ケルトの神話: 女神と英雄と妖精と (ちくま文庫 い 16-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 715
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480023926

作品紹介・あらすじ

神々は英雄と結婚し、英雄はまた妖精の恋人に…「幻の民」ケルトの人びとが伝え残した神話のかずかず。目に見えぬ世界「常若の国」や、目に見えぬ種族・妖精たちの存在を信じていたケルトの人びとの想いが今に甦える。ケルト文化の理解に欠かせない1冊。

感想・レビュー・書評

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  • ケルト・ファンタジー研究家の井村君江先生によるケルト神話の入門書。

    はじめに―― ケルト民族のふしぎ
    I. 「天地創造神話」のない神話
    II. ダーナ神族の神話
    III. アルスター神話
    Ⅳ. フィアナ神話

    序章はケルト民族についての概説、I〜Ⅳがケルト神話の紹介になります。
    以下、各章の覚書です。

    I. ケルト神話には天地創造の物語がありません。語り部であったドゥルイド神官たちは、物語を書き残すことを忌み嫌い口承で伝えてきたため、ケルト神話にもとから天地創造神話がなかったのか、あったけれど失われてしまったのか分かりません。11世紀以降にキリスト教の修道士たちが採録した断片的な物語が、ケルト神話としてかろうじて現在に伝えられています。

    II. ダーナ神族(トゥアハ・デ・ダナーン)は人間の前に地上に住んでいた種族です。金髪碧眼の美しい種族で、ミレー族(アイルランド民族の祖先)との戦いに敗れて地上を去りました。地下や海に逃れて妖精となり、「常若の国(チル・ナ・ノグ)」という美しい国を造って楽しく暮らしていると言われています。

    III. アルスター神話は、ダーナ神族が去ったあとミレー族が築いたとされる国、アルスターを舞台とする物語群です。アルスター王に仕える「赤枝の戦士団」の騎士達が主な登場人物で、中核を成す「クーリーの牛争い」という戦記では『イーリアス』のアキレウスに似た英雄ク・ホリン(クーフーリン)が主人公として活躍します。紀元1世紀頃の伝承と言われています。

    Ⅳ. フィアナ神話は、アルスター神話の時代から約300年後、エリン(アイルランドの古名)の王に仕えた「フィアナ騎士団」の騎士達を中心にした物語群です。騎士団長のフィン、その息子オシーン、騎士ディルムッドが中心人物になります。『アーサー王物語』との類似が随所に見られます。

    1983年に書かれた本なので、考証については最新の研究結果とは違う記述があるかもしれません。しかし専門家ならともかく、一般人が趣味で読むぶんには問題にならないでしょう。細かい点が気になる人は、著者が館長を務める「うつのみや妖精ミュージアム」のサイト内にある「妖精学データベース」へアクセスしてみて下さい。かなり詳しい情報が得られます。

    • りまのさん
      え、あの、佐藤史生先生ですか。大ファンなんです!
      え、あの、佐藤史生先生ですか。大ファンなんです!
      2020/07/31
    • りまのさん
      あ、早とちりだったら、失礼しました。
      あ、早とちりだったら、失礼しました。
      2020/07/31
    • 佐藤史緒さん
      ごめんなさい、別人です。これ、台所で思いついたハンドルネームなので。でも、ご来訪ありがとうございました。またいらしてくださいね♪
      ごめんなさい、別人です。これ、台所で思いついたハンドルネームなので。でも、ご来訪ありがとうございました。またいらしてくださいね♪
      2020/08/03
  • 各国の神話再読キャンペーンを自分一人で開催中なのだけど、ついにケルトに突入。ケルトものは一時期はまっていたので結構沢山あるのだけど、これが入門編として一番概要がわかり親切かな。

    民話の類は不思議と全く離れた土地でも共通していたりして面白いけど、日本でいう「浦島伝説」や「羽衣伝説」とよく似た話がアイルランドにもあるってなんかすごい。浦島的なオシーンの話は、妖精の国から元の世界に戻ってきたら、キリスト教が布教されてたっていうのが、妙に現実的。

    アンデルセンの童話(白鳥の王子)の元ネタっぽい、継母に白鳥にされちゃった四人の姉弟の話も、人間に戻れた途端に老人になっちゃうのが切ないな。

    一番有名な英雄ク・ホリンは、愛馬が主人思いで健気。恋愛系は女性がわがままなパターンが多くて悲恋でもあまり同情的になれなかったけど、動物が健気なのは泣ける。

    • 淳水堂さん
      こんにちは(^O^)

      白鳥の話は「リヤ王」でしたっけ?
      魔法が解けた四人の王女王子たちはすっかり老人ですぐに老衰、
      死ぬ寸前...
      こんにちは(^O^)

