と格差 147
    3 必要原理にもとづく制度改革へ 163

    第四章 来るべき時代の胎動 181
    1 民主党政権の失敗に何を学ぶか 184
    2 何が転換を妨げるのか? 196
    3 変化の胎動 209

    終章 縮減の世紀に立つ 229

    あとがき [241-243]
    参考文献 [244-251]

  • 佐藤優
    推薦

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