白いおうむの森: 童話集 (ちくま文庫 あ 1-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480020680

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  • マイ・ファースト安房直子です。小学生のときに図書室で手にとって以来、手元から放していない一冊です。表題作はスダア宝石店で飼われている1羽の大きな白いおうむと、それを珍しがって見に来る女の子の話です。あるとき、彼女は宝石店でそのおうむにまつわる秘密を目にします。そのおうむがいなくなり、宝石店の店主から告げられたことは…ややダークで哀しげな素材と物語展開ながら、「あぁ、これでよかったんだ」というすっと消えていくような結末です。ですが、甘あまのハッピーエンドの物語に慣れた小学生にはものすごく新鮮でした。大好きなのは「鶴の家」と「野の音」です。「鶴の家」は、婚礼の前に、禁猟の丹頂鶴を誤って撃ってしまった猟師の家に、美しい女が「お祝いです」と青い大皿を持ってやって来る物語です。そのお皿は特に害をなさないけれども、その家の者が亡くなると鶴の姿が浮かび上がる。年を追ってそれがどんどん増えていき…うちにも青い大皿があったので、どきどきしたものでした(笑)。「野の音」は、泰山木の大きな木の横にある仕立屋さんが舞台。そこで仕立てた服のボタンホールからはすてきな音が聞こえるのです。「ここでお裁縫を教えてもらうんだ」といっていなくなった妹を探してこの店に来たお兄さんが知ったことは…とこれも秘密もの。すてきな出来事の裏に隠れた哀しさにやりきれなくなります。だから今でも、泰山木をみるとなんとなく思い出してしまう(笑)。大げさですが、私の人生における物語観の好みを決めてしまった1冊です。誰がなんといおうとこの☆の数です。

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著者プロフィール

安房直子(あわ・なおこ)
1943年、東京都生まれ。日本女子大学国文科卒業。在学中より山室静氏に師事、「目白児童文学」「海賊」を中心に、かずかずの美しい物語を発表。『さんしょっ子』第3回日本児童文学者協会新人賞、『北風のわすれたハンカチ』第19回サンケイ児童出版文化賞推薦、『風と木の歌』第22回小学館文学賞、『遠い野ばらの村』第20回野間児童文芸賞、『山の童話 風のローラースケート』第3回新見南吉児童文学賞、『花豆の煮えるまで―小夜の物語』赤い鳥文学賞特別賞、受賞作多数。1993年永眠。

「2022年 『春の窓 安房直子ファンタジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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