      白鳥の話は「リヤ王」でしたっけ?
      魔法が解けた四人の王女王子たちはすっかり老人ですぐに老衰、
      死ぬ寸前に一番上の姉が「私たちを葬るときには、私の右腕に〇〇、左側に△△を寝かせてください。白鳥だったとき毎晩そうして寝ていましたから」という話を読んだ覚えがあるのですが、ケルト神話だったのか。

      ”リア王”と言われると白鳥のほう?荒野をさまよってピエロにからかわれるほう?となってしまう(笑)
      2016/08/26
    • yamaitsuさん
      淳水堂さん、こんにちは(*^_^*)

      そうです、それです、長女の白鳥が弟たちをいつも庇っていて(泣かせる…)死ぬときも同じように葬って...
      淳水堂さん、こんにちは(*^_^*)

      そうです、それです、長女の白鳥が弟たちをいつも庇っていて(泣かせる…)死ぬときも同じように葬ってくれってお願いするやつです。

      この本では「リール王」という表記になってました。綴りは「Lir」かな? 発音難しそうですね、リアともリヤとも・・・

      しかし白鳥の姿で900年、そこまでは魔法が有効なのに、人間に戻ったとたんに老衰で死んじゃうって・・・なんとも切ないです。
      2016/08/29
  • 重厚な物語だった。どの小話も、切なさが染みている。

  • 主としてアイルランド神話。ギリシア・ローマ神話や古事記のほうに先に親しくなった私には、神々や英雄や妖精の名前がややこしく感じられることもあったけれど。でも考えてみると、アーサー王の話も沈める街イスの話も、私は大好きなのだった。これは「ケルト」を語るには必携の書、といっていいかもしれない。そういえば、海外旅行というとアイルランドにしか行かない、少し年上の知人がいる。理由を尋ねても「好きだから」とかなんとか、いつもはぐらかされてしまう。よほどお気に入りのパブがあるのか、あるいはどうしても必ず逢いたい女性でもいるのか、それとも本当に妖精の誰かに囚われてしまったのか……。

  • ケルティックな視点での歴史。
     うんうん。

  • ケルト民族に伝わるケルト神話の数々。36年前発行の本とは思えないくらい読みやすく、面白い。妖精たちと交流し、英雄が活躍し、神々は人と交わり・・・。ケルト民族を残された出土品などとともに紹介し、そして神話へと繋げていく。ケルト神話初春者にも優しい一冊でした。

  • ケルト神話は大学時代にイギリス文化研究のゼミにいたこともあり、いくらか読んだことはあった。が、今回読み返してみて、ほとんど覚えていなかったことに気づく。

    ケルトと言えばドルイド僧であり、ダーナ神族であるわけだが、この本ではそれ以外のトピックや具体的な各種の神話のストーリーも多く収載されており、後半は面白そうな章だけ抜き出して読んでも、独立した読み物として楽しめる。

    余談ながら、神話に出てくる人物や神の名前が、任天堂のゲーム「ファイヤーエンブレム」で多く採用されていることが分かった。ゲームの登場人物の名前は神話や民間信仰から持ってくることが多いとは思っていたが、ほぼ「そのまんま」で使われている名前も多く、任天堂サボったな、というのが率直な感想。

    ケルト神話は逸失しているものも多いらしく、この250ページちょいの文庫本だけでも、そこそこ広くカバーできているのではないかと思う。ケルト文化をお手軽に楽しみたいならおススメ。

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    ケルト神話は詳しく知らなかったが、この本を読むことで大筋を知ることができたように思う。
    登場する神様は小説やゲームなどの作品で見かけることが多いために馴染みがあるのだが、その大本がどのような物語なのかは知らなかったが大変に興味深く読むことができた。
    ルーやバロールはケルト神話出身だったんだね。

  • 2016/1/26
    アイルランドのことって知らないこと多いんだな。キリスト教の影響が少なかったから神話がたくさん残っているんだね。日本と共通するような神話も多く、どのように物語が伝播していったのか・・想像すると楽しい。もしもケルト人たちが文字を持っていたら、世界は変わっていたのかもしれない。

  •  女神さま、っょぃ。

     ケルトの雰囲気ってのがどんなものか知りたくて読んでみた。クー・フーリンってアイルランドの神様だったのね。ペルソナ辞典、まともに読んでないから……。
     白鳥になった四姉弟の話と、ディアドラの話、あとディルムッドの話が好きでした。

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著者プロフィール

英文学者・比較文学者。明星大学名誉教授。うつのみや妖精ミュージアム名誉館長。金山町妖精美術館館長。著書に『妖精学大全』(東京書籍)、『ケルト妖精学』(筑摩書房)、『帰朝者の日本』(東京創元社、近刊予定)、訳書にW・B・イエイツ編『ケルト妖精物語』(筑摩書房)、ウィリアム・シェイクスピア『新訳 テンペスト』(レベル)、アーサー・コナン・ドイル『妖精の到来――コティングリー村の事件』(アトリエサード)ほか多数。

「2021年 『コティングリー妖精事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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