ブライヅヘッドふたたび (ちくま文庫 う 7-1)

  • 筑摩書房
4.05
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本棚登録 : 77
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (534ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480024510

作品紹介・あらすじ

1924年、オックスフォード大学。勉強熱心で真面目なチャールスは美しくて奔放な青年貴族セバスチャンと出会い、その魅力にひきつけられていった。二人の間にはすぐに友情が生まれ、チャールスはセバスチャンの家族が住むブライヅヘッドの城を訪ね、その華やかな世界の魔力にとらわれてゆく。一方、セバスチャンは酒浸りの生活となり、やがて倒錯した愛に溺れはじめる。イギリス貴族一家が崩壊していくさまを、一人の男の視点から抒情豊かに描いた名作。

感想・レビュー・書評

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  • 吉田健一の訳がいいときいて、古いちくま文庫で読んでみました。
    ドラマを3話ぐらいまで見たので、豪華すぎるブライヅヘッドのお屋敷やオックスフォードの風景など、想像しやすかったです。
    現代日本では想像できないようなレベルの貴族の話なので、ちょっと共感しにくいかなあとも思ったのですが、過ぎ去った日々のきらめきや、もう二度と帰ってこない人生を回想する主人公の姿は切ないです。
    なんとなく夏目漱石のような雰囲気もあるかな?と思いました。登場人物もすごく個性的なのも面白かったです。

  • 第二次大戦中の英国。Charles Ryder大尉は部隊と共にある邸宅を訪れる。そこはかつて彼に友情も愛情も与えた一家が住んでいた場所だった。一家の貴族的な世界はそれぞれ少しずつ煌めきを失ってゆき、一つの時代が終わるときCharlesに向けられた愛情も背を向ける。しかし大尉としてそこを再訪したCharlesが抱いたのは皮肉や悔恨ではなく、この邸宅が変わっていく時代を見守り続けることへの快活な喜びであった。

    前の半分くらいをちくま文庫。残りを英語で読んだ。使われてる単語が難しい!しかし詩的な表現が美しい。列車の夜のシーンや象徴的な雪崩のシーンなど。


  • 何度目かの再読。
    普段は復刊ドットコムの単行本を読んでいるが、意外に安値でちくま文庫版が手に入った。良かった。
    何度読んでも美しい話だと思うのだが、ドラマのレビューを読むと、かなり改変されているようで吃驚する。

  • 「ここは金の甕を埋めるのに丁度いい所だ、」とセバスチアンが言った。「私は私が幸福な思いをした場所毎に何か貴重なものを埋めて、そして私が年を取って醜くてみじめな人間になってからそこへ戻って来てそれを掘り出しては、昔を回顧したいんだ。」

    語り手チャールズ・ライダーが思い出の地ブライズヘッドで掘り出した「金の甕」が、この物語。

    岩波文庫版を読んで、名文の誉れ高い吉田健一訳も目を通してみたくなり手に取った。筋を気にして急いで頁を繰ったりしてはもったいない、素晴らしい訳。一文ごとに噛みしめて味わいたい。古風な言葉遣いと独特の硬質な文体が小説の雰囲気に見事に調和している。

    上下巻に分かれていると第一部と第二部以降の色調の違いが際立ってしまいどうも別の本を読んでいるようだったけれど、こうして一冊本でじっくり時間をかけて読んでいくと、チャールズの心の旅が深い実感を持って迫ってくる。とはいえ岩波文庫版にも優れた所がたくさんあるので、どちらも楽しめることに感謝したい。

    今回強く感じたのは、やはり小説の核心はセバスチアンとの青春の日々だけれど、チャールズはこの思い出を一旦封印して、彼の人生の「セバスチアン」の段階には区切りをつけているということ。そしてジューリアとの愛に彼なりに真剣に向き合っている。ジューリアはセバスチアンの代替物ではない。

    それでもコーデリアが看破したように、ジューリアとの関係はお互いの挫折感と喪失感の上に成り立ったものにすぎなかった。ジューリアの宗教的葛藤がなくとも、これもまた「ジューリア」の段階としていずれ区切りをつけられるべき時間だった。

    カトリックはこの小説の大きな主題で、護教的という批判も受けたということだが、造詣の深くない自分はそうは読まなかった。宗教がフライト家の崩壊の一因となり、セバスチアンとジューリアの人生に重くのしかかっていくけれど、ブライズヘッドを再訪したチャールズの前にカトリックは全く違うものとして現れた。信仰に救いを求めているのではなく、彼の愛した土地や人に連なる、幸せな記憶を甦らせる鍵としてのカトリック。それを見出したことでチャールズは救われたのだと思った。

    光あふれる日々はもう二度と返らないけれど、セバスチアンと過ごした夏は思い出の中でいつまでも輝き続ける。年を重ねるほどにこの輝きが深く理解できるようになるのだろう。

  • 2014/10/18/Sat.(通販購入して届いた日)
    2014/11/11/Tue.〜2015/01/08/Thu.

