ケルトの神話: 女神と英雄と妖精と (ちくま文庫 い 16-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 716
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480023926

感想・レビュー・書評

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  • ケルト・ファンタジー研究家の井村君江先生によるケルト神話の入門書。

    はじめに―― ケルト民族のふしぎ
    I. 「天地創造神話」のない神話
    II. ダーナ神族の神話
    III. アルスター神話
    Ⅳ. フィアナ神話

    序章はケルト民族についての概説、I〜Ⅳがケルト神話の紹介になります。
    以下、各章の覚書です。

    I. ケルト神話には天地創造の物語がありません。語り部であったドゥルイド神官たちは、物語を書き残すことを忌み嫌い口承で伝えてきたため、ケルト神話にもとから天地創造神話がなかったのか、あったけれど失われてしまったのか分かりません。11世紀以降にキリスト教の修道士たちが採録した断片的な物語が、ケルト神話としてかろうじて現在に伝えられています。

    II. ダーナ神族(トゥアハ・デ・ダナーン)は人間の前に地上に住んでいた種族です。金髪碧眼の美しい種族で、ミレー族(アイルランド民族の祖先)との戦いに敗れて地上を去りました。地下や海に逃れて妖精となり、「常若の国(チル・ナ・ノグ)」という美しい国を造って楽しく暮らしていると言われています。

    III. アルスター神話は、ダーナ神族が去ったあとミレー族が築いたとされる国、アルスターを舞台とする物語群です。アルスター王に仕える「赤枝の戦士団」の騎士達が主な登場人物で、中核を成す「クーリーの牛争い」という戦記では『イーリアス』のアキレウスに似た英雄ク・ホリン(クーフーリン)が主人公として活躍します。紀元1世紀頃の伝承と言われています。

    Ⅳ. フィアナ神話は、アルスター神話の時代から約300年後、エリン(アイルランドの古名)の王に仕えた「フィアナ騎士団」の騎士達を中心にした物語群です。騎士団長のフィン、その息子オシーン、騎士ディルムッドが中心人物になります。『アーサー王物語』との類似が随所に見られます。

    1983年に書かれた本なので、考証については最新の研究結果とは違う記述があるかもしれません。しかし専門家ならともかく、一般人が趣味で読むぶんには問題にならないでしょう。細かい点が気になる人は、著者が館長を務める「うつのみや妖精ミュージアム」のサイト内にある「妖精学データベース」へアクセスしてみて下さい。かなり詳しい情報が得られます。

    • りまのさん
      え、あの、佐藤史生先生ですか。大ファンなんです!
      え、あの、佐藤史生先生ですか。大ファンなんです!
      2020/07/31
    • りまのさん
      あ、早とちりだったら、失礼しました。
      あ、早とちりだったら、失礼しました。
      2020/07/31
    • 佐藤史緒さん
      ごめんなさい、別人です。これ、台所で思いついたハンドルネームなので。でも、ご来訪ありがとうございました。またいらしてくださいね♪
      ごめんなさい、別人です。これ、台所で思いついたハンドルネームなので。でも、ご来訪ありがとうございました。またいらしてくださいね♪
      2020/08/03
  • 重厚な物語だった。どの小話も、切なさが染みている。

  • 主としてアイルランド神話。ギリシア・ローマ神話や古事記のほうに先に親しくなった私には、神々や英雄や妖精の名前がややこしく感じられることもあったけれど。でも考えてみると、アーサー王の話も沈める街イスの話も、私は大好きなのだった。これは「ケルト」を語るには必携の書、といっていいかもしれない。そういえば、海外旅行というとアイルランドにしか行かない、少し年上の知人がいる。理由を尋ねても「好きだから」とかなんとか、いつもはぐらかされてしまう。よほどお気に入りのパブがあるのか、あるいはどうしても必ず逢いたい女性でもいるのか、それとも本当に妖精の誰かに囚われてしまったのか……。

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    ケルト神話は詳しく知らなかったが、この本を読むことで大筋を知ることができたように思う。
    登場する神様は小説やゲームなどの作品で見かけることが多いために馴染みがあるのだが、その大本がどのような物語なのかは知らなかったが大変に興味深く読むことができた。
    ルーやバロールはケルト神話出身だったんだね。

  • ケルトに伝わる神話・英雄譚。日本語でここまでまとめられている本はそれまでなかったみたいですね。すばらしいです。わかりやすい上に表現豊かなので物語として存分楽しめます。
    ケルト神話がこの世になかったら存在しなかったファンタジーも星の数ほどあるんじゃないだろうか。伝え残した語り部さん達グッジョブ。
    日本の昔話と類似した話も色々あるのでどこかで繋がっているのかな。
    アルスター神話はヒーロー物語として完成されており、戦士達も女神様たちも荒々しくて濃い。まさか戦闘中にパワーアップ第2形態の様式がこんなところに…。
    フィアナ神話は端正で甘やか。妖精の国がファンタジックに美しく描かれているので行って(逝って?)みたくなる。

  •  文庫版ではなく、1982年に筑摩書房からリリースされた「世界の神話」第9巻の方を読む。
     文庫化されても不思議は無い。一次資料になる学術的内容を孕んでいる。コンビニで買えるペーパーバックの廉価本がケルト神話を扱うと、参考資料に必ず本書を挙げている。

     こと妖精について調べようとしたら、フェアリードクター井村君江先生のお世話にならずにいられない。

  • ケルト神話の入門書として最適な1冊です。
    様々な登場人物が繰り広げるお話の数々。
    どこかで読んだあのお話の元ネタはこれだった!と気付いた瞬間ますます面白いと思えます。

著者プロフィール

英文学者・比較文学者。明星大学名誉教授。うつのみや妖精ミュージアム名誉館長。金山町妖精美術館館長。著書に『妖精学大全』(東京書籍)、『ケルト妖精学』(筑摩書房)、『帰朝者の日本』(東京創元社、近刊予定)、訳書にW・B・イエイツ編『ケルト妖精物語』(筑摩書房)、ウィリアム・シェイクスピア『新訳 テンペスト』(レベル)、アーサー・コナン・ドイル『妖精の到来――コティングリー村の事件』(アトリエサード)ほか多数。

「2021年 『コティングリー妖精事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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