宣教師ザビエルと被差別民 (筑摩選書 139)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480016478

感想・レビュー・書評

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  • 差別問題をアジア思想史レベルでとらえ続けた沖浦先生最後の著作。

    私も沖浦先生と同じく、この著書と出会ったことで「私がそれまで抱いていた薄っぺらな『キリシタン布教史』のイメージは音を立てて瓦解していった」

    日本において、なぜキリスト教が広まったのか、なぜザビエルは漁村へと赴いたのか、なぜ癩病者への布教が功を奏したのか、なぜ被差別部落においてキリスト教が広がったのか、なぜ長崎県には被差別部落の人口が少ないのか…
    そのことひとつひとつが克明に紐解かれていく過程にどんどん惹き込まれ、あっという間に読了したといった感じだった。

    癩病者への救済が、仏教とキリスト教とでは根本的に違うということが、私にとって最もインパクトのあるトピックスであったことも、付け加えておきたい。
    簡単に言うならば、上から救済するか、同じ目線で救済するかの違い。
    これは、ほんと目から鱗の歴史的事実であり、このことはしっかりと伝えていかなければならないと強く思った次第である。

  • 仏の慈悲が及ばぬとされた身分があったこと、女性もケガレとみなされていたこと、キリシタンに対し残虐な仕打ちをしていたこと、同じ日本に住む人間の間で。

  • インドからアジアへ

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  • たぶん日本人なら誰でも知っているフラシスコ・ザビエル。
    でも、彼がいったいどのように日本において布教をすすめていったのかは、未知だった。
    とくに、どのような人々に信仰を得ていたのかは、もちろん知らなかった。

    その答え?の一助となったのが本書。

    日本における布教史の概説。

    イエズス会の成立、宗教改革、大航海時代、戦国時代のおける日本仏教の変遷。などなども詳しく説明されていた。


    イエズス会の成立の歴史から、アジアにおけるイエズス会の布教、そのなかでの被差別民との関わり、そして日本におけるイエズス会の布教と被差別民の歴史や関わりを知ることでき、とても有意義な一冊だった。

  • 沖浦和光の最後の本?
    日本に来たキリスト教が取り込めたのは下層民だったとかの話。

  • 読みやすかった。解説の「人間には多面的な貌がある。そのどの貌をとらえて評価するのか。人物の評価は、実はその人の価値観の裏返しである。」という記述にハッとした。

  • 本題とは直接関係ない部分だけど、仏教で女性は成仏できない、とされていたのはひどいな。
    後の修正の、女性は一旦男性に生まれ変わってから成仏する、というのは、馬鹿馬鹿しさがさらに際立っている…

  • ザビエルと聞いてパッと浮かぶのは有名なあの絵だが、当然あの絵について触れられることはなかった。
    ザビエルについて知ってることはその程度である。あとは、宣教師とイエズス会という言葉がなんとなく思いだされるくらいだ。
    そんな自分にとって本書は知らないことだらけだった。どこで布教をしたとか誰が協力した等々の宣教師ザビエルについての記述にとどまらず、この時代の日本の状況や宗教の存在から、世界の状況まで幅広く解説されている。そうだったのかと思うことが多く面白く読むことができた。
    また、ザビエルが船から落としてしまった十字架をカニさんが届けてくれたという伝説がグレートだなと思った。
    一点気になるのは、著者が大いに影響を受けたという高橋貞樹『特殊部落一千年史』はトレース疑惑があることと、高橋貞樹がゴリゴリのコミンテルンだということである。

  • 日本におけるキリスト教布教の歴史を、身分制度や貧民救済面から見直した考察。合わせて、時の権力者や仏教関係者の動向も対比させている。
    イエズス会の布教・伝導が、自分たちの文化(イデオロギー?)の押しつけだけではなかったということに気づかせてくれた。

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著者プロフィール

沖浦 和光(おきうら・かずてる): 1927−2015年。大阪府生まれ。東京大学文学部卒業。桃山学院大学名誉教授。民俗学、比較文化論、社会思想史専攻。被差別民と被差別部落の研究をおこなった。国内外の辺境、都市、島嶼を歩き、日本文化の深層をさぐる研究をつづけた。主な著書に、『宣教師ザビエルと被差別民』 (筑摩選書)、『幻の漂泊民・サンカ』 (文春文庫)、『天皇と賤民の国』 (河出文庫)がある。

「2023年 『「悪所」の民俗誌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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