    【TVドラマ(HD完全)版/イマジカBSにて視聴】
    ジェレミー・アイアンズ主演。
    ゴールデン・グローブ賞を受賞した英国テレビ史に残る名作ドラマをHD完全版で放送。
    ある貴族の一家を叙情的に描く重厚な人間ドラマ。

    #01:2014/10/15/Wed. 13:30〜15:15→視聴済み

    #02:2014/10/22/Wed. 13:30〜14:30→視聴済み

    #03:2014/10/29/Wed. 13:30〜14:30→視聴済み
    チャールスはセバスチャンとますます親交を深め、ほとんど2人だけで過ごすようになっていた。
    そんな中、セバスチャンの母マーチメイン夫人がチャールスのもとを訪れる。
    息子セバスチャンを憂う彼女は、親友のチャールスを自分の味方に引き入れようとしていたのだ。
    その後にやってきたジュリアは、チャールスとセバスチャンをロンドンで開く慈善舞踏会に誘う。
    2人は連れてきた友人と舞踏会を抜け出して夜の街に繰り出すが…。

    #04:2014/11/05/Wed. 13:30〜14:30→視聴済み
    飲酒運転の事件以来、セバスチャンの状態は悪化していた。
    1924年春の復活祭にチャールスは再び「ブライズヘッド」を訪れるが、その間セバスチャンは酒に溺れていた。
    酩酊して取り乱すセバスチャンの姿に衝撃を受けたマーチメイン夫人は、チャールスに助けを求めるが、チャールスはセバスチャンの味方でいることを決意する。
    しかし、オックスフォードに戻った彼らのもとを夫人が訪れた夜、また事件が起きてしまう・・・。

    #05:2014/11/12/Wed. 13:30〜14:30→視聴済み
    オックスフォードの大学を辞め、パリの美術学校で絵の勉強を始めたチャールスは、クリスマスに「ブライズヘッド」でセバスチャンと再会する。
    「ブライズヘッド」ではアルコール中毒のセバスチャンが酒に手を出さないよう、厳しい管理体制が取られていた。
    その夜、夕食の席ではブライディとコーデリアが翌日の狩りについて話していた。
    そこに遅れて現れたセバスチャンが自分も参加すると言い出すが、彼には別の思惑があった。

    #06:2014/11/19/Wed. 13:30〜14:30→視聴済み
    1925年春、「ブライズヘッド」と決別したチャールスはパリの生活に戻っていた。
    そこにジュリアの恋人レックスが現れる。
    世話をしていたセバスチャンに金を持ち逃げされたという。
    彼はチャールスに、マーチメイン夫人の先が短いこと、マーチメイン家が破産しそうであること、ジュリアと結婚するつもりであることを話して聞かせる。
    まもなく2人は婚約を発表した。
    チャールスの中ではジュリアの存在が急速に色づき始めていた。

    #07:2014/11/26/Wed. 13:30〜14:30→視聴済み
    1926年春、英国でゼネストが起きると、チャールスは友人たちと国の危機を救うために帰国する。
    彼はマーチメイン夫人が会いたがっているという連絡を受け、ロンドンのマーチメイン家を訪れる。
    そこでジュリアから夫人がもう長くないことを告げられ、セバスチャンを連れて来てほしいと頼まれる。
    彼が今モロッコで外国人部隊から逃げたドイツ人の男と暮らしていると知ったチャールスは、現地に飛んで彼の家を訪ねるが…。

    #08:2014/12/03/Wed. 13:30〜14:30→視聴済み

    #09:2014/12/10/Wed. 13:30〜14:30→視聴済み

    #10:2014/12/17/Wed. 13:30〜14:30→視聴済み

    #11:2014/12/24/Wed. 13:30〜15:15→視聴済み

  • ハリネズミのように矢の刺さった聖セバスティアヌスを引用
    聖セバスティアヌスとサブカルチャーでの参考

  • とても美しい小説なのですが、私の好みではなかったです。夢を生きる物語の方が好き。

  • 文学 美青年たちの愛と友情…?
    いや、ひとつの家族(階級)が崩壊する話です。
    母親が異様に怖かった記憶があるのだが…

  • わたしの人生の中で一番大事な本。死ぬときにきっと思い出す。神の糸のひとひき。
    原書も持っているけれど、吉田健一の訳のが美しいと思う。

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著者プロフィール

Evelyn Waugh(1903-1966)
イギリスの著名な出版社の社主で、文芸評論家でもあったアーサー・ウォーの次男として生まれ(長兄アレックも作家)、オクスフォード大学中退後、文筆生活に入る。デビュー作『衰亡記』(1928)をはじめ、上流階級の青年たちの虚無的な生活や風俗を、皮肉なユーモアをきかせながら巧みな文体で描いた数々の小説で、第1次大戦後の英国文壇の寵児となる。1930年にカトリックに改宗した後は、諷刺の裏の伝統讃美が強まった。

著作は、代表作『黒いいたずら』(1932)、ベストセラーとなった名作『ブライヅヘッドふたたび』(1945)、T・リチャードソン監督によって映画化された『ザ・ラヴド・ワン』(1948)、戦争小説3部作『名誉の剣』(1952-61)など。

「1996年 『一握の塵